ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

ヒューゴの不思議な発明(Hugo)

2012-03-27 19:53:02 | 映画

ヒューゴの不思議な発明を観ました。

とてもキュートな映画です。しかもあったかい。リズムも良くて、観賞後が気持ちいいです。この前もそんなこと感じたけど、最近当たりがいいのかな。映画が持つ、楽しさ・ワクワク・ドキドキをギュッと凝縮したような作品です。そこはかとなく映画への愛やリスペクトを感じます。

ヒューゴ・カブレは駅のネジ巻きをしている孤児。時計屋のパパと二人暮らしをしていましたけど、博物館の火事に巻き込まれパパは死んでしまいました。クロードおじさんに引き取られ、駅の「壁のなか」に引っ越しました。飲んだくれのおじさんは酔っぱらってばかりなので、おじさんに代わってヒューゴが駅の天井から下がっている大時計のネジを巻きます。ヒューゴのもうひとつの仕事は、ぜんまい仕掛けのカラクリ人形を修理すること。それはパパが博物館から引き取って、ヒューゴと一緒に直していた大事な人形で、クロードおじさんに引き取られる時、ヒューゴがただひとつ持ってきたものです。パパいわく、何かを書く仕掛けになっているらしい。ヒューゴはひとりで駅のオモチャ屋からくすねた部品で修理してましたけど、とうとうオモチャ屋のおじいさんに捕まり、パパが残した修理ノートを取り上げられます。ノートを取り戻そうとおじいさんの家まで来たら、同い年くらいのキュートな少女に出会いました。おじいさん夫婦の家に住んでて、名前はイザベラ。冒険が好きなイザベラはヒューゴの理解者になり、おじいさんとヒューゴをさりげなく仲介します。ヒューゴの機械修理工としての腕を認めたおじいさんは、店の手伝いを条件に、部品を提供します。偶然最後の部品を見つけたヒューゴとイザベラは、人形の修理を終え、動かしてみます。人形は意外なものを書きました。それを機に、物語は登場人物の謎解きに一気に展開します。

この作品は、映画作家ジョルジュ・メリエスの伝記です。マーティン・スコセッシ監督が世界中の映画好きに送る、映画とメリエスに向けたオマージュ。監督はストレートな伝記ではなく、フィクションを織り混ぜたファンタジーに仕立てています。ジョニー・デップがプロデュースに加わっていますけど、そういえば「チャーリーとチョコレート工場」に雰囲気が似ています。ファンタジーにすることで、最初期の作り手が持っていたイノベーターとしての情熱と、それを遠く想う現代の作り手が感じるサウダージを強調できているんだと思います。ジョルジュ・メリエスは18世紀後半から19世紀にかけて活躍した映画作家で、SFXの先駆者だそうです。本作でも出てきますけど、月にロケットが突き刺さるシーンで有名な月世界旅行などの作品で、映画史に名を刻んでます。メリエスの映画作りを再現するシーンがあるんですけど、ガラス張りのスタジオや、レールや火薬を駆使した舞台装置があることがわかり、当時の様子がよくわかってドキュメンタリーとしての価値もこの作品は持っているんじゃないでしょうか。

ヒューゴ・カブレを演じるエイサ・バターフィールドは、劇場版999の星野鉄郎みたいな雰囲気を持っています。意思が強く大人びているんだけど、少年のキュートさも持ち合わせていて魅力的です。

イザベラのクロエ・グレース・モレッツがスーペルにキュート♪。ついつい視線が彼女に向いちゃいます。長澤まさみに似たたぬき顔で、日本でも人気が出るんじゃないかな。彼女の笑顔で、この作品の明るさを引っ張っていると思います。

ティーンエイジャー二人が活躍する作品ですけど、テーマはいにしえの映画界に向けたオマージュですから、ベテランも素敵に輝きます。イザベルのパパ・ジョルジュとママ・ジャンヌが仲良しで素敵です。図書館の司書ムッシュ・ラビスは一見怖そうなんですけど、実は優しい。

鉄道公安官のギュスターブと相棒犬のマキシミリアンが物語に笑いとスリルを演出します。ヒューゴとイザベルの爽やかなカップルもいいのですけど、ギュスターヴと花屋のリゼット、ムッシュ・フリックとエミーユ夫人の恋も微笑ましいです。

アカデミー賞の美術賞を受賞しています。密度の濃い、西欧の都会的なセットは圧倒的です。終始、黄昏時の風情ですけど、かつての映画界に向けたノスタルジーを表現しているのかもしれません。

そういえば初めて3D作品を観ました。最初は違和感があったんですけど、そのうち忘れました。ただ、本来3次元のものを、いったん2次元にした後ふたたび3次元化していますから、どうしてもナチュラルじゃないですね。技術的には、まだまだこれからというところでしょうか。

観客を選ばない作品ですから、どなたでも楽しめると思います。