それからしばらくは、僕は睡眠に関することをすっかり忘れていた。テレビを見ていて突然落ちてしまうということも無かったし、朝おきたら丸一日抜け落ちていたということも無かった。このとことろ仕事が忙しく、家に帰ったらもう寝る時間だし、また朝は妻が大抵僕よりは若干早く起きていて、僕が寝過ごしても起こしてくれるのが常であったから寝坊をしないですんだ。
ある土曜日の朝、寒さがだいぶ増してきて布団の中でグズグズとしていたが、無性に空腹感を覚え妻より先に起きた。妻は休日くらい寝坊をさせてとなかなか起きてこないので僕はひとりでキッチンに行きブランチの準備を始めた。
このところ妻も忙しく、夜も遅い時があるし休日の朝もこうして寝坊することも多いので一人でちょっとしたものなら作れるようになった。僕は冷蔵庫を開けて、適当なものを取り出した。ベーコン、卵、牛乳、ブロッコリ。
あまり考えずに一通り作った順にテーブルに並べた。ベーコンエッグ。ブロッコリーときのこを炒めたもの。トースト。カフェオレ。りんご。ヨーグルト。ナッツの入ったシリアル。
新聞を読みながら食べ始める。少しすると妻が起きてきた。
「わあ。豪華な朝食ね。ホテルの朝ごはんみたい。」
もしかしたら妻は僕が朝食をつくり終わるタイミングで入ってきたのかもしれないというくらい適度なタイミングでダイニングテーブルに付いた。
「なんか幸せね。休日の朝、寝坊をしたら朝食ができてるって。しかもこんなたくさん。
」
僕たちは遅い朝食を食べ始めた。なんとなく、新婚旅行で行ったイギリスを思い出した。どのホテルに行ってもB&Bに行ってもこのような組み合わせの朝食が出てきた。普段少食の妻もあの時はよく食べた。食べたはいいが夕方近くまでお腹が減らなくて、本当はあそこで英国式お茶をしたかったのにと言って残念がっていた。
そんなことを思い出すと僕は幸せな気分になった。妻は休日の午前中にやっている情報番組をのんびり見ながら美味しそうに朝食を食べる。僕は新聞を片手にかなり早いスピードで口を動かした。
「ねえ、最近あなたよく食べるわね。」
妻が僕の方を向いて突然言った。
「そうかな。」
僕はそんなことを気にしたことが無かった。
「なんか少し、ふっくらしたような気がするけれど、気のせいかな。それとも太ったかな。」
妻は僕の顔をまじまじと見つめ、そんなことを言った。僕はそんなことを言われるほど太ったのだろうかと内心少し驚きながら、そういえばジーンズで若干きつめのものがあることを思い出した。
「そうかな。幸せ太りじゃないのかな。」
そう言ってごまかしては見たが正直少しショックだった。妻は僕の外見を気にする質ではないが、まだ30代であるのにメタボ体型には自分でもさすがになりたくは無かった。
「みんなそう言うのよねー。結婚して太るとねー。」
妻はからかうように言った。
「実際にそうだから仕方ないじゃないか。」
新聞から目を離さずにぼそりと言ってみた。
「そう?良かったね。私と結婚して。」
そうだな。それは心の中で言ってみた。
「なによー。無視なのー?私と結婚して不幸せー?まあいっかー。」
妻は自分の食べ終わった皿をシンクに下げに言った。
妻の後ろ姿はほっそりとしていて、何年もまったく変わらなかった。それでもこれからもし出産でもしたらぶくぶくと太ってくるのだろうか。僕も年を取ると職場の上司みたいにだらしなく太ってしまうのだろうか。そんなことをちらと思った。
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ある土曜日の朝、寒さがだいぶ増してきて布団の中でグズグズとしていたが、無性に空腹感を覚え妻より先に起きた。妻は休日くらい寝坊をさせてとなかなか起きてこないので僕はひとりでキッチンに行きブランチの準備を始めた。
このところ妻も忙しく、夜も遅い時があるし休日の朝もこうして寝坊することも多いので一人でちょっとしたものなら作れるようになった。僕は冷蔵庫を開けて、適当なものを取り出した。ベーコン、卵、牛乳、ブロッコリ。
あまり考えずに一通り作った順にテーブルに並べた。ベーコンエッグ。ブロッコリーときのこを炒めたもの。トースト。カフェオレ。りんご。ヨーグルト。ナッツの入ったシリアル。
新聞を読みながら食べ始める。少しすると妻が起きてきた。
「わあ。豪華な朝食ね。ホテルの朝ごはんみたい。」
もしかしたら妻は僕が朝食をつくり終わるタイミングで入ってきたのかもしれないというくらい適度なタイミングでダイニングテーブルに付いた。
「なんか幸せね。休日の朝、寝坊をしたら朝食ができてるって。しかもこんなたくさん。
」
僕たちは遅い朝食を食べ始めた。なんとなく、新婚旅行で行ったイギリスを思い出した。どのホテルに行ってもB&Bに行ってもこのような組み合わせの朝食が出てきた。普段少食の妻もあの時はよく食べた。食べたはいいが夕方近くまでお腹が減らなくて、本当はあそこで英国式お茶をしたかったのにと言って残念がっていた。
そんなことを思い出すと僕は幸せな気分になった。妻は休日の午前中にやっている情報番組をのんびり見ながら美味しそうに朝食を食べる。僕は新聞を片手にかなり早いスピードで口を動かした。
「ねえ、最近あなたよく食べるわね。」
妻が僕の方を向いて突然言った。
「そうかな。」
僕はそんなことを気にしたことが無かった。
「なんか少し、ふっくらしたような気がするけれど、気のせいかな。それとも太ったかな。」
妻は僕の顔をまじまじと見つめ、そんなことを言った。僕はそんなことを言われるほど太ったのだろうかと内心少し驚きながら、そういえばジーンズで若干きつめのものがあることを思い出した。
「そうかな。幸せ太りじゃないのかな。」
そう言ってごまかしては見たが正直少しショックだった。妻は僕の外見を気にする質ではないが、まだ30代であるのにメタボ体型には自分でもさすがになりたくは無かった。
「みんなそう言うのよねー。結婚して太るとねー。」
妻はからかうように言った。
「実際にそうだから仕方ないじゃないか。」
新聞から目を離さずにぼそりと言ってみた。
「そう?良かったね。私と結婚して。」
そうだな。それは心の中で言ってみた。
「なによー。無視なのー?私と結婚して不幸せー?まあいっかー。」
妻は自分の食べ終わった皿をシンクに下げに言った。
妻の後ろ姿はほっそりとしていて、何年もまったく変わらなかった。それでもこれからもし出産でもしたらぶくぶくと太ってくるのだろうか。僕も年を取ると職場の上司みたいにだらしなく太ってしまうのだろうか。そんなことをちらと思った。
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