スノーマン見聞録

ジャンルも内容も気の向くまま~“素浪人”スノーマンの見聞録

昔 男ありけり

2014年05月15日 | 雑感
入江杏子著 『檀一雄の光と影』を読んでみた。
 
杏子の本名は久恵。 舞台女優。 愛人だった人が檀の死後23年経って書いた本である。

         

 ≪ モガリ笛 いく夜もがらせ 花ニ逢はん ≫ 

壇一雄・昭和50年亡くなる5日前に書きとめた絶筆の句である。
(モガリ笛とは冬の烈風が吹きつけるヒューヒューと笛のような音を発する)

三年前の当ブログ 読書三昧(1)『檀一雄』クリック でも、この花は誰? モガリ笛は病室に吹き付ける音? 
くらいにしか思っていなかったのですが、この本を読んでそのモヤモヤが晴れた気がした。

 『一度この手で彼を抱き得たら、その場で死んでもかまわない』
 『彼とのことは、起こるべくして起こった不可抗力の嵐だったと思っている』 
 『清冽玉を洗うような美しさと、血みどろの求道心は、彼の中を最後まで流れ続けていたように思います』
                                                          と語っている。
生前檀さんは久恵さんのことを<ヒューさん>と呼んでいたようです。                           
エピローグでこう語っていた。
 『モガリ笛のヒューヒューという音は、
  死の間際に、『火宅の人』の桂一雄が矢島恵子に呼びかけたのではないかと思えた』、、と。


出会いから別れ。 妻ある人を愛した苦悩。 檀一雄死の二カ月前での病床見舞い。 そして死。  
日常の通念の破壊に挑んだ二人の清らかな、それでいて哀切きわまりない深い愛は驚愕の一語でした。

 昔 男ありけり。 いたんですねえ  こんな男が。
 そして、 いたんですねえ  こんな一途な  素敵な  女性が。

≪作品のみならず、檀一雄の実像について下記も参考に≫

       
   檀 ふみ著『父の縁側 私の書斎』        沢木耕太郎著『 檀 』
    (檀ふみは妻ヨソ子さんの子)       (妻ヨソ子さんに一年間密着取材で書かれた本)


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