10月になって雨の日が続きます。梅雨みたいです。週明けには季節外れの台風が縦断するみたいです。お気をつけくださいね。
個人的に三週間のブレイク明け。ひさしぶりのサッカー観戦です。
本日は、残留争いの渦中にある札幌。モチベーションがありますから、やっかいな相手です。You'll Never Walk Alone♪
二度だけすっぽり空いたジェイに二度ともやられました。
東京はウタカがサスペンションのため欠場。嘉人が戻ってきました。シフトは3-4-2-1。GKは今日も拓生。3CBは右から徳永、ヒョンス、まる。WBは室屋と宏介。ボランチは洋次郎と慶悟。2シャドウは右にインス左に嘉人。1トップは永井です。
札幌は三試合負け無し中。布陣はほぼ前節と同じです。シフトは3-4-1-2。GKはク・ソンユン。3CBは右から菊地、横山、福森。WBは右に早坂左に直樹。ボランチは宮澤と荒野。今日のトップ下はチャナティップ。2トップは都倉とジェイです。
現在の、というか今年最後のシステムは嘉人がいてこそ成立する作戦だっと思っていました。前節の甲府戦は、その嘉人が不在でしたので少なくともビルドアップの組み立てができるのか心配していました。結果はセットプレーの得点のみのドローですけど、シュート数は安間体制以降の平均7.4本を上回りましたから、それほどの影響はなかったのかもしれません。とすると、嘉人を中盤で使うことが現状の最善だと思っていたけれど、けしてそうでもないのかもしれません。
嘉人を中盤で使うデメリットはシューターがいなくなることです。遼一やウタカを前線に置ける場合はともかく、今日のように永井とインスでは、実質チャンスメーカーだけで前線を構成することになり、生粋のシューターがいません。安間体制になってシュート数が一試合二桁に満たないのは、ビルドアップシステムに変更したことばかりが原因ではないと思います。
それにしても、ひさしぶりに観た嘉人を中心とする中盤の構成はクオリティを増しています。嘉人と慶悟、洋次郎のコンビネーションが出来てきているのでしょう。中断前の嘉人のポジショニングは左寄りに立つ比率が高かったのですけど、今日はより中盤を浮遊できるようになっています。それから、嘉人を囮にして、直接永井につけるパターンも出来ているので、より組み立ての幅を作ることができるようになると思います。なによりも、嘉人が縦にチャレンジするコースを作ってくれるので、さんざ指摘されたバックパスの頻度は格段に少なくなっています。これは、後方から見て前方の視界が良好になっていることを表わしていると思います。前線のスペースメイクがスムーズになって、パスコースを作れているからでしょう。インスを使う意味は良く分からないけど、案外そのあたりにあるのかもしれません。
札幌はシーズン序盤から、とくにホームマッチで勝ち点を積み重ねていました。アウェイは勝ち点ゼロ。ホームとアウェイの顕著な違いは、札幌ドームの魔力という非論理的な理由ではかたずかないと思っています。たしかにドームに行くと、国内唯一の全天候型サッカースタジアムの密封感と、それ故の音響効果で一種独特の雰囲気を持っていますから、魔力がないわけではなさそうです。札幌のアウェイマッチを観る機会は二回目なのですけど、初回は昨年のJ2時代でしたので参考になりません。東京戦のホーム&アウェイを観る限り、サイドの処理のしかたに違いがありました。今日はWBを下げ5バックのかたちを維持することを優先していたようです。残留を確実にするために勝ち点が欲しい状況ですから、アウェイ戦の通常モードとは言えないかもしれません。ただ、コンサバティブなモードは札幌の攻撃に厚みをもたらしてくれないことは確かなようです。
というわけで、サイドアタック基調の札幌に前への圧力を加えるWBが、その役割を担わず自重をします。本質的にDFである直樹はともかく、むしろ攻撃特質の高い早坂がほとんど攻撃に加わらなかったことは、今日の札幌の意志を最も体現していたと思います。
札幌の守備はオーソドックスです。ボールの在処に対してプレッシングするもぐら叩き戦法です。東京の縦へのチャレンジを予防するとともに、守備コースを限定する意図だと思います。札幌のサッカーはけして志が低くはありません。むしろビルドアップが熟成されていて、札幌スタイルと呼んでいいほどの独特のモデルをかたち作っています。昇格チームにあり勝ちなアグレッシブな守備を前提とするショートカウンタースタイルではなく、ステレオタイプに流されない誇りのようなものを宿しています。その意味でリスペクトしていますし、来年も札幌に行きたいなと思います。
札幌のストロングポイントは明確。福森です。福森の左足の精度を活かすべく、攻撃方法が定められていると言ってよいと思います。基本的にサイドアタック偏重です。クロスをシュートパターンの主戦としています。さらにアーリークロスを多用することが札幌の特長。これはアウェイモードになると一層顕著かもしれません。WBの選手の選択によって異なるかもしれませんけど、ホームではWBを積極的に攻撃参加させ、アタッキングサードでの数的優位を志向していると思います。ただし、いずれにしろクロス基調ですから、ターゲットマンに優位性がなければ成立しません。都倉とジェイのツインタワーは、中央のオポチュニティを増やす意味で重要な武器です。
さらにもっとツインタワーを置く意味があります。それは、最終的にクロスに繋がるために、つまりクロス供給者がルックアップできる状況を作るために、攻撃の基点、すなわちポストプレーです。ジェイが磐田時代よりも活き活きして見えるのは、コンディションが戻っていることだけでなく、ポストの重責を都倉と分散できているからのような気がします。最終局面のオポチュニティでは、たんにターゲットを二倍にするだけでなく、一方がシャドウ、つまりゴール前から存在を消すことができます。結果的にこのかたちで先制ゴールを生み出しますから、あきらかに武器のひとつになっていると思います。札幌はおそらく、チームもサポも等しくこれでダメなら納得できるという、迷いのない闘いかたを確立できているのだろうと思います。
基本的にクロス基調の札幌に重要なアクセントをもたらすのがチャナです。チャナのロングドリブルはDFの注意を引き付ける効果がありますから、クロッサーがよりフリーで勝負し易い状況を作ります。少なくともアタッキングサードに入る手段のひとつとして、チャナのドリブルは有効です。まだペナルティエリアで勝負するクオリティにないようで、ドリブルインからのシュートはありませんでしたけど、若いころのまなのような勢いを感じました。来年以降が楽しみな逸材ですね。
東京は序盤、5バックでひきこもる札幌を予見して、中盤を省略したフィードを直接前線につける作戦で臨みます。永井が落としたボールをインスが拾って裏に抜ける意図だと思います。対する札幌は札幌らしくポストからのサイド展開を経由したアーリークロスでリズムを作ろうとします。この静かな主導権争いは札幌が少しばかりアドバンテージを持ち、札幌に主導権が渡りかけました。
札幌に傾きそうな流れを断ち切って、逆に東京にリズムを生み出したのは永井のワンプレーです。20分過ぎころに左サイドライン際で嘉人からのパスを受け、守備網からのプレッシャーを受けながら宏介を走らせるチャレンジングな縦パスを成功させます。この勇気がチーム躍動感をもたらします。同時に札幌の中盤に脅威を認識させます。これにより、嘉人を軸にした中盤の構成が円滑になります。東京がアタッキングサードでチャレンジする機会が増えていきます。
今日は、結果的には負けてしまったけど、試合内容はけして悪いものではありません。むしろ観ていて面白かったです。ボールが回りますし、繰り返しになるけど縦にチャレンジする意欲もありました。なによりリズムが良く、ギクシャクするようなストレスがありませんでした。この、ある種の爽快感をもたらしたのは東京だけではありません。サッカーは相対的なスポーツです。当然、札幌も貢献してくれています。札幌は、残留争いというシリアスな状況にありながら、基本的にはガチで臨むことを信条としているのかもしれません。東京がリズムを掴んでくると縦にはやくなりますけど、札幌も負けじと縦にはやい展開を挑んできます。それゆえ、前半にしてはやくもオープンファイトの様相をていしてきます。ガチのどつきあいこそ、理屈抜きで楽しいサッカーです。勝利至上ではない、エンターテイメント性を重視する意志が札幌にはあるのかもしれません。
双方にとって、互いに良いかたちができて、めずらしいほどに噛み合った試合になりました。前半はスコアレスのまま終了。
内容は悪くなかったので、あとはアタッキングサードでのチャンスを多く作ればゴールもそのうち生まれるだろうと思っていたら、逆にはやばやと先制を許します。
47分。福森のセンターサークル内のFK。福森はペナルティエリア内の都倉にフィードを送ります。札幌はペナルティエリア中央に宮澤ファアにジェイを押し出します。東京はそれぞれヒョンスと徳永がつきます。このフィードで東京は下がり加減。ところがジェイのみステイ。そのジェイに向けて都倉がフリーでフリック。ジェイはペナルティエリア内でどフリーです。トラップしたジェイは右足を振り抜きます。これがゴール右隅に決まりました。東京0-1札幌。
セットプレーでありながら、都倉とジェイをやすやすフリーにしてしまったミスです。今のチームは、攻撃の組み立ての改善に重点を置いていますから、局面の守備はある程度個々の選手の質にゆだねていると思います。もはや順位に対するモチベーションがありませんから、やっていて楽しくサポもそれなりに楽しめるサッカーをせざるを得ない状況だから許される選択であることは間違いありません。本質的な問題は、局面の守備のミスの多さです。ヒョンスが入って中央の安定感は得られたのですけど、1on1の勝負に持ち込まれるとウィークポイントをさらけ出してしまいます。来年への課題として、技術的な補完に取り組んでほしいと思います。そして、同じようなミスで追加点をあびます。
59分。センターライン付近から福森が左ライン際アタッキングサードにかかるあたりにはっていた直樹に出します。直樹はすぐに後方同じくライン際にいた都倉に渡します。都倉はルックアップ。このときゴール前はジェイとチャナにまるとヒョンスの2on2。そしてジェイが呼び込んでいました。都倉はジェイに合わせるクロスを送ります。まるの後方から一瞬前に出たジェイはフリーで合わせました。東京0-2札幌。
2点先行されたことを受け、安間さんが動きます。セットプレーのタイミングで、インスに代えて遼一を同じく右シャドウに投入します。この効果は、直接ではないですけど、すぐに表れます。
65分。宏介の右CK。東京は中央に永井と遼一をダミーで置き、ヒョンスがスクリーンです。ヒョンスのマーカーは都倉ですけど、ヒョンスではなくポジションを意識します。宏介のクロスは、その都倉の頭上を越えてファアに合わせます。そこにヒョンスが流れました。ヒョンスは綺麗に合わせます。東京1-2札幌。
セットプレーに関してはJ1でも優位性足り得る得点源を、都倉とジェイの二枚を持つ札幌のほうが有利だと思っていました。前節まるが決めたとは言え、基本的にはヒョンスだけですから。そこに遼一が加わることで、選択肢は増えます。みえみえのヒョンスのスクリーンでしたけど、ニアに遼一がいた効果はあったと思います。現状では得点をセットプレーに頼らざるを得ない状況ですから、可能性を失するようなスターターの選択はできれば避けてほしいと思います。
さてクロージングに向けて四方田さんが動きます。チャナに代えて稲本をボランチに投入します。荒野が右WBに出ます。早坂がトップ下に回ります。中盤の守備の安定感を確保する意図だと思います。今年アウェイで勝ち点3を得る機会はこれまでありませんでしたから、残留を引き寄せるためにもものすごく貴重な機会だったでしょう。
これを受け、安間さんが動きます。徳永に代えて梶山を投入します。同時にシフトを4-3-1-2に変更します。3CHは右から洋次郎、慶悟、梶山。トップ下は嘉人です。前線の枚数を増やす作戦です。それから、嘉人の役割をシューターに切り替える意図だと思います。嘉人は前半を含め、フリーのシュートアテンプトが二回ありました。いずれも守備側にはばまれました。怪我明けで感覚が戻っていないのかもしれません。
四方田さんが動きます。ジェイに代えて金園を同じくトップに投入します。ジェイのコンディションを考慮したのだと思います。
安間さんが動きます。永井に代えてリッピを同じくトップに投入します。好調リッピが流れを呼び込んでくれることに期待したのだと思いますけど、テストの意味のほうが強かったと思います。
永井のプレー選択については、永井本人の目線でしか確認はできませんけど、客観的に見ると、シュートがファーストチョイスではなかったのだろうと思います。1トップに入っておきながら、永井は本質的にはチャンスメーカーなんだなとあらためて思いました。イージーなシュートアテンプトだっただけに悔やまれます。もっとギリギリの難しいプレーだったら、お洒落ハヤブサが発動したことでしょう。
四方田さんが〆ます。早坂に代えて河合をボランチに投入します。宮澤をトップ下に上げます。守備網を盤石にする意図です。
札幌サポの願い通り、このまま試合終了。東京1-2札幌。
かつて、昇格初年度の湘南に初勝利を献上した記憶があります。札幌の今年アウェイ初勝利は、よりによって味スタでした。しかも札幌の得点源と東京のウィークポイントがシンクロした完敗です。もはやどう闘うかなんてどうでも良いという観念をしているとはいえ、選手もサポもお互いにできるだけ笑顔で終わりたいという気持ちもありますから、もうちょっと豪快にやってほしいなと思います。攻撃面ではミスしても気にしませんから。
残り四試合。ホームは、次節清水戦を終えると、最終戦まで一か月以上開きます。そろそろシーズン終盤の雰囲気が漂ってきて、そこはかとなくサウダージです。この状況で遠方アウェイ遠征の酔狂をするモチベーションが起こらないので、実質観戦はあと二試合かも。願わくば、単純に楽しめる試合を観られたらと思います。