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映画・演劇のレビュー

『悪の法則』

2013-12-05 21:31:14 | 映画
 断片的に描かれる緊張感のある描写がやがて、ひとつの大きな物語を見せる。という感じ、のはず。なのだが、ストーリーが1本につながらないのだ。最初はそのうちクリアになるはずだ、と高を括って見ていたのだが、なんのなんの、まるでわからない。でも、シーン、シーンは凄い緊張感を湛えるから、凝視してしまう。だが、だんだん焦ってくる。こんなはずじゃない、もしかして映画から置いてけぼりにされたかも、と不安にさせられる。これは一体何の映画なのか、と思った人も多々いるのではないか。そうに違いない。麻薬の密売とかに絡んだなんやかんやのやばい犯罪の数々が主人公たちの周辺で描かれる。でも、直接彼らがそれに手を染めるのではない。

 この映画は普通のわかりやすいドラマ作りは為されていない。明確なストーリーラインを追うのではないからだ。わからないところは、わからないまま。見えない部分を説明しない。だって、そこは見えないのだから、当然の話だろ、という感じだ。この突き放したような作り方を面白いと思えない人は、退屈するかもしれない。オールスター・キャストによる豪華な犯罪映画を期待した観客は面食らったはずだ。

 マイケル・ファスベンダーが、貧民窟のようなところに身を隠して、怯えながら暮らすシーンに到ってようやく、この映画の意図するところが見えてくる。後半に入ると、主役のはずのスターたちを簡単に死なす。えっ、て感じ。ブラット・ピットまで、あんな悲惨なことになる。しかも、あんなにところで、あんなふうにあっけなく。

 有能なセレブ弁護士(「カウンセラー」が原題)が、美しいフィアンセ(ペネロペ・クルス)との輝かしい未来のために、ちょっとした出来心から裏社会のビジネスに手を染めるのだが、それによってとんでもないことになる、という話の入り口はこんなにも明確なのだ。だが、その見せ方や、周辺の人物との関係性がまるで、わかりにくい。誰が犯人なのか、とかいう謎解きではない。

 キャメロン・ディアスは確かに凄いのだが、(あのカーセックス! のシーンは凄まじい。)でも、その不気味さはラストまで見ても、よくわからない。いいのか、こんなことで、と僕は思う。決して、つまらないわけではない。だが、納得しない映画だ。残酷なシーンも多いが、それがこの世界の怖さを伝え切れていない。(でも、それは三池崇史の映画のような、冗談のような残酷さではないけど)

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