35歳。初めての胃検診。バリウムを飲む。本当にあれは嫌だった。毎年1回義務化されている。仕方ないから行くけど。出すなと言われたら、出てしまうゲップに耐えてぐるぐる回されて。そんなことを思い出す。
小説はそこから始まる。就職して13年。いきなり呼び出されてスマイル・コンプライアンス準備室(って何!)に異動を命じられるところから話は始まる。
30代後半を迎えて,自分の人生を改めて考える。転職するなら今が最後のチャンスかもしれない。会社から理不尽な要求をされバカバカしい上役の無茶振りに怒りを通り越してグッタリする。だけど仕事はやめられない。バンドをしながら働くというコンセプトで学生時代から今まで、4人でやって来た。だがそれももう限界かもしれない。
楽しく仕事ができるならいい。だけどそうはいかない現実の前で、まさかの事件が起きる。バンドの仲間が末期癌の診断を受けたのだ。命は有限だ。そんな当たり前のことを思い知る。
働くこと、楽しむこと。会社が通いの監獄というのなら、そこ行きたいと思う場所にしたらしい。楽しいから帰りたくないと思うような場所。そんな会社。今ある自分を少し変える。つまらない職場、仕事から逃げるのではなく、そこを変えていく。もちろん簡単ではない。
生きていくために何をすればいいのか。改めて考える。これはその一助になる小説だ。