
瀬田なつき監督の2020年作品。ようやく配信されたので見た。劇場で見逃し、ツタヤでも見逃し(近所のツタヤが閉店した!)、アマゾンでようやく見ることができた。彼女の映画は今まで全部好き。特に『PARKS パークス』が素晴らしい。もちろんデビュー作『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』で刮目し、TVだが『セトウツミ』の力の抜け方も素晴らしい。 だけど、今回の岡崎京子のタッチは少し違う気もする。これは岡崎が1989年に刊行した同名コミックの映画化だ。彼女の漫画は盛んに映画化されているけど、癖が強く乗り切れない。今回も実は少し苦手。これまでの瀬田監督作品とは一味違う。いい意味でも悪い意味でも。主人公たちの理解し難い行動が素直には伝わりきらないからだ。
だけど、東京の湾岸の光景は素晴らしい。子供たちが都市開発途上の高層マンション工事現場に侵入し、秘密の隠れ家にする。そこでパーティをしたりもする。『ガガーリン』みたいだ。まぁリアルに考えると普通あり得ないけど、そんな自由さがいい。どんどん変わりゆく東京の景観を街中ではなく、再開発地域を中心にして描かれる。89年当時の状況が背景になっているから、2020年の今を舞台にしているにもかかわらず今の時代の映画ではない。とても不思議な映画になってる。ボーイミーツガールのお話で、主人公の少女(山田杏奈)が、同じ年の少年(鈴木仁)に一方的に想いを寄せるのだが、彼女の気持ちがよくわからない。彼は彼女のことをまるで意識していないのだけど、ラストで覚えてもいなかったことが明白になり、彼女はショックを受ける。いくらなんでもそこまでだなんて思わなかったので僕も驚く。それにしても彼女はこの男の子のどこに惹かれたのだろうか。
これは高校生の男女の恋愛映画という定番から大きく離れた映画だ。街中で何度もすれ違い、彼女はストーカー行為すらするけど、ふたりは関係を作れない。理解できないことが心地よい映画になっていたら凄いな、と思うけど、残念ながら、そうはならなかった。でも気持ちを押し付けてくる映画ではないのはいい。これはなんだったのだろう、という軽い驚きがある。当たり前の話だけど同じ街で暮らしながら別々の世界で生きている。そんなふたりの物語。