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幻影師アイゼンハイム

2008年08月14日 | か行 外国映画
世紀末・・・、よく使われる言葉だが、この言葉の持つ、退廃的な空気を漂わせるのは、19世紀の世紀末をおいてほかにない。

長年、栄華を誇ってきたハプスブルグ家の凋落は止められず、老皇帝フランツ・ヨーゼフ一世の威厳は空しく見える。ヨーロッパは、どこも退廃的な空気によどみ、重苦しい色の満ちていた。

その空気の中で、人々が、束の間の幻影にうつつをぬかし、世俗を忘れるのもわからないでもない。

幻影師と呼ばれたアイゼンハイム。職人の子として生まれた彼は、エドゥワルドという少年のころ、幼馴染のソフィと想いを交わしていたが、彼女は公爵令嬢。二人の恋は許されるものではなかった。

引き裂かれた二人は、意外なところで再会する。各地を放浪して回ったあとに、ウィーンに帰ってきたエドゥワルドは、世紀の幻影師、アイゼンハイムとなっていた。

レオポルド皇太子の婚約者として彼の脇にいたソフィ。封印していた想いがよみがえる。あまり評判のよくない皇太子と婚約したのも、政治がらみ。ソフィの行動には、監視が付き、アイゼンハイムの動向には、官憲の目が光っていた。

再会した二人は、愛を確認する。そして、世紀のイリュージョンが始まる・・・・。

全編、とってもヨーロッパ的な空気が漂う雰囲気なのだが、出ているのはバリバリのアメリカンたち。おまけにストーリーも欧州風味でありながら、最後はとってもアメリカンという、密度の濃い映画になっている。

アメリカっぽくないアメリカ映画というのが、アメリカでじわじわとヒットして行った要因なのではないかと想像する。

日本人は、いろいろな国の映画を見なれているもので、フランス映画が好きだったっり、ドイツ映画、スペイン映画、韓国映画等々、いろんな味わいの映画の堪能のし方を知っているような気がする。

この映画の味わいは、ヨーロッパ風味でありながらアメリカ映画の王道を行くという描き方が魅力だ。

そして、この映画の魅力は芸達者な役者さんたち。すぐ前に「インクレディブル・ハルク」を見て、意外なエド君を堪能したばかりなのだが、やはりこういう映画を見ると、彼の演技力の妙をたっぷり見れる。表情の動かし方、絶望の淵にいるとき、喜びの顔、いたずらっぽい顔・・・。やっぱ、いい。うまい。

と、最近こういう役柄が多い、ジアマッティ。なんとジアマッティとルーファスが同じ歳だということがわかったのだが、あのイヤらしさ!!うまいなああ。そして、その上を行きそうなルーファスの暴君ぶり。ルーファスは、自分の置かれている立ち位置を、知りつくして成りきっているところがマジにいい。

男3人の芸達者に囲まれて、ジェシカ・ビールが、ちょっと地味に見えるくらい。いつもの肉感的な様子を閉じ込めて、うん、がんばってた。

つうことで、いい意味で裏切られた感のある映画だった。

◎◎◎○

『幻影師アイゼンハイム』

監督・脚本 ニール・バーガー
出演 エドワード・ノートン ポール・ジアマッティ ジェシカ・ビール/ルーファス・シーウェル エディ・マーサン ジェイク・ウッド トム・フィッシャー カール・ジョンソン


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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
えーっ!!! (miyu)
2008-08-14 16:35:34
ジアマッティとルーファスがタメですか?
うわぁ~見えません。見えません。
でも、こういった時代にぴったりなキャストが
それぞれにいい演技を見せてくれてましたね。
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ノートン続き♪ (mezzotint)
2008-08-14 22:21:43
sakuraiさん
いやいやノートン続きですね!
これも良かったですよね
アメリカ映画なのに、ヨーロッパのティスト。
なるほど!それで人気を博した?納得です。
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>miyuさま (sakurai)
2008-08-16 22:12:16
あたしは、あの世紀末のヨーロッパの空気が大好きで、ウィーンや、ハプスブルグ家のことが書いてあるんじゃないかなと思ってパンフ買ってしまったのですが、何と一番のびっくりは二人とも1967年生まれのタメだったこと。
ジアマッティは、顔ほど年とってはいないと思ってましたが、なんか・・・すごいですよね。
インデペンデント系と言っても、いい役者揃ってますから、いい映画になるのは納得です。
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>mezzotintさま (sakurai)
2008-08-16 22:17:02
狙ったわけじゃないのですが、映画館の陰謀で・・。アメリカ人って、あんまりよその映画を見ないし、ヨーロッパ風のもにょもにょした終わり方を嫌うらしいのですが、これはヨーロッパ風味ながら、ちゃんを終わり方はアメリカンということで、満足させたんじゃないでしょうかね。
そんな風に感じました。
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こんにちは (木蓮)
2008-08-28 16:52:00
TBさせて頂きました。
これの後、「ハルク」を見たかったのですが・・
見逃してしまい、悔しいです。
エド・ノートン君もさすがの磐石でしたが
ポール・ジアマッティが役柄ともに印象的でした。
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>木蓮さま (sakurai)
2008-08-28 22:46:14
エド君の表情に、すっかり騙されてしまいましたよ。
でも、結構気持ちいいやられた感だったかもです。
ハルクも、やはりいい味出してましたので、そのうちぜひ。
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素直に?! (メル)
2008-11-14 18:11:30
騙されちゃいました~(^^ゞ
でも、騙されて嬉しかったと言うか
ジアマッティのあのラストの、”やられた~、天晴れアイゼンハイム”的な顔を私もしてたかも・・です^^
スッキリ騙されて嬉しかったです(笑)

エドワード・ノートンにもあの眼力と演技で
すっかり騙されたし、ジアマッティは今回ほんとに素敵な役者さんだわ~と遅ればせながら初めて思いました。

えっ?!ルーファスとジアマッティが同い年・・!そうだったんですか~!
知らなかったです(^^;;)
ルーファスの暴君ぶりも、おっしゃる通り
なかなか良かったですよね♪

そうそう、ジェシカ・ビールは上記男性陣に
ちょっと押され気味で、確かに影が薄めでしたね(^^ゞ
でもやっぱり素敵だったけど^^(好きなんです彼女^^)
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>メルさま (sakurai)
2008-11-17 14:01:12
そうそう、悔しくないだまされ方でしたよね。
素直にやられたああっていう感じ。

ジアマッティ、最近どんどん膨れてきてますが、この時はまだスマートだったです。
「私がクマ・・」では、なんだかぷよぷよ。
相変わらずうまいですけどね。

ルーファス出てくると、どんなやられ方されるんだろう。。??って不謹慎な見方をしてしまいます。
そのやられっぷりが見てる方をすっきりさせてくれますが、その辺のイヤらしさぶりを、ちゃんと本人分かってるところがいいですわ。
じわじわヒットしたのもわかる映画でしたね。
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トラ・コメどうもです (ひらりん)
2009-01-07 22:39:24
主人公のイリュージョンに心酔する警部を騙す為に、一世一代のラブ・イリュージョンを敢行したっつう結果が爽快でしたね。
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>ひらりんさま (sakurai)
2009-01-08 08:29:50
そのイリュージョンにかけるエド君の、超情けなさそうな目が好きなのですが、あっぱれな終わり方にすっきりしました。
ルーファスは、ちょっと可愛そうでしたがねぇ。
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