
『恋ポテ』シリーズの番外編だ。あの3部作の背後の世界でもさまざまな恋愛ドラマが展開されているという当たり前のことをちゃんと短編連作のスタイルで見せてくれる。ファンには堪えられない作品だろう。5つのエピソードは主人公をタスキ(バトンでもいいけど)で繋いで行きつつ、最後のゴールにたどり着く。タイトルにあるように駅のホームを舞台にしながら、リレー形式でお話を収める。
想いは微妙に食い違う。だから、恋はなかなか成就しないけど、現実だってそんなものだろう。5つのお話には、6人の男女が登場する。教室に落としてあったラブレターを巡るお話だ。たわいもない話だし、あまりリアリティもない。途中で少し、飽きてくるほどだ。読みやすくて、すぐに読み終えれられるのは『恋とポテトと夏休み』と同じだけど、今回は短編連作だからかもしれないけど、お話の切れが悪いし、嘘くさい。
こういう昔ながらの「コバルト文庫」のようなジュニア小説は、まず夢物語だから胸キュンで楽しかったらそれだけでいいのだろうけど、それでもある種のリアリティは欲しい。表面を撫ぜるだけの「キラキラ」小説はいらない。廣木隆一監督が少女漫画を原作にしてキラキラ映画を連発していた時、その作品にあんなにも心惹かれたのは、嘘とほんとのバランスの見事さのせいだ。彼は絶妙の匙加減で夢と現実をうまくブレンドして、楽しいけどほろ苦い映画を作っていた。そんなものをここにも期待する。残念だが、神戸遥真は甘すぎる。図書委員とか、体の弱い女の子とか、定番の設定は、それはそれでいいのだが、そこをどう生かすのかが腕の見せ所のはず。惜しい。