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映画・演劇のレビュー

女性芸術劇場『雑草ワルツ』

2009-09-19 20:51:10 | 演劇
 虚空旅団の高橋恵さんの脚本を空晴の岡部尚子さんの演出で送る作品。「女性たちに捧げる現代演劇」だなんて、それだけでもけっこうなプレッシャーになったのではないか。多分にメッセージ色のきつい企画だが、それを高橋さんは枷とするのではなく、反対に創作の力にし、いつもの作品とは一味も二味も違うものとして提示した。それを岡部さんは気負うことなく自分のペースで、軽やかに演出する。2人のコンビネーションがうまく機能し、真面目で、誠実な作品に仕上がった。

 こういうパッケージングのもとに作られる作品なので、いい意味でも、そうでない意味でも女性問題が前面に出過ぎて、少し鼻につくところもある。だが、メッセージ色の強さが今まで以上のレンジの広さを可能にしたことも事実で、しかも岡部演出の効果もあり、それが小難しいものとしてではなく、明るくてわかりやすい芝居になったのもよかったのではないか。テーマが内向していくのではなく、外に広がっていく。みんなで話し合ったりして、結婚と仕事について考えるというのもいいなぁと思う。いつもの閉じた芝居ではなく、開かれた芝居になっているのが、この場合は効果的だ。

 政情不安なアジアの小国で、デモと言っているが、暴動によって空港が閉鎖され、ホテルに閉じ込められた日本人たちの心情を描くのだが、それがうっ屈していくのではなく、非日常的な空間とシチュエーションの中で、躁状態となり、ふだんなら話すこともない知らない人と、会話していく過程が自然に描かれる。ホテルのロビーというオープンスペースが、このある種特別な非日常の中で、別の顔を持ち始める。もともと非日常のパブリックスペースが、まるでだれかの家の居間のような空間と化していく。ビジネスマンの男女と、旅芸人のグループという本来ならなんの接点もない同士が、日本を遠く離れた場所で、出会い、自分たちの暮らしを見つめていくこととなる。

 そんな中からさまざまな問題が浮き彫りにされていく。結婚、仕事、それに付随してくるもの。それらが、この非日常の中で語られていく。ただし、もう少し話は広がってもよかった気もするが。

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