さいかち亭雑記

短歌を中心に文芸、その他

米田律子の一首

2020年05月04日 | 現代短歌
 この連休どこにも出かけずに、また仕事が消えて無為に過ごしている方がある一方で、コロナ対策に繁忙を極めている職種の方もおられる。無聊をかこつ方々のために次の一首を見つけたから、ここに示したい。これは作者が一時的に体調をくずしてしまった時の歌であるが、こういう心の持し方が肝要ではないだろうか。
 
  翔ぶための身をば屈むと自らに言ひて五月をうち籠りたり
    米田律子『水府』一九九〇年六月刊

とぶための みをば かがむと みずからに いいて ごがつを うちこもりたり

二句目の「みをば」と三句目の「みずからに」に同じ強勢があり、頭韻をなしている。二句目の三・四調と四句目の三・四調とが、調べのうえでの対をなしており、これは決して気の弱くなっている歌ではない。「みをば かがむと」の「ば」などは、何ともくやしい限りという抑圧感まで感じさせる。四句目の「いいて ごがつを」の強勢は、結句の「うちこもりたり」がただの「うちこもり」ではないのだ、後日を期して今は力を養うための休養なのだ、と自身に言い聞かせているような気合いを感じさせる。戦前の女学校に通った世代らしいエートスがあるとも言えるが、どうだろう。元気をなくされている方は、この歌を口ずさんでみては。

翔ぶための 
身をば 屈むと
自らに 言ひて 五月を 
うち籠りたり


※ 付記。昨日今日と表示される広告が、何故か女性の下着の広告になっているのですが、こういう広告は見る人に合わせて最適化されるそうなので、きっと私に最適なのだとパノちゃんが判断したのでありましょう。みなさんのページでは何の広告でしょうか。あとはこのブログのアクセス順位が千二百番代になって、たぶんこれまでで最高のレベルなので、スポンサーもそうした格付けに合わせて異なってくるのかもしれないです。

※ 話はかわるが、国の当初のコロナウイルスへの対応の遅れについて、政権の責任を問う声が最近あちこちから聞こえてくる。私はこれに加えて、NHKの報道番組「クローズアップ現代」の放映時間帯を後にずらしたことに象徴されるような、近年の大幅な路線変更の責任が重大だと思っている。NHKの夜の七時代時間帯を子供のいるファミリー向けの娯楽番組中心に変えるような圧力をかけた人たちは、結果的に自分で自分の首をしめたことになる。オリンピックの開催や中国の要人の訪問をめぐる対応に配慮したことから後手となった件についても、もっと早く種々の情報が出ていたら、これほどまでに初動で誤ることはなかったはずだ。


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