お盆明けから天候不順が続き、8月とは思えない涼しさです。一気に秋めいて、サウダージ。
毎年アウェイ鹿島に行くときは、偶然ですけどロケ地巡りをセットにしていまして、今年は花子とアン。そちらはのちほど。
浦和戦の試合中に相太が骨折し、長期の離脱になってしまいました。相太が軸となって、縦にはやい攻撃リズムが出来はじめていたので、この離脱は、相太にとってもチームにとっても痛いです。しっかり治して戻ってきて欲しいです。相太にエールを送る東京ゴール裏。チームも、もう一度攻撃の組み立てを作りなおすことになりましたけど、起こったことは仕方ないので、残ったメンバーでもう一度トライしてほしいです。
直前に新生日本代表アギーレジャパンの初代スコッドが発表され、モリゲとよっちが選出されました。アギーレさんが東京に注目しているという報道もあって、ヨネ、権田、秀人、宏介も噂に上がっていましたけど、今回は見送り。まあ、ロシアへの道は先が長いですし、まだまだチャンスはあると思います。
鹿島でございます。茨城南部とは言え北関東ですから、雨模様でもあり東京よりも秋は進んでいると思っていました。結局ほとんど雨は降らず、ナイターにちょうど心地よい気候でした。
鹿島に押し込まれ秀人のミスから前半に2失点しましたけど、後半ミステルの策がぴったり当たって、粘り腰のドローに持ち込みました。
東京は相太不在の穴を千真に委ねます。GKは権田。CBはモリゲとカズ。SBは右に徳永左に宏介。3CHは今日はオリジナルで、右から羽生、秀人、ヨネ。トップ下に河野。2トップはエドゥーとよっち。
鹿島は満男、康、植田がサスペンションで不在です。シフトはお馴染み4-2-3-1。GKは不動の守護神曽ヶ端。CBは昌子の今日の相棒は山村。SBは右に大伍左に修斗。ボランチは今日は岳が満男に変わって下がり目の役で、前目に梅鉢。WGは今日は右にカイオ左に新加入のジョルジ・ワグネルが入ります。Jリーグにおかえりなさい。トップ下に土居。1トップはダヴィです。
現在3位の鹿島は、リーグ唯一の得点40点代です。いっぽう失点は少ないわけではなく、かつての守備が堅いのイメージは少し薄らいでいますけど、その分攻撃が強力です。今日はメンバーが代わっていましたけど、攻撃特性が非常によく出ていました。鹿島伝統の攻撃は、いわずもがなですけどサイドアタックです。鹿島のサイドアタックの特長は、常に数的優位を保つことです。数的優位の作りかたは、選手の組み合わせで毎年変わっています。今年の鹿島は、今日は満男と康がいないのでまた違うかもしれませんけど、ボランチを上手に使います。
まずサイドで数的優位を作る基盤です。ポイントは岳とジョルジ・ワグネルです。今日は岳が満男に代わってアンカーに入り、攻撃をオーガナイズします。岳が低い位置で長短のパスを左右に捌きます。岳のパスの選択、タイミング、コース、スピードは、驚異的なほど的確で、素晴らしいです。数年間低迷が続いた鹿島でしたけど、岳が満男と遜色ないレベルまで成長しているのが今年の好調を支えているのではないかと思います。
ジョルジ・ワグネルの加入は鹿島を大きく前進させるかもしれません。なにしろジョルジは、前線で時間を作れます。ジョルジがひとり加わることで、鹿島はダヴィ頼みを脱却できたようです。以前の鹿島はダヴィに預けるしかなく、ダヴィもポストが上手いわけではありませんでしたから、どうしても攻撃リズムがスタックしていました。今日の鹿島が縦にはやい鹿島らしい攻撃ができていたのは、ワンタッチを基調としたパス交換ができていたからですけど、そこには、鹿島の選手のなかにジョルジという安心感が存在していたのだと思います。
さて、鹿島のサイドアタックです。担うのは両SBとカイオ、土居、そして梅鉢です。オリジナルは土居がトップ下ですけど、ジョルジがボールを持てるので中央に絞ります。その分土居が自由に動けます。土居は主に、ダヴィとポジションチェンジする形で前線、もしくは左サイドに顔を出します。カイオはほぼ右サイドに固定。このため同じサイドアタックでも左右で味付けが少し異なります。右は、固定したカイオが基点になります。ここに大伍に加えて梅鉢が加わります。梅鉢はボランチというよりトップ下に近い形で前線を広範囲に流動します。この梅鉢の動きが、鹿島の攻撃に複雑性、守り辛さを生み出します。
左はジョルジが基点です。数的優位の作りかたは、ジョルジのキープです。ジョルジがDFを引き付ける間に、修斗がオーバーラップします。もうひとつは土居とダヴィの動きです。どちらかが徳永に付きます。パターンとしては、ジョルジがバイタルエリアで持ったときに土居かダヴィが流れ、徳永を引っ張り出します。空いたスペースに修斗が飛び込みます。
鹿島伝家のサイドアタックは、長年熟成してきたものではありません。同じことをやり続けているのですけど、監督、選手が代わると、リーグのなかで相対的に良かったり悪かったりします。ここ数年の鹿島には、サイドアタックの優位性を作るための何かが欠けていたのだと思います。それがジョルジ・ワグネルでありカイオであり梅鉢であり土居であったりするのでしょう。年によって順位の上下動はあるにせよ、そして復活にかかる時間に長短があるにせよ、鹿島には「鹿島のサッカー」という回帰する場所が存在するのです。これは他のクラブにはない鹿島のクラブとしての最大の長所です。サッカーのテイストに対する好き嫌いはあると思いますけど、この点については、つくづく鹿島には見習うべきところがいっぱいある、大いなる目標だと思います。
というわけで東京は鹿島のサイドアタックに手を焼きます。今日、鹿島のサイドアタックを、東京守備陣に相対的に優位成らしめた最大の味付けは、カイオと土居だと思います。たんに数的優位を作るだけであれば、いまの東京守備網は抜けません。数的優位とは言え、必ず局面は1on1になります。ここで勝てないとそれまでのプロセスは水泡。カイオと土居は、ためらいなく1on1を挑み、そして勝っていました。1on1の強さが、東京の9試合連続負け無しを下支えしています。前半の東京が不出来に見えたのは、ここに原因があると思います。ようするに、東京が不出来だったというよりは鹿島が絶好調だったと言ったほうがいいでしょう。序盤の主導権争いは、そんな感じで鹿島がイニシアチブを握ります。そして、高圧力のなかからミスを誘い、鹿島が先制します。
前半10分。鹿島陣での東京のスローインから。河野の戻しを秀人がやや右寄りで受けます。この時、羽生は最前線右ライン際。ヨネはバイタルエリア中央。つまり、東京の中盤は秀人ひとり。このリスクテイクが仇となります。主導権争いの末鹿島に押し込まれていましたので、リズムを取り戻したかったのかもしれません。ヨネが受けに戻ってきますけど、秀人がパスミス。ヨネを通り越してカイオに渡ります。ヨネが詰めますけどカイオははねのけ、距離をとりルックアップ。最前線にダビィがいますけどモリゲとカズが見ています。前方に梅鉢。右を大伍がオーバーラップ。宏介が両方見るかたちでカイオの選択のひとつ。逆サイド土居が上がっていてフリー。カイオの選択は大伍へのスルー。大伍は受ける前にルックアップ。最前線の状況は変わらず。宏介が大伍に寄せていて、その背後を梅鉢が狙っています。ヨネも大伍に寄せているので、後方カイオもフリー。逆サイド土居は依然フリー。大伍が選択したのは、一番フリーで確度の高い土居でした。アタッキングサードに入ります。ロブフィードはちょっとコントロールミスのように見えましたけど、これが土居のもとに届きます。土居は右足で綺麗に止め、倒れそうになりながら権田が寄せる前にそのまま右足で流し込みました。鹿島1-0東京。
先制された東京は、ここから大きく動きます。シフトチェンジで状況に対処する、ミステルらしい判断です。失点直後にシフトをフラットな4-4-2に変えます。中盤は右から羽生、ヨネ、秀人、よっち。サイドで数的不利を作られていたので、そのケアだと思います。
前半20分過ぎ、東京はさらに、秀人を真ん中に置いた3バックにシフトを変更します。3-4-1-2です。ボランチは右に羽生左にヨネ。WBの使い方は高めでしたので、5バック気味にしてサイドのケアを厚くするというよりは、相手SBを閉じ込め鹿島のサイドの数的優位を崩そうという狙いだと思います。ところが、予想外ではありますけど、結果的に裏目に出ます。
前半26分。曽ヶ端のゴールキックが秀人の背後、いやらしいところに落ちます。秀人がバウンドを計って権田に戻そうとしたところにダヴィが詰めてきました。秀人からボールを奪ったダヴィは、寄せてきた権田をロブでかわして一人タベーラ。そのまま抜け出します。秀人が体ごと投げ出して止めようとしますけど、一瞬はやくダヴィが追い付きました。鹿島2-0東京。
前半30分過ぎ、東京は3たびシフトチェンジします。4-3-1-2に戻します。いずれも秀人のミスが失点につながったので、秀人を落ち着かせるためか、もしくはシフトをいじり過ぎるのは得策ではないという考えかもしれません。オリジナルシフトに戻して、ここから東京はリセットです。以降も鹿島の猛攻が続きますけど、細かなシフトチェンジに鹿島の攻勢がいなされたか、ようやく守備が落ち着き始めます。
一方で攻撃のほうはなかなか機能しません。千真はパス交換のなかでリズムを作るタイプです。いまの東京の攻撃は縦に急ぎますので、千真のゆったりとしたリズムはどうしてもスタックの原因になります。それでもよっちが何度かシュートチャンスを作りました。よっちは、J1でも優位に立てるシュートアテンプトのタイミングを作れたようです。もしかすると、浦和戦の2点目でヒントを得たのかもしれません。世界的に見ても、外からカットインしてシュートに持ち込むパターンは、いまやサイドアタッカーの必須技術のようです。これまで東京には高い精度でこれを具現できる選手がいませんでしたので、ますますよっちへの期待が高まります。
前半はこのまま終了。結局ミス絡みの失点だけでした。鹿島のリサイタルのような展開ではありましたけど、権田の神セーブも含め、守備陣は粘り強くかわせていたとも言えるかもしれません。
後半頭からミステルが動きます。二枚同時交代。羽生に代えてエドゥー、河野に代えてたまを投入します。前線は右から千真、エドゥー、よっちの3トップになります。そして、この交代がいきなり奏功します。
後半4分。ヨネのロブスルーに反応したよっちがペナルティエリアで、岳の背後を取り抜け出します。出遅れた山村がたまらず足を出しPK。これをエドゥーが豪快に決めました。鹿島2-1東京。
鹿島は、攻撃に関しては強かった頃に戻りつつありますけど、問題は守備です。一気に世代交代を進めています。植田と山村の差がどれくらいあるのかわかりませんでしたけど、今日の山村は東京のハイスピードアタックについていけてませんでした。鹿島の弱点はストロングポイントの裏返しでサイドバックの背後ですけど、強い鹿島はCBがSBをフォローします。この課題をクリアすると、鹿島の時代がまた戻ってくると思います。
鹿島は東京の強力な中盤のプレッシングに対抗するため、序盤からフォアチェックをかけてきました。このことが主導権争いに優った下地でありますけど、さすがに後半になると切れ味が鈍ります。東京がエドゥーという目標を得たこともあり、前半とうってかわって攻め合いの様相になります。サッカーでは2点差アヘッドが難しいといいますけど、ミステルの采配がはまり、選手の心身のかかりもよく追い上げのゴールが生まれ、鹿島の足がとまりつつあるこの展開は、まさに追いかける側優位です。2戦続けてのドキドキ感。トニーニョ・セレーゾさんが対処します。前半動き回っていた梅鉢に代えて青木を投入。青木をアンカーに使って守備を安定させます。
さらにセレーゾさんが動きます。加入したばかりでコンディションがまだ整っていないのでしょう。ジョルジを下げ杉本を右WGに投入します。カイオが左にまわります。前線でボールを持てる選手がいなくなったため、鹿島の攻撃は個人突破の比重が高まりました。
ここで、試合の流れを大きく左右することになる事件が起きます。青木がエドゥーを倒し、一発退場となります。今日のエドゥーは、前節と同じく途中交代でしたけど、今日は入って早々機能していました。鹿島のバイタルエリアの弱さ故です。そのつけを青木が払うことになりました。
セレーゾさんは対処せざるを得ません。攻撃を主導していたカイオを下げ、浩二を投入します。4-4-1です。鹿島は攻撃ではダヴィに預けるしかなく、独力突破のないダヴィに期待はあまりできなくなります。加えてトップ下がいなくなったので、東京は中央が自由になります。
これを受け、ミステルが攻撃指令を下します。カズに代えて富山から復帰したばかりの翔哉を投入。同時にシフトを3-4-1-2に変更します。DFを一枚削って前線の圧力を増します。秀人がまたリベロに下がり、ヨネとたまがボランチ。翔哉はトップ下です。これが機能します。鹿島はボランチに対するプレスをかけられませんので、東京はボランチを縦配列にします。ヨネにカバーを任せ、たまが攻撃加重です。この急造シフトを機能成らしめたのは、たまと翔哉です。たまと翔哉は互いを感じあって一定の距離を保ちながら激しく動きます。たまが上がれば翔哉が下がる。そして二人でワンタッチのパス交換をしながら攻撃リズムを作り出します。そして、勢いを増した東京が鹿島を押切ます。
後半42分。東京陣の鹿島のスローイン。大伍は右前方のダヴィにスロー。ダヴィは宏介を背負いながらポストを杉本に落とします。これを杉本より一瞬はやく反応した翔哉が拾います。前線を削った鹿島の弱点が出ました。翔哉、たま、よっちとワンタッチで回し、攻撃リズムを作ります。中央秀人に。鹿島は一斉に帰陣します。秀人は右フリーの徳永に。この様子を、真ん中にいた翔哉が見ていて、秀人が徳永に出そうとするのを感じ一気に前線に上がります。狙ったのは、修斗の背後。徳永は土居が見ています。徳永の前方にエドゥーが流れようとしていて、修斗が付きます。修斗の裏があき、昌子にカバーするよう言っている浩二の背後を翔哉が抜け出し、昌子よりはやく入り込みます。ルックアップしていた徳永がこの動きを見ていて、うかせ気味のスルーを修斗の背後に送ります。アタッキングサードに入ります。ここで極上のパスが生まれます。翔哉は右足ヒールでダイレクトにペナルティエリアに流し込みます。上がっているときに前線を見ているので、千真が山村と1on1だと見えていたのかもしれません。ゴール前に転がったボールには山村が一瞬はやく追い付きます。曽ヶ端に戻しますけど、曽ヶ端も前に出ていて勢い余ってファンブル。混戦から山村がかき出したところによっちが詰めました。起死回生。鹿島2-2東京。
その後は互いにチャンスをつかみますけど、ゴールは割れず。このまま試合終了。鹿島2-2東京。
どうもカシマスタジアムは鬼門の印象があって、鹿島の猛攻の前に大量失点するイメージが強いです。今日も、これまでの東京であれば、前半の流れのまま大量失点していたんじゃないかと思います。そこを、ミステルの的確な作戦変更に導かれ、チームは良くアジャストできたと思います。結果はドローでしたし、それもレフリーの判定に影響されたものとは言え、東京がチャンピオン経験豊富な鹿島と肩を並べるところまで来たことを実感できた試合でした。
さわさりながら、8試合1失点のあとの2試合連続で失点の計6失点は、課題を洗いなおす必要があると思います。鹿島は伝統芸がはまったとは言え、東京の弱点を狙ったことは確か。やはり3CHの泣き所はWHの背後のスペースです。このバイタルエリアをどう対処するか。さらにしばらくフォアチェックをかけるチームとやってなかったですけど、今日の鹿島が東京攻略に成功したことを受け、しかけてくるチームも増えてくるかもしれません。一層中盤のコンタクトが激しくなりますので、当たり負けしないこと。さらには、怪我。もう一つ心配なのがコンディションです。とくに心の疲労。毎試合ハイテンションで臨んでいるのが、選手の表情を見たら傍目からでもわかります。秀人のミスも、心、つまり頭の疲労から来る体のコントロールミスのような気がします。休めるときにしっかりリフレッシュしてほしいです。
いろいろ心配ごとはありますし、上位との差を縮めるという願った結果は得られませんでしたけど、粘り強く、負けないことは評価したいと思います。上位は混戦ですから、知らない間に勝ち点が縮まっているかもしれませんから。
さあ、季節は秋に向かいます。みのりの秋を期待して、夜長を楽しく過ごしたいです。