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映画・演劇のレビュー

『今日も嫌がらせ弁当』

2019-07-17 20:36:11 | 映画

 

八丈島を舞台にして、母と娘の3年間に及ぶ「お弁当バトル」を描く。こういう小さなお話だけで1本の映画が作られるってなんだか凄い。しかも、それは毎日毎日手を変え品を変えいろんなお弁当を考え作るというただそれだけの映画。そんなほとんどムダな努力と根性で映画は綴られていく。ただ東京なのに、とんでもなく田舎な八丈島を舞台にしたというロケーションのすばらしさゆえ普通じゃない映画となる。

さらには、そのお弁当が娘への「愛情弁当」ではなく、「嫌がらせ弁当」というのも、とんでもない。でも、そのお弁当の数々には圧倒されるし、その繰り返し(作る、食べる)が感動すら呼ぶ。だからこれはそんな毎日のお弁当を見せるだけで成立したなら、傑作となったかも知れない映画だったのだ。だが、どこかで作り手の自信のなさが覗く。それがこの映画を損なう。後半お話に逃げようとする。最初から最後までお弁当だけでいいじゃないか、と思う。

 

ただそこには、それだけでも単調にさせない緊張とそれを支えるドラマが必要だった。でも、それだけでいい。なのに、それだけでは映画は持たないとでも思ったのか、後半になるとお弁当から、ふつうのお話へとシフトチェンジする。それはつまらないし、そんなありきたりを、誰もここには望まないのに。惜しいな、と思う。ここに必要なドラマはその知恵と技術とアイデァを満載した弁当だけでいいのに。

 

もっともっと数々のお弁当を見せてもらいたかったのだ。この映画はその驚きだけで成り立っても問題はないはずなのだ。ドラマチックな展開なんか不要だ。ただ、それだけの覚悟をして作り手にはこの企画に挑んでもらいたかった。

 

 


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