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映画・演劇のレビュー

『パラサイト 半地下の家族』

2020-01-15 21:10:50 | 映画


圧倒的な面白さでグイグイ引っ張ってくれる。さすがポン・ジュノだ。ジェットコースターにでも乗せられた状態で、作品世界に一気に引き込まれていく。こんなバカバカしいことはありえないだろ、と思いつつも、乗せられる。貧富の差を、まず、半地下という空間で提示し、そこにあからさまな豪邸を対比させるところからお話を紡ぎ出す。笑いとスリル、意外性で文句のない作品か、と思わせる。

だが、途中から「これはちょっとやり過ぎではないか」と思わされることになる。留守宅で4人が好き放題して過ごすシーンからだ。綻びが生じる。もちろん、これは何かが起きる前兆だということはわかる。でも、それが解雇された家政婦の再登場から、地下室で暮らす男の登場へと至って、その怒濤の展開は、面白いというよりも、嫌な気分にしかならないのがつらい。ラストの惨劇に至っては後味の悪さしか残さない。オチにあたるエピローグも、である。上流階級の家族に下層家族が寄生して、そこに何が生じるのか。両者のかかわりから見えてくるもの。それをもっと明確にして欲しかった。だけどそこからは決裂するだけで、何も提示できない。

パルムドール受賞の、誰もが認める傑作に文句を付けるつもりは毛頭ないが、このあからさまな嫌悪感しか残らない映画を僕は全面的に受け入れることはできない。大雨で下町が浸水するシーンにしてもそうだ。いくらなんでもやり過ぎだ、と思う。貧富の対比はそこでより明らかになるのだが、そこまでする意味があるのか、という気もする。浸水騒ぎの翌日、何事もなかったかのように思いつきで大々的なホームパーティーを実施する。惨劇はそこで起きるのだが、僕は見ながら少しうんざりしていた。貧富の逆転劇ではなく、現実の壁を見せつける。過剰がエスカレートしてその先にあるのが、これだったのなら、このお話の意味はどこにあるのか。なんだか殺伐とするばかりでこれでは後味は悪いままだ。

 


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