迷宮映画館

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わたしはロランス

2014年01月25日 | わ行 映画
性同一性障害。自分が生まれてきた体と性が一致してない。かなり、周知され、そんなに驚くほどのことでもなくなった。いまや、それが売りでがんがんTV等に登場し、露出している。しかし、それはごく一部であり、多くの人は、悶々と悩み、どうすれいいのかと迷い、アンバランスな自分と世の中を恨めしそうに見ているかもしれない。

1990年、国語教師のロランスは恋人フレッドと暮らしていたが、自分の性が姿と一致してないことから一歩踏み出そうとしていた。当然フレッドは避難する。自分が愛していたのは男のはず。これまでの生き方は何だったんだろうと思うのも仕方ないだろう。

しかし、フレッドはロランスを支えることを決意する。女の格好をしている男。見ないようにする?奇異な目で見る?なんでそんなことしてるの?とぶしつけに聞く?世間は思ったよりもいばらの道だ。フレッドは彼を出来るかぎり、守ろうとするが、それにも限界がある。お互いのすべてを理解しながら、二人は別れる。

そして数年後。ロランスは詩人として生きていた。懐かしいフレッドのもとに一冊に詩集が届けられた。それはフレッドへの愛が詰まった一冊。新しい生活を送っていた彼女の中に、ビビッドに生きていたあの時代が蘇る。そして・・・・。

まず、びっくりしたのが画面サイズ。いまどき、4:3のサイズに目が慣れない。そして字幕は右側に縦に進む。一昔前の映画を見ているかと思いきや、次々と繰り広げられる鮮やかな色と、センスのよすぎる音楽に目と耳と奪われ、画面サイズなどどうでもよくなる。

そして、そのサイズの意味はすぐにわかる。大きく大きく写された表情、切り取られた数々の小物、一つ一つのアイテムを鮮やかに見せるためには、横に広いサイズには合わない。芸術家がこの絵を見て!というように一つ一つのショットを切り取って見せる。

グザビエ君は、芸術家だと痛感させられる。彼がイメージした絵を、実際の皿や、小物や、スカーフや、人物を使って完成させている。それを惜しげもなく、次々と見る者の目に撃ち込んでくる。そんな風に見えた。その絵には好き好きがあるだろうし、この絵描きは好きだけど、こっちのタッチは嫌い。。。と言う人の好みが違うように、これも同じ。でも、彼の作りだした絵には、有無を言わせぬ力がある。絵を描かせても、きっとものすごいものを作るんだろうな。。

そして、それに上書きするのが音楽。見事な選曲と覆いかぶさってくる迫力は、絵をさらに重層なものにしていった。いつまでも耳に残る音楽に陶然とさせられた。

23才か~。1989年生まれ。うちの娘とおんなじだよ(どうでもいいのですが・・)。研ぎ澄まされてる感覚は、そのまま大事にしていただきたい。ストーリーに甘いとこがあるのが、逆にホッとする。妙に背伸びしているようなとこが、可愛いのだが、それも計算されてるんだったら、やだな。

90年という時代。多様性が市民権を得ていない頃。今も得ているとはいえないかもしれないが、生きにくい時代ならではの選択にしたのか?同一性障害と同性愛が絡み合って、あの時代に同性愛者の多くに影のように付きまとっていたエイズの匂いはなかった。。。

監督が作り上げたイメージをまんま体現したメルヴィルが、いつになく素敵でした。彼の持つ世俗を超越しているような雰囲気がこの映画の世界感を完成したのでしょう。そんな風に思います。

邦題がなあ。。原題のまんまでもよかったんじゃないかなあ。いつでも、どんな時でも自分は自分。まずはロランスです、、。いや、とりあえずロランス?いや、とにかくロランス。。。そうすっと、やっぱ「わたしはロランス」かな。

◎◎◎◎

「わたしはロランス」

監督 グザビエ・ドラン
出演 メルビル・プポー スザンヌ・クレマン ナタリー・バイ


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2 コメント

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ロランス、エニウェイ (kon)
2014-02-01 20:53:20
あんなに期待してたのに、ついつい眠りに入った前半。
持ち直した中盤からぐいぐいグザビエの思う壷に。
あの美意識は天性のもの。大事に生かしていってほしいものです。
メルビルの、最初ぎこちなくて痛々しい感じから、どんどん自信をつけて本物のお姉さんに進化していく過程が悲しくも美しくて泣けてきました。
フレッドもケバいねえちゃんから、大人の女性になっていく。
二人の最初でもあるラストシーンがまたね、いいのだこれが。
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>KONさま (sakurai)
2014-02-04 21:24:52
まあ、期待も持ちますよね、あんだけあおられたら。
あたしは、若干いぶかしげに見てたんで、結構冷静に見てました。
やっぱねえ、役者の力量って大きいと思います。
メルビルさんのうまさが、この映画のすべてだったんではないかと思うくらい。
いいわあ~、女も、死人も、なんでも似合っちゃう!
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