ROSE POSYのハンドクラフト・ブログ

”手仕事”の楽しさをお伝えできればと思います。ROSE POSYオリジナル作品もどうぞお楽しみ下さい。

ネネのお兄さん: 天国にいった『ハル』 (2)

2007年11月04日 | ねこの話

ネネのお兄さん、『ハル』のお話のつづきです。 
あまりにも悲しい話でごめんなさい。思い出すのは私も辛いのですが、猫を飼っている方、これから飼う予定の方には是非読んで欲しいお話なのです。


オトウの出張についていきたい!

ハルの意識が戻らぬまま、夜が更けました。
翌朝、7時ごろ先生から電話がありました。
『どうか、ハルちゃんの意識が戻りましたと言ってください・・・。』
神様に祈る思いでした。

しかし、それは悲しい報告でした。

『ハルちゃんは先ほど息を引き取りました。』

先生は徹夜でハルを看ていてくださったようです。

結局、原因はわからないままでした。
先生は、『麻酔処置も手術も万全な体制で、看護婦と私の両方がついて、心拍数・脈拍などをチェックしながら慎重に進めたので、どう考えても何が原因か見当がつかないのです。』、とおっしゃいましたが、私はもやもやと疑惑の念を抱いていました。

先生は、『ハルちゃんには手術に耐えられないような重大な病気があったのかもしれません。もし、手術前に精密検査をしていたらこんなことになっていなかったかもしれません。大変申し訳なかったと思います。大変お気の毒なことでしたので、せめてハルちゃんの葬儀を出させてください。もし、ご納得がいかないようでしたら、病院としては精一杯できる限りのことをさせていただきますので、飼い主様のご要望をおっしゃってください。』、と提案されました。(つまり、賠償金、慰謝料を示唆されているのだと理解しました。)

 
寝るときはいつも大好きなネネと一緒。

病院では、前から判っている持病があったり、直前に実施する健康診断で異常がない限りは、避妊・去勢手術前に精密検査を行うことはないそうです。精密検査とは、人間でいえば人間ドックに相当する細かい検査です。『今となっては言い訳になってしまうかもしれませんが・・・、』と先生も決まり悪そうでした。

そこで私は、先生に、解剖をすれば何か手がかりがあるかもしれないのでどうか調べてくださいとお願いしました。先生はとても驚かれた様子でしたが『このままでは私も納得がいかないので、そういっていただけると大変ありがたいです』、とのことで、解剖を快く承諾していただき、ハルの亡骸を預けました。

数時間後、先生から、ハルに重度の心筋症があったとのご連絡をいただきました。心筋症とは、心臓の壁が分厚くなって、酸素を送り出す心室が極端に狭くなっており、正常な心臓に比べて機能が低下する病気です。この心筋症が原因で手術の負担にハルの心臓が耐えられなかったのだろう、ということがわかりました。

ハルは直前まで元気に駆け回って、ネネとふざけあっていたのでにわかに信じがたいことでしたが、先生の説明には説得力があり、その真剣な目を見て私は先生は嘘偽りを言っていないと確信しました。

もし、事前に超音波検査などをしていれば、病気がわかったかもしれない、とのことでしたが、精密検査自体、小さい動物には大変負担がかかるものなので、手術前の健康チェックで問題ない子に行うことはなかったそうです。

たとえ病院から事前に検査を提案されていたとしても、私も『ぜひやってください』と言っていたかどうかわかりません。これまでの手術が確率として100%検査なしでも大丈夫だったといわれたら、高い検査料を払って、しかも猫に辛い思いをさせてまで検査をお願いしていなかったかもしれません。

しかし、先生は、『今は去勢・避妊手術が安全なものになり、トラブルが発生するケースはほとんどないといっていいくらいなので、去勢・避妊の前に精密検査をしないことが日本の獣医界全体の長年の慣習になってしまっています。しかし、これを機会に考え直さなければならないでしょう。ハルちゃんのケースを学会で他の先生達にも紹介して獣医界に注意を喚起していくつもりです。』とおっしゃいました。

先生の専門分野は心臓・循環器系であり、ある大学でも治療・手術を行っているとのことでした。ハルの小さな心臓は、大学の若い獣医さんの勉強のために保存されることになりました。これからも動物医療の進歩のために役に立てていただけるでしょう。


手術前の日の夜、私の股座でくつろぐハル。
これが最後の写真となってしまいました。

ハルは、医院の取り計らいで立派な棺に納められ、自宅に戻りました。棺の中に、ちいさい花束が添えられていました。その花はどこかで見たことがあると思ったら、ふと、病院の周りに植えられていた花だということに気づき、胸が熱くなりました。ハルは、近くの動物霊園を併設するお寺で人と同様に丁重に弔われて火葬され、遺灰はペットの合同墓地に埋葬されました。

そして、先生は『このようなことがあっては、もうここには二度と来たくない思うのが当然でしょう。でも、もし許していただけるなら、この先もずっと、ネネちゃんやトモちゃんの健康を私が責任をもって守らさせていただきたいのです。』とおっしゃいました。先生の誠意と真摯な気持ちがひしひしと伝わりました。これからもこの先生にネネたちのホームドクターになっていただきたいと思いました。

 
 
TVが大好きだったハル。

心筋症を患っている子は予後が悪く、一生治療と投薬が続き、それでも長く生きられるケースがあまりないことをネットで知りました。

ハルとの生活は、たった3ヶ月間だったけど、本当に楽しい思い出をたくさん残してくれました。心から、ありがとう。。。。。


お兄ちゃん大好き♪


バンニャイ・コンビ(ハルとトモ)


そして2007年10月。ハルの死から1年後・・・・。

ようやく、ネネのもうひとりの兄弟『トモ』を去勢手術をする決心がつき、再び同じ病院を訪れました。

そこには、最新の超音波装置が導入されていました。超音波装置は以前もありましたが、新しい機械はさらに高性能なものなのでしょう。その機械が先生の決意のすべてを物語っているように思えました。

トモはもちろん、術前の検査をしてもらいました。
血液検査の結果、肝機能値が異常を示していました。安全のために手術は延期され、現在、肝臓の治療中です。

動物は、元気そうに見えても隠れた病気を患っているかもしれません。また、なんとなく調子が悪くても言葉で訴えることができませんから、人が気づいたときはすでに手遅れのことが多いのです。
でも、人間同様に、定期的な検査、早期発見で助かる命もあります。
たいせつなペットに健康に長生きしてもらうためも、定期的に健康診断を行ってもらうことをお薦めしたいです。