今回の芥川賞にノミネートされた5作品の最後の作品である。予告通り(今回のノミネート作の4冊を読んだ時に残り1冊も読もうと書いた)読むことにした。
こちらはすでに有名になった尾崎世界観の小説だから、安心して読めるけどたぶんあまり驚きはないだろうという予想を見事裏切って、まさかの世界観を示す。チケットの転売を描く小説って! しかも主体は転売屋ではなく、転売されるミュージシャンの方。彼のモノローグで全編が綴られる。
ライブのシーンが続く。チケットの転売と自分の声が出ないこと、聖水騒ぎ。だが途中からお話がだんだん停滞してくる。マンネリ化してつまらない。話は進展しない。
そしてクライマックスに至る。無観客配信ライブ合戦に向けカウントダウンしていく。だけど読んでいてまるでワクワクしない。つまらない。これがどこに行き着くのかは少し気になったから最後まで一応読んだけど、予想通りの結末。ネットで広まる転売ヤーによる暗躍もさまざまな思惑もエスカレートしていくけど、最初のうちは驚くが、だんだんどうでもよくなる。
中途半端なエンタメ未遂でこれが芥川賞ノミネートとは、意外。小難しい小説はいらないけど、これは芥川賞っぽくない。まぁ、そんなことより後半が残念すぎる。