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映画・演劇のレビュー

りゃんめんにゅーろん『青空の窪みに、ゆびを』

2008-07-24 23:58:49 | 演劇
 地方の全寮制予備校を舞台にしたドラマ。ここで暮らす子供たちと、先生たち。彼らの夏の数日間を描くとても小さな作品。

 教師側4人、生徒側4人、という登場人物は決して少ないわけではない。だが、彼らを通してこの学校の全体像が見えてこないから、芝居に奥行きが生じない。とても真面目な芝居だし、それぞれの気持ちは確かに描かれてあるし、共感できる。だが、それが点描でしかない。1本の線にはならない。その結果、話は説明にしかならない。

 高校生でもなく、大学生にもなれてない。10代終わりのとても不安定な季節。あと、5ヶ月後に受験を控えた微妙な時間。揺れる心。それは彼らと向き合う教師の側も同じだ。彼らもまだ若く、この仕事に自信と誇りを持てないでいる。こんな仕事、いつまでも続けられないなんて思っていたりもする。彼らのほうが子供たち以上に揺れていると言っても過言ではない。

 とてもナーバスで傷つきやすい。しかし、そんな気持ちを人には見せないでおこうとする。大人と子供が混在していて、その大きな振幅の中で、いきなり突拍子もない行動を取ってしまったりする。弱い大人たちと、案外強い子供たち。そんな図式も見え隠れする。とても面白い題材を繊細なタッチで見せようとした好感の持てる作品だ。

 しかし、全体の詰めが甘く、傑作にはなり損ねている。だいたい演出はプラネットホールの広い舞台空間を持て余している。閉じられた職員室、生徒たちの個室といった空間と、ラストで広がる屋上の対比も上手く描けないから、開放感と不安が描ききれない。

 しかも、ラストの逆上がりのエピソードが唐突に見えてしまうようでは、まずい。子供の頃、逆上がりが初めて出来た時の気持ち。「敢えて出来たその日には誰にも話さなかった。2日後、しゃべった」というモノローグ。それにこの芝居のテーマがあるのだが、それなのに、そこに込められた微妙なものが伝わりきれないもどかしさ。残念でならない。

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