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映画・演劇のレビュー

エイチエムピーシアターカンパニー『忠臣蔵・破 エートス/死』

2019-10-17 19:12:33 | 演劇

昨年の『序 ビッグバン/抜刀』に続く2作目だ。今回は討ち入りまでを描く3部作の第2章。2時間20分の大作である。だが、ここで描かれるのは吉良対大石の戦いではない。主君の仇討、血沸き肉躍る活劇でもない。なんとテーマはお金と政治。忠臣蔵という美談をこういう視点から切り取るのか、という驚きがある。そして、そこでは派手は立ち回りなんていらない、会話劇でスリリングな舞台が立ち上がる。だから、討ち入りのシーンもいらないほどだ。(まぁ、一応あるけど)

忠臣蔵ってこんな話だったのか、という新鮮な驚きがここにはある。解釈の違いではなく、ほんの少し見方を変えて、角度を変えるとこんなことになるのだ。敵は吉良ではなく、徳川幕府だ。シンプルな舞台美術がアイホールの広い空間をシネマスコープの横長空間に演出し、それが舞台からはみ出す白と黒の世界を作る。大きな空間のなかで、小さな人間が右往左往する。なぜかキャストは全員女性にした。微妙な駆け引きが彼女たちによって描かれる。これは会話劇である。静かな駆け引きがこんなにも緊張感をもって描かれる。ストップモーションを多用した演出、白塗りの顔はみんな同じように顔の中心だけを、塗っている。いつも通りのスタイリッシュな舞台である。

だが、今回はお話の面白さが勝る。なぜ、浅野は刀を抜いたのか。そこからスタートして、吉良をスケープゴートにして、どこに収めようとするのか。幕府は、というよりも柳沢は、何を恐れたのか。それぞれの思惑が交錯し、そこから思いもしない世界へと話は進んでいく。

今ある世界を転覆させるための第一歩としてこの物語を定義する。赤穂という小さな世界から朝廷、幕府、そして庶民をも巻き込んで、壮大なドラマをたちあげる。台本、くるみざわしん、演出、笠井友仁が仕掛けた誰も見たことのない忠臣蔵の世界がこの後どんな完結を見せるのか。今から次回作が待ち遠しい。


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