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映画・演劇のレビュー

『ハッピー・フライト』

2008-12-02 21:37:01 | 映画
 矢口史靖 監督の最新作はCAとパイロット、そして空港で働くたくさんの人たちを主人公にした群像劇。『ウォーター・ボーイズ』『スィング・ガールズ』に続く映画なのだが、前2作とはまるでタッチの違うコメディーに仕上がっている。こういう映画がちゃんとヒットしなくてはいけない!と思うのだが、劇場はガラガラで「大丈夫か、矢口!」状態だった。平日の6時の回だから、こんなものかもしれないが、なんだか寂しい。映画は意外な展開で、かなり驚く。

 コメディーと先に書いたが、それも微妙だ。これは航空パニック映画に分類したほうがいいかもしれない。要するに『エアポート’75』とか『大空港』とかそんなタイプの一種のパニック映画なのだ。こういう企画にANAが完全バックアップするって、偉い。これ、機内上映絶対に出来ないタイプの映画。

 タイトルも『踊る大空港』とか、そんな感じにしたほうがいい。だいたいあんまりハッピーな内容ではないから。だが、これだからこそハッピーフライトと言い切ってしまえれる。そこが凄いのだ。観客の裏をかいてでも、十分に満足させる、ってさすが矢口監督だ。だいたい、この映画って見た目以上に大変な映画なのは見たらわかるだろう。(なんだか、この言い方、おかしいなぁ)綿密な取材と、手間のかかる撮影(まぁ、簡単な撮影現場なんてないかぁ)で、作り上げた労作である。でも、そんな困難はおくびにも出さない。(当然!)涼しい顔して映画は展開していく。

 羽田発ホノルル行きのフライトを追って話は転がる。空港業務を支える様々な人たちの姿を描きながら、この便に途中で不具合が生じて、再び羽田に戻ってこなくてはならなくなる。だが、東京は台風の中で、無事に着陸できるのか、なんていうお話になるのである。それを笑わせながらでも、ちょっと感動的に描くのだ。これには驚いた。これ、ヒューマン映画なのである。笑って泣かせ(まぁ、泣きはしないが)感動させ、なんだか凄い。

 軽いタッチはいつものことだが、青春映画から離れて初めて本格的に大人の映画(一応、これは大人映画!)を撮った矢口監督の語り口は快調だ。淀みなくラストまで流れていく。比べるのはあれだが、三谷幸喜監督の『ザ・マジック・アワー』よりもこっちのほうがずっと上質のコメディーだと僕は思う。

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