昨年の12月に秋田へ出張。シンポジウムへの登壇がメインの用務だったんだけど,それならということで年休を取り,いくつか教室を訪問。一つ目は横手市。
市の生涯学習関係の部署がバックアップし,指導者4人,そのサポーター役としてのボランティア5人とで構成。大学や日本語学校とかで教えていたり,いわゆる「プロの日本語教師」ではないんだけど,見事。「みんなの日本語」を使っているんだけど,それは軸として置いてはいるが,そこからどう脱線し,日常生活に会話を展開させて,日常生活での日本語のニーズを引き出し,広げていくかということが,展開されている。上手な人がいるってことではなく,グループ全体としてとても上手で,何より来ている外国人の表情がとてもいきいきしている。「こんなにレベルの高い活動を…」と驚きました。
活動後に話を聞くと,研修をどういう形で行うか,運営をどういう形で行うか,相当な話の積み重ねがあるということ。また,それが実践に結び付いているところもすごい。また,話の中で見えてきた課題をどう実践に活かすかということもずいぶんと工夫をされている。大学の先生やらの講師を呼んで話を聞いても,自分たちの力が伸びるかどうか実感できず,研修会はそれぞれが自分の実践を振り返り,そこで課題と感じていることを調べて発表し,ディスカッションする形を取っているとのこと。本当にレベルが高いし,練られているなと思ったんだけど,それはディスカッションの積み上げの成果としてそうなっているということを知り,またびっくり。
ここまで練り上げたのか…。
市から謝金はもらっているということなんだけど,逆にそこを払うことの重要性も感じました。だって,力のある人は絶対にたくさんいるだろうし,その人たちを活かさない手はないと。あと,市の多文化共生に関する事業にもいろいろと協力していたり,また,市の子育て関連の部署と一緒に取組を進めていたりと,本当にただただ,すごいなと。それをふつうのこととしてやられているのも,またすごいなと。
その後,横手焼きそばを食べ,地元の卵で作ってプリンを食べ,本荘へ移動。内陸から日本海へ。バスで揺られること2時間ちょっと。散在地域で日本語教室に通うことがいかに大変なことかということを実感。
本荘は市の複合施設を活用して教室がとにかく充実。初級から中級,漢字から6つか7つも展開。これもなかなかできることではないと思う。それだけ人が集まるということもなかなかないことだと思うし。建物もとてもきれいで,地元の高校生がたむろしていたんだけど,その子らが絡んできたら,もっと楽しくなってくるのかななんてことを勝手に想像。
でも,ここまで厚い実践,本当に頭が下がります。
翌日はシンポジウムに参加し,次の日,大仙市・仙北市・美郷町の2市1町で運営している教室へ。複数の自治体が協同で運営している教室というのは,私はほかに知りません(ただの勉強不足ですが…)。それぞれ市の公民館などを活用して実践。それぞれの教室で実際に教えているボランティアは違うんだけど,中心となって活動しているコーディネーターは同じ人で,その人がそれぞれの地域に合わせたリソースを用意。
地元では特に日本語が勉強できる期間はすぐに限られている,最初はしっかりと日本語を勉強するが,すぐに働きに行ってしまってなかなか日本語が伸びないということがある。また,中学校段階や学齢超過で来日する子は,最初のうちに詰め込みだと言われても徹底して教え込まないと,高校に行けないし,高校に行けなかった子は田舎に仕事はないので東京へ行き,でも,東京では日本語ができなくても仕事もあるんだけど,それは本当にステップアップできるようなものではなく,いつまでたっても不安定な状況に置かれている子たちが出てきている。だから,最初の段階でしっかりと,詰め込みだと言われてもやらないと,その子たちの将来がないんです…と。
みんなの日本語を使って誰でも教えられるようにということで絵カードから問題から,展開から整理されており,それを使って使ってやるんだけど,そこまで丁寧に用意され,作り込まれているものがあれば,できるよなぁと実感。
地元のことを知っている,地元の外国人の動向を知っている,また活動できる人のことも把握していて,その上で最も適切,効果的な教室運営のスタイルや教え方を選択する,そういうことができる人がいるのは本当に大きいなということを感じました。日本語教育の専門家,プロだからと言って,できるようなことではないし。
地域の外国人の状況を適切に分析し,それに合った事業を展開できるかどうかというところが本当に大事なんだろうと思いました。
どれもそのスタートの時点で県全域を対象としていた秋田にほんごの会とかサンパギータ(…だったかな)という自助組織だとか,秋田県が精力的に動いていた歴史があり,それが母体となって今も続いているとのこと。
知らなかっただけで,秋田で取り組まれていることは,本当に派手さはないかもしれないけど,着実でとてもいい活動だな,こんな足腰がしっかりしている活動を展開しているのか…と驚きました。
東京で仕事をしていて、他の地域はそれなりに周り、いろいろ知ったつもりになっていたけど、知らないって怖いなと反省もしました。