塩田明彦監督の『昼も夜も』を見た。劇場公開はされていないようだ。ネット配信とDVDだけか。最近こういうタイプの映画も増えている。(これって映画というのか?)低予算だけど自由な作り方が可能だ。
山間の国道沿いにぽつりとある中古車販売の店の前、少女が車から引きずり抛り出されるシーンから始まる。映画の舞台はこの中古車販売店。
養父の跡を継いで、この店を切り盛りしている青年が主人公。彼は赤ちゃんの頃、ここに棄てられた。この店の主人に育てられ、仕事も引き継いだ。だけど、自分がここにいていいのか、と今もずっと思っている。そんな彼のところに、震災によってすべてを失った少女は居着く。彼女はふらふらといろんな男のところを放浪する生活をしているようだ。
少女は外に置かれた売り物の車の中に入り、出てこない。彼はそれを許す。追い出さない。自分の居場所を失った少女と、そんな彼女に場所を提供する青年、という図式だけで映画は終始する。きまぐれで、わがままで、勝手な女を、ただそのままで受け入れる。何の説明も求めない。彼女が何を抱え、何を考え、何をしているのか、それすら聞かない。やってきたなら、何も言わず、受け入れ、去って行っても追わない。
もちろん、彼女も彼に心を開くわけでもなく、何も言わないまま、突然いなくなり、いきなり戻ってくることを繰り返す。映画は69分。あまりにそっけなく、さりげなく。だけど、ラストは、彼女が彼を通して何かに吹っ切れて旅立っていく。彼もまた、自分がここにいる意味を改めて認識することになる。
あと20分上映時間が長ければ収まりのいい映画になる。だけど、あえてこの尺で、中途半端な映画にする。ここには説明不足で足りないものがたくさんある。だけど、そんな余白を大事にしたのだろう。心象風景のような小さな映画を作ろうとした。『どこまでも行こう』や『カナリア』の頃に戻ったような映画だ。もうあれから20年近くが経っている。