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映画・演劇のレビュー

鯨井あめ『アイアムマイヒーロー!』

2021-09-28 10:47:21 | その他

最初はなかなか入り込めなかった。前作『晴れ、時々くらげを呼ぶ』が好きだったので、この第2作に期待していたのだが、まるで乗れない。安易なタイムスリップものにしか見えなかったからだ。だから読んでいてもどかしかった。こんなはずじゃないだろ、と思いつつも話はなかなか進展しないし。

だけど、終盤になって、すべてが明らかになっていく過程で話にどんどん引き込まていくから、あきらめないで最後まで読もう。ラスト50ページほどは号泣だ。そういうことだったのか、と納得した。そこで改めてこの安直そうなタイトルの深い意味を知ることとなる。

未来は変えることができる。それは今の自分の力で、だ。こういうわかりやすいメッセージがこんなにも胸に沁みてくる。最後まで読んでよかった。(途中タルくて一度はやめようとしてけど)もどかしい過去の自分と出会い、昔(10歳の頃)はまるで付き合いのなかった少女とともに、どうしてこんなことになったのか、さらには今何が起こっているのかを見つめ、答えを探し出す数日間の旅。これは、GW中の小学生たちが不可解な動物虐待死事件と、不審の消息を追うミステリー的な物語。小さな町の小さなお話だ。だけど、ここで生まれ育ち、駄目な大人になったひとりの青年が自分を取り戻していくこのドラマには、胸がいっぱいにさせられる。決してただの小さいだけのお話ではない。


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