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映画・演劇のレビュー

超人予備校『ラクダイス』

2019-10-17 19:50:23 | 演劇

ブラック企業の新入社員ふたり。彼女たちは、そこで何を見るのか。よく働く女性たちと全く無能な男性社員たち。この図式がまず、おもしろい。バリバリ働く女たちは疲れている。ストレスが溜まって、イライラしたり、無気力になったり。そんなこんなで、彼女たちがラクダになって砂漠をサバイバルするお話が始まる。

今回ミツルギさんは「仕事と生きていくこと」をテーマにした。そんなスケールの大きなお話なのだけど、いつも通り、たわいもない会話が繰り広げられるばかりで、それはそれで彼らしい。砂漠のラクダになったOLたちは例によってうだうだしているだけ。この気合の入らなさ、そこが超人予備校のいいところなのだが、それだけではせっかくのテーマが生きない。本作の後半とその納め方が少し、僕には乗り切れなかった。

人間に戻りたいけど、それがここでの暮らしよりいいとは、言いきれない、という微妙な立ち位置をもうすこし上手く描いてくれたなら面白いのだが、そこをさらりと流してしまう。よりよい生き方って何なのか、というお話の核心部分をもっと突っ込んで見せてもらいたかった。働くことの意味について、なんらかの答えが欲しい。

ダラダラ働く男性社員との対比は面白く、彼らが何なのか、彼らを否定するとか、肯定するとかではなく、あいつらのバカバカしさの意味を問いかけたい。がむしゃらに働き、壊れていく女たち、その対極にある、バカな男たち。砂漠でのサバイバルと、会社での日常との対比も含めて、このお話から何を引き出してくるのか、とても興味深い。それだけに、お茶を濁しただけのような終わり方はではもったいない。男たちのバカバカしさの意味を問いかけたい。何が必要で、どこでバランスをとるべきなのか、それをラクダを通して描いて欲しかった。


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