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映画・演劇のレビュー

冨田倶楽部『例えばアジトでする話と言えばそう言えばこんな話』

2025-05-11 16:26:00 | 演劇
とうとうファイナルになった。10作目はもちろん升田祐次作品。毎月1本で1年に10作品。まさかの企画をやり遂げる。彼らはそんな凄いことに挑戦した。

僕は5本目から7ヶ月で6作品を観劇させて頂いた。3人の作家による作品を2作ずつ見たことになる。毎回同じ条件で10作品を作っていく。稽古は毎回10回のみ。上演時間は45分から50分に収める。(1時間近くになった作品もあったが)キャストは5人。(今回は4人になったけど)毎回3日間で6ステージ公演。それは縛りではなく、やり遂げるためのルールだ。この企画を無理せず、確実に成功させるための。照明を使わないし、音響も最小限に留めたのもそう。ただそれによって役者には負担がかかるけど、集まってくれた役者たちを信じる。

堀江祐未と升田祐次が声掛けをして集まったメンバーとの共同作業。毎回違うメンバーとのコラボによってついにやり遂げた。

最後だから今回はお祭り騒ぎのような作品になるのか、と思った。このタイトルである。ラストはノンフィクション風に、魅殺陣屋というアトリエを舞台にして、そこをアジトにした秘密結社(?)冨田倶楽部に集まったメンバーたちのお話か、なんて想像したが、違った。

コンビニのバックヤードが舞台になる。近くに出来た新しいコンビニに客を奪われて赤字続きの店。ここで働いている従業員たちは、なんとかしてこの店を守るため、ここでの営業が成り立つための作戦を練る。

標的は近所のコンビニ。そこに、まさかのコンビニ強盗に入って、その店の評判を落とすなんていうあり得ない計画を立てた。そしてそのリハーサルを繰り返している。お話はそこから始まる。さすがにこれはリアリティがないお話だ。コメディなら笑える。だけどそうではない。こんなこと無理。だけどそれを強引に成り立たせる。

今回の上演時間は45分。無理なお話を実行する。冗談ではなく、升田さん演じる男はラストで強盗に入って警察に捕まる。これはファンタジーではない。あくまでもリアルらしい。仲間たちは警察にいる彼に会いに行くところで終わる。

明るい話ではない。ラストも救いがない。敢えて今回升田さんはなぜこんな芝居を作ろうとしたのか。そのへんも気になって本人に聞こうか、とも思ったけどやめた。これはよくわからないところが面白いと思うからだ。

心地よい自分たちの夢の場所。だけどそこがずっとあるわけではない。いつかなくなる(かもしれない)。そんな不安と背中合わせで過ごす時間。ここを守るためには無謀な行為だって辞さない。そんな想いが背景にあるのだろうか。今回の無謀な挑戦はこの少し切ない作品で幕を閉じる。お疲れさまでした。

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