迷宮映画館

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海と大陸

2013年09月06日 | あ行 外国映画
漁業と観光で暮らす地中海に浮かぶ、小さな小さな島。漁業と言っても、借金まみれ。見切りをつけて、違う仕事に就いた方がいいのも道理。

しかし、父を海で亡くしたフィリッポは、年老いた祖父と一緒にボロ船で、懸命に魚を捕る。到底、それだけで食っていくのは不可能で、バカンスのシーズン、家を旅行客に貸すことを思いつく。自分ちを明け渡して、民宿にしちゃうみたいなもん。

漁に出たフィリッポが遭遇したのが、アフリカからの難民たち。。。小さな板切れのような船に何十人も乗り、文字通り命がけだ。でも、助けてはいけない。目の前で、おぼれようとしている人がいても、難民を助けては法律違反になってしまう。

法律を守るか、人としての倫理を優先するか?当然、人としてやるべきことをやるでしょう。しかし、それは法律違反。フィリッポの舟は没収。観光客を乗せての島めぐりもできなくなった。そして助けた身重の母親と息子をかくまう羽目に。それは重大な法律違反だ。無事に子供を出産したサラは、イタリア本土にいる夫のもとに行きたいという。

幾度も幾度も押し寄せる難民たち。虐げられた人たちは、何年もかけて国を逃げだし、捕まり、また逃げ出し、やっと海にたどり着き、ここまで来た。でもそのあとはない。意を決したフィリッポは、ある行動に出る。この小さな命を助ける。。。

結構期待が大きかった作品。難民問題を扱っていることは知っていたが、映画に登場する若き主人公、フィリッポの行動や考え方が、あまりに幼すぎて、こんなもんか?と思ってしまった。青年にしては、幼い考え方しかできない・・とはあったが、目の前に広がる地中海、その向こうにあるアフリカ。海に出る仕事をしていたら、難民が押し寄せるリスクは、十分に知っているのが当然ではないかと思うのだが、なんともお粗末。

だからこそ、映画になるのだが、純粋すぎた青年の行動には、なかなか共感できなかった。しかし、だからこそ、決意すると、思い切った行動に出る!となるわけだ。

身重の難民を演じたサラの深い表情はズドーンと重いなあ~と思ったら、実際に苦難の中、難民として助かった人なのだとか。あの深い表情には真実があった。

何年も放浪して、数年前に出稼ぎに出た夫のもとに行く、と言うことは、その子は・・・・・。などと考えると、複雑だが、多くの難民たちは、島にもたどり着けず、海の藻屑と化してしまった人がほとんどかもしれない。わずかに助かっても、無情にも本国に送還される。その中で、何とか助かった人ですら、この広い世界で生きていくことはできないのか。世界って、この世って、そんなに無情なとこなのか。。。。

難民にやさしくない日本で、そんなことを言う権利はないが、なんともさもしい世の中だ。

◎◎◎●

「海と大陸」

監督 エマヌエーレ・クリアレーゼ
出演 フィリッポ・プチッロ ドナテッラ・フィノッキアーロ ミンモ・クティッキョ


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2 コメント

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移民問題 (rose_chocolat)
2013-09-10 15:27:30
移民問題はどこの国でも悩ましいですね。
来た以上はどうにかしないといけない。返すのが基本なんだろうけど助けたい人もいて、でもそれを放っておくと自分たちの生活が圧迫されてしまう。
漂着する人が多い日本も、将来こんな話が多く出るのかもしれないですね。
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>rose_chocolatさま (sakurai)
2013-09-16 20:26:25
難しい問題ですよね。
特に日本は移民や難民に対しては、よそに顔向けできな国ですから、何とも頭を悩ませました。
でも目の前に苦しんでる人がいたら手を差し伸べないわけにはいかない。それが罪になるのはやっぱ変っすよね。
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