
こんなアニメ映画がある。膨大なアニメ映画やTVシリーズから一握りの作品を見る。ピックアップする基準はない。まず長いのは無理。この国にはあまりの数多くのアニメ作品が溢れているから目移りする以前の状態で、何がなんだか。
そんな数ある作品の中から今回、この坂本サク監督作品を選んだ。これは彼がほぼひとりで作り上げた映画らしい。2Dアニメのキャラクターが3Dアニメの空間に迷い込んで彷徨う。不安定なカメラワークが新鮮。
学校帰りの女子高生の3人が巨大団地の屋上から飛び降り自殺する少女を目撃したところから始まるホラー。3人は自殺した彼女のもとに向かい廃墟のような高層マンションに入る。カメラは目まぐるしく動き回り,落ち着かない。この中編作品にはストーリーはない。次から次へと起こる出来事を追いかけていくだけで、何が起きているのか、ここが何なのか、これは一体どういうことなのか、それすらわからないまま巻き込まれる。ただの悪夢である。そこには意味はない。ただ恐怖と畏れ、逃れられない現実だけ。だけどこれはすべて夢の中の出来事。
飛び降り自殺した彼女が見た夢か。地面に落ちるまでの時間の幻想。そう言ってしまえば、こんなわかりやすい話はない。だけどそれだけではない。いや、それさえも明確でなない。さらにはさまざまなイメージが交錯して描かれる。そのせいでいささか詰め込みすぎ。結果的に散漫な印象を与えるのは残念。ただ刺激的な映画であることは事実。