面白い芝居なんだけど、作りが緩いから作者の意図が充分には伝わりきらない。わざとメリハリのない作り方をしてはぐらかすような見せ方をしているのだろうが、それがもどかしい。上手く作れば、よくわからないということが魅力にもなるはずなのだ。意図的に意図が伝わらないように作っている(気がする)。なのに、それが惜しいところで空回りしている。
ストーリー自体は実に単純なので、必要以上の説明は不要だろう。チラシに書かれたストーリーが実に分かりやすく、それをちゃんと読んでいったなら、はぐらかされることはないはず。僕はいつものようにちゃんと事前学習をしないで芝居を見るから、どんなお話なのかまるで知らなかった。先入観なしで見たから最初は少し分かりづらかった。だが、そこがよかった。不安になるくらいに引き込まれる。理に落ちない。よくわからないことが魅力なのだ。
だから余計な先入観はなく、「なんなんだ、これは、」という感じで結構ドキドキしながら見ることができた。簡単に言うと、連続殺人鬼と彼女に親を殺された女が、あの世の手前で再会する話。で、彼女は、雷に打たれて死んだ、という話は後で出てくる。
時間が止まったような場所。彼らはずっと子供たちが遊ぶ姿を見守っている。例えば、同じことの繰り返し。さらには、ここにいるのに、触れることができないこと。殺したオヤジは血まみれのままそこにいて、彼になら触れることができる。ずっと彼女を見張っていた刑事の後を継いで見守る女刑事。現実の時間と場所が、彼らのいるこの場所と重なる。ここは何処なのかがよくわからない。
パンフには「霊」と書かれたあるから、生きている人と霊になった人とが同じ場所にいるのだろうか。芝居を見ているときにはそのへんが曖昧だった。最初にも書いたが、そんなふうにはっきりさせないところが面白いのだが、その曖昧な空間のルールや現実が伝わりきらないから、なんだかふわふわした芝居になり、しかも、そこが魅力になればいいのだが、そうもいかない。なんだかよくわからないと思わせるところが、作品の力になるといいのだが、反対に弱さになるのが残念だ。なぜ、そうなったのかは明白である。役者たちにこのふわふわした世界を体現するだけの力量がなかったことだ。この曖昧で微妙な存在(感)をリアルなものとして立ち上げるだけの説得力が欲しい。とても惜しい芝居だ。