
ビリー・ワイルダーの名作と言われている作品である。昔高校生くらいの時に大毎地下劇場の名画鑑賞会で見た記憶があるけど、どんな映画か忘れていた。昔見たときは面白いと思った気がするからもう一度見ることにした。ヒマだし。
ビックリした。まるでつまらない。こんな無茶な話を純粋だった高校生が見て何を感じたのか、わけがわからない。途中で止めようと思ったが、我慢して最後まで見た。というか、艶笑コメディが後半はちょっとしたラブストーリーになる。シリアスな展開をするけど、それに乗せられたのか、子どもだった当時の僕は。わからない。彼女の幸せを優先して自分は身を引こうとする展開から急転直下、貧しくても(仕事を失っても)愛があれば、なんて感じのラストに絆されたのかな、やはり。
だいたいこの世界は今見たらSF映画である。これはテリー・ギリアムの傑作『未来世紀ブラジル』を想起させるレトロな未来世界だ。1950年代後半アメリカの普通の世界が背景になっているのか? よくわからないけど、いろんなところがあまりに凄すぎてこれが現実世界の出来事だとは思えない。ビジュアルもお話も荒唐無稽なものだ。
あの保険会社の19階のフロア。だだっ広いオフィスにところ狭しと延々並ぶ机と椅子。凄まじい数の人たちがワンフロアに並び同じように働いている。エレベーターもいつも満員。人がひしめき合う。
それからお話の方もシュール。ジャック・レモンの部屋を借りて浮気の密会をする上役たち。何で彼の部屋なのか、わけがわからない。ホテルですればいいのに。そんなことの世話をするジャック・レモンがそれだけで出世していくのも解せない。その程度のことで重役になっているって何? いったいどんな会社なのか。お話がコメディだからわざと大袈裟に見せているわけではないみたいだ。なんかマジだし。
あり得ない。シャーリー・マクレーンのエレベーターガールの不倫相手の上司もなんでこんな男に惚れるのか、わからない。ジャック・レモンは最後近くまでそんな彼を受け入れて(出世のため)尻拭いする。
いきなりのハッピーエンドにもビックリ。あの急展開は映画を終わらせるための段取りか? やはり今の僕には不思議世界の映画だった。ホラーとは言わないけどやはりこれはSF映画だった。