ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

幽霊

2012-02-26 12:33:04 | Weblog
いいことばかりが思い出せればいいのだけれど、
幽霊みたいに追いかけてくる思い出は、あまり思い出したくないもの。

そんなことを考えていた昨晩、
寝る間際にマルクスとエンゲルスによる『共産党宣言』などを読んでしまったので、
やさしい眠りから遠ざかってしまった。
しかも冒頭から「幽霊」についての記載。

そうだなあ。幽霊になるのは過去であって、未来じゃない。
今と将来を恐れ、自分が不当な扱いを受けていると思う時、
社会主義は素敵に見えるんだと思う。
でも、その同じ人が、自分が何かを持っていると思っているときは、
きっと資本主義のほうがいいんだろうと思う。

当然の権利というヤツを声高に言い出す時、
果たして相手を、ある特定の人たちを憎まずに主張することなんて、できるものなのだろうか。
個人攻撃にならず、仕組みを変えるようなフェアな会話ができるものだろうか。
そう考えると、明治維新はすごいな。

共産党による社会主義は、プロレタリアとブルジョアという二項対立が軸だったから、
つねに自分の死をひきのばすために敵を生み出し、
革命を生み出し続けなければならない、という自家中毒みたいなことになっている。
中国では、毎日のニュースで、共産党幹部の2代目たちの目に余る悪行が報道されているし、
そのいっぽうでウイグルやチベットでの「革命」が続けられている。

居心地がいい場所があると、人はそれを守ろうとする。
未来もずっと続くように願う。
幽霊が出て来ないように対処する。
現実がイヤな人はそれから逃れようとする。
でも、居心地がいい人も悪い人も、やっぱり過去の幽霊に追いかけられている。
「敵」っていうやつを設定した段階で、そうなってしまうんだと思う。

『共産党宣言』を読んで、一番イヤだったのは、
まるで現実を憎むように押し付けられているように感じたから。
ブルジョアの専横が鼻につくのはわかる。
私だって会社のオーナーのやり方に腹を立てることはある。

でも、じゃあ、ブルジョアって何?
お金持ちでも不幸な人がたくさんいることは、もうわかっているんだし、
それでは、ブルジョアが既得権を守るために行ってきたことの鏡に過ぎないんじゃない?
だって、幽霊は必ず追いかけてくるじゃない。
こちらは忘れた気になっていても、幽霊は忘れてくれないから。
死んでからも、幽霊は追いかけてきて、
そして、いま生きている者の思い出をむしばむ。
誰にも平等に幽霊は出てくるじゃない。

寛容であったら革命ではないのだろう。
でも、不寛容であったら、相互依存している人間の社会に、
また幽霊を増やすだけなんじゃないだろうか。

ダライ・ラマの言葉を読んだ後に、『共産党宣言』を読むと、
ますます仏教哲学が、非常に論理的に思えてきた。
だって、ぜんぜんヒステリックじゃないし、神秘主義じゃないし、
単なる理想主義でもないもの。
日本でいうところの「仏教」とは、かけ離れた仏教であることが、
日本人としては残念だけど。