青龍神界鏡

次はまた首相してみんかお前。
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二十面目   ムー文明の抱擁の相手は

2012年08月13日 20時00分00秒 | 投稿

励起機器の音波を受けた巨石が時速数十キロで走り出す原因は、巨石の後部に渦しまる音波が発生させる反重力作用と呼べる物理現象にあります。
対象物の空中浮遊と前方走行現象を起こす音波を発する石板を石に向け呪文を唱えます。
するとまず、石板から発された音波による重力遮断現象により石が空中に浮きます。
次に、空中浮遊を起こす音波とは別の音波が石の周囲を包みます。
それが石の周囲で超高速の周回を始め、ある周回数以上を数えるとその音波の特徴により、石の後部で音波の渦を描き出します。
すると石内部にある複数種の音波の渦しまりとの相互影響により、石の後部に“反射的重力”が掛かっていると、石が勘違いするようになります。
これはその勘違いが常時起きていると、石が変形を起こさないように石外部のより優先される石内部の音波の安定が成る状態です。
石を浮遊させる音波と、反射的重力を発生させる音波は相互干渉しません。
以上のような機序が働き、浮いた石による高速移動現象が起きます。
類似の機序を起動させる操作で対象物の右折、左折、更なる浮遊上昇も可能でした。
浮遊上昇については、石の上底に掛かっている重力の軽減程度より、下底に於ける軽減程度を上回らせる事で実現し、また人間が乗る石舟は破砕音波を励起機器が照射して調達していました。
破砕音波を放つ杖を空中浮遊中の石に向け呪文を唱えると異星人が初期設定で定めた形象に石が変化します。
その際は不要な個所は空中で“パーン”という破裂音と共に極めて微細な粉塵となっていきます。
石内部の音紋(複数種の音波の響鳴)と石外部から受ける音波の共鳴断裂現象を起こす力が、鉱物分子の結合力を求めて平衛化する境目がモアイ形象を描くように励起機器の音波で原石に干渉した結果です。
空中に浮いた巨石からモアイ像が現れる際、“スサー”という音と共に粉煙の涙を流す光景が霊視出来ます。
彫刻の造形は地上でも可能でしたが、石の底部に音波を周回させると石内部の音紋の安定度が増し、石の形象寿命がほぼ半永久になる為、空中で行うよう異星人から指示があったようです。
ところで重量物の運搬、人的交流、経済活動の促進等、励起機器が齎す便益は莫大であり、それをムー人は決して社会学的に斟酌出来なくなっていました。
便益への耽溺がその機会を消去し続けていたのです。
原動機付自転車形象のL字状の巨石に乗った人間は四角の石板を両手に持ち、初速の伸びも終速の変化もさほどなく、無音の高速移動を森で楽しみます。
使用が終ると、“石の空中原付(げんつき)”はゆっくりと地面に沈んで行き最後はドスンと底部を着地させます。
崖の向こうの空中で漆黒の谷底を眺める老人が徐々に降下しつつ、絶壁の珍しい紋様と植生を鑑賞する。
上空数十メートルでの直行継続飛行を設定した中年が、石舟の上で入道雲と大海原に抱かれた昼寝を貪り、アホウドリの鳴き声で揚々と目を覚ましてあくびをする。
中年は悠々とした振る舞いで潮風に微笑しつつ、元来た航路に石舟の舵を向ける。
時には無限に広がる真っ青な太平洋と、熱帯気候帯の激しい大雨の打ち付けが、更に熱く激しい男女の抱擁を石の舟に浴びさせる。
木材限定軟化音波を発生させる滑り台形象の石が巨木を軟化して倒し、石舟がそれを運搬して行く。
馬と羊の間の子のような形象の、黄土色の動物を石舟で追い立て、鋭利な石の槍で狩る。
ムー大陸の村の酋長一族の生活はこのようなものでした。
ところでムー人はゲァフシュハアフゥ星人が予測していた以上に励起機器を犯罪や攻撃的政策に用い出し、要人の暗殺、強盗、女性や幼児の誘拐、強姦、人身売買、他の村の偵察などの頻度が不自然な増加を示すようになりました。
ムー人は降臨してくる高身長の凶暴人種は石舟で撥ね殺し、石板をちらつかせた脅迫により他の村を侵略しては、増大する村内総生産を背景に軍事力を更に増強します。
励起機器を奪う際は呪文を詠唱出来る酋長はもちろん生け捕りです。
貨幣経済はムー文明後期を除き、存在しているとは言えませんでしたが、交換経済が機能していました。
その機能には資本の洗浄力は当然無く、山賊紛いの生業で身を立てる成金の経済活動の日常を支えていました。
監視していたゲァフシュハアフゥ星人は一方、怒りを蓄積させていきました。
励起機器を使用した悪事の頻度が多く、倫理観の成長度がゲァフシュハアフゥ星人の期待を満たしていないと評価したからです。
励起機器の存在を知る事になったムー大陸の村々の殆どの周辺ではムー人の言う“背の高いとても凶悪な乱暴者”が増える事になりましたが、憂き目に遭う共同体の下層者を軽視する政策が打ち出されるようになっていました。
ところで、励起機器の使用頻度と目的は全てゲァフシュハアフゥ星人に筒抜けでした。
全ての励起機器群の所在地と共にその使用目的は、石への荷重、石が浴びる声紋音波、周辺機器との使用履歴の組み合わせ、登録されている呪文詠唱者の顔とその体重遷移管理記録などとの複雑な照合により、ゲァフシュハアフゥ星人の宇宙船内の管理端末画面で筒抜けだったのです。
悪事に励起機器が用いられると、画面に状況出現を意味する表示が表れます。
“禍々しく邪悪な許されざる暴虐が猿の星の猿大陸で猿し出したんだよ。
どうするのだ。
お前は猿のように振る舞うのか。
それとも人間たるのか。”
ゲァフシュハアフゥ星人にとって、現状に甘んじ続けることは最も侮蔑すべき事でした。
“猿の場所”で“猿”をし出すという事は、何もかもが予測可能な場所で、分かり切っているお馴染みの事象が起きたという意味です。
劣等人種とは異なる自分達が優等人種として、これから現状について仕事をしていくべきという事も、分かり切っています。
“あなた達にとってはこれまでの事も、これからの事も何もかも分かり切っているだろう”という星籍意識を刺激する画面表示なのでした。
であるからして、ゲァフシュハアフゥ星人にとってはうんざりせずに、今から現状を変える努力を発揮すべきなのだ、という自己訓示と解釈されるのです。
しかし状況の困窮と広大な大陸への介入疲弊、事業に参画している民間企業への投資の冷え込みへの恐れといった難題項目を一覧せねばならないゲァフシュハアフゥ星人は淡々とした態度で高身長の凶暴人種を大陸に放逐するのみです。
膠着(こうちゃく)状況への有効な打開策が無い時期が続きました。
ムー人も淡々と励起機器で凶暴人種を殺害するだけです。
ところでゲァフシュハアフゥ星人の怒りを最も買った点は、ムー人が他の村の励起機器を奪い、多くを組み合わせて、励起機器の出自を調べ出した事でした。
盗聴される有力な村の議会上層部全員の声紋音波によると“卸元(おろしもと)を抑え、全てを奪おう”という算段のようでした。
時代と共に、ムー人は励起機器の扱いも粗雑になりました。
機器を政治家が投げ渡したり、放置し出したのです。
この点も重く見られました。
ゲァフシュハアフゥ星人は社会学理論でこのように導きました。
“多大な便益を齎す励起機器のこのような扱いの意味するところは、励起機器はもはや倫理を育てる事なく、退廃させていく可能性を残すのみとなったと断定して良い。
ムー大陸にはほぼ全ての励起機器群を手中に収めた独占者がいずれ現れ、他は隷属を強いられる。
頂点に君臨するのは血族だ。
頂点者は倫理や教育の発展機会を軽視しつつ、恒久的支配の確立の為の軍事行軍を称揚していく。
大陸全土に主権が及んだ彼らは、降臨してくる他星人と必ず技術移転契約を締結する。
倫理監視機構不在の政府は、提案される民生犠牲的契約に乗り気となる。
異星人の科学技術で勢いに乗ったムー帝国体制は、ついに他大陸への侵略を開始する。”
ゲァフシュハアフゥ星人は南米地域に於ける他星籍人種の介入活動を宇宙空間での電波探知で察知していました。
“ムー帝国体制と、他星人を後見人とする他大陸国家の衝突後、ゲァフシュハアフゥ星人はいずれ必ず当該異星人による何らかの倫理的問責を経験するに至り、その回答の際は困難が予想される。
ゲァフシュハアフゥ本星の宇宙政策を所掌する倫理機構は異星人による合法的な監視を超々期間受忍する事になるであろう。”
導いた警告に従い、ゲァフシュハアフゥ星人は励起機器群の全ての回収を決断しました。
ムー大陸全土に点在する約百の村々に貸与していた、総数八百から九百に上る励起機器を一括徴収する決定を下したのです。
方法は石の“自動回帰機能”を作動させ、地球の彼らの斥候(せっこう)基地に全てを空中浮遊で回帰させる事でした。
祭壇や棚の上に鎮座していた石は、夜にやおらいきなり舞い上がり、天井や壁に穴を開け、時には人をなぎ倒し、上空百メートルを滑空して飛んで行きます。
盗聴される音波群はムー人のその時の驚天動地ぶりを伝えました。
(洞窟の壁など障害物に引っ掛かった石は、障害物の判定を得るまでしばらく空中で壁に当たったままとなり、その後地に落ちると振動現象を起こします。
これで石内部の音紋が完全に乱雑化し、機能を喪失したようです。)
ところで、ムー人が励起機器で立てた石の宮殿や柱、家屋、集会堂、大衆劇場、娯楽処刑場などは回収出来ませんでした。
回帰機能が無かったのです。
処置はそれぞれで、上空からの音波兵器による破壊、または放置でした。
回収不可能で、且つ他の異星人の発見をゲァフシュハアフゥ星人が特に恐れたのは、励起機器以外の付随的譲渡機器、放つ光で催眠状態に至らせる創成鉱物の杖でした。
この何百本もの光の杖については、技術的な面から回収の見込みは始めから無く、ムー人の蛮性の一時的陶冶(とうや)手段として選ばれ、仕方無く与えた物でした。
この杖の譲渡の背景にはムー政策を担当するゲァフシュハアフゥ星の国々の政治基盤の周期的動態が存在しており、その動態の理由とは退職後の天下り先の機嫌を伺う政治手腕を公務員に許容するに至った、民間企業の総合受注業者への定常的投資資金の流入を目的とした、公務員による定期的公共事業誘致への口利き裁量の行使結果でした。
官産複合体の結託に片足を依存せざるを得ないまま宇宙政策に走り出したゲァフシュハアフゥ星の意思形成過程にはしかし、本物の義侠心が混ざっていました。
彼ら以下の倫理観と彼ら以上の大勢の“科学的狼藉者”の地球への飛来可能性が確実に低められたのは紛れも無くゲァフシュハアフゥ星人の星徳(ほしとく)が故でした。
(この説明については稿を譲ります。)
その他問題だったのは、ゲァフシュハアフゥ星人が与えた作物でした。
これはムー大陸の属する気候帯なら、“恒久的に枯れない”もので、農耕の手間が一切不要且つ、年中の大量収穫が可能な作物であり、円形のこぎり耕作機能を備えた石舟で一度畑を耕せば、無労働の収穫が年中見込めたものでした。
ところでムー人の倫理教育は歴史的に未萌芽のままでした。
そして、未成熟な倫理観と、莫大な人口維持を起こす緑色で大き目の芋味檸檬(れもん)があれば、原始的軍事力ながらも帝国主義的国家体制への遷移は不可避であり、発生が予測される他の異星人教導の他地域との軍事的接触後に露見するであろう杖と檸檬芋の存在によりゲァフシュハアフゥ星人は倫理的問責を受けると予測しました。
この分析角度からもゲァフシュハアフゥ星人にとってムー大陸は対外的な倫理的不良債権どころではなく、もはや明白な脅威因子であったのです。
大陸全土に繁茂している広大な檸檬芋畑への絨毯(じゅうたん)爆撃処理も同様に、異星人による倫理的問責の可能性を大いに残す事になります。
何よりゲァフシュハアフゥ星人には以降のムー大陸全土の面倒を見ていく星力は無かったのでした。
こうして励起機器の回収の後に、ムー政策を所掌していたゲァフシュハアフゥ星のある国々の対異星政策を担う部署の官僚達により既に策定されていた“第八百五十一番目数珠連鎖抱擁形式公転惑星群内の水と命豊かな惑星に於ける星際間社会調査に付随発生した倫理育成不良評価済み地域に対する概括的処理計画”が正式に提唱されたのでした。

力と倫理の共鳴断裂現象

四千九百十六青字

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