
マンションの一室をシェアして、2家族が暮らす団結アパート(だったっけ?)が舞台だ。2LDKの部屋に老婦人と、若いカップルが同居生活する。彼らはもちろん他人同士である。夫婦はなんとかして、老婦人をここから追い出したい。
中国の現代女流作家、沈虹光による台本を劇団息吹が舞台化する。作品自体は94年のものなのだが、今の中国の現実がとてもよく出ている。高齢化と住宅難。都心部の大きな弊害だ。設定自体は特別なことは何もない。だが、ここには現代の中国が抱える問題が浮き彫りにされる。
キャストは5人。この部屋で暮らす3人と、外からやってくる2人。彼らがこの家の3人に波風を立てる。しかし、それによって、ぎくしゃくした3人が心を通い合わせるようになる。描くべきことを、ちゃんと見せてくれるから、見終えていい気分にさせられる。
メーンキャストのうち3人までもが、ダブルキャストとなっているから、きっと両ヴァージョンではかなり違う印象を与えるのではないか。出来ることなら、どちらも見たかった。僕が見たのは、Aヴァージョン。大坊晴彦さんが高船長を演じる。彼はこの芝居のキーマンである。大坊さんはなんだか胡散臭い印象を与えるキャラとして、この役を演じる。こいつはもしかしたら、食わせ物ではないか、と思わせるところから、ちょっとした緊張感が生まれる。Bヴァージョンは岩崎徹さんなので、きっともっとおおらかで安心できるキャラだったのではないか。ほんのちょっとした違いが、作品全体のイメージさえ変えてしまいそうだ。それくらいにこの作品は微妙なのである。そこが魅力でもある。坂手日登美さんの演出の腕の見せ所だ。これはほんの微妙な匙加減で、ありきたりなものにすらなる。とても丁寧な仕事をされている。
もともとは他人でしかない2家族が、偶然から共に生活していくことを通して、反発しあいながらも、気がつくとひとつになっていく。彼らが高船長と出会い、彼の優しさに触れていくうちに、あんなにも頑なだった方先生が心を開いていくようになる。同時に彼女を追い出そうとしていた若い夫婦も、方先生を受け入れていくようになる。これはよくあるハートウォーミングなのかもしれないが、彼らの関わりを通して、中国人だけでなく、日本人である我々も含めて、誰もが求めている人と人との絆が見えてくる。他人同士が心を交わす、そのつながりがこの世界を変えていく。舞台は武漢。長江を見下ろすとあるマンションの一室でのほんの小さなお話がみんなの心を優しくする。
中国の現代女流作家、沈虹光による台本を劇団息吹が舞台化する。作品自体は94年のものなのだが、今の中国の現実がとてもよく出ている。高齢化と住宅難。都心部の大きな弊害だ。設定自体は特別なことは何もない。だが、ここには現代の中国が抱える問題が浮き彫りにされる。
キャストは5人。この部屋で暮らす3人と、外からやってくる2人。彼らがこの家の3人に波風を立てる。しかし、それによって、ぎくしゃくした3人が心を通い合わせるようになる。描くべきことを、ちゃんと見せてくれるから、見終えていい気分にさせられる。
メーンキャストのうち3人までもが、ダブルキャストとなっているから、きっと両ヴァージョンではかなり違う印象を与えるのではないか。出来ることなら、どちらも見たかった。僕が見たのは、Aヴァージョン。大坊晴彦さんが高船長を演じる。彼はこの芝居のキーマンである。大坊さんはなんだか胡散臭い印象を与えるキャラとして、この役を演じる。こいつはもしかしたら、食わせ物ではないか、と思わせるところから、ちょっとした緊張感が生まれる。Bヴァージョンは岩崎徹さんなので、きっともっとおおらかで安心できるキャラだったのではないか。ほんのちょっとした違いが、作品全体のイメージさえ変えてしまいそうだ。それくらいにこの作品は微妙なのである。そこが魅力でもある。坂手日登美さんの演出の腕の見せ所だ。これはほんの微妙な匙加減で、ありきたりなものにすらなる。とても丁寧な仕事をされている。
もともとは他人でしかない2家族が、偶然から共に生活していくことを通して、反発しあいながらも、気がつくとひとつになっていく。彼らが高船長と出会い、彼の優しさに触れていくうちに、あんなにも頑なだった方先生が心を開いていくようになる。同時に彼女を追い出そうとしていた若い夫婦も、方先生を受け入れていくようになる。これはよくあるハートウォーミングなのかもしれないが、彼らの関わりを通して、中国人だけでなく、日本人である我々も含めて、誰もが求めている人と人との絆が見えてくる。他人同士が心を交わす、そのつながりがこの世界を変えていく。舞台は武漢。長江を見下ろすとあるマンションの一室でのほんの小さなお話がみんなの心を優しくする。