迷宮映画館

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スイミング・プール

2004年07月05日 | さ行 外国映画
イギリスの著名なミステリー作家、サラ・モートン。いかにもカチッとしたイギリス女性。つれない編集者を憎からず思っているが、なかなか進展がない。新作に行き詰まっているサラに、編集者ジョンが自分のフランスの別荘で書いたらいいのではないかと提案する。

年老いた父親を置いていくのは気が引けるが、思い切ってプロバンスに行くことにした。曇天のロンドンの空とは対照的な抜けるような青空、暖かい空気、開放的な気分、来てよかった。ダイエットをし、酒を断ち、仕事に専念しようとするサラ。開放的な空気の中でも、カチッとした自分を変えることはなかなかできなかった。

ある日響いた車の音。別荘で静かに一人で著作するはずだったのに、ジョンの娘ジュリーがやってきた。なんとも破天荒な娘で、男は引き入れる、裸で歩き回る、片付けはしない、やりたい放題、奔放そのもの。自分のペースをすっかり乱されて、腹の虫のおさまらないサラだったが、いつしかジュリーのペースに引き込まれていく。彼女から目が離せない。彼女の開放的な気分がサラを徐々に変えていく。

新旧ふたりのミューズの魅力を思う存分引き出して・・・S・ランプリングの気持ちの移り変わりの妙が極上だったが・・・、とにかく美しい映像が繰り広げられる。四角四面のイギリス女が、だんだんと奔放になっていく。服装から、表情から、食べるものから。そして、そのことを充分引き出させる力を持つ、と感じさせるジュリーのはじけるような若さの魅力。息を飲む描き方だ。

謎を持たせ、いろいろな感じ方を自分なりに発想してもらう。見た人の自由、見た人の自由な解釈が広がっていく。オゾンはそれでいいそうな。私も私なりの自由な解釈をさせもらった。それは内緒にしておく。そんな楽しみを持てる映画かも。

でも、どうしてもどこかに無機質なものを感じてしまう。なぜかはわからないが、どこかに人間を冷めて見ているようなものを感じてしまう。それもオゾンの余裕のなせる技なのかもしれないが、オゾンの映画に共通のにおいがある。面白いんだけど、素敵なんだけど、私が心から好きになれないところがそこ。見ていて、D・リンチが頭をよぎったが、なんだかリンチの映画が見たくなった。

『スイミング・プール』

原題「Swimming Pool」 
監督・脚本 フランソワ・オゾン 
出演 シャーロット・ランプリング リュディヴィーヌ・サニエ 2003年 フランス作品


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