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映画・演劇のレビュー

『東ベルリンから来た女』

2014-03-09 20:52:00 | 映画
まだベルリンに壁があった時代。1980年。あと9年で壁がなくなるなんて、誰もがまだ知らなかった時代の話。ある女医が東ベルリンからその村にやってくる。説明のないまま話が進行していくから、最初は何が何だか分からないままだ。ただ、彼女の行動を見守ることになる。せりふもほとんどない。自転車に乗り、病院と自分の住む部屋を往復する。部屋にはほとんど何もない。生活の形跡すら感じられない。そこはただ、寝るだけの場所。病院では誰とも仲よくすることもない。ただ、仕事をこなす。自転車はアパートの地下室で見つけて、壊れていたのを自分で直した。

 こんなふうに彼女の生活を淡々と見せていくだけの映画だ。職場で男性医師が彼女に興味を持つ。だが、彼女はもちろんそっけない。興味ない。そんなふうにして話がどんどん進んでいく。だが、気づくと、彼女がスパイの容疑を受けていて、実際に西の男と通じていて、彼は彼女を逃がそうとするというふうに、結構ドラマチックな展開になる。だが、そんなふうにしてお話の本題に突入しても、温度差はそれほど変わりはない。恋人と逢い、森の中で抱き合うようなドラマチックなシーンだってそうだ。この映画は何がしたのか、と思うくらいのそっけなさ。

 どうでもいいけど、ヤフーの解説にはこう書かれてあった。
「ドイツの新鋭クリスティアン・ペツォールトが監督と脚本を担当し、旧東ドイツで疑心暗鬼に駆られつつ生きる女医の姿を描いた衝撃作」

 なるほど、彼女は「疑心暗鬼」していたのか。そう言われればそんな気もする。でも、なんだか堂々としていたけど。どんなときにも動じることなく、凛として(というよりも、つん、として)そこにいる。そしてラストでは、あっと驚く行為に出る。でも、それだってなんだか落ち着いていた。工場でこき使われ、苦しんでいた少女を助けて彼女を自分の代わりに西に逃がそうとする、という結末自身が衝撃なのではない。彼女のたたずまい自身が僕には衝撃だった。何も言わないし、人にこびないし、人を信じない。そんなふうになったそれまでの彼女の人生のほうに興味がわく。



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