
若い劇団の旗揚げ作品を見るのはうれしい。新しい出会いに心騒ぐ。どんな作品を作るのか、まるでわからないのがいい。本作は「ウイングカップ6」参加作品であり、今回のウイングカップのオープニングプログラムである。だから、見ることになったのだが、こんなにも事前情報なしで芝居を見るのも、うれしい。なかなかそういう機会はない。
平均年齢18・3歳(たしか、そう言っていた)の若い集団である。主人公の2人の少女たちはいずれも17歳の高校2年生。彼女たちがダブルキャストで、交互にお互いの役を演じる。元気があり、華やかで楽しい。高校演劇のノリで芝居を見せるのもいい。無理しない。でも、拙くない。ちゃんとお客さんに見せられるレベルの芝居になっている。若さに甘えるのではなく、若いということをちゃんと武器にして、したたかに見せる。
まず誰よりも自分たちが楽しんでいるのがいい。演じることの幸せを感じ、全力で発散させる。そういうエネルギーの炸裂が、芝居を生き生きしたものにする。お話自体はたわいもない。父親との確執、創作への意欲。ロボットを作るという行為を巡るお話なのだが、そこに描かれるのは普遍的な問題ばかりで、別にSFの意匠は必要ない。だが、ロボットが考え、意思を持ち、恋をする。そういうまぁ、よくあるお話によっかかることで、芝居は華やかで楽しいものとなるのなら、それでいい。小難しいことなんか、どうでもよろしい。70分ほどのお話はたわいもないけど、誠実。途方もないことを描くのではなく、自分たちの問題として考えられるものを、テーマとする。未来版「ロボコン」という作品のメインとなる舞台も悪くない。ふたりの少年と少女の出逢い、お互いの好意。尊敬と信頼。想いを育むこと。それがロボットを作るという行為につながる。
特別な仕掛けはないけど、(もちろん、お話の上で、である。大掛かりな舞台装置とか、ではないし、そんなのは期待していない)ちゃんと、お話を作ってまとめてある。作者の想いがもう少し突っ込んで描き切れたならよかったけど、そこまでは至らない。これからに期待。