ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2015J1リーグ2ndステージ第15節FC東京vs浦和レッズ@味スタ20151024

2015-10-25 15:21:31 | サッカー

悔しい。あんまり悔しいから今日は写真だけ(T_T)。

写真だけにしちゃうのがあまりにももったいないくらいの激闘で、客観的に観たら素晴らしい試合でしたので、気を取り直して書きます。一夜明け、悔しさが少し癒えたかたは、もしよろしければちょっとだけ冷静に、一緒に試合を振り返ってみてください。

残暑を思わせる小春日和になりました。長袖を着てたら暑いくらいでした。

すでにぼくらの焦点は2ndステージにはなく、年間順位です。4位ガンバが勝ち点2差に迫っています。ずっと上を追っかけていた今シーズンでしたけど、残り3試合というここにきて、はじめて追われる立場になりました。CSの綾というか、年間3位で追われる立場というのも妙な気分ではあります。

あまり思い出すのもアレなのですけど、1stでもGW期間中までの連勝で一気に盛り上がって、天王山として迎える首位浦和戦のつもりが、その手前で鹿島にくじかれました。今同じような状況で、山雅、広島とパーフェクトを見せて、いざ浦和と年間順位の上位決戦と意気込んでいたら、手前で湘南に邪魔されてしまいました。少しだけ不安な流れを感じながらも、選手、スタッフ、サポともに、これまでに無い感情の昂ぶりを感じつつ臨む、今日は宿敵浦和戦です。本日のYou'll Never Walk Alone♪。選手入場時のコレオグラフ

おそらく自他ともに認める対浦和激闘譜にふさわしい激戦は、猛追もあと一歩およばず。悔しい悔しい敗戦です。

東京は河野が戻ってきました。浦和を意識した、バランス重視の今年のベストメンバーです。シフトは4-3-1-2。GKはブラダ。CBはモリゲとまる。SBは徳永と宏介。3CHは右からヨネ、秀人、羽生。トップ下は河野。今日の2トップは遼一と慶悟です。

浦和はオプションの範囲内での不動のメンバーです。シフトはおなじみ3-4-2-1。GKは周作。3CBは右から森脇、那須、槙野。ボランチは勇樹と陽介。WBは右にタカ左に宇賀神。今日の2シャドウは右に慎三左にムトゥ。今日の1トップはズィライオです。

1stステージでは1-4で敗れましたけど、点差よりも浦和ののっけからの圧力が印象に残っています。1stステージの優勝は、この先行逃げ切り策がはまったことが成功要因のような気がします。2ndステージは、とくに夏場に失速しました。恒例の浦和の失速は、選手の固定化による作戦のワンパターン化の弊害が現れたものだと思っています。浦和はこのまま、例年通りに急降下するのかと思っていました。ところが、秋口以降、復調しています。通年での総合勝ち点でも首位を争っています。なにが変わったのか。浦和を見るのはナビスコカップの新潟戦以来ですから約2ヶ月ぶり。あの時は大量失点後のスクランブルでしたから参考になりません。その前はアウェイ新潟戦で、まさに不調期でしたから、浦和の変化は今日が初見です。

浦和の基本的な闘いかたは変わりません。今さらなので詳細ははぶきます。最大の特長は攻撃時の4-1-5のシフトです。陽介をひとり中盤に残して、勇樹が最終ラインに入ります。WBが最前線まで上がります。1stステージでは、1トップ2シャドウのボール保持力を活かし、高い位置で基点を作って、WBをアタッキングサード深い位置まで上げて1on1の状況を作るパターンでした。この考え方も基本的には変わらないのですけど、WBに渡すまでのプロセスに工夫がありました。

まず、浦和は急ぎません。ミシャ初年度のように、最終ラインでボールを回し、ゆったりとしたリズムを作ります。攻撃のスイッチはワイドに開いた左右のCBが押します。ボールを回している間に、シャドウが細かくポジションを修正します。この狙いは、CBとSBの間にスペースギャップを作ることにあります。さらにWBが対峙するSBとの間合いを見て、抜け出すタイミングを計ります。この動きが一致した時、森脇もしくは槙野から、CBとSBの間を狙ったロングスルーが繰り出されます。とくに宇賀神を使う頻度が高かったと思います。浦和は左右をバランス良く使うチームですけど、あえて左を伺ったのは、モリゲの状態を意識していたと思います。

この動きでわかると思うのですけど、今の浦和の攻撃は、つまり中抜きです。陽介は言わば囮。ただ重要な役を担います。中盤を広範囲に浮遊することで、3CH、とくにヨネと羽生をひとりで中央に引きつけます。サイドエリアでSBを剥き出しにするため。浦和の静かな立ち上がりは、これらの作戦を水面下で粛々と遂行した、スパイ大作戦のような巧妙な工作でした。

東京はこれに、まんまとはめられます。今日の東京の基本的なビジョンは、自慢のロジカルな4+3+1+2の4ラインの守備網で浦和の攻撃を機能不全にし、ロースコアの心理戦に持ち込むことだったことは、我々外部から見ても明白です。浦和はそれを逆手に取り、逆に東京の守備網を機能不全にします。東京の堅守は、3CHの連動にその原点があります。浦和の中抜き作戦は、3CHを実質無意味にすることを意図していました。おそらく東京は、1stの浦和をイメージして、2シャドウが中盤に下りてくることを念頭に、両WHが機能することを想定していたと思います。浦和はあえて両シャドウを最前線に張り付かせることで、見事に東京のAプランを崩壊させます。そしてさっそく、浦和の作戦が奏功します。

11分。遼一が槙野を倒して得たリスタートから。最終ラインが自陣でゆっくりボールを回します。勇樹から槙野に入ったところで、槙野がダイレクトで一気に前線に送ります。狙いはモリゲと徳永の間。そこに宇賀神を走らせ、一気にアタッキングサードに入ります。徳永の裏をとった宇賀神が追いつきます。この時ゴール前はズィライオにモリゲとまる。遅れて陽介、ムトゥ、タカが上がっています。これに対し東京は宏介だけ。第二波が数的不利になっていました。宇賀神は深く切れ込んで、ゴールラインから、フェイドアウェイの動きでファアに流れるズィライオにロブクロスを上げます。これはブラダがパンチングで逃れますけど、これが猫パンチ状態で中途半端なクリアになります。高く上げられなかったかな。詰めていたのが陽介でした。東京0-1浦和。

浦和は、ある程度は作戦の成功を想定していたと思います。最近の浦和を見ていないので、今日の作戦が東京対策なのか基本プランなのかはわかりません。ただ、スカウティングが十分な東京をして安易にはまってしまったところを考えると、やっぱり東京対策だったのかもしれませんね。もっとも、これほどはやくゴールという成果が出るとは思っていなかったんじゃないかと思います。

ブラダは、湘南戦と同じミスでした。2点目と4点目は致し方ないとして、この1点目と3点目は、権田であればという気持ちを禁じえません。ナビスコカップのアウェイ鹿島戦を見ていないのですけど、それ以前の達也の安定感を考えると、厳しいようだけどこの大事な時期には信頼性が一番なんじゃないかと思います。おそらく東京は、浦和の作戦に多少ならず混乱していたと思います。混乱というのは言い過ぎかもしれません。アジャストの方向性を確認しようとしてた矢先の失点だったと思います。そして失点によってアジャスト仕切れない焦りも出たと思います。さらに浦和が東京の心を揺さぶります。

14分。ブラダのGKを拾った浦和が自陣からビルドアップです。森脇がハーフウェイを越えて右ライン際で高く位置取るタカに渡します。アタッキングサードに入ります。タカはそのままドリブルで深く切り込みます。カットインを狙いますけど、宏介が密着マーク。タカは上がってきた陽介に渡します。河野が気づきますけど、陽介の反応のほうが速く、ペナルティエリア手前でフリーになります。この時ペナルティエリアでは、ニアにズィライオと興梠、ファアにムトゥがいて、それぞれモリゲ、秀人、徳永が見ています。陽介にまるが寄せます。陽介は寄ってきた宇賀神に出そうとしますけど、まるのプレスに押されてボールをこぼします。これをヨネが拾おうとしますけど、届きません。イーブンボールになります。この時ファアでは、徳永がムトゥの位置を確認してからボールに視線を戻します。不運なことに、徳永が目を離したタイミングで、しかもイーブンボールがムトゥの前に転がります。ムトゥはタイミングを計ってダイレクトで巻いたコントロールショットをゴール右上隅に決めました。東京0-2浦和。

浦和の選手もスタッフもサポも、びっくりぽんだったと思います。ぼくらもびっくりぽんでした。激闘必至と思って、朝から体が震えるほどの緊張と興奮のなかにいましたから、浦和のAプランがあっさり結実するのを見て、拍子抜けというか、こんなはずじゃなかった感は否めませんでした。でも、ミステルと選手たちは、まだ余裕がありました。東京は、選手と基本作戦を完全に固定化するミシャ浦和と対極的に、相手や状況に応じて臨機応変に闘いかたを変えられるよう、これまでの日々を積み重ねてきました。その成果がこの決戦で活きます。

ぼくらはミステルのおかげで、考えるサッカーを学びました。2点のビハインドを負った直後、ミステルが冷静に動きます。シフトを4-4-2に変更します。慶悟が左メイヤに下がります。右は羽生。浦和の攻撃スイッチである森脇と槙野を意識して、サイドの守備力を高める意図だと思います。これまでも、何度も守備を安定させるためにとってきた作戦ですから、選手もぼくらも違和感なく受け取ります。ただ、マリノス戦と湘南戦で見たとおり、攻撃力に難がある作戦だということも、ぼくらは知っています。まずはもう一度チームの闘いかたの基礎を取り戻そうという考えだと思います。ところが、これもびっくりぽんなことに、この作戦変更は守備だけでなく攻撃面でも奏功します。

16分。宏介のスローインから、東京は最終ラインでボールを回し、徳永の位置を上げます。その徳永に渡して攻撃開始。この時羽生が中央から右に流れる動きを見せます。これに勇樹がつられます。中央は陽介だけ。陽介の前に秀人とヨネ。この局面で2on1の数的優位ができます。ムトゥを引きつけた徳永は内のヨネに渡します。この時前線は三枚。ニアに慶悟がいて那須が見ています。中央の遼一は森脇が見ています。河野がバイタルエリアでフリー。河野がニアに少し移動したので、那須が慶悟と河野を見る形になります。那須が河野に視線を送った瞬間、慶悟が裏を取ります。ヨネはこれを見逃しません。ヨネからのスルーを右足で受けながらターンした慶悟は、そのままペナルティエリアに入ります。寄せてきた槙野を左手一本のハンドオフで消し、そのまま右足でトラップ。姿勢を整えて周作の位置を確認し、角度の無いところから周作とポールの狭い隙間を通しました。ゴラッソ。東京1-2浦和。

ミステル東京らしいロジカルな作戦変更で成果を見ました。東京は、期待通りに安定します。浦和のロングスルーが機能しなくなります。そこで浦和はBプランに移行します。通常通り、1トップとシャドウを基点にしたビルドアップスタイルに戻します。東京の中盤が二枚になったので、狙い処がボランチの脇のバイタルエリアに変わったためです。

今日の東京の4-4-2は、失敗した2試合を教訓にしてか、重心が下がり過ぎません。工夫はメイヤの位置です。慶悟と羽生は攻撃時に高めなポジションを心がけていたようです。なので、いつものライン型ではなくボックス型です。しかも、とくに慶悟が内に絞り加減に位置取っていたので、遼一との距離感も開き過ぎません。これにより、宏介の攻撃参加も促すことができます。

両チームの攻撃面での工夫に対し、守備側がこれまた互いに慌てることなく、堅実に対処します。この試合唯一と言っていい安定した時間になりました。流れとしては、作戦の引き出しが豊富で、しかも作戦変更が早々成果をあげた東京が、追い上げムードを作りかけていましたから、ぼくらも心のなかで、同点そして逆転のシナリオを描きつつありました。その矢先、痛い痛い、ホントに痛い失点を喫します。

27分。浦和のGKから。最終ラインが自陣でボールを回します。勇樹が自陣から、下がってきたズィライオにグラウンダーのパスをつけ、攻撃スイッチが押されます。モリゲを引っ張り出したズィライオは、ダイレクトで左にいた宇賀神に渡します。切り替えたモリゲが宇賀神に寄せますけど、宇賀神はキープ。その間に宇賀神の左脇をムトゥが抜け出します。宇賀神はムトゥにパス。ムトゥは細かいタッチのドリブルで、モリゲが上がって開いたスペースに入ります。モリゲのスペースをカバーするためにまるが中央に寄せます。それに連動して宏介も絞ります。浦和はゴール前に慎三だけ。この時、逆サイドをタカが上がっていました。これを見たムトゥはタカにパス。タカは左足でシュートしますけど、これはまるに当たります。こぼれ球が慎三に当たってイーブンボールになります。ちょうど慎三がポストした形になります。これに先に反応したのはタカでした。タカは今度は右足を振りぬきます。東京1-3浦和。

今日のMVPはズィライオだと思います。今年は今日で8試合目の観戦になる浦和ですけど、これほど安定して力強いズィライオを見た記憶がありません。東京の守備の安定の重要な要素として、秀人、モリゲ、まるの三角形の堅さがあるのですけど、ズィライオはひとりでこの三人を受け持ちます。三角形のなかに入ってしまうと身動きができなくなってしまうのですけど、今日のズィライオは、三角形の頂点を目指し続けます。グループでの守備を機能させず、1on1の状況を作ります。それでも東京が誇る守備の要は、通常個でも十分に対応できるのですけど、今日はズィライオの細かいポジション修正とスピードと技術に手を焼きます。

このゴールが、実質今日の結果を決定したと思います。東京が、守備が安定しはじめて90分間のイメージを持てるようになった矢先の出来事ですから、ショックが大きかったです。作戦の幅が少ない浦和としても、このゴールは心強かったと思います。

この失点を受けてミステルが動きます。シフトを4-3-1-2に戻します。通常ミステルは、短絡な対処療法的な作戦を取らないのですけど、さすがに決戦ですから、点を取りにいくしかないという判断だと思います。

そしてこの時間帯から、浦和のCプランが発動します。東京がバイタルエリアを基点に、少ないタッチで縦にはやい攻撃を志向しますので、浦和はその基点をつぶしにかかります。コンタクトがはげしくなってきます。遼一に対しては、那須、槙野、勇樹が、慶悟に対しては森脇が厳しくマークします。先に述べました通り、今年ずいぶん浦和を観てますけど、これほど激しいコンタクトを見せたことは一度もありません。もしかすると浦和には、それと認める特定の相手、たとえばガンバ、鹿島、マリノスのようなチームに対してだけ発動する守備モードがあるのかもしれません。獰猛で狡猾な、チャンピオンチームが持つ強さのようなものを感じました。もちろん年間勝ち点での王者という目標があってのことでしょうし、地上波全国中継ということもあったんでしょうけど、東京を意識して東京だからこそ取らざるを得なかった究極プランだったんじゃないかと思います。

ただ、ちょっとおやっと思いました。浦和は守備加重になることなく、基本的な闘いかたのままです。相変わらずWBも左右のCBも高い位置を保ちますし、中盤はボランチ二枚のままです。つまり、もともと浦和に内在するリスクが、そのままの状態で残っています。たしかに点差が広がりましたけど、この点で光明を感じていました。スペースがあれば、攻撃のしようもあります。まだまだ何かが起こりそうな予感を感じました。前半はビハインドのまま終了。

後半頭からミステルが動きます。ミステルもスペシャルプランを用意していました。今日はびっくりぽんなことが多い試合でしたけど、これほどのびっくりぽんは、ミステルが来てからの2年間で感じたことがありません。シフトを3-3-3-1に変更します。てか、守備をフルマンマークに切り替えます。中央ズィライオに秀人、ムトゥにモリゲ、慎三にまる、宇賀神に徳永、タカに宏介、陽介に羽生をそれぞれつけます。アンカーにヨネが居てカバーマンです。なので、ヨネと羽生は縦関係です。アタッカーは、1トップに遼一を置いて、WGは右に河野左に慶悟です。大胆な作戦変更ですからプラクティカルなのか心配しましたけど、杞憂でした。最初の5分くらいちょっとバランスが乱れ加減でしたけど、すぐに安定します。もともとマンマークはシフトに依存しないのでやり易いこともあると思いますし、なにより守備能力が高いな選手が揃っている東京ですから、かつて観たことがないプランでも容易に対応できたのでしょう。いや、もしかしたら、今週のトレーニングで準備していたのかもしれませんね。

守備がさらに安定します。この作戦の意図は、まずは浦和の特長的な攻撃の仕組みを完封しようというものだと思います。でもビハインドなので、チームの闘いかたを安定させた上は、攻撃でも効果がないといけません。そこでミステルが動きます。河野に代えて翔哉を同じく右WGに投入します。河野にはWGの特性はありませんから、繋ぎよりも独力の仕掛けを期待したのだと思います。

さらにミステルが重ねます。羽生に代えて陸を投入します。同時にシフトと布陣を変更します。シフトは3-4-1-2です。秀人を一枚上げてボランチ。ボランチは横関係に戻します。モリゲと徳永がそれぞれスライドします。陸は右WBです。トップ下には翔哉が入ります。これが機能します。前線はちょっと変則的で、遼一を真ん中に置いて、慶悟を左サイドに張らせます。そして翔哉をバイタルエリアに置きます。左加重です。明らかに慶悟と宏介に主役を託す作戦です。わかっていても止められない二人ですから、リーサルウェポンとしてこれ以上ないキャスティングです。

ただちょっと心配だったのは宏介です。湘南戦でリズムを崩していた左足が、今日もまだ精度を欠いたままでした。宏介が、いまJリーグのなかでも際立って輝くその左足の圧倒的なパフォーマンスを試合中に取り戻せるのかが、この試合の重要な鍵となりました。

浦和の守備にも変調が見えはじめます。今日の浦和は、先に述べました通り基点に対し厳しいマークで臨みます。東京が後方でボールを持つ場合には、フォアチェックを仕掛けます。中盤ではそれをさらに加速させ、二枚、三枚、時には四人でボールホルダーに寄せます。言い換えると、この浦和の初動の壁を越えると、攻撃のためのスペースが用意されているということです。東京はこれを利用します。翔哉とヨネ、秀人の縦関係でパスを繋ぎます。浦和は当然ヨネと秀人に襲いかかります。その背後を、再度翔哉と慶悟が狙います。この縦のパス交換をクイックにすることで、浦和の包囲網をくぐり抜けることに成功します。翔哉が基点になり、攻撃にリズムが生まれはじめます。

さあ一気に攻め込むぞという期待感が味スタに充満します。そんな時間帯に、結果的には決勝ゴールとなる失点を喫します。

62分。森脇の自陣のスローインをズィライオがフリックで右ライン際に落とします。そこに慎三がフリーでいました。慎三はドリブルで東京陣に入ります。カウンターです。東京はモリゲと徳永。浦和はファアにムトゥだけ。慎三はそのままドリブルでアタッキングサードに入ります。まるがマークに付きます。慎三はルックアップ。ファアではムトゥがカットインしようとしていて、徳永がケアしています。やや遅れて中央をズィライオが上がります。これは秀人が見ています。4on3。慎三はカットインからシュートを狙いますけど、秀人がカットします。右サイドにこぼれたボールに詰めたのはタカでした。慎三がつぶれてチャンスが消えたと思ったズィライオとムトゥは、タカがフォローするのを見てリセットします。オンサイドに戻ります。タカはクロスを伺いますけど、宏介がコースを消していたので、いったん陽介に戻します。陽介は中央の勇樹にパス。勇樹に翔哉が寄せますけど、勇樹はキープしてサイドチェンジ。上がってきた槙野に渡します。局面が左サイドに変わります。槙野は秀人が見ます。ニアのムトゥは陸がケア。中央ズィライオは徳永とまるがついています。浦和は慎三がバイタルエリアでフリー。東京もモリゲが一枚余っています。槙野はムトゥとのタベーラで状況を変えようとします。ムトゥが槙野のイメージの更に上をいき、中央のズィライオを使った三角形で、スペースギャップを作ろうとします。槙野のマーカーの秀人は、ボールウォッチャーになっていて槙野の動きが見えていません。ズィライオは右足ソールで槙野にジェンダーパス。フリーになった槙野は、丁寧なコントロールショットをゴール左隅に決めました。東京1-4浦和。

もちろん痛い失点だったのですけど、東京の攻撃が機能していましたし、浦和にこれ以上の作戦の引き出しがないことは分かっていたので、期待感は失われません。以降、結局最後まで東京が攻撃権を持ち続けます。今日はあまりスタジアムでサッカーを見たことがないお客さんもいっぱいいらしてたと思います。東京と浦和のサポが醸し出す最高の雰囲気だけでなく、ここから東京が魅せたショータイムに、きっと大満足されたと思います。東京サポであるぼくらにとっては、押しきれなかった無念が痛いのですけど、広く捉えたらJリーグにとっても東京にとっても、価値のある一戦になっちゃんじゃないかと思います。

さて、ミシャが動きます。ズィライオに代えて忠成を投入します。正直に言って、別に忠成を悪く言う意図はまったくなく、ズィライオが下がってくれてホッとしました。秀人がボランチに戻ったのは、ズィライオ対策の意味もあったと思います。ズィライオが前後に動くので、中盤がヨネ一枚だと対応しきれていませんでした。秀人とモリゲでズィライオを挟み込む意図だったと思います。それでもズィライオはポストをこなしていたので、東京に攻め込まれつつも浦和がカウンターを仕掛けられていた原動力になっていました。東京のマークも非常にタイトになっていた時間帯で入った忠成はホントに難しかったと思います。

ともかくも、浦和が基点を失います。中盤のイーブンボールも東京が拾う頻度が圧倒的に高くなり、以降は、ほぼ一方的に東京が攻め続けます。そして反撃の狼煙が上がります。

74分。浦和のオフサイドで、自陣からのリスタート。最終ラインでボールを回し、じわじわと浦和陣に入っていきます。浦和は完全に自陣にリトリート。モリゲがゆっくりとドリブルで浦和陣に入ります。なんとブラダ以外全員が浦和陣です。モリゲはまるに渡します。この時左ライン際を宏介が一気に駆け上がり、タカの裏を取ります。これを見たまるが宏介にスルーを送ります。このパスはタカがカットしますけど、こぼれたボールが森脇に当たり、なんと宏介に渡ります。アタッキングサードに入ります。宏介は森脇を引きつけてから、背後を上がる慶悟にパス。森脇が反応してケア。慶悟と森脇の1on1の局面に入ります。この時ペナルティエリアでは、ニアに秀人、ファアに遼一がいます。それぞれ那須と槙野がケアしています。やや下がり目で翔哉がフリー。さらに大外に陸が上がっています。じっくりタメて時間を作った慶悟は、森脇だけでなく宇賀神も引きつけます。これで残っていた宏介がフリー。この時ゴール前では、秀人がじわじわと那須から距離を開けていました。ルックアップしてこの状況を見た宏介は秀人に合わせます。那須の頭を越えるクロスは、飛び込んだ秀人にピッタリ合いました。東京2-4浦和。

ここに来て宏介の左足が復活しました。猛攻の興奮状態のなか、集中力が高まったのかもしれません。東京のエースの復活は、この試合だけでなく今年のこれからの闘いにも好影響をもたらしてくれるような気がします。

直後に、続けざまにミシャが動きます。宇賀神に代えて梅崎を同じく左WBに投入します。さらにタカに代えて平忠を同じく右WBに投入します。

選手と闘いかたの固定化は、功罪伴うと思います。浦和は今年、ミシャモデルの純度が高まり、力強い横綱相撲を取ることができるほどに昇華しました。一方で、今日のようにミシャモデルが封じられた時に、それに抗う手段は作戦変更には無く、選手に依存します。ズィライオ、宇賀神、タカとも、コンディションを考慮した交代だと思います。梅崎をシャドウで使われると怖いなと思ってました。浦和のシャドウのなかでは異質なドリブラーですから。東京は攻撃加重になると、ドリブラーによるロングカウンターに後ろ残りの守備陣が翻弄されることが度々あります。慎三もムトゥもドリブルがありますけど、長い距離を走れるのは浦和では梅崎くらいだと思っていました。その梅崎をWB、つまりこの状況では守備のために使ってくれたことで、実質浦和のカウンターの脅威は消えたに等しいと思います。

試合は最終盤に入ります。ショータイムは残り10分あまり。フィナーレの時間に入ります。2点差。ガンバとの勝ち点差を考えると、最低でもドローまでは辿りつきたいところです。ミステルが動きます。徳永に代えて容平をトップに投入します。同時にシフトを4-4-2に戻します。浦和のカウンターの脅威がゼロになったので、フルマンマークの必要が無くなりました。形の上では4-4-2と表現しますけど、徳永と宏介が上がりっぱなしですから2-2-4-2に等しいです。東京の猛攻に、味スタのテンションがマックスになります。恥ずかしいのですけど、自分は感動のあまり泣きながら観てました。そしてまた一歩、浦和を追い上げます。

84分。宏介の右CK。浦和はゾーンとマンマークのハイブリッドです。モリゲには槙野、遼一には那須、秀人には勇樹、容平には慎三。まるには忠成、慶悟には森脇がつきます。ストーンはニアに平忠と陽介。宏介はキックモーションに入ろうとして、一度止めます。浦和の動きに何か感じるものがあったのかもしれません。ちなみにこの時は、ニアに秀人が流れ、その背後からモリゲが飛び込み、逆に遼一は中央にステイするパターンでした。もしかしたらモリゲをターゲットにしていたのかもしれません。槙野のマークがしっかりしていたので、それを嫌ったのかもしれません。この時、ニアに飛び込んだ秀人が、そのまま反時計回りにゴール前を一周します。勇樹がそれにずっとついています。宏介が二度目にキックモーションに入った時、この秀人の動きを確認したモリゲが、あえて秀人の前を横切るような動きでゴール前に寄せます。このモリゲの動きがスクリーンプレーのようになり、勇樹が秀人を見失います。秀人は一人、ニアに姿を現します。宏介が合わせたのは、秀人でした。勇樹が必死に体勢を崩そうと寄せます。宏介のクロスに先に触ったのは周作でした。でも交錯する極限の局面で、さしものの周作も触るのがせいいっぱい。こぼれたボールは、秀人の執念が呼び込み、秀人がギリギリで右足を伸ばして押し込みました。東京3-4浦和。

ここから先は、浦和はもう、手段を選ばず、正も邪もなく、体をはって必死の守りで耐えます。ムトゥまでも、レフリーの判断の許容する範囲内でのチャージを見せます。チーム全体で守り切る強い意志を感じました。東京も、遼一を中心に体を張ります。意地とフィジカルのぶつかり合いは、時間との勝負になります。考えてもせんないことですけど、もう少し時間があれば押し切れたかもしれませんね。

激闘譜にふさわしい激戦となった最終盤は、結局浦和に軍配が上がりました。このまま試合終了。東京3-4浦和。選手を勇気づけるYou'll Never Walk Alone♪

これで、ポポさん以来はじまった浦和との抗争は、1勝3敗4分、16得点20失点になりました。今年ゴレアーダを喫したのは浦和戦だけ。しかも2試合とも。年間最小失点もマリノスに抜かれてしまいました。守備を最重要視して結果を出してきたミステル東京をして、何かを狂わせる力を浦和は持っているのかもしれません。いずれにしろ、点の取り合いになると分が悪いことは身にしみてわかりました。

試合後は悔しさと疲労で放心状態になり、しばらく立ち上がれませんでした。味スタの丸い夕空を、ぼーと眺めてました。時間が経って客観的に振り返ると、とっても面白かったです。ワクワクしました。知的好奇心も湧きましたし、やっぱり強い相手との試合は良いものだなと思いました。

とは言えガンバです。これを書いている時点では、ちょうど仙台vsガンバがはじまったばかりです。今回ばかりは他力だけど、仙台を絶大に応援します。どうか引き分け以上をお願いします。

いよいよリーグ戦は後2試合になりました。次のホームは最終戦。2ndステージ優勝争いやらCS出場権争いやらで気づきませんでしたけど、今年もサウダージな季節がやってきます。でもいまはそんな気持ちは置いておいて、なにがなんでも、外野になんと言われようとも、CSに出たいです。下克上したいです。よね?。


加賀健一選手ルーツを巡る旅 ―20151020 大原② いま、ここに加賀さんがいるたしかな証拠を探して―

2015-10-20 19:54:18 | 加賀さん

拝啓 加賀さん

サイン拝受しました。練習後のおつかれのところ、ありがとうございました。これでぼくも、いま、ここに加賀さんがいるたしかな証拠を見つけることができました。

近頃はすっかり秋めいてきましたね。加賀さんは輝く汗と白いふとももなかたですからやっぱり夏が似合うけど、秋の加賀さんも素敵です。秋陽を逆光にして輝く繊細な髪に、普遍的な秋の美を感じます。

大原の加賀さんを観られたし、埼スタで加賀さんに会えたので、次は赤いユニホーム姿の加賀さんを観るまでは大原に来るのは控えようと思っていたのですけど、冷静に状況を考えたらよほどのことがない限り願いは叶いそうにないので、また会いに来ちゃいました。

週末にはいよいよ味スタでの東京戦を迎えますね。古巣と対戦する経験は、2013年8月の磐田戦以来。あんまり古巣を意識したコメントを言わない加賀さんだけど、仲間をとても大切にするひとだから、真剣勝負と再会をとっても楽しみにしてますよね。東京もそういう対象だと思ってくれてるといいな。

加賀さんを追った東京サポはそれほど多くないと思うけど、加賀さんとの再会をシーズンのスケジュール発表のときから楽しみで、心待ちにしてたファンはぼく以外にもいっぱいいます。サッカーの神様がいるなら、どうか願いを叶えてください。

思えば、磐田を去ってからというもの、毎年秋は辛いシーズンになっちゃってますね。秋が似合うなんて言っちゃってごめんなさい。今年こそ充実した秋を過ごすと決めていたと思うのだけど。

やっぱり、プロサッカー選手として試合に出てないという事実は、加賀さんの気持ちを透過するとき、ネガティヴに捉えちゃいます。本意ではないと知りつつ。もちろん試合に出られないことは、サッカー選手としての、もっと言うと人間加賀さんとしての自己表現の場、レゾンデートルを断たれることだから、悔しいだろうし辛いと思います。でも、それが今の加賀さんの気持ちの全部じゃないよね?。

とても嬉しいことに、時々レッズサポさんが練習の様子を教えてくれるんですよ。レッズオフィシャルも、なぜか加賀さんにフィーチャーすることが多いし。気づいてます?。だから、苦境にもめげず明るく真摯に練習に取り組んでるって、知ってます。ホントに仲間を大切にする加賀さんだから、もちろんチームのためっていう気持ちもあるんだと思ってます。でも、それだけじゃないよね?。

そうであってほしいという希望かもしれないけど、もしかしたら今、ホントにサッカーを楽しんでますよね?。なによりも全力でプレーできる体が嬉しいですよね?。今日脚は大丈夫って聞いたら、即答ではっきりと力強く「はい!。大丈夫です」と返してくれた声を聞いて、ずっと思ってた妄想が間違ってないって気になりました。加賀さん、今、楽しいですよね?。

なぜかなっていろいろ思います。精神的に大人で高い目標を持った選手が多いこともあると思うのだけど、一番想像してるのは、サッカーを科学的に捉える楽しさに触れられたんじゃないかっていうことなんです。これまでも、とくに去年は環境的には今年よりも良かったと思うけど、いや去年を経験したからこそ、アートとしてのサッカーに興味をもったんじゃないかなって。素人がなまいき言ってごめんなさい。

加賀さんの一番の長所はかけっこの速さってことは今でも変わらないと思います。ぼくが加賀さんを好きになった理由のひとつもそこです。ポジションも、センターバックやサイドバックで、恵まれたスピードで勝負できる場所です。でもそこは、科学的にサッカーを考える場所じゃなかったんだと思います。ミステルのサッカーに触れて、サッカーを学ぶ奥深さに目がいって、残念ながら怪我で半分も実践できなかったけど、やってみたいことがいろいろできたんじゃないかと思ってます。そしてミシャや、ミシャのサッカーに苦労しながら取り組む同ポジションの選手たちを見て、サッカー選手としてまだまだ伸び代がいっぱいあることに気づいたんじゃないかと思います。

あくまでもぼくの妄想だけど、なかなか試合に出られない苦境で、本来なら元気無くてもおかしくないのに、それでも笑顔で楽しそうに練習に取り組めているのは、ポジティブな気持ちが加賀さんのなかにあるからに違いない。そうであることを願ってます。加賀さんのこれからの長い長いサッカー人生のなかで、今をポジティブに捉えることは、きっときっと加賀さんの未来をポジティブにしてくれると、そう信じてます。

今日のフィジカルトレーニングで、フルメニューをこなして無かったのが心配でした。どこか脚の感覚が良くないのかなって思って、ずっと心配してるところだし、だから声をかけました。元気な返事を聞けて安心しました。逆に感覚が良かったのかな?。

ずいぶん優しくなりましたね。小平や味スタでも優しくて真摯だったけど、もっと柔らかくなってる気がしました。ルックスもアダルティな魅力が出てきたし、声をかけて目が合うとドキドキしちゃいました。気がついてるかどうかわかんないけど、レッズのマダムサポさんが熱い視線を送ってますよ。最近は若いサポさんも気づきはじめたみたいですよ。以前から、ちょっと近寄り難い、クールで怖いイメージがあるので人生経験の少ないかたは敬遠しがちだったけど、柔らかさが増して垣根が低くなったのかな?。人気が出るのは、応援してる者として素直に嬉しいです。

そんなレッズサポさんも、秋田のみなさんはもとより、磐田時代からのファンも、札幌のファンも、そしてぼくら東京のファンも、加賀さんがスタジアムで躍動する日を心待ちにしてます。今、日々積み重ねていることは、この4年間の苦労に報い、さらに飛躍するための礎だと思います。新しい加賀さん。期待して、ずっとずっと待ってます。待ってますから。

いつかまたお会いできる日を夢見て。

ぽちごや


2015Jユースカップ第23回Jリーグユース選手権大会2回戦FC東京U-18vsファジアーノ岡山U-18@小平20151018

2015-10-20 17:23:50 | サッカー

曇り空が続いた土曜日とうってかわって、日曜日は暑いほどの小春日和になりました。

Jユースカップ二回戦で、わが愛する両クラブ、東京とファジが激突すると聞いて、普段下部組織の試合は観ないのですけど、心が揺さぶられるのでやってきました。小平グランドです。

東京のシフトはボックス型の4-4-2。GKは1番山口くん。CBは4番渡邉くんと23番岡崎くん。SBは右に44番岡庭くん左に3番小山くん。ボランチは25番鈴木くんと7番安部くん。メイヤは右に17番伊藤くん左に20番生地くん。2トップは8番大熊くんと10番佐藤くんです。

ファジのシフトはボックス型の4-4-2。東京とがっぷり四つです。GKは12番武村くん。CBは3番忠政くんと2番加賀和くん。SBは右に14番西林くん左に5番森野くん。ボランチは7番金田くんと16番羽村くん。メイヤは右に10番吉田くん左に20番山本くん。2トップは9番松岡大地くんと11番石川くんです。

東京はとてもコレクティブな良いチームですね。プロでもなかなか観られないほどディシプリンがしっかりしていて、小気味良いので観ていて気持ち良いです。ディシプリンというと日本では従順というか、個性を消す印象がありますけど、けしてそういう意味ではありません。むしろ真逆で、個性の結実というか、スタッフがひとり一人の個性を見極めて活きる場所を見つけてあげていて、選手も責任を果たす。そんな幸福な関係が東京にできていると思います。

東京の守備システムは、トレンドです。フォアチェックをきっかけとして、コレクティブにボールを中央に寄せる形を守備網全体の動きで見せます。理想とするトランジションポイントはボランチのようです。

攻撃もとてもコレクティブです。基本プランはクイックアタックを志向していると思います。守備もそうですけど、全般にオーソドックスというか、トレンドをトレースしますね。それをしっかりと選手が表現できるのですから、ひとり一人のクオリティの高さが伺えます。

基礎はパス&ムーブサッカーのようです。中盤でトランジションしたら、パスをつないで、できるだけはやくアタッキングサードにボールを運びます。受け手がスペースメイクの動きを繰り返すのもトレンドですけど、狭いスペースでもパスをつけられる出し手の技術の高さが東京の攻撃を形作るベースになっているようです。

メイヤの動きで、攻撃パターンのバリエーションを作っているような気がしました。左右はシンメトリーです。メイヤがサイドに開く場合は、表はメイヤを基点にしてSBのオーバーラップを促すサイドアタック。裏はメイヤを囮にしてバイタルエリアに下がるトップを基点にして裏を狙うパターン。メイヤがバイタルエリアに絞る場合は、SBを高く位置取らせて、ポゼッションを高める意図でしょう。加えて、中央に人数をかけることで、かつ連動して動き続けることで、守備網をコンフューズさせる意図も含むと思います。

攻撃は、シュートで終わることを心がけているようです。アタッカー各自のシュート意識はとても高く、かつ高精度です。シュートは低くコントロールされていて、インサイドでしっかりとフェージングするトレーニングを日々積んでいるのでしょう。シュートパターンはとても多様です。クロスもカットインもあります。ペナルティエリアでのプレーアイデアも豊富で、観るサッカーとしてのエンターテイメント性も高いです。つまり面白い。ただちょっとミドルへの意欲は低いような気がします。

ファジもディシプリンのとれたチームですね。今日はとてもタクティカルなサッカーだったので、オリジナルのプランは確認できませんでしたけど、垣間見れた範囲では、サイドを重視しているようです。

守備は東京と違ってリトリートスタイルです。4+4+2の3ラインを横ワイド縦コンパクトに並べて、それを維持することを最優先するようです。ボールを奪いに行くというよりかは、絡め取るやりかたです。なので守備網の位置が重要になります。忠政くんと加賀和くんを中心にラインの位置に気を配っているのがわかりました。

攻撃は、チャンスメークはサイド基調です。トランジションするとサイドに早めに出して、スピードを活かしてスペースギャップを狙う意図だと思います。ロングフィードを入れるパターンもありますけど、スペースがある場合はドリブルで一気にアタッキングサード深くを目指します。どちらかというと左加重のように見えました。

フィニッシュパターンは、トップに高さがないので、カットインからのシュートのほうが可能性が高いと思います。

ファジはことし東京と手合わせをしたことがあるのかわかりませんけど、東京を意識して臨んでいたようです。過剰なほどの守備加重でした。動きがあるまでは攻撃をすることすら自重していたように見えました。守備網は、ボールを奪うというよりかは、東京の攻撃パターンを無効にすることを重視していたようです。かといって下がり過ぎることなく、ラインコントロールをしっかりしていました。素晴らしいディシプリンだと思います。

なので試合の趨勢は、東京がファジの守備網をこじ開けるか、はたまたファジが我慢し続けられるかにかかります。東京はあの手この手で鍵を開けようとします。

サッカーは思考するスポーツだと思っています。育成年代のことは良く分からないのですけど、U-18はプロ予備軍ですから、それまで以上に自分で考えることが求められるのでしょう。この試合では、東京もファジも高度な思考が必要な場面がそれぞれありました。東京は先制するまで。ファジは前半30分あたりからの15分間です。

東京は思考を巡らしていました。先に述べました攻撃パターンのほかにも工夫がありました。左右のメイヤが内に絞ります。ちょうどトップとメイヤで小さなスクエアを作るイメージです。おそらく東京のAプランは、ポジションチェンジを発想の基本にしていたのではないかと思います。ポジションを入れ替え易い距離感を保ち、スムーズでクイックなポジションチェンジで守備網にスペースギャップを作る意図だと思います。東京のストロングポイントは、もちろん前線のたしかなテクニックを踏まえてのことですけど、たぶん両SBでしょう。右の岡庭くんは強い筋力を持っているのでしょうか?。フィジカルに強みを感じるオラオラドリブルが魅力ですね。左の小山くんは、クロスの精度が高いです。長い距離のクロスでゴール前に合わせることができます。序盤の東京は、小山くんのクロスを攻略の軸にしていたような気がします。

ファジがこれに耐えます。東京は最終ラインでパスを回しながら守備網を執拗に左右に揺さぶります。4+4とは言え、難しいコントロールを求められますけど、忠政くんと加賀和くんのオーガナイズは完璧でした。

そこで東京は、15分あたりからBプランに移行します。最終ラインからの長いフィードを使うようになります。トップあるいはメイヤを走らせてシンプルに高い位置で基点を作る意図だと思います。ファジは織り込み済みだったのでしょう。この作戦にも耐えます。

我慢合戦の様相を呈してきた試合は、寝技に持ち込んだという意味でファジのシナリオ通りに進みます。流れが変わったのは、いや変えたのはファジのほうでした。トーナメントなので当然どこかでファジも攻めに出ないといけないのですけど、後半の一点集中だと思っていました。ところが前半のうちにファジは勝負にでます。25分過ぎあたりから、東京の中盤にパスミスが出始めます。さらに岡崎くんの処理ミスもあって、東京が我慢しきれなくなったとみたのでしょうか?。森野くんを中心に、左サイドでドリブルを軸にしたカウンターを見せるようになります。何度かビッグチャンスを作ります。松岡くんが、ペナルティエリアでコンタクトを物ともしないパワフルなシュートを見せれば、石川くんも独特の間合いから左足で狙います。

岡崎くんはおもしろですね。守備でクリティカルなミスはありましたけど、果敢なオーバーラップを見せたり、攻撃面での魅力がありそうです。

このファジの攻勢で、30分過ぎに試合の流れはオープンファイトに入っていきます。おそらく東京はほくそ笑んだことでしょう。ファジのカウンターは、渡邉くんの落ち着いたオーガナイズを中心に跳ね返します。ファジの気持ちが前がかり気味になったので、東京の攻撃も活性化します。

ファジは、ホントに勝負時だったのか。復習には格好の教材を得たと思います。東京は良く思考しました。あえて言うと、スタッフからも声がかかっていましたけど、ドリブルを織り交ぜてもよかったかなと思います。とはいえ、忍耐の闘いは東京に軍配があがります。

42分。中盤まで下がっていた佐藤くんがハーフウェイ左寄りでボールを持ってゴール前にアーリークロスを上げます。それに合わせたのは、逆サイドから飛び込んできた伊藤くんでした。東京1-0ファジ。

これで明らかにファジが混乱します。立て続けにゴールを許します。

45分。左CKからのこぼれを鈴木くんが頭で押し込みました。東京2-0ファジ。

15分間の思考の仕合いは、東京が勝りました。思考には論理的なものと直感的なものがあると思いますけど、この時間の思考は、論理思考を求められましたね。ミッションをこなすためのファジの思考は、考えかたと方向性を与えられたものでしたけど、東京は選手の自主性に任せていたようなので、より高度な思考が必要だったでしょう。東京のクラブとしての方針ですけど、根付いてきているんですね。前半はこのまま終了。

前半の2点で試合の趨勢は決まりました。東京は後半頭から、生地くんに代わって24番内田くんが同じく左メイヤに入ります。そして後半開始早々、東京がダメ押しします。

48分。岡庭くんが深くえぐってから折り返したクロスに大熊くんが合わせました。

以降は東京のショータイムになりましたけど、結局ファジは追加点を許さなかっので、キレてしまっても不思議でなない状況で良く頑張ったと思います。中盤でミスが出るようになりましたけど、最終ラインが良くバックアップしていました。

東京はペナルティエリアでロブスルーがあったり、ルーレットがあったり、ヒールがあったり、アイデアが豊富で楽しいです。でも浮ついた感じはなく、確かな技術に基づいた、スキルフルで安定感のあるサッカーを見せます。シュート意識も高いので、今日はこの後追加点は入りませんでしたけど、この意欲はいつか花開くような気がします。

以降、東京、ファジとも選手交代が続きますけど、作戦変更やモードチェンジというよりかは、点差が安全圏に入ったので、経験を積ませる意図だったような気がします。

ファジは、森野くんに代わって4番株根くんが同じく左SB、羽村くんに代わって18番草地くんが同じくボランチに入ります。さらに山本くんに代わって19番千葉くんがトップに入り、石川くんが左メイヤに回ります。

東京は、大熊くんに代わって43番長谷川くんが同じくトップ、佐藤くんに代わって38番小林幹くんが同じくトップ、鈴木くんに代わって小林真鷹くんが同じくボランチに入ります。最後は伊藤くんに代わって19番松岡瑠夢くんが同じく右メイヤに入ります。

ファジのJユースカップの冒険はここで終わりました。残念な結果だし、我慢が報いられなかったのでフラストレーションが溜まったと思いますけど、明日への良い教材だと思って、しっかりと課題を見つけてほしいと思います。おつかれさまでした。

東京は守られながらも工夫して、しっかりと勝ちきりました。渡邉くんの安定感が目をひきました。東京は最終ラインからリズムを作るチームですから、その中心の渡邉くんは、一番思考したでしょう。

東京の三回戦の相手は大宮アルディージャユースです。最高の高みを目指してがんばってほしいです。


2015J1リーグ2ndステージ第14節FC東京vs湘南ベルマーレ@味スタ20151017

2015-10-18 18:10:44 | サッカー

お盆明けくらいからずーと続いていた天候不順が嘘のような秋晴れが続きました。

週末もぜーんぜん心配してなかったら、いきなり雨予報(^^ゞ。誰ですか?。雨男雨女w。でも結局試合中は降らず。

広島戦の完勝で、にわかに優勝争いに名乗りをあげた2ndステージです。今日を含み残り4試合で勝ち点4差の3位。ギリギリ徳俵な状況です。おまけに山雅戦、広島戦と、初体験のパーフェクトマッチが続き、期待が日に日に増します。少し試合間隔が開いたものですから、ソワソワする我々青赤サポの心拍数は高まるばかり。

これまたおひさしぶりのホーム味スタに迎えるのは、湘南です。
本日のYou'll Never Walk Alone♪ゴール裏を青赤フラッグで染める

モリゲ離脱の影響もあり、昇格モデルの極みで臨む湘南の前に完敗です。

東京は、おそらく湘南を意識した布陣を選択しました。シフトは4-3-1-2。GKはブラダ。CBはモリゲとまる。SBは徳永と宏介。3CBは右から拳人、秀人、ヨネ。今日のトップ下は慶悟。2トップは今日の遼一の相棒はバーンズです。

湘南はストロングスタイルな選択だったのかもしれません。シフトは3-4-2-1。GKは秋元。3CBは右から航、アンドレ・バイア、三竿。ボランチは永木と俊介。WBは右に征也左に大介。2シャドウは右に古林左に高山。今日の1トップはキリノです。

残り4試合のうち、この湘南戦が最難関だと思っていました。湘南自身が山雅の結果いかんを問わず、今節で残留を決める可能性があって、高いモチベーションで臨むだろうこと。闘いかたのベースが、そのような状況で威力を発揮する昇格モデルであること。そして湘南は、数多い昇格モデルのなかでもその粋を極めるチームであること。このような状況でなければ、純粋に昇格モデルの極みを見てみたい興味はありました。でも、正直なところ今対戦するのはやっかいだなあって思ってました。

ところが湘南は、予想外にふわっとした印象を受ける入りかたをします。これは湘南と東京、双方の作戦に負うと思います。おそらく湘南は、カウンター対策を講じていたのではないかと思います。結果的には、特長である両サイドのCBの攻撃参加はほとんどありませんでした。スクランブルで航がリベロに入ったせいもあるのかもしれませんけど、それよりも、東京のアタッカーに対し常に1on1の状況を作ることを今日の旨としていた印象があります。湘南らしいフォアチェックを控えることでもあり、これが結果的に、ふわっとした印象を受けることにつながったのかなと思います。必然的に東京に攻め込まれることになるのですけど、もしかしてさんの計算の範囲内だとすると、東京は罠にはまったと言えるのかもしれません。

東京は湘南の入り方にシンクロナイズするかのようでした。今日の試合の入り方は素晴らしかったです。湘南がそのような事情を持つチームですし、湘南の代名詞はアグレッシブなムービングアタックですから、まずはしっかりと守備を整えることが必要だと思っていました。そして東京は、きっちり遂行します。湘南の攻撃は、シャドウのドリブルとWBの超高速オーバーラップに特長があります。なので、まずは縦へのルートを寸断すること、次に有効なスペースを与えないことが必要です。

縦へのルートは、アタッカーへのパス供給ルートを断つことです。この役は、ヨネと拳人が担います。湘南の中盤の構成は、前線の選手が下がってきてポストを受け左右にさばくか、永木が前目にポジショニングして基点になります。このハブポイントにヨネと拳人が襲いかかります。とくに今日のヨネは、ことトランジションに関しては完璧でした。ヨネは対峙する相手が態勢を変えようとするタイミングを捉えることに極めて長けています。相手が態勢を整えてしまうといろんな選択肢を与えてしまうのですけど、ヨネのディフェンスは、どっからでもかかってこんかいというよりかは、ピンポイントで急所を突くことにアートを見ることができるのだと思います。身体能力は極めて高いですけど、案外とフィジカルは強いわけではなく、またアジリティが高いわけでもないので、自分の特長をよくわかっているのだと思います。

東京は、これは2ndに入ってからチームとして向上していることですけど、守備網の距離感と配置が絶妙で、しかも守備モードへの切り替えがとてもはやく、アグレッシブな湘南をして攻め手を見つけられないほど堅牢です。強引に突破しようとすると、中央の秀人、モリゲ、まるで作る三角形の餌食ですし、中途半端にホスピタルパスを中央に戻してサイドチェンジしようとすると、ヨネと拳人に捉えられます。何よりもSB。とくに宏介です。宏介が1on1で軽いプレーを見せることがほとんど無くなりました。偶然かもしれませんけど、湘南はどちらかというと右サイドを得意とするチームです。なので宏介サイドが主戦場になるわけですけど、序盤はほとんど有効なクロスを上げさせませんでした。

湘南対策というよりも、基本プランとして守備を安定させた上で、さて攻撃です。今日は湘南を意識した布陣とプランで臨んでいたと思います。バーンズをスターターで使った理由は、裏を狙うことを意図したものだと思います。湘南はここ2年で初見なのですけど、今日見た限りでも3+2の中央ブロックが非常に堅固です。とくにポストをつぶす技術は、どの選手もできるほど、チームとしてのストロングポイントという印象を受けます。

湘南の、なかでも中央5枚のコンタクトは、とても特長的です。外からではおよそ分からないので、できれば直接合わせた東京の選手に聞いてみてもらいたいのですけど、もしかしたら体の当てかたが特長的なのかなと思います。まずコンタクトするタイミングがちょっとはやく感じます。パスを受ける手前ですでに体を密着する距離に縮めます。これだけでポストの自由度が激減すると思います。それから見た感じでは、低めのパスには上から、高めのパスには下からチャージしているように見えます。以上はあくまでも視認できる範囲なのですけど、それ以外にも、体を当てる箇所にも特長がありそうです。そして何より、湘南の各選手のガタイの大きさにびっくりしました。攻撃の高山と古林を含めて、誰ひとりとしてスリムな選手がいません。2年前に見たときは、永木などはまだひょろっとスマートな印象があったのですけど、ずいぶん分厚くなっています。広島の選手を見るような印象を受けました。ここが、スタイルが相似している山雅、山形との大きな差です。地味ですけど、このフィジカルを含めた守備の仕組みは、湘南スタイルを築き上げるにおよんで、重要な要素なのかもしれません。自分が見たかった、究極の昇格スタイルの設計図を確認できた想いがしました。

横道に逸れましたけど、なので東京は、積極的なコンタクトを避ける選択をしたのだと思います。今日は中盤を省略します。モリゲ、まる、秀人が長いフィードを前線に供給します。遼一のポストも工夫していました。ポストの際、最前線からちょっと下りてきて、バイタルエリアで構えます。それからポストも足元ではなく高いボールをもらい、フリックをダイレクトに裏に落としていました。そこにバーンズと慶悟が走り込むパターンが、今日のAプランだったろうと思います。

もしかしたら、湘南は織り込み済みだったかもしれません。結果的には、おそらく東京は一度も裏に抜け出すことができなかったと思います。それほど湘南の個々の選手の、受け持つ守備エリアに対する意識の高さが伺えます。ポストが入ってから次の選手に渡るまでは割と自由にできるのですけど、そこから先の湘南の守備網が堅かったです。序盤はバーンズにボールを集めます。バーンズは左右にポジションを変えながら1on1を仕掛けます。でも、航も三竿もバーンズの仕掛けに落ち着いて対処します。ここまで、東京の守備と攻撃のプランはいずれも完璧だったのですけど、唯一の誤算は、最終局面の仕掛人バーンズが機能しなかったことにあると思います。バーンズは、夏の代表戦以来キレがなく、好調のチームにあって心配ごとの一つです。

早々、湘南にアクシデントが起こります。アンドレがたぶん筋肉系の怪我で10分頃に退場します。スクランブルで島村が右CBに入ります。航が真ん中にまわります。終わってみれば、アンドレ退場の影響も島村と航で十分バックアップできていました。日頃からメンバーを固定していなかった成果が、チーム総力で安定感を作ることにつながっているのでしょう。これも湘南スタイルの重要な一部なのだと思います。

東京が攻撃権を持つも、湘南の高い守備の集中力の前にもたついていると、今度は湘南が、本来の湘南スタイルの起動スイッチをポチっとなします。前線がやおら激しいフォアチェックを見せはじめます。おそらくは、攻撃を意識してというよりかは、東京の攻撃の起点が後方のトライアングルにあると見て、最善のためにそこをケアしようという意図だろうと思います。キリノが猛然と中央にプレッシャーをかけます。東京の最終ラインは落ち着きもあるしスキルフルですから、まったく相手にしません。サイドを変えます。そこに高山と古林がこれも激しくプレスします。この2次アタックに対しても東京はびくともしません。でもこのフォアチェックが、ジャブのようにじわじわと次第に効いてきます。

少なくとも、東京がリズミカルにロングフィードを供給できなくなります。そこで東京は、攻撃のモードを少しアジャストします。ロングフィードを遼一の頭に付けるのをやめて、今度はバイタルエリアを活用します。遼一、バーンズ、慶悟が、代わる代わるバイタルエリアに下がってきて、ポストを受けます。この時、ヨネと拳人を高めに位置取らせ、シンプルに落とす前線のポストの受け役を担わせます。そこからサイドに展開。とくに、慶悟をアタッキングサードの左サイドに置いて、最終局面へのターニングポイントとします。狙いは当然、宏介。宏介から再三クロスがゴール前に供給されます。

もう一つ、この試合で心配だったのが、試合間隔です。東京が2週間開いたのに対し、湘南は間に天皇杯をこなしています。好調東京ですから、今はリズミカルに試合を続けたいところ。その上、逆に大黒柱のモリゲが代表戦の帰国直後のスクランブル。この心配が、まともに影響します。もっとも顕著に影響されたのが宏介でした。今日の宏介は、左足のフィーリングが良くなかったですね。終わってみれば34本のセットプレーを得ていて、18本だった湘南のほぼ倍。とくにFKが今季のアベレージを大きく上回っています。これは、いかに中盤の湘南のコンタクトが激しいものだったかを物語っていますけど、その是非はさておき東京中心でみれば、やはり宏介です。言わずもがな、東京の攻撃における最大のキーマンであり、今の好調の功労者ですから、今日はもう終わったことなので仕方ないので、早期に復調して欲しいと思います。いや復調してもらわないとホントに困る。ここのところ、宏介の周囲がどんどん結婚していて、さみしがり屋さんだから、意味は違うけどマリッジブルーなのかな。

セットプレーは宏介の精度だけの問題ではありません。湘南にも工夫がありました。ニアサイドを集中的にケアします。湘南のセットプレーの守備は、オーソドックスにマンマークとゾーンのハイブリッドです。ニアにストーンは2枚。ゴール内に1枚。それで、ニアにタイトな高密度空間を作ります。あとはマンマークの各自が集中を高めて密着すること。東京がこれにのせられました。ニアに人数をかけるあまり、ファアが手薄になっていました。宏介が苦し紛れにファアに送っても、受け手が揃ってませんでした。

こうして守備を安定させた湘南は、やおら攻撃に転じます。きっかけは征也です。湘南のストロングポイントは、先にも述べた通り2シャドウの個のドリブルと、両WBの突破力です。たぶん、試合ごとに相手との組み合わせでストロングポイントの有効性は変わってくると思います。まずは常套の、高山にドリブルを仕掛けさせます。でもこれは、徳永と秀人のケアの前に有効足らしめません。そこで湘南は、右サイドの仕掛けを試みます。20分過ぎくらいに一度、征也が自陣からロングランでオーバーラップします。この時ヨネがマークしますけど、征也のスピードについていけず、単純なよーいドンで置き去りにされました。もしかしたら湘南は、このシーンをポジティブに捉えたのかもしれません。執拗に征也のフリーランからの右サイドをアタックを繰り出すようになります。

湘南が攻撃に転じるのと時を同じくして、東京にネガティブなアクシデントが起きます。モリゲが、大介の突進を止めに入ったときに左膝付近を痛めます。これを境に、一気に東京の雰囲気が変わります。作戦面では、モリゲがフィードを蹴られなくなるので、起点の一つが失われます。さらにセットプレーにモリゲが参加できなくなって、重要なターゲットマンが失われます。それ以上に、チーム全体に不安感というか、何て表現したらいいのかな。えも言えぬ重い空気というか、モリゲは大丈夫なのかと心配する気持ちが、チーム全体に伝播していた思います。このことと湘南が攻勢に出たタイミングが一致したことが、東京にとって最大の不運でした。

そして、その不安が現実のものとなります。モリゲがキリノを倒してFKを与えますけど、この時のチャージがモリゲらしくなく中途半端でした。普段ならガツンと入っているところを、小手先で止めようとします。間違いなく足の不安に対する心理的な影響があったと思います。

前半アディショナルタイム。キリノがモリゲに倒されて得た、右サイドのアタッキングサード手前付近のFK。永木の逆サイドを狙ったシュートはブラダが弾きますけど、大外から詰めてきた高山の足元に入ります。高山は拳人が寄せる前にゴール前に折り返します。そこにいたのは古林だけでした。おそらく最初から永木が直接狙うことがわかっていた湘南に対し、競り合うことを想定していたらしい東京は反応が遅れます。東京0-1湘南。

このセットプレーでの接触で、モリゲがとうとう動けなくなります。スクランブルでカズが右CBに入ります。前半終了間際だったのでスクランブルの影響は無かったですけど、後半の攻守に不安を覚えました。

前半はビハインドのまま終了。

後半頭からミステルが動きます。バーンズに代わって翔哉が入ります。同時にシフトを4-4-2に変更します。翔哉はトップ。メイヤは右に拳人左に慶悟。モリゲのことは致し方ないので、まずは懸案になっていたサイドのケアだと思います。

征也を強調しましたけど、モリゲ負傷のきっかけになっていたとおり、大介も左サイドでアグレッシブな仕掛けを見せていました。スピードマンの征也に対し、大介はサイズに似合わずパワフルなドリブルで高山を後ろからバックアップします。ハイスキルで単独の仕掛けができるドリブラーを2枚、前後に並べている湘南の左サイドの布陣は、ちょっとあまり他に例を覚えていないので、とても興味深いです。ただ、基本的に1on1で仕掛けるので、徳永と拳人の対人守備能力に、秀人とカズを加えた守備網で対処できていました。

ただ気になったのが、東京の重心が下がったことです。守備重視モードの4-4-2では、時折重心が下がり過ぎることで失敗することがあります。2ndのマリノス戦が記憶に新しいところです。リトリートして受けることと重心が下がることは、見た目には同じなんですけど、なんて言うか相手の勢いの殺し加減が違うのです。

なので、守備の不安のほうが先行していたのですけど、攻撃のほうも攻め手をどこに見出すのかなと心配していました。やはり慶悟でした。左サイドにはる慶悟を基点として、内に翔哉外に宏介と、人数をかけた分厚い攻撃を仕掛けることができていました。そして、希望をつなぐゴールが生まれます。

50分。島村のペナルティエリア内からのクリアをヨネが拾い、翔哉に渡します。翔哉はボールのバウンドを測りながらルックアップ。ペナルティエリア内で慶悟がパスを呼び込んでます。慶悟は島村とキリノが寄せてきたのでターンはできず、いったんヨネに返します。ヨネはキリノと永木が寄せてくるのを見て、サイド変えようと徳永に戻します。ボールを待ちながらルックアップした徳永は、湘南がラインを揃えたのを見て、ラインの裏にロブスルーを送ります。これは俊介が頭でクリアしますけど、そのボールが慶悟に渡ります。胸で落とした慶悟は、バウンドのタイミングを測って、左足を軸にくるっと回りながら、右足を振り抜きました。ゴラッソ。東京1-1湘南。

大事なことは、失点後に当然攻勢を強める湘南をしっかりと受け止めることだと思いました。おそらく、東京守備陣にとっては、ここからの5分間の処理に、大きな悔いを残したと思います。時折見せる、スペースを埋めきれない内に高速カウンターを仕掛けられた時のバタバタが、この大事な局面で起こりました。試合を通じてもこの5分間だけだったので、ホントに悔いが残る、魔の5分間でした。そして、再度突き放されるゴールが生まれます。

55分。自陣で、俊介と対峙するヨネの背後から寄せた永木がボールを奪い、トランジションです。永木はゆっくりと左サイドをドリブルしながら東京陣に入ります。永木は秀人が見ています。永木の前、ライン際に大介がいますけど徳永が見ています。大介の後ろから三竿が上がっています。キリノが中央から左に流れていて、カズが見ています。永木の横、中央に高山がいてフリー。永木は高山を選択します。局面は中央に移ります。この時前線では、古林が右サイドから中に入ります。高山の横を征也がオーバーラップしています。征也は宏介がケア。その背後を古林が狙います。高山は古林とのタベーラを狙いますけど、古林のリターンを高山の前に入ったヨネがクリア。ボールは征也の前に転がります。ボールを待ちながらルックアップした征也は、ブラダと最終ラインの間を狙ったクロスを送ります。この時中央にキリノがいてカズが見ています。ファアに大介がいて徳永が確認します。徳永が視線をボールに戻した瞬間、大介が徳永の前に飛び込みます。この動きに征也のクロスが合いました。東京1-2湘南。

そこでさんが動きます。キリノに代えて祥史を同じくトップに投入します。チームをリフレッシュして同じプランの威力を継続する意図でしょう。

ミステルが動きます。拳人に代えてたまを同じく右メイヤに投入します。再度先行されたので、3CHに戻すかと思ったのですけど、シフトは変えませんでした。湘南のサイドの運動量が落ちず、脅威を与えられ続けていたので、リスクを負いたくなかったのだと思います。たまには、停滞していたチームに躍動感を生み出すことを期待したのでしょう。

続いてさんが動きます。古林に代えて大槻を同じく右シャドウに投入します。あくまでもやり方を変えることなく、前線から攻撃面での脅威を与え続けるという意図です。

正直に言うと、一度追いついたことだけでもよくがんばったと思います。モリゲの離脱は、想像以上に大きな影響をチームに及ぼしました。流れのなかでは、湘南の中央5枚があまりにも堅固だったので、セットプレーにしか可能性は無いかなと思っていました。宏介が不調だったこともありますけど、ターゲットマンの不在も、宏介に少なからずの影響を及ぼしていたと思います。モリゲの怪我が深刻なものでないことを祈ります。

祈りながら奇跡を願いましたけど、ふたたび追いつくことはありませんでした。東京1-2湘南。選手を信じ、鼓舞する試合後のYou'll Never Walk Alone♪

湘南は今日の結果で来シーズンのJ1残留を決めました。おめでとうございます。湘南は、昇格モデルをチーム全体で意図して極めることを選択し、それを成し遂げたクラブです。闘いかたは好みではありませんけど、とてもリスペクトします。

Jリーグは残り3試合。広島と鹿島が粘り勝ちしましたので、2ndステージの勝ち点差は7に広がりました。順位もマリノスとガンバに抜かれて5位。金曜日までの2週間のワクワク感から、一気に現実に突き落とされてしまいました。正直キビしいですね。年間順位はガンバが勝って勝ち点2差に詰め寄られましたけど、依然3位をキープしています。2ndステージを広島が獲っても鹿島が獲っても、いずれにしろこの順位を維持できればCSに出場できます。サッカーは下克上を起こし易いスポーツだと思います。だからこそ、優勝の可能性があるチームとサポーターは2ステージ制を嫌がったのだと思います。今、今年の変則レギュレーションの恩恵を一番受けているかたちになって遺憾ではありますけど、ルールはルール。仕方ないもん。とにかく、なにがなんでもCS出場権を獲得できるよう、がんばってほしいです。

さあ、次はいよいよ加賀さんとの再会マッチです。メンバーに入ってくれるかな?。


2015J2リーグ第36節ヴェルディvsファジアーノ岡山@味スタ20151010

2015-10-11 17:17:57 | サッカー

秋の運動会シーズンの三連休は、ラグビーワールドカップ、サムライブルーのワールドカップ一次予選をはじめ、イベント満載ですね。皆さまいかがお過ごしでしょうか?。

ひさかたぶりに、てか今年はじめてファジの応援に来ました。と言っても、毎年だいたい1試合だけですけど。昨年の31節山雅戦以来です。

相手はえーと、ヴェルディです。通常自分のブログは、対戦相手のサポさんに読んでいただけるかもしれないので、基本的にフラットな目線で平等に分析しています。実際に、浦和サポさん、清水サポさん、ガンバサポさん、山雅サポさん、新潟サポさんには読んでいただいていて、本当に嬉しいです。でも今日は大変申し訳ございません。宗教上の都合でヴェルディをフォローすることが出来ず、てかする気もなく。ゆえにほぼ一方的にファジ目線で書かせていただきます。

本日の桃太郎♪

完璧な試合運びでしたけど、カウンター一閃で得た1点をオウンゴールで失してしまいました。プレーオフ圏内が少し遠のきました。

好調ファジは7戦無敗記録中。ドローをはさんで4連勝中です。ヴェルディに勝てば、プレーオフ圏内が見えてくる大事な一戦。シフトは今シーズン通じてほとんど変わらない3-4-3。今シーズンのファジの布陣の特長は、昨年の日替り布陣とは異なり、ほぼメンバーを固定しています。なかでも中心ラインの中林、岩政、渡邊、片山は、怪我やサスペンションを除くとほぼ全試合でスターターを務めています。この辺りも徹さんのコンセプトが感じられる改革点ですね。GKは中林。3CBは右から篠原、岩政、竹田。ボランチは渡邊と矢島。WBは右に加地左に田所。3トップは右から片山、押谷、大介です。

ヴェルディは、お盆明け以降失速して、ただいま絶賛急降下中です。かろうじてプレーオフ圏内を保っていますけど、混戦J2のなかですから、ジェフ、愛媛、札幌、ファジに追い立てられています。ここはファジが引導を渡したいところ。シフトはミステルの真似なのか、3センターを採用していて4-3-2-1です。GKは優也、CBは田村と井林。SBは右に安西左に福井、アンカーは三竿。WHは右にブルーノ・コウチーニョ左に中後。WGは右に南左にアラン・ピニェイロ。1トップは平本です。

徹さんがファジでどんなサッカーを作っているのか、ずっと興味がありましたけど、なかなか観戦する機会がなく、ようやくシーズン終盤になって観ることができました。

今日は、結果的にはドローでしたけど、両チームの作戦の選択肢の幅に、興味深い顕著な違いがありました。かつてのヴェルディは、攻撃の選択肢をいっぱい持つ、懐の深いチームという印象でした。対するファジは、ワンパターンの作戦を貫くことで、プロチームとしての体裁を整えてきました。ところが、ことにファジは、徹さん就任以来のわずか半年強にして、ヴェルディと立場を相反するくらい、劇的にチームを変えています。

試合はファジのおそらくはこれがオリジナルのプランだろうという形で入ります。スタータースコッドを固定化していることから分かるように、徹ファジは、パスによる連携のコンビネーションサッカーを目指しているようです。現在その中心にいるのが、矢島です。ファジのパスは、基本的に矢島を中心に回ります。

徹ファジは、影山さん時代とシフトは基本的に大きく変わりません。が中身は180度変化しています。まず守備の考え方が顕著に異なります。昨年までは、前線の3人のフォアチェックで、中盤でのパスの乱れを誘い、ボランチでトランジションする形を基本的なプランとしてきました。ところが今年は、フォアチェックをほとんど見せません。守備時には5バックになって、けして高くない最終ラインでひっかけます。

なので、攻撃も当然ドラスティックに変化しています。千明がパスを左右に散らし、サイドアタックを基調としたショートカウンターが、唯一絶対と言っていい攻撃プランでした。前線3人がクロスオーバーすることで、相手のマークを混乱させ、スペースギャップを活かす形です。ようするに昇格モデル。

おそらく徹さんの基本的な発想は、攻撃にあるのだと思います。守備の変化は、攻撃を改革するための必要条件なのでしょう。降格制度が導入されたことで、J2はとても特長的なリーグになりました。J1昇格にしろJ3降格阻止にしろ、結果を重視する傾向が強くなり、ゆえに全チームがコンサバティブな発想をするようになっています。だから闘いかたがとても良く似ています。ところが、J1にしろJ3にしろ、J2と違ってその場に留まることを目的とするチームがいるので、闘いかたのバリエーションが豊かになります。そうすると逆に、ステレオタイプなJ2モデルのサッカーでは、成績面でもエンターテイメント面でも限界を感じるようになります。ここ数年、とくにJ1で、昇格したチームが一様に浮いた存在になるのは、そのためです。

長期的な視点で考えたとき、ファジが昇格後も安定してJ1に居続けるためには、どのみちどこかでサッカーを変える必要がありました。まずは昇格しないとと考えるか、事前にサッカーを変えたほうが良いかは意見が分かれるところだと思いますけど、ファジと徹さんは、今のうちからファジを改革することを選択したのだと思います。岡山にファジが定着して、プロサッカークラブがある街として立ち上がることに成功しました。その期間の短さと、浸透のレベルは、新潟や山雅に並んで奇跡とも賞賛していい大成果だと思います。岡山県民として誇らしいです。でも、サポのサッカー観は急激に成長します。なぜならば、Jリーグは定期的に他県と比較ができる、岡山にはこれまで無かった開かれた機会だから。いろんなチームのサッカーやサポーターを直に感じることができる機会は、サポにとって学習の場となります。より強い、もっと楽しいサッカーを求めるようになります。それに岡山は悲観主義な県民性ですから、サポ以外の県民は、少しでも道をロスするとサッカーから離れてしまいかねません。だからクラブとして、これがJ1で闘うサッカーだという形を示す義務が、ファジにはあるのだと思います。シーズン中、とくに夏前になかなか勝てない苦しい時期があったようですけど、それでも徹さんのサッカーを変えてこなかったのは、クラブと徹さんのファジ改革に徹するという覚悟なんだと思います。

さて、守備がリトリートスタイルということは、当然攻撃はビルドアップを基調とします。ファジの基本的な攻撃ルートはサイドです。ファーストチョイスは、加地と田所の高精度なクロスを活かそうという発想だと思います。最終ラインからWBを攻撃参加させるためには、時間が必要です。収め処は、片山と大介です。昨年までのファジは、前線が常にポジションチェンジを繰り返していましたけど、今年は片山か大介がCBとSBの間で基点になります。相手を引きつけている間に、加地と田所にSBの裏を取らせようという考えだと思います。

そして、片山と大介にパスを送るのが、矢島の役割です。ボランチは明確に役割を分担します。渡邊は守備加重で、矢島の攻撃力を活かすために中盤をスウィープします。矢島は中盤の底でフリーになれるスペースに動き続けます。ビルドアップの際、一度WBに預けますけど、これば相手のフォアチェックをかわすためです。相手の守備陣がセットされると、サイドから中央の矢島に預けられます。ボールを受ける前にルックアップしている矢島は、中盤の底から左右の攻撃ルートを確認し、縦一本のパスを前線に当てます。

矢島は、プレースタイルがとても陽介に似ていますね。ボランチに入るとさらに顕著です。渡邊に守られながら中盤をヒラヒラ動くところは、陽介と勇樹の関係に似ています。やや背中を丸めてインサイドで小さく強く振り抜くパスフォームもそっくりです。浦和で陽介のプレーを観察していたんだろうなと思います。矢島の長所は、体の大きさから伺える筋量からは想像できないほど、長めで強い、かつ非常に正確なグラウンダーのパスを出せることです。しかもプレー判断がシンプルで速い。もちろん受け手の片山と大介のポジショニングの工夫と、スコッドを固定化した成果も合わさっているのだと思いますけど、今のファジのサッカーは矢島無くして成立しないと思います。ちょっと先の心配ですけど、ローンの矢島を引き留められるかどうかは、来年のファジにとって編成面での大きな課題になるような気がします。

試合は、なのでファジがまずはワンプッシュでイニシアチブを握ろうとしますけど、あっさりとヴェルディに押し返されてしまいます。ヴェルディの作戦は極めてシンプルです。題してピニェイロ大作戦。相手の作戦を凌駕するに足る個を持つ場合、その個を活かすことが作戦立案時の最善策です。なので、ピニェイロを活かすことは当然。ピニェイロは独力で状況を作りあげることができる、スピードとパワーを持っています。そのピニェイロをトップではなくサイドで使うことに、ヴェルディの工夫があると思います。オリジナルがウインガーなのかもしれませんけど、サイドに置くことで1on1のシチュエーションを作り易くなります。どちらかというと、バランサーの田所に対し、より攻撃面で期待される加地との対峙は、冨樫さんの狙いというよりかは、偶然なのかもしれません。ようするにヴェルディは、相手に合わせるようなことはせず、ピニェイロを前面に出してイニシアチブを握るというのが基本プランのようですね。

ピニェイロをより活かすため、つまりピニェイロと加地の1on1を作り出すために、中後が中盤左サイドを動き回ります。加えてピニェイロの後ろに福井を置き、アンカーの三竿も寄せることで、左サイドにショートパスをつなぐグループを作ります。ヴェルディも伝統のビルドアップスタイルですけど、とくに中盤の選手がスペースメイクすることでギャップを作り、ワンタッチ基調のパスをつないでサイドアタックに繋げていくのが、基本的な攻撃パターンです。

オリジナルのプランでイニシアチブを握ることに成功しないと見るや、徹さんが最初のプラン変更を施します。まずは守備を堅めます。はっきりと5バックにして、5+2の守備網でフルマンマーク気味にディフェンシブサードをクローズします。

なので、ピニェイロを中心にヴェルディが攻撃権を持ちますけど、ファジのマンマークが効きはじめて、ペナルティエリアには入れるのに有効なシュートは打てません。やはり真ん中に岩政がいるのは効いているのでしょうね。岩政は、トランジションのときに安易なホスピタルパスが何度かあったのですけど、守備に関してはさすがの安定感ですね。鹿島時代のアグレッシブなスタイルではありませんけど、経験に裏打ちされた安心感をチームに与えてくれているようです。

ヴェルディも工夫します。コウチーニョと三竿を頻繁にポジションチェンジさせます。ボールを持てるコウチーニョに預けて、中央でワンプッシュすることでマークのズレを作ろうという意図だと思います。これに対しても、前線のシフトが変わるわけではないのでマークのづれはなく、ファジは対応できていました。

リトリートは守備を堅めることだけを意図したものではありません。同時に攻撃パターンをロングカウンターに移行します。片山と大介に代わって、今度は押谷が一人前線に残って基点になります。押谷にパスが渡ると同時に、片山、大介、そして矢島が積極的に押谷をオーバーし、高いラインを保つヴェルディの裏を狙います。一見するとヴェルディがイニシアチブを握っているのですけど、虎視眈々とファジが一閃を狙う攻防が出来上がります。そして、波動砲が炸裂します。

29分。加地がディフェンシブサードでピニェイロからボールを奪い、トランジション。加地はターンしてワントラップしながらルックアップします。この時ヴェルディの最終ラインはハーフウェイ付近です。中央に押谷が一人。トランジションしたので守備ラインは下がっています。押谷はフリー。加地は長いフィードを押谷につけます。この時、加地のトランジションを見て、コウチーニョをマークしていた矢島が一気に前線に走っていました。さらに右ライン際にも片山が残っています。押谷の選択は、矢島でした。トラップをそのままダイレクトで矢島に落とします。押谷はそのままターンして裏を狙って加速します。この押谷のプッシュで、ヴェルディの最終ラインが全員後方にひっぱられます。当然矢島はフリー。右サイドの片山もフリー。押谷も田村と井林の間を抜け出ようとしています。矢島の選択肢はなので三つ。ドリブルで一気にアタッキングサードを目指します。アタッキングサードに入る手前でルックアップした矢島は、ゴールを確認します。よほど自信があったのでしょう。なんと選択したのはシュートででした。全力で走りながらタイミングを合わせ、思い切り右足を振り抜く超絶技術の上、15~20mはあろうかという長距離砲ですから、おそらくシュートコースはピンポイントだったと思います。優也の手前でバウンドさせたシュートは優也の右手をすり抜け、ゴール左隅に突き刺さりました。スーペルゴラッソ!。ファジ1-0ヴェルディ。

先制してからのファジの闘いかたが素晴らしかったです。後方の恐怖を植えつけられたヴェルディは、明らかに攻撃の矛を収めます。ここでいたずらにリトリートするとヴェルディに気持ちをリセットする機会を与えてしまうのですけど、ファジは逆に攻勢に出て、イニシアチブを握ります。ベンチの指示でできることではないので、状況に応じて選手たちがチームとして判断するコンセンサスができてるのでしょうね。このまま成熟していけば、遠くない時期に、強いチームに成長するかもしれません。前半はファジがリードのまま終了。

後半開始から、ふたたびヴェルディがピニェイロにボールを集めて攻勢に出ます。そしていきなり不運が訪れます。

49分。中後の左CK。ゴールのど真ん中でゴールライン上にいた平本が。マークの加地を振り切ってクロスに合わせますけど、これはゴールをケアしていた押谷に当たります。転がったボールを竹田がクリアします。それがなんと、片山に当たってしまいます。押谷が反応しますけど、ボールはゴールに吸い込まれてしまいました。なんとも不運なオウンゴールです。ファジ1-1ヴェルディ。

ヴェルディの攻撃プランは、ようするにピニェイロしかないのですけど、バリエーションがあるようです。プレーオフ進出のために負けるわけにはいかないヴェルディですから、ピニェイロシフトを強化したパワープレーに出ます。ファジのマンマークを崩すために、南とコウチーニョもピニェイロサイドに集め、左サイドで圧倒的な数的優位を無理矢理作ります。右サイドは、実質安西だけ。ピニェイロをフリーにして仕掛けることがファーストチョイスですけど、ファジの守備網を片寄せて、安西をフリーにするオプションも含めたパワープレーです。結果的にはセットプレーでの不運な失点でしたけど、ヴェルディの覚悟を決めた猛攻が結実したとも言えます。

でも、ここからが知将徹さんの真骨頂、徹さん劇場の幕開けです。まず。加地に代えて奏一を同じく右WBに投入します。前半からピニェイロマークにがんばっていた加地でしたけど、さすがのキン肉マンもピニェイロのパワーにHPを削られていたのでしょう。リフレッシュの意味で、まずは主戦場の右サイドを補強すべくの奏一投入だと思います。奏一のコバンザメマークが効いて、ピニェイロの自由が無くなりました。

さらに徹さんが動きます。大介に代えて譲を投入します。同時に布陣を変更します。譲はボランチに入ります。矢島を一枚上げて左シャドウに入れます。守備の安定を取り戻したので、それをさらに強固にするために攻撃に手を施したのだと思います。前線にボールを持てる矢島を置くことで攻撃時間を長くして、守備陣を負担を軽減する意図だと思います。さらにボランチを二人とも強力な守備ができる選手にしたことで、中盤のプレスを強化することに成功しました。ただし、それに反して中盤の構成力が下がりますけど、この辺りのトレードオフの選択が、今日の徹さんは見事でした。チームにメリハリができました。

ここで冨樫さんが動きます。コウチーニョに代えて善朗を同じく右WHに投入します。サイズを活かして基点になるコウチーニョですけど、ファジのマークが厳しいので、スペースギャップを使うことに長けている善朗に代えることで、リズムの変化を生み出そうという意図だと思います。

続けて。冨樫さんが動きます。南に代えて大輔を同じく右WGに投入します。南のコンディションを考慮したのだと思います。

同時に徹さんが最後のカードを切ります。押谷に代えて久保を投入します。同時に、今度はドラスティックにシフトを変更します。3-5-2です。3CHは右から渡邊、矢島、譲。2トップに片山と久保です。これは完全に、徹さんの攻撃宣言です。今日は矢島が躍動していたので、その攻撃力を最大限に活かすプランです。矢島の両脇を渡邊と譲で支え、矢島のアイデアと稼働域を広げるという意図だと思います。さらに、中盤でイニシアチブを持てるようになったので、奏一と田所がクロスオーバーするような、ダイナミックなポジションチェンジも見られるようになりました。

ヴェルディの二つの交代は、順目というか、基本的な攻撃プランを大きく変えるものではありません。つまり、ヴェルディは、ピニェイロを使うまでのプロセスを微調整することが、選択肢の幅、なのです。善朗のシュートやピニェイロがオフサイドになったビッグチャンスはありましたけど、ファジの守備が安定していて、次第に肝心のピニェイロが止められはじめました。

一方徹さんは、同ポジションの選手を入れ替えるだけでなく、矢島のポジションを変えることでチームの重心を動かしたり、シフトそのものを変えてモードを変えたりといった、バリエーションに富んだ選択肢の幅を持っています。徹さんの改革は、徹さん自身が持つチームが向かう方向のビジョンと、それをチームに植え付けるメソッド、さらにピッチで表現して具現化する選手が揃って、地味だけど少しずつ成果を見せはじめているのかもしれませんね。今日も、この時間帯から、結局最後までファジがイニシアチブを握ります。矢島の惜しいミドル2発と、片山と久保のビッグチャンスを一つでもものにできていたなら、内容にふさわしい最上の結果を得られたかもしれません。

後半アディショナルタイムに入って冨樫さんがとうとう基本プランを諦めます。ピニェイロに代えて中野を同じく左WGに投入します。この時点で、いや奏一が入った時点で、ヴェルディのチャンスは消えたと言っていいと思います。

プレーオフ出場権争いの渦中のヴェルディとの直接対決で、作戦も内容も完璧に凌駕しましたけど、最後のひと押しが足りず、ベストな結果は得られませんでした。このまま試合終了。ファジ1-1ヴェルディ。

残り6試合で6位長崎との勝ち点差は6。まだギリギリチャンスは残っています。ただ長崎と同勝ち点でジェフと愛媛もいますから、非常に難しい状況になったと言えるかもしれません。

でも、悲観する必要はないです。サッカークラブは単年度の積み重ねではありますけど、事業そのものは継続的なものです。正しい方向に一歩ずつ進んでいけば、その先に確実に成果が待っています。ファジは、わずか9ヶ月あまりで劇的に進化しています。近い将来、かならずJ1を舞台にできると思います。昇格が目的ではなく、J1に定着することが目的だし、それにふさわしいクラブに成長していると思います。迷うことなく、全員で前に向かってほしいと思います。