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人間というのは、あえて好き好んで、痛いもの、汚いもの、つらいものを見たくなどないものです。当たり前。できるなら、美しいもの、気持ちのいいもの、心地よいものに囲まれていたい。それだけど見ていたい・・・。なのに、そうならない。世の中には、前者が満ち満ちている。避けて通りたいものなのに、なぜに悪意がちりばめられた世界に生きているのか。
これほどまでに自分がかわいい、エゴの塊の生き物というのは、他にいるのでしょうか。美しいもの、楽なもの、心地いいものに囲まれるのはいい。それが人間の欲求だから。でもその裏には、あおりを食ったもう片一方の世界に生きる人間がいるのです。
世界史や倫理などというものを高校生に教えてますが、哲学やら思想やら、人間はいかに生きるべきかの道筋を模索してきた人のことが出てくるたびに2000年以上も前から、人間の抱えてる問題は同じで、なんとか解決の道を探し続けている。そしていまだ見つからず、さっぱり人間は成長していない。どころか、ますますしようもな生き物になっているのではないかと思うほどです。ホントに、どうしたらいいのでしょう。などということをつらつら考えてます。
さて映画。ニューヨーク州サラトガに住んでいた自由黒人のソロモン・ノーサップ。
・・・・ニューヨーク州はアメリカの北部に位置し、もちろん自由州である。南北戦争前のアメリカの様子はこちらにありますので、ご参考に。
バイオリニストして、家族と幸せに暮らしていたが、いわゆる人さらいに会う。いい大人が人さらい?と思うが、自由証明書を所持していない黒人が南部に連れて行かれてしまったら、何をどうあがいても認めてもらえない。奴隷として売買され、南部の農園に売り飛ばされる。そこで目にしたのは、自分が知らなかった奴隷の世界。抵抗すれば虫けらのように殺される。己の命を守るためには、なりふり構ってはいられない。
一方でソロモンはキチンと教育を受けた黒人である。読み書きはできるし、音楽はお手の物。労働の効率化を考え、重宝な奴隷としての姿も見せていく。それはとにか生き延びるため。死なないため。死ななければいつかは帰れる。家族のもとに、絶対に帰る。とんでもない過酷な状況の中で、とにかく生き続けた。生きていれば必ず活路は見出される。
見終わって、どっと疲れた。決して、見て楽しいものではない。辛く、痛く、重く、人間の愚かさをこれでもかと見せられ、暗い気持ちになる。ソロモンはなんとか活路見出し、12年間の地獄を抜け出して、家族のもとに帰ることができた。しかし、あの農園には、多くの奴隷がいる。彼らを助けることはできない。後ろ髪引かれるどころか、後ろも見ずに、まず自分を考えた。それこそが人間だろう。
しかし、自分の居るべき場所に帰ったソロモンはそこから活動を始めた。自分を拉致した人間を告発・・。罪には問われなかったのは悔しいが、道理だろうと思うし、あの時代の限界だ・・・、自分の身に何が起こったかを克明に著した。だからこそ、映画として世に出たわけだが。奴隷たちを逃がすための地下組織を作り、活動した。
しかし、ソロモンがどうやって亡くなり、墓もどこにあるのかはわからないという。それも道理だろう。どんな目にあったのかは、想像がつく。
はじめて奴隷がアフリカから連れてこられ、理不尽を超える扱いを受けてからざっと500年以上経った。とんでもないことをしてきた人間たちは、それが間違いであったことを知ってるはずであり、奴隷制がもとになった人種差別は恥ずべきことだと知ってるはずだ。で、今はそれがないのかというと、残念ながら厳然としてある。このとんでもない話は、ただの過去の話ではない。こんな世界を作ってしまう人間の愚かさを改めて思い知らされた気がしました。
何と言っても役者陣が素晴らしい。キウェテルさんと言えば、すぐさま「キンキー・ブーツ」の迫力あるオカマちゃんを思い出すのですが、どっか自信なさげな卑屈な感じと、尊厳にみちた部分が同時に存在しておりました。白人たちはいかにもな雰囲気がぷんぷん。19世紀半ばですから、アメリカ人と言っても、もとはヨーロッパからの移民ですから、ヨーロッパオーラがビシビシ来ます。カンバーバッチとファスベンダーはお見事。
くそな奴がピッタリのダノに、ブラッドさんは役得、助演女優をとったルピタ・ニョンゴさんは、納得の演技でした。
さて、奴隷貿易が禁止され、アフリカ大陸から労働力を運べなくなったのが、こんな事件が起こる原因ですが、それは1807年のこと。奴隷貿易の始まりから、廃止までの流れを少々かいつまんで書きたいと思います。こうご期待。
◎◎◎◎
「それでも夜は明ける」
監督 スティーブ・マックイーン
出演 キウェテル・イジョフォー マイケル・ファスベンダー ベネディクト・カンバーバッチ ポール・ダノ ギャレット・ディラハント
これほどまでに自分がかわいい、エゴの塊の生き物というのは、他にいるのでしょうか。美しいもの、楽なもの、心地いいものに囲まれるのはいい。それが人間の欲求だから。でもその裏には、あおりを食ったもう片一方の世界に生きる人間がいるのです。
世界史や倫理などというものを高校生に教えてますが、哲学やら思想やら、人間はいかに生きるべきかの道筋を模索してきた人のことが出てくるたびに2000年以上も前から、人間の抱えてる問題は同じで、なんとか解決の道を探し続けている。そしていまだ見つからず、さっぱり人間は成長していない。どころか、ますますしようもな生き物になっているのではないかと思うほどです。ホントに、どうしたらいいのでしょう。などということをつらつら考えてます。
さて映画。ニューヨーク州サラトガに住んでいた自由黒人のソロモン・ノーサップ。
・・・・ニューヨーク州はアメリカの北部に位置し、もちろん自由州である。南北戦争前のアメリカの様子はこちらにありますので、ご参考に。
バイオリニストして、家族と幸せに暮らしていたが、いわゆる人さらいに会う。いい大人が人さらい?と思うが、自由証明書を所持していない黒人が南部に連れて行かれてしまったら、何をどうあがいても認めてもらえない。奴隷として売買され、南部の農園に売り飛ばされる。そこで目にしたのは、自分が知らなかった奴隷の世界。抵抗すれば虫けらのように殺される。己の命を守るためには、なりふり構ってはいられない。
一方でソロモンはキチンと教育を受けた黒人である。読み書きはできるし、音楽はお手の物。労働の効率化を考え、重宝な奴隷としての姿も見せていく。それはとにか生き延びるため。死なないため。死ななければいつかは帰れる。家族のもとに、絶対に帰る。とんでもない過酷な状況の中で、とにかく生き続けた。生きていれば必ず活路は見出される。
見終わって、どっと疲れた。決して、見て楽しいものではない。辛く、痛く、重く、人間の愚かさをこれでもかと見せられ、暗い気持ちになる。ソロモンはなんとか活路見出し、12年間の地獄を抜け出して、家族のもとに帰ることができた。しかし、あの農園には、多くの奴隷がいる。彼らを助けることはできない。後ろ髪引かれるどころか、後ろも見ずに、まず自分を考えた。それこそが人間だろう。
しかし、自分の居るべき場所に帰ったソロモンはそこから活動を始めた。自分を拉致した人間を告発・・。罪には問われなかったのは悔しいが、道理だろうと思うし、あの時代の限界だ・・・、自分の身に何が起こったかを克明に著した。だからこそ、映画として世に出たわけだが。奴隷たちを逃がすための地下組織を作り、活動した。
しかし、ソロモンがどうやって亡くなり、墓もどこにあるのかはわからないという。それも道理だろう。どんな目にあったのかは、想像がつく。
はじめて奴隷がアフリカから連れてこられ、理不尽を超える扱いを受けてからざっと500年以上経った。とんでもないことをしてきた人間たちは、それが間違いであったことを知ってるはずであり、奴隷制がもとになった人種差別は恥ずべきことだと知ってるはずだ。で、今はそれがないのかというと、残念ながら厳然としてある。このとんでもない話は、ただの過去の話ではない。こんな世界を作ってしまう人間の愚かさを改めて思い知らされた気がしました。
何と言っても役者陣が素晴らしい。キウェテルさんと言えば、すぐさま「キンキー・ブーツ」の迫力あるオカマちゃんを思い出すのですが、どっか自信なさげな卑屈な感じと、尊厳にみちた部分が同時に存在しておりました。白人たちはいかにもな雰囲気がぷんぷん。19世紀半ばですから、アメリカ人と言っても、もとはヨーロッパからの移民ですから、ヨーロッパオーラがビシビシ来ます。カンバーバッチとファスベンダーはお見事。
くそな奴がピッタリのダノに、ブラッドさんは役得、助演女優をとったルピタ・ニョンゴさんは、納得の演技でした。
さて、奴隷貿易が禁止され、アフリカ大陸から労働力を運べなくなったのが、こんな事件が起こる原因ですが、それは1807年のこと。奴隷貿易の始まりから、廃止までの流れを少々かいつまんで書きたいと思います。こうご期待。
◎◎◎◎
「それでも夜は明ける」
監督 スティーブ・マックイーン
出演 キウェテル・イジョフォー マイケル・ファスベンダー ベネディクト・カンバーバッチ ポール・ダノ ギャレット・ディラハント
あんなに重く悲しい歴史なのに。
…やはりファスベンダー萌えのせいでしょうか。
キウェテルさんは同じく「キンキー・ブーツ」のドラッグ・クイーンが鮮烈な印象。
今作でさらにステップアップ、良かった良かった。
ブラッド・ピットさんは、あの役はしちゃいかんような。。。
いかにもハリウッド的な展開に見えてしまいました。
http://blog.goo.ne.jp/sakura1043_2004/e/fa1598b0ce373f5cc9d829d120fa0309
と合わせてたいへん勉強になりました。
とんでもない事をしてきた人間について考える秀作mでしたね。
(現在進行形とも言える)
ブラピだけおいしすぎてツッコミまくりました。。
丁寧だし、でも無駄がないし、そつがないけど、塩梅がいい。
センスがいい監督さんだと思います。
ブラッドさんは、憎々しい役をやってもいいかと思いますです。
南北戦争前で、あの時代ってのがポイントなんですよね。
しかし、人間ってのは、さっぱり成長しない生きもんだなあと、つくづく思います。
重いテーマだけにコメントが難しいですが、
一番印象に残ったのは黒人奴隷同士の不干渉。
よくあるドラマだと黒人たちが一致団結して領主に反抗する…
でも「それでも夜は明ける」は違ってましたね。
この孤立感が怖い。
他には北から拉致された黒人奴隷が多かったって事も
この映画で初めて知りました。
この監督の目の付け所には、敬服です。
えぐるように迫ってくる。目を背けたくなりますが、そむけちゃいけない。
映画で知ることが多くて、まじに勉強になります。
あえて、こういうことはアンダーグランドにしてたんでしょうね。