ROSE POSYのハンドクラフト・ブログ

”手仕事”の楽しさをお伝えできればと思います。ROSE POSYオリジナル作品もどうぞお楽しみ下さい。

テクスチャー入りシンプルリング

2008年01月12日 | ジュエリー作品&試作品

今日は、わたしを悩ませる『巣』のおはなしです。

ワックス原型を地金にキャスト(鋳造)すると、時々、””という小さな穴が地金の表面にあいていることがあります。豆腐を煮すぎて小さいあなぼこができることを”巣が立つ”と言いますがあの巣と同じ意味です。針の穴のように小さいものから、ゴマ粒大の目立つものまでいろいろです。巣が出来たり出来なかったりは、いろいろな原因があるのでしょうが、原型制作サイドのミスとしては、地金の厚みにムラがあったり、ワックスの中に不純物が混じったりすると出来やすいようです。

キャストを発注して地金になったジュエリーが戻ってきたものを点検するときはいつもドキドキです。特に一点物として鋳造した作品は、やりなおしがきかないので、キャストあがりを見る時は緊張します。1つも巣がなくきれいに上がっていると、思わず、心の中で『よしっ!』とガッツポーツしてしまいます。
 
巣が出来ないようにするのはもちろんキャスト屋さんの技術と腕にもかかわってきます。最近は機械も性能が良くなったせいか、前ほどひどい巣は出来なくなったようですが、うまいキャスト屋さんでもたまーに巣が出来てしまうことがあります。
 
苦労して彫ったワックスが地金になった喜びも束の間、巣を発見した途端、一気に萎えます。楽しい仕上げの前に、憂鬱な仕事が増えるからです。小さな巣の場合は、磨きヘラで潰したり、表面を皮1枚削ってしまうなどでリカバリできますが、大きく目立つ巣や、地金の奥深くまで穴が貫ぬいているものは修復に苦労します。あまり大きい場合はあえて穴を広げてそれを埋めるための地金を別に用意して、穴の大きさに”すり合わせ”し、ロウづけして磨きなおすといったこともするのですが、その作業自体大変だし、シルバーの場合はロウづけしたロウ目が時間と共に目立ってくることがあるのであまりやりたくありません。 (巣穴のいい処理方法をご存知な方がいらっしゃいましたらぜひご教授ください!)

さて、写真のリングは特に目的があって作ったわけではなく、木目状にテクスチャをつける実験作として作り、そのテクスチャが地金になるとどんな感じになるか見てみたかったので地金に鋳造しました。しかしキャストから上がってみると目立つ部分に巣が!!穴は小さいので何とか修復できそうだと、地金を少し削ってみると穴がさらに大きくなってしまったので、たぶん深くて、しかも奥で範囲が拡がっているようです。

しばらく思案した結果、”リペア”はあきらめ、”リフォーム”することにしました。巣の部分をドリルで穴を開けて、リューターポイントで拡げ、キュービックジルコニアのメレを留めつけてみました。1個じゃなんか変なので2個配置しました。そしたら、あたかも最初からそういうデザインだったかのような、なんとなく良い感じになりました。

 

”巣入り”ジュエリーが、思わぬ怪我の功名で、”巣立ち”しました。

ジュエリー作りは毎回が冒険です。予想もしないいろんなトラブルに見舞われることがあります。キャストが完全に失敗したときはもう潔くあきらめもつきますが、一番痛い失敗は、うまく原型が出来てキャストも成功し、ピカピカに磨き上げて、さあ最後の石留めというときに石にひびをいれてしまったり、もっと悲しいのが石留めまで成功したのに最後の仕上げ研磨で不注意で石を傷つけて駄目にしてしまった時です。

大量制作している企業ならまだしも、個人で制作をやってる場合は失敗のコストロスはバカにならないので、作品の1つ1つが真剣勝負です。



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