ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

小金井公園の梅20170122

2017-01-22 16:52:54 | まち歩き

春まだ遠いですけど、足音がかすかに聞こえてきました。

穏やかな冬の日。先週の寒波が過ぎ、快晴が戻ってきました。今年は少しはやめに、小金井公園の梅園の第一陣が咲きはじめました。

それでは、今年もこの花から。白加賀。

曙枝垂れ。

一重野梅。

八重野梅。

曙。

小梅。

古城の春。

長寿。

水心鏡。

舞扇。

八重冬至。

芳流閣。

早咲きの緋梅も咲いています。鴛鴦。

緋の司。

小金井公園の早咲きの梅の主役といえば、やはり蝋梅。今年も匂い溜りが怪しく艶っぽく誘います。和蝋梅。

蝋梅。

第二陣の紅梅が咲くころには、2017シーズンもはじまってますね。春が待ち遠しいです。


加賀健一選手ルーツを巡る旅 ―20170115 モンテディオ山形2017キックオフイベント―

2017-01-16 18:14:57 | 加賀さん

真っ白な雪に、サッカー人生の真新しい1ページのはじまりを想う。

今日は加賀さんの新しいスタートの日です。

列島に大寒波が襲った今週、お正月過ぎまではほとんど雪がなかった山形も、一気に一面の雪景色となりました。東京で雪の始動日は記憶がなく、個人的にたぶん初めての経験です。なんとなく東北に来たんだなあと思いました。

イベントの会場は、モンテのホームNDソフトスタジアム山形と隣接する、山形県総合運動公園総合体育館です。

体育館につくまでは静寂につつまれた真っ白な景色で、人かげをほとんど見かけなかったのですけど、いざなかに入ってみると、モンテサポさんがいっぱいで熱気に包まれていました。

会場のなかはこんな感じ。

キックオフイベントは、モンテアカデミーの紹介からスタートです。山形県は空間的にも時間的にも広大ですから、アカデミーの運営は大変だと思います。

トップチームの選手は、背番号順にひとりずつアリーナ席の後方から左右に別れて入場します。この演出はちょっとドキドキしました。モンテサポさんも同じだったのでしょう。今年は選手が大きく入れ替わったので、背番号の変更もありますから。加賀さんゆかりの2番も5番も空き番になったのでどうかなあと思っていましたけど、2番は瀬川さん、5番は菅沼さんがそれぞれ身に着けます。もしかするとこれまでで一番長く付けていた15番かもと思って、ドキドキしました。

「背番号15 加賀健一」

磐田と札幌時代からのファンのかたには、もしかすると一番馴染みが深い番号かもしれません。自分にとっては新鮮で、もしかすると5年間でJリーグ156試合出場6得点のベストパフォーマンスをもう一度共感できるかもしれないと、ワクワクしました。とても嬉しかったです。クラブが用意したのか加賀さん自身なのかご家族が選んだのか分かりませんけど、もしかすると結婚された当時付けていた番号だし、家族想いの加賀さんのことですから、11年目の今年を祝う気持ちも込めているのかもしれません。

トップチームが舞台に勢ぞろいして、森谷社長、御来賓、木山新監督がご挨拶されている間は、後列の中央に本拓さんと中村さんの間に並んでいました。7番なのに前列向かって一番右にいた松岡さん以外は背番号順なのかもしれません。全員が立って並んだ印象では、181㎝の加賀さんが大きく見えないほど今年のモンテは大型化しているなあと思いました。フィールドプレーヤーの180㎝オーバーが10人。もともとモンテは大型の選手がいるチームの印象がありますけど、今年はさらに高さと強さが前面に出るのかもしれませんね。

おそらく背番号順なので偶然ですけど、チーム最年長の竜也さん、本拓さん、加賀さんが並ぶその空間だけ、落ち着いた大人の雰囲気が漂っていました。チームをガラッと刷新する2017ニューモンテを象徴する新加入選手は20代後半が多く、油が乗った即戦力を中心に採用しています。ドラスティックな改革とは言え、リスクを取り過ぎない配慮だろうと思います。そんななかでも、加賀さん、本拓さん、児玉さんと、即戦力でもあり同時にチームに落ち着きをもたらす触媒にもなり得るベテランを組みこんでありますし、鈴木雄斗さんや中村さんや南さんといった伸び盛りやユース昇格の高橋成樹さんなど10代の選手もいます。年齢構成としてはバランスが取れているんじゃないかと思います。

不安点としては、もちろん改革があまりにもドラスティックだということ。チームの編成方針そのものを刷新するわけですから、これまでモンテが山形の地で自然に培ってきたモンテらしさを失くしてしまう可能性もあります。それは逆に、目に見えないモンテらしさにこだわるあまり、エレベーターチームであることを余儀なくされてきた過去の念を振り払うことができるきっかけなのかもしれません。その是非は結果を見てみないと評価できません。

2017年の今の加賀さんにとって、このリニューアルモンテの環境は二つの意味で望ましい場だとぼくは思います。これまで加賀さんは、磐田でも札幌でも東京でも浦和でも、指揮官が変わることによるマイナーチェンジこそあれ、チームそのものの方向性が大きく変わる瞬間に立ち会ったことはありません。とくに浦和は、すでにチームとして基盤が確立されていましたから、加賀さん自身をチームにアジャストすることで、サッカーに集中する環境にスムーズに入ることができていたでしょう。モンテは、これからチームを作っていくまったくゼロのスタートラインです。既にベテランと呼ばれる年齢でもありますし、なにより加賀さんがキャリアのなかで磨き上げてきた、大切な仲間の間にポジティブで能動的な輪を作る触媒としての役割を、チームを作っていく過程で、木山さんと一緒になって、これまでよりも濃く果たしていくことができるんじゃないかと思います。

もうひとつは加賀さん自身の進化の確認です。2014年の後半から2016年の2年半は、加賀さんにとってもぼくらファンにとっても悔しい雌伏の時でした。コンディションに苦しみましたし、出場機会にも恵まれませんでした。でも、それはポジティブなことでもあると思います。頸椎骨折以来、どこかしらの不調が常につきまとってきました。雌伏の時間は、バイオリズムをリセットし、もう一度ベストパフォーマンスを見せられる状態を心身に植え付ける作業のための時間だったと思います。それは復旧という意味ではなく、もっと高みを。身体が思うようにならないという経験は、より科学的合理性の高いトレーニングや生活方法を加賀さんにもたらしました。浦和では加賀さん自身でその成果を確認できなかったことは心残りだと思います。でも成果の確認は場所を選びません。ここ山形の地で、生まれ変わった加賀さんのプレーをきっと魅せてくれると信じます。

もちろんサッカーは個人競技ではありません。加賀さんのプレーが加賀さんが望むクオリティまで高められ得るかは、チームの基本的な闘いかたとチームメイトとのプレーの相性に依存します。でもそれは、楽しみな不確定要素として見守っていきたいと思います。人生は不確定だからこそ面白いのだし、ファンの楽しみにもそういう要素はあっていいと思います。加賀さんと一緒に大きな希望を持って未来にワクワクしたいと思います。

加賀さんが今年袖を通す、2017モンテの新ユニフォームです。さっそく予約をしました。昨年と違ってシンプルで、さわやかなイメージになりましたね。選手のみなさんの感想は、口を揃えて軽いと仰ってました。入手できる最速は、3月19日のホーム開幕戦の会場引き渡しだそうです。オンライン予約の発送分は、ホーム開幕戦以降に順次発送されるそうです。

そして、待ちに待った新加入選手の紹介のコーナーです。今日会場にいただけでも12人もの選手がずらっと並ぶと壮観です。ここでも、チームが新しくなるんだなという実感があります。加賀さんはとても加賀さんらしく淡々と「チームのJ1昇格のために頑張る」とコメントされました。選手が挨拶すると必ず司会のかたがその選手に質問するのですけど、加賀さんは自分の挨拶が終わるとさっさと次の中村さんにマイクを渡していて、これまた加賀さんらしさが観られて嬉しかったです。

司会のかたに「秋田出身ですので、秋田弁で挨拶していただけますか?」と促されて、「秋田には高校までしかいなかったので忘れちゃいました」。そういえば加賀さんは、少なくとも公の場ではほとんど秋田弁を使わないので、実際のところはわかりません。でも、加賀さんはそういう場で自らパフォーマンスするタイプではなく、むしろパフォーマンスさせるほうに長けているので、これはふるほうが間違いだなと思うのは、加賀さん贔屓目線です。あしからず。

木山監督の加賀さんに対する期待はちょっと驚きました。攻撃を加速するための起点として期待していると仰ってました。加賀さん最大の特長であるスピードは、オーソドックスには後方、つまりディフェンシブサードのカバーリング能力に働くと思います。でも、CBに入る以前の札幌や磐田後期では、スピードに寄り攻撃的な特性を見せていたと聞きます。その意味でも、ベストパフォーマンスの復活を木山監督も期待しているということでしょう。楽しみです。

昨年現役生活を終えられたばかりの大島秀夫さんと、越智隼人さんのクラブOBトークショーでも、越智さんと大島さんが加賀さんを話題にしてくれました。越智さんが仰った通り10分強しかないトークショーの尺のなかで、新加入選手のなかからピックアップされた二人のうちのひとりに加賀さんを取り上げていただいて、びっくりしたし嬉しかったです(ちなみにもうひとりは風間さん)。
「新加入選手のなかで、オオさん(大島さん)は加賀選手にどんな印象がありますか?」
「加賀くんは、えーと、チャラいです」
「チャラい」
「チャラいっていうのはちょっと違うかもしれないんですけど、親しみ易いキャラですね。誰に対してもフレンドリーに接してくれます」
「そういえば、さっき楽屋に加賀選手が来てオオさんに挨拶してましたね」
「ええ。ぼくのほうがちょっと年齢が上なんです。彼が後輩。で、さっき楽屋に加賀くんが来た時、いきなり「秀夫ちゃーん、元気ぃ?」、ですから」
「フレンドリーでしたね」
「彼は、その場の雰囲気を盛り上げてくれるので、チームのみんなが親しみを感じます。みんなの愛されキャラなんです」
トークショーの間は、トップチームの選手たちはアカデミーの選手と一緒に東スタンド下の移動式スタンドで観ていました。加賀さんは珍しく最前列にいました。越智さんと大島さんが加賀さんを話題にすると、いたずらっ子ぽくニヤニヤしてて、嬉しそうでした。

ステージイベントの最後は、トップチームの選手全員が壇上に再び勢ぞろいして、質問コーナーです。これは毎年恒例のようです。会場の入り口に質問の投票箱があって、「スーパー銭湯は見つけましたか?」と書こうかなと思ったのですけど、面倒なのでやめました。新加入選手は紹介コーナーがあったためか、質問は既存の選手が中心でした。竜也さんに応援してもらったかたは国家試験上手くいったかしら。

そのなかで「時々外食をしているとたまたま選手を見かけることがあります。そんなときは声をかけて良いものですか? それとも控えたほうが良いですか?」という質問がありました。どのクラブでも同じような問題はありますけど、サポとして選手との距離の置き方を明らかにする、とても良い質問だったと思います。司会のかたが「声をかけてほしくない人は手をあげて」と促したものだから、誰も手を上げられません。これは司会のかたが拙かったですね。松岡さんがただ一人、声をかけてほしくないと仰っていましたけど、これは全選手の気持ちを代弁したのだと思います。誰だって見知らぬ人にプライベートに入ってきてほしいとは思わないですから。加賀さん応援ブログなので、モンテのキックオフイベントなのに他の選手を取り上げることができず申し訳ないのですが、松岡さんは特別。この件だけでなく、松岡さんがかもす存在感にびっくりしました。これまでモンテに触れる機会はもちろん試合でしかなく、いわば選手をプレーでしか見ていません。松岡さんは中盤の堅実なオーガナイザーという印象があったのですけど、こういうイベントの場での松岡さんの輝きはまぶしいくらいですね。松岡さんのなぞかけで綺麗にまとまったキックオフイベントは、これにて終了。

メインのイベントが終わると、二階のロビーや会議スペースを使った物品販売などに選手が参加します。ぐるっと回った限りですけど、サントリーブースがアリーナと二階ロビーの二箇所。つや姫のPR。新グッズ販売。福袋的なものの販売。シーズンシートのPRと予約。新ユニフォームの予約。リボンマグネット募金です。加賀さんはシーズンシートのPRコーナーに松岡さんや瀬沼さんたちと参加していました。他のコーナーは写真撮影やサインが、できなくはないのだろうけど、忙しそうでちょっと難しい雰囲気でした。シーズンシートのコーナーは比較的余裕があったので、加賀さんがそこの担当で良かったです。

加賀さんがモンテサポさんに受け入れられるのか心配しているのですけど、今日は加賀さんの前に長い列ができていて、安心しました。ぼくの順番が来て東京と浦和の加賀さんグッズをお見せしたら、一瞬オッて感じでのけぞってから、ニコッて笑ってくれました。

それでぼくが話かけようとしたら、わざわざ体を深く前に傾けて、ぼくのほうにぐっと耳を持ってきて、しっかり聞く体勢になります。申し遅れましたけど、ご存じの通り加賀さんはファンに対して積極的なほうではないので、この加賀さん的神対応は正直予想してなかったし、ただでさえ心拍数が上がってドキドキでしたのに、うわーとなって何がなんだかわからなくなりました。加賀さんに会える機会があったら何を話そうか、イベントの告知がモンテからあったときからずっと考えていて伝えたいことが溢れていたのですけど、これでもう、ホントに伝えたいシンプルなことしか頭に残りませんでした。
「か、体に気をつけてくださいね!」
「ありがとうございます」
「絶対、絶対、絶対レギュラー取ってくださいね!」
「ありがとうございます」
「J1に昇格してください!」
「ありがとうございます」
「磐田と札幌と東京と浦和のファンのみなさんが、モンテで活躍することを祈ってますよ!」
「ありがとうございます」

それからしばらく、頭のなかが雪のように真っ白で、どこで何をしたのか記憶がありません。気づいたら新ユニフォームの予約待機列に並んでいました。背番号はもちろん15番。待機列にいると、選手たちが順番に握手してくれます。山田さんが「みなさん背番号は間違えないようにちゃんと6番って書きましたか?」って言いながら握手していて、和まされたおかげでやっと落ち着いてきました。ホーム開幕戦でNo.15のユニをはやく手にして見てみたいです。

普段は加賀さんに話しかけることはないのですけど、今日は遠方だし大雪だし、東京と浦和のイベントと重なっていたので、山形行きを断念されたかたも多いと思って、僭越ながら加賀さんファンの気持ちを代表してお伝えしました。足の具合とか寒さ対策をしているのかとか、もっと話したいことはいっぱいあったけど、緊張し過ぎてシンプルになってしまってごめんなさい。

さあ、加賀健一選手の山形での新しい暮らしがはじまりました。モンテサポさんにも加賀さんを受け入れていただき、愛してもらえるといいなと思います。そしてプロ16年目の今年こそ、松岡さんが〆で仰ったシーズン終了時の歓喜を、こころの底から、モンテファミリーとしても加賀さん個人としても感じられる一年になってほしいと思います。


第96回天皇杯決勝鹿島アントラーズvs川崎フロンターレ@吹スタ20170101

2017-01-04 21:15:34 | サッカー

新年明けましておめでとうございます。

サッカーマンにとって元日は、行くシーズンと来るシーズンのスクランブル。

第96回全日本サッカー選手権大会天皇杯決勝。

合いまみえるは、鹿島アントラーズと川崎フロンターレの神仏集合決戦となりました。

われらが小金井のスーパースター中村憲剛選手にとって、人世初の元日決勝。しっかり見届けたいと思います。憲剛さんの初の戴冠を願って。

万全の川崎対策で臨んだ鹿島を川崎も変態して迎え討ちましたけど、心理戦を絡めた鹿島の巧妙が勝りました。

鹿島はベスト4とほぼ同じ布陣で臨みます。シフトは4-2-3-1。GKは曽ヶ端。CBは昌子と直通。SBは今日は右に大伍左に修斗。ボランチは満男と永木。WGは右に康左に岳。トップ下は聖真。1トップは赤崎です。

川崎はエドゥアルド・ネットがサスペンションで不在です。シフトは今日も3-4-2-1。GKはチョン・ソンリョン。3バックは右から田坂、エドゥアルド、谷口。ボランチは今日の憲剛の相棒は僚太。WBは右にエウシーニョ左に車屋。2シャドウは右に悠左に登里。1トップはこれがおそらく川崎ラストマッチとなった大エース嘉人。

先月から観続けてきた風間川崎の集大成の形態は、ポゼッションスタイルの極みの先にある、高速アタックです。鹿島の川崎対策はここに打ち手を施してきました。

鹿島の基本的な守りかたはフォアチェックを基調としたプロアクティブなものだと思います。今日は、非常に静的でした。4+4+2の3ラインを整えることを最優先します。これはもとより、川崎のアタッカー四人が欲するスペースを完全に消す意図です。

これに対し川崎は、試合に入った時点では、鹿島のリトリートの威力を確認するためか、通常モードのスタイルで攻撃します。このため、川崎の弱点である両サイドにスペースができやすくなります。

鹿島はやはり、ここを狙います。試合開始からワンプッシュをかけるのは鹿島の常套。今日見せたサイドアタックもまた、見慣れた鹿島のオリジナルスタイルです。鹿島の攻撃は、右加重気味です。康にボールを集めて基点として、大伍と聖真のサポートを得て崩していきます。大伍の場合は縦に深い仕掛けからのクロスに、逆サイドから入ってくる赤崎、学、修斗が合わせます。聖真はインサイドのサポート役です。

鹿島の作戦を確認して、川崎がアジャストします。さすがに川崎ですから、鹿島のワンプッシュで動じることはありません。おそらく鹿島も織り込み済だったでしょう。この試合の流れは、川崎の対応を受け、決定します。

川崎は、決勝まで上り詰めたスタイルをあっさりと捨てます。遅攻モードに入ります。CBの間に入った僚太を含めた後ろの三人でゆったりボールを回して、攻撃ルートを伺います。遅攻モードの川崎は、外側を鍋のように囲い、なかを流動的にします。高めに置いた憲剛を軸にして、嘉人、悠、登里がスペースメイクを繰り返します。

遅攻であっても、縦を狙うこととサイドを基点にする、川崎の基本的な攻撃方法は変わりません。なので、エウシーニョと車屋の位置取りはとても高いです。鹿島を左右に揺さぶるなかでサイドに効果的な基点ができた場合は、ゴールの匂いが漂います。遅攻に入った川崎は、クロスをCBの裏に送り、そこに飛び込むアタッカーに合わせるフィニッシュパターンに活路を見出します。

鹿島の川崎対策はもう一つ。鹿島らしく中盤のコンタクトがとてもタイトです。ハードコンタクトは、鹿島が目の前にタイトルがぶら下がった試合で無類の強さを発揮する理由で、通常の試合よりも数段ハードだと思います。とくに嘉人に対して永木、僚太に対して満男のマークの強さが目立ちました。

川崎も一歩も引きません。鹿島は比較的長めのボールを前線のサイドに当てにきますので、川崎は起点を消す守りかたをします。このため川崎のコンタクトポイントは大伍や永木です。

中盤の競り合いが激しくなったところを利用して、鹿島が心理戦を仕掛けます。憲剛をターゲットにした満男のブラフは、もちろんインプレーではありません。でも、キャプテン対決は、平安の世の一騎打ちを想わせる古風な演出であるとともに、川崎の選手に囲まれながらも獅子奮迅する猛々しい姿を鹿島の選手に魅せたことでしょう。同時に、川崎の選手に対しても、勝利の哲学の象徴として、その壁の高さを感じさせたことだと思います。

さすがに川崎はいささかも怯みません。逆に幾分ヒートアップしたように見えました。少しプレーを急いだ感があって、それが川崎らしからぬクロスやシュートの精度に現れたと思います。むしろ満男が狙ったのはそっちかもしれませんけど。

リトリートする鹿島に川崎が攻めあぐねる展開のなか、試合は膠着します。そこに一閃を投じた先制ゴールが生まれます。

42分。康の右CK。鹿島はユニークな配置です。斜めに2列三枚ずつの平行陣を組みます。斜角は、キッカーの康に対しオープンです。ニア側は手前から大伍、昌子、直通。ファア側は手前から聖真、赤崎、修斗。川崎はハイブリッドです。マーカーは田坂、谷口、エドゥ、僚太、エウシーニョ、車屋です。ストーンはニアに憲剛と悠の二枚。康のキックモーションと同時に、赤崎、大伍がニアに飛び込みます。これでエウシーニョ、田坂が引っ張られます。さらに昌子をスクリーンに使って直通もニアに入ります。これでエドゥが置いてけぼりにされ、谷口が直通を見ます。なのでファアに下がった昌子がまずフリー。この時中央では、やはり康の蹴り出しのタイミングで、修斗が一度ファア側に体重移動するフェイク一発で車屋を置いてけぼりにします。これで修斗もフリー。三つ同時進行のサインプレーで康の選択肢は三つ。選んだのは修斗でした。どフリーの修斗は難なく当てるだけ。鹿島1-0川崎。

付ききれなかった車屋は悔やんでも悔やみきれないミスになりました。前半は鹿島リードで終了。

後半頭から、石井さんと風間さんが同時に動きます。まず石井さんは、先制ゴールの修斗に代えてファン・ソッコを同じく左SBに投入します。意図はちょっとわかりません。修斗にコンディションの問題があったのか、エウシーニョ対策か、はたまた右サイドに比して左からの攻撃が不足気味だったためか。

次に風間さんは、登里に代えて三好を同じく左シャドウに投入します。アタッキングサードでボールを持って仕掛けられるタイプのアクセントマンを入れて、攻撃の基軸としたかったのだと思います。

この同じタイミングでの作戦変更は風間さんに軍配が上がります。

54分。ハーフウェイを過ぎたあたりの右サイドでボールを持った僚太が、受けに来た悠にパス。満男と永木を省略して、局面は一気にアタッキングサードでの最終ライン対決になります。悠は昌子を引っ張り出し、このパスをスルー。これがとても効きました。悠がスルーした先にいたのは三好です。左足で受けた三好は、直通が寄せてきたのを感じて、一度左アウトで体勢を立て直し、直通に正対します。これがまた効きました。これで直通が三好に引きつけられます。三好は、そうしておいてペナルティエリアに入りこむ悠にリターン。悠はソッコの寄せをものともせず、右足でゴール左隅に流し込みました。鹿島1-1川崎。

ここからしばらくの間、このゴールを象徴するように三好が攻撃を引っ張ります。登里にしろ悠にしろ、ラインの裏で勝負するタイプです。ラインに向かって仕掛けられるのは嘉人だけです。結果的には、このことが川崎の敗戦につながった理由のひとつだと思います。言い換えると、嘉人を隠せてリーサルウェポンとして使えた、三好が活きていたこの時間帯こそ、川崎の勝機だったと思います。

そこで石井さんが動きます。赤崎に代えて優磨を左WGに投入します。岳が1トップに入ります。夢生が体調不良で離脱してから組織で勝負することが基本的な攻撃プランとなっているなか、唯一個で勝負できるのが優磨です。CWCで自信をつけた感のある優磨のスピードとパワーに期待して、鹿島はボールを集めます。

川崎も同調するように、前線にはやめのボールをつけるようになります。川崎の敗因がもうひとつ。エース嘉人のシュートは120分間を通じて結果的に前半の二本だけでした。観た目の印象も、ペナルティエリアに仕掛ける選手が直接シュートすることが多く、ゴール前でチャンスを待つ嘉人にパスが入りません。誰でもゴールできるのが川崎最大のストロングポイントではありますけど、やはり二人でリーグ戦合計30ゴールの嘉人と悠に最終的にシュートさせることがもっとも合理的だと思います。ゴールのすぐ脇で観ていても、嘉人が呼んでいるにもかかわらずで、シュートが外れたあとに寂しそうな嘉人が印象的でした。たぶんアタッカーは周囲が見えていなかったのではないかと思います。川崎はきっと、あの川崎にして攻め急いだのでしょう。

ロングカウンターの出し合いの果ては、コンサバティブです。鹿島は戦いかたのスタイルもあって当初から延長も視野にしていたと思います。その点川崎は90分で勝負をつけたかったでしょう。でも攻め手が次第に閉ざされるなか、矛先を緩めます。両チームとも延長やむなしのムードになります。これも川崎の敗因のひとつ。

そこで石井さんが動きます。満男に代えてファブリシオを投入します。同時にシフトを4-4-2に変更します。ファブリシオは優磨と並んで2トップです。ボランチには岳が回ります。ロングカウンター要員を増やすことがひとつ。もうひとつは、中盤の攻防が少なくなったので、満男のコンディションを考慮できると踏んだところだと思います。

ある意味鹿島の思惑通りに、試合は最終決戦、延長に入ります。

延長に入り、やおら鹿島が攻撃のギアをトップに入れます。優磨とファブリシオがかわる変わるゴールを目指します。これで川崎も攻め手に出られるようになりますので、試合がオープンファイトの様相を呈します。そして、いきなり決勝ゴールが生まれます。

94分。康の右CK。大伍のヘッドはクロスバーに当たって、跳ね返りを頭で拾った車屋が憲剛に渡し、憲剛がクリアします。ロブとなったクリアボールの落下点にいた永木は、頭で前線に戻しますけど、これも高いロブになります。ボールの落下点にいたのは川崎の四人だけでしたけど、左側から優磨が勢いをつけて落下点に入り、誰よりも高くはやくボールに辿りつきます。優磨が前方にフリックしたボールは、谷口の脇をすり抜けます。そこに大伍がいました。大伍は拾おうとしますけど、これは谷口が阻みます。でもこぼれたボールがファブリシオの目の前に転がります。ファブリシオは右足ダイレクトで叩き込みました。鹿島2-1川崎。

これを受け、風間さんが動きます。田坂に代えて森谷を投入します。同時にシフトを4-2-3-1に変更します。森谷はボランチに入ります。トップ下は憲剛。悠が右三好が左のWGに回ります。憲剛を上げて高めの位置で基点を作る意図だと思います。

これで鹿島はふたたびリトリートモードに移行します。延長に入ってすぐの失点ですからまだ時間はあり、川崎は焦る必要はないのですけど、やはり最後の局面でシュートを急いでいた印象です。時間がジリジリ過ぎていきます。

そこで風間さんが動きます。僚太に代えて森本をトップに投入します。同時にシフトを3-4-1-2に変更します。森本は嘉人と並んで2トップ。前線にアタッカーを増やして、シュートアテンプトの可能性を広げる意図だと思います。ただ、森本と右WBに入った悠にボールが集まるため、ますます嘉人が影を薄くします。

今日は悠にシュート意欲がありました。実際に結果も残しましたし。でもクロスバーに嫌われるシーンなど、サッカーの女神に微笑まれた印象はありません。調子が良かっただけに、自分が決めたい気持ちが優っていたのでしょう。

最終盤は、風間さんも美しさと強さの同居を捨てます。エドゥを前線に上げてパワープレーにでます。致しかたないなと思いました。結果は、エドゥがやはり自分でなんとかしようという意思が勝り、孤立気味になってしまいました。

そして、歓喜と無情が交錯する、ノックアウトでもっとも美しいときが訪れます。このまま試合終了。鹿島2-1川崎。

鹿島アントラーズが第96回天皇杯を征しました。鹿島サポのみなさまおめでとうございます!。

鹿島に、とりたてて顕著な勝負強さの象徴を感じませんでした。でもそれこそが鹿島の強さなのかもしれません。決勝のために仕掛けたスペシャルプランは、アクシデントを含めて三つ。それを躊躇なく試合中に繰り出すことができ、かつチームのコンセンサスがオートマチックにできることこそ、鹿島が積み重ねた時間の成果なのかもしれませんね。

風間川崎はとても楽しいサッカーを魅せてくれる魅惑的なチームです。プロスポーツとして極上のエンターテイメントを提供してくれます。今日の決勝はJリーグを象徴する組み合わせでした。川崎あっての鹿島、鹿島あっての川崎。リスペクトというのはまた違うかもしれないけど、互いの存在意義を分かち合えることは、将来を通じてJリーグの美徳としてあり続けて欲しいと思います。

中村憲剛とチームは、まだ無冠です。表彰式の間中ずっと俯いたままだった憲剛が、一度だけ空を仰いで大きくため息をつきました。悔しさにあふれる姿がとても寂しかったです。でも、たび重ねる試練は最上の喜びの過程。新しい2017年シーズンは、川崎にとってリビルドとなる難しいシーズンです。プレイヤーとしてマネージャーとして、憲剛の肩にかかる荷はますます大きくなります。どうか、憲剛らしくサッカーを楽しんでくれることを願います。

今年もぽちごやブログをよろしくお願いします。すべてのサッカーを愛するみなさんにとって幸福な一年になりますように。