迷宮映画館

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2007年02月14日 | や行 映画
船の中で生活している老人と少女。少女は幼いときに連れてこられ、船の中で老人に育てられた。少女が17歳になったら結婚するという。しかし、少女の気持ちをいつまでもとどめておくわけには行かない。別の世界が開かれたとき、少女と老人はどうするのか・・。

うーーんん、ギドクの映画は随分と見てきたが、これにはどうしても心が許せなかった。変態映画のきわみで、ハチャメチャなこともわかっていたが、どうしてもだめだった。何がダメって、まず監禁はダメだ。「悪い男」にもその傾向はあったが、ここはマジに逃げ場がない。それはじじいがずるすぎる。

そして決定的なのはじじい。どうしても生理的に許せない。若い男見たらときめくに決ってるって。釣り場を提供して、さまざまな男を自分でちらつかせながら、他の男と話す事さえ許せないじじい。狭量の極みでありながら、持て遊びすぎ。それがギドクの描く不条理の世界なのかもしれない、と広い心で見てもどうしてもだめだ。

「うつせみ」でセリフを廃し、削ぎに削ぎ落として何かに到達し描いた世界は感嘆させられたが、またまたセリフを廃したのは二番煎じに思えてしようがなかった。

主人公の女性は既に実年齢は23,4らしいのだが、あの独特の雰囲気は凄い。本当に無垢な少女で、何かと切り離されたような孤高の存在に見える。その彼女の持つ痛みのようなものがこの映画の持つ大きな意味なのだが、その痛みが本当に痛いのだ。そしてその痛みは気持ちのいいものではない。どちらかと言えば、不快な痛みだ。そこまで痛みを感じさせることの出来るギドクの力なのかもしれないが、気持ちも許せない上に、不快な痛みで、おまけに今回の役者はいまいちの力で、・・・・ダメだった。

そう思わせたのが狙いだったのなら、それは間違いなような気がする。映画の持つ意味を十分分かり、見るたびに私達をうならせてきたギドク作品だが、今回はちょっとはずしたということで。

見ていたときに途中で笑い出した御仁がいらっしゃった。「そっか、これはコメディなんだ!」と思いながら、コメディの変態映画と思って見よう、見ようと努力したが、沁みてこなかった。残念。

◎◎

『弓』

監督・脚本・製作 キム・ギドク
出演 チョン・ソンファン ハン・ヨルム ソ・ジソク チョン・グクァン


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4 コメント

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初ギドク! (GMN)
2007-02-15 20:42:45
でもダメでした。やっぱ7歳の子供をさらってきて10年も拉致監禁なんて愛情もクソも無いですよね。
もう少しじいさんにも何かしらの言い分でもあったなら、善悪の倫理観を揺さぶるようなものになったのかもしれませんが、あれじゃ100%の悪行にしかなってないなと思ってしまいました。
この作品で一体何をやりたかったんでしょうね?なんだかな~という感じです。
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>GMNさま (sakurai)
2007-02-15 23:01:35
仲代達矢の焼き直しのようなじいさんで、・・・あれがダメだった理由かも。
似たようなシチュエーションで、「悪い男」つうのがあるんですが、これはなぜか許せる。あなたにならどんな悪くてもついて行く、っていう気持ちになれるんですよ。
やっぱじいさんには普通に枯れてもらいたいです。
是非、コレ見たことは忘れてもらって、別のをおすすめします。
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Unknown (kimion20002000)
2007-02-20 23:14:58
TBありがとう。
たしかに、ずるいね(笑)
でも、文学や映画というのは、なんでもありで。
とくに、このお話は、老人がもつ御伽噺で。
こういう夢をみながら、往生すれば、ある意味、幸せの極地かもしれません。
「少女の監禁」なんて、古今東西ある象徴的なテーマですよね。
「光源氏」の世界でも、ルイ王朝の世界でも。
まあ、近代国家では、猟奇犯罪論になりますけどね。
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そうです、そうです。 (sakurai)
2007-02-21 17:53:51
なんでもありなんで、いいのです。
で、あたしはダメだったと。
やっぱ男と女の力の差が生み出すことなわけですよね、監禁つうのは。
その幸せの極地は、誰かの不幸の上にあるのではと。
それを不幸と思わせないのが愛かもしれませんが、やっぱずるかった。
少し前に小学生の女の子をずーーと監禁していた事件が発覚しましたが、あれに触発されたんじゃないですよね。
ま、次に期待です。
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