『東京ロンダリング』の続編なのだが、これは単純な続編ではない。まず、最初に前作の主人公がなかなか出てこない。お話は、「誰か」が、ではなく、そこで起きている「出来事」、それが前面に出る。これはロンダリングを巡る様々な人たちのお話なのだ。(お話の終盤になり、前作の彼女も登場するのだが)前作と違い「誰か」のお話というよりも「この世界の置かれた状況」を描くドラマとなる。
全体は短編連作のスタイルになっている。各話の主人公は別々の人物になっているけど、最終的にはお話は連鎖している。そして、終盤、満を持してヒロイン登場となるのだが、そこで、テンションは上がらない。(彼女は冷静で、静かな女だし)そして、最後のお話ですべてがつながるわけだが、そこでも、あまり後味はよくない。ぼんやりとした不安が残る。
でも、そんなことも含めて、この小説は面白い。死人の出た部屋で住む、ということが、何につながっていくのか。そこに至るには、いろんな状況がある。彼らのこれまでの人生と向き合い、ロンダリングを通して何が生じるかが描かれる。人がいきなり失踪するのはなぜか。昨日まで普通に暮らしていた人がいきなりいなくなる。その空白をそのまま受け入れる。そこから見えてくる東京で住むということの意味。たくさんの人たちがひしめき合うようにして暮らす東京で、少しくらい誰かが消えてしまっても、誰も気にしない、のではないか、という気分。それを恐怖として描くのではなく、ある事実として見せていく。すると、そこから今の時代の気分が浮かび上がる。これはそんな小説なのだ。