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映画・演劇のレビュー

劇団息吹『夢の裂け目』

2013-12-05 22:09:28 | 演劇
 2部構成(休憩10分含む)3時間に及ぶ大作である。渾身の力作なのは、わかる。作り手の熱意がビシビシ伝わってくる音楽劇だ。オリジナル曲を多数作って、それを役者たちが歌う。関西二期会の岡崎恵子さんの指導のもと、「14曲」「19シーンで歌われる音楽劇」というとんでもない困難に挑戦した。その試み自体は立派だし、おもしろいと思うが、出来上がった作品は難しい。

 軽妙なタッチで戦後の風俗をスケッチして、そこから東京裁判への出廷という大事件、さらにはGHQによる監禁へと、話がどんどん進んでいくのだが、この作品はそういうエスカレートする様を最後まで軽やかに駆け抜けていくべきなのだ。そのためには、立ち止まることは許されないはず。なのに、そうはならない。

 まず、果たしてこの内容に3時間は必要だったかと言われるといささか首をひねらざる得ない。役者たちが歌うシーンになると、ミュージカルではないから、完全にストーリーは止まる。しかも、歌の中で、セリフで語られたことが何度も繰り返されたりもする。まどろっこしい。内容的には2時間で描ける分量を、1時間引き延ばした感じだ。

 残念だが、こういう音楽劇にする必然性をここに感じない。主人公の紙芝居屋を演じる大坊晴彦さんの飄々とした芝居は悪くないし、もうひとりの主人公である彼の娘、道子を演じた新人、津波古奈穂さんの熱演もよかった。だが、それだけに3時間はきつい。

 これがドーンセンターの8階ホールで上演されたのなら、これはこれでよかったのかもしれないのだが、仮設のスペースであるドーンセンターの1階パフォーマンス・スペースでの公演というのが、問題なのだ。このスペースを知り尽くし、ここでいくつもの実験を積み重ねた息吹なのだからこそ出来たことなのかも知れないが、それでもこの作品と空間とのミスマッチは如何ともしがたい。

 しかも、年配のお客さんがこんなにもいるのに、ここで3時間は厳しくないか。息吹は最近ここをホームにしているが、内容に見合った劇場を使ってもらいたい。せっかくの大作が、これではもったいない。劇場と演目は不即不離の関係にある。そこは諸事情もあるから仕方ない部分かもしれないけど、この空間で3時間の作品には無理がある。



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