ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2016J1リーグ2ndステージ第6節ヴァンフォーレ甲府vs浦和レッズ@山中スタ20160730 -真夏の夜の加賀さん-

2016-07-31 17:29:01 | 加賀さん

スタンバイ。

レギュラー選手が試合に臨むスタンバイ。出場機会がある控え選手が出番の前に準備するスタンバイ。いつ訪れるか分からないけどチームを助けられるその日のためのスタンバイ。もしかすると、一番最後のスタンバイがいちばん難しいかもしれません。

2016年シーズンの加賀さんは、まさにそんなポジションです。今年の加賀さんは、ご自身の立場をきっちりと受け止めしっかりと準備されています。粛々と。そして、日々の積み重ねが、大原でのプレーに現れてきているのかもしれません。いつの間にか、オプションのディフェンダーとしては那須さんに次ぐ選択肢になってきているようです。加賀さん自身は意識していないかもしれないけど、もはやベテランの域にいるし、もともとアニキ肌ですから、加賀さんの地味だけど真摯な日々の姿を、レッズの若い選手は見ているかもしれません。加賀さんのような立場にいるベテラン選手が粛々と過ごすことは、チームが一体になるための重要な要素のような気がします。

航さんがリオオリンピック代表でチームを離れた前節、ひさびさに加賀さんがスコッド入りしました。出場機会は、その日はなかったけど、もうすぐそこまで来てます。少なくとも、出場できるかもしれない機会がもらえるようになりました。今はまだ、加賀さんが出場するときはスクランブルでしょうけど、ガンバ戦で見せた安定感とクレバーなバランス感覚は、きっとミシャに強くインプレッションされていると思います。

ぼくはひさしぶりに加賀さんに会いに行きます。メンバーにいるかどうか分からない宙ぶらりんな気持ちでスタジアムに向かうのと、メンバー入りする期待が十分にある日とでは、アクセスの時間の楽しさがぜんぜん違います。ドキドキワクワクで甲府の街をぶらぶらしながらメンバー発表を待ちました。

加賀さんメンバー入り!(((o(*゚▽゚*)o)))。

まぎれもなく、スコッドに加賀さんの名前があります。

最近の加賀さんの話題は、ベレー帽みたいなかわいい髪型とランニングフォームですよね。ぽっこりして最初は見慣れなかったベレー帽だけど、ちょっとボリュームが出てきて可愛く見えてきました。夏はわりと短くするイメージがあるけど、ベレー帽はいつまでかぶってるのかな。

なんとなく、太ももとふくらはぎがひと回り分厚くなっているような気がします。試合前のアップでも入念にスプリントを繰り返していました。試合前にお散歩する時間が短くなってる気がします。大原でも時間をとって地道に続けているのでしょうね。その太ももとふくらはぎの威力は、まさにガンバ戦で今ちゃんとアデちゃん相手に見せた通りです。普通だとちょっと無理っぽい距離にいる相手に一瞬で追いついてしまう、サバンナのハンターそのもの。ディフェンダーで強さや粘りやクレバーなポジショニングで魅了する選手は数多あれど、圧倒的なスピードですげーって思わせる選手は、J全体を見渡しても加賀さんだけです。そんな加賀さんならではなハイライトシーンを、少しでも多く浦和サポの加賀さんファンに観ていただけたら良いのですけど。

それにしても、そうとうボリュームのあるがっちりした脚なんだけど、全体的にすっきりスリムに見える加賀さんのシルエットは、いつも不思議に思います。脚が長いからかな。顔が小さいからかな。

今日は、予想はしていたけど、残念ながらやっぱり加賀さんに出場機会がありませんでした。でも、加賀さんには迷いはないでしょう。とにかく日々、一歩ずつ積み重ねる。ガンバ戦の時もそうでしたけど、出場機会はそんな日々の努力の向こうに絶対待っています。加賀さんの強く明るい目を遠くから見つめながら、そう願っていました。

それでは、加賀さんが出場しなかったので、甲府戦を通常モードで振り返ってみたいと思います。花火

ある意味での大の苦手甲府をパーフェクトに封じ込めた、浦和の完勝です。甲府戦をぜんぶ観たわけではないのですけど、もしかすると浦和の対甲府戦史上最高の試合だったかもしれません。

浦和は慎三と航がリオオリンピック代表で不在。メンバーが比較的固定的な浦和のなかで、サポートメンバーにとってアピールの為所でもあります。シフトはおなじみミシャの3-4-2-1。GKは周作。3CBは右からモリ、那須、槙野。ボランチは勇樹と陽介。WBは右にタカ左に宇賀神。2シャドウは今日は右にムトゥ左にトシ。1トップは忠成です。ムトゥが右に入ったことが、今日の甲府対策の最大のポイントです。

甲府はマルキーニョス・パラナが四度目の甲府復帰です。これぞまさに助っ人。電話一本で甲府のために駆けつける、いざ鎌倉な関東武者。ドゥドゥがスタメンに入るようになりましたけど、まだポスト・クリスティアーノ編成の模索中だと思います。今日は大黒柱の英臣とバウルが不在。シフトは書くと浦和とおなじ3-4-2-1。GKは河田。今日の3CBは右から橋爪、涼平、畑尾。ボランチはパラナと黒木。WBは右に佑昌左に松橋。2シャドウは右に稲垣左に河本。1トップはドゥドゥです。

甲府は基本的にリトリート&カウンタースタイルに徹するチームですけど、相手によって闘いかたを変えているようです。東京との試合で対戦するときは、とくにホームではひきこもる印象はなく、むしろ積極的なフォアチェックとロングフィードで果敢に裏を狙ってくるイメージがあります。ところが対浦和戦は、極端なまでにリトリートします。なのでどうしても渋い試合になってしまいます。もしかすると佐久間さんのなかには、リアリスティックなシーズンの計算があって、対浦和は勝点1で十分という算段なのかもしれません。甲府のクラブサイズで、指揮官が違っても4年続けてJ1に留まり続けるには、生半可な挑みかたではできないことだと思います。甲府は、したたかに生き残るサバイバル技術を備えているのだろうと思います。そしてそれが、少なくともチーム内に浸透しているのが最大の強みではないかと思います。

というわけで、甲府のシフトは正しくは、攻撃時は3-4-2-1、守備時は5-4-1というダブルスタンダードを採用していると見たほうが良いでしょう。そして甲府は、その時間の大半を甲府城内で過ごします。この試合は、恒例の甲府城攻城戦へと入っていきます。

今日の浦和は、攻城戦対策を四つ用意していました。まずはカウンター対策です。といっても、取り立てて特別な守りかたをしたわけではなく、今年浦和が取り組んできた守備の基本プランを、チームとしてしっかりと遂行します。盆地特有の蒸し暑さのなか、90分間個々のディシプリンを続けることは易しいことではないと思います。意欲と体力と作戦の浸透があってこそ、今日の浦和のパーフェクトマッチは実現できたと思います。まずカウンターの実行者である三人のアタッカーに対して、モリ、那須、槙野の三人がしっかりとマークをし続けます。甲府が誇るアジリティを体現する河本と稲垣に対し、モリと槙野が粘り強くタイトマークするので、時折ドリブルで抜け出すことはあっても、甲府らしいアタッカーの連動性をついに見せることができませんでした。

これにはドゥドゥとの局地戦を優位にする必要があります。ドゥドゥは中央左右とポジション、つまり1on1を挑む相手を変える工夫を見せますけど、那須もモリも槙野もドゥドゥのパワーに屈することはありません。ドゥドゥはあの手この手を繰り出し、ついにはFKの機会を作ることも視野にプレーします。浦和は、浦和に倍する計22本のFKを許しますけど、射程距離内のシュートチャンスは一度も無かったと思います。

今年とくに重点を置いて取り組んできた中盤でのはやめのチェックは、今日はとてもよく機能していました。カウンターの起点に対し、シャドウ、ボランチ、WBがクイックに寄せて、ピンチの芽を未然に防ぎます。さらにネガティブ・トランジション直後の中盤のチェックをクイックかつタイトにすることで、より高い位置から二次攻撃を仕掛ける起点にもなっています。結局90分間プレーすることになったトシが試合後に座り込んでしまうほど、浦和の中盤は、見た目以上によく動いていたし、神経も使ったと思います。ダラダラと動き続けるというよりかは、ここで動くとチャンスになるとかここで動かないとピンチを招くといったピンポイントのタイミングでのダッシュを繰り返していましたので、蒸し暑いなか、相当エネルギーを消費していたでしょう。このことは、とくに頭が下がる想いです。

こうして甲府のカウンターのみならずセットプレーの機会も予防することに成功した浦和は、いよいよ攻城戦に挑みます。浦和が攻城戦のために用意していた秘策は三つ。一つ目は、前述した今日の布陣にあります。普段左に入ることが多いムトゥを今日は右に持ってきました。浦和の攻撃は、メンバーを固定して練度を上げるほどに、左右がアシンメトリーになってきていると思います。攻撃の基点は左シャドウに入るムトゥが担うことが多くなっています。このため、左で作って右で仕掛けるパターンになっています。必然的に、左右のWBの役割も違っていて、宇賀神は周囲の選手との絡みを意識したバランスを取ったプレーが多いのに対し、タカはフリーランニングで一気にアタッキングサードに仕掛ける、矢の役割を担います。

その攻撃の軸であるムトゥを右に持ってくるということは、長年積み重ねてきた浦和全体の攻撃のバランスを左右反転させることになりますので、机上で考えるほど易しい取り組みではないと思います。もしかすると甲府対策というよりかは、慎三がいない間を利用して、ニュー浦和のチャレンジをミシャはしているのかもしれません。試合全体を通じてみると、少なくともシャドウに関しては、役割を左右シンメトリーにしていたような気がします。

とは言え、試合のリズムを作る序盤の段階は、やはりムトゥにボールを集めます。ここに秘策がありました。ムトゥは通常、上下の動きが多い印象があるのですけど、今日は縦の幅を狭め、変わりに左右の動きを加えています。さながら香車ではなく金のような動きです。それは、甲府の5+4の守備陣形のなかのエアポケットのようなスペースを見つけるためです。見つけるというよりかは、能動的に作るイメージかもしれません。おそらくそこに、甲府の守備の特長を逆手に取る作戦があったと思います。ムトゥの動きはじめは、かならず最前線です。最前線にはることで、マーカーである畑尾にムトゥマークを意識させます。これによって、甲府をしてマンマークの守りかたを取らせることになります。

結論を言うと、今日の甲府の敗因は作戦にあると思います。たぶん佐久間さんも悔やんだろうと思います。英臣とバウルがいないエクスキューズとは言え、アジリティの高い浦和の2シャドウのマーカーとして畑尾を使うことになったことは、試合を左右する大きなポイントになったと思います。しかも畑尾の側にムトゥが来たことも大誤算だったでしょうし、畑尾にとっても切ない状況です。序盤の攻防の局面は、ムトウvs畑尾につきます。

甲府の守りかたの特長としてマンマークのほかにもう一つ、ボランチの動きがあります。リトリートではあるのですけど、中央に入るボランチが、浦和のボール回しに対しチェックをかけにきます。つまり、ボランチの背後のバイタルエリアはCBはケアするというのが甲府の考え方なのだと思います。攻撃の開始時にシャドウが最前線にはりつくことで、必然的にバイタルエリアにスペースができ易い状況を作り出すことができます。ムトゥはそこを狙います。左ボランチに入るパラナと左WBの松橋の動きを見て、ムトゥは前後左右に微妙にポジションを変え続けます。ムトゥがフリーになることで、浦和の攻撃ルートができあがります。

さらにムトゥを右に持ってきた意図がもう一つあります。タカの使いかたです。ムトゥが畑尾を連れてバイタルエリアに下がると、タカがムトゥと入れ替わるように畑尾の背後に入ってきます。左サイドのムトゥと宇賀神の関係とおなじような構造を右でも作るという意図です。タカは初速が速いので、ムトゥとのクロスオーバーにキレがあります。この、通常見られない浦和の右サイドの組み立てに、甲府は明らかに混乱していました。

甲府対策の三つ目は、サイドチェンジの多用です。序盤ムトゥを多用することは、右で作って左で仕掛ける意図を含んでいます。なので勝負ところは宇賀神のサイド。つまり、序盤の浦和は、ムトゥのポストやムトゥとタカのクロスオーバーなど、一見すると右で崩すことを狙っていたかのように見えますけど、ホントの狙いは左サイドにあったと思います。ムトゥを基点とした攻撃で甲府にムトゥを意識させます。通常の浦和のサイドチェンジは、最終ラインを経由するのですけど、今日はムトゥからの戻しをモリがダイレクトで一気に宇賀神に渡します。このことで、コレクティブな守備を誇る甲府が守るサイドを変える時間を与えず、甲府を左右に揺さぶることができていました。そして宇賀神とトシがアタッキングサードに仕掛けます。浦和が右で作るという意図には、モリの正確で速いロングフィードを活かすことも含まれています。航がいない今の編成を考えると、とても合理的な布陣だと思います。

最後の甲府対策は、ワンタッチのアウトサイドロブの多用です。シャドウがポストを受けるのではなく、裏に出る忠成を目標に、テクニカルなロブを上げます。これはもちろん忠成をターゲットにしているのですけど、真の意図は多重攻撃にあると思います。意表を突くパスに対する甲府守備陣の反応は、クリア優先になります。そこにカウンターへの意図が含まれませんから、クリアはイーブンなものになります。さらに前方にロブを上げることで、甲府の守備網全体に後ろへ下がるイメージを持たせます。ですから中盤に上がったイーブンなクリアは、実は浦和は拾い易いホスピタルなパスになります。これによって、浦和が連続攻撃を仕掛け易い状況を生み出すことができていました。これぞ、攻撃は最大の防御也を体現する、ミシャ浦和の真骨頂だと思います。

序盤こそ、ドゥドゥ、河本、稲垣の単独ドリブル突破が見られましたけど、次第に浦和の巧妙な攻城戦対策がじわりじわりと効いてきます。先鋒主力ムトゥ隊と支援のタカ独立機動部隊によって甲府城大手をジリジリと攻め立てている間に、搦手に宇賀神隊とトシ隊が忍びより、モリ攻城砲隊の援護を受け、やにわに搦手攻撃を開始する、そんな浦和の攻城大作戦が、はやばや結果を見せます。

14分。タカのスローインから、一度モリがサイドチェンジを試みます。勇樹とトシが絡んだ攻撃は、勇樹が転んだので不発になり、浦和がすぐに攻撃をリセットします。槙野から那須を経由してもう一度右に。モリからバイタルエリアでパスを受けたムトゥですけど、松橋と河本のチェックでコントロールを失います。でも河本がチェックに入ったため、こぼれ球をモリがなんなく拾います。ボールを拾う前にモリはルックアップ。この時逆サイドでは、宇賀神がすでにアタッキングサードに入っていてフリー。モリはダイレクトで、一気にサイドを変えるフィードを宇賀神の足元につけます。このフィードが、顔に似合わずビューティフルかつエクセレントでした。浦和の攻撃モードに移ります。宇賀神には佑昌が一枚だけ。ゴール前は中央に忠成、ニアにトシ、ファアにムトゥがそれぞれペナルティエリアに入ってます。甲府の3CBは揃っているので数的にはイーブン。これを見た宇賀神は、スピードアップすることでゴール前の状況を変えることを選択します。宇賀神は縦に大きく仕掛けます。これで佑昌を振り切ります。さらに甲府CB陣を下げさせることにも成功します。このワンプレーで勝負あり。ゴール前では、忠成があえてサイズのある畑尾を狙って競ります。やや遅れてファアから入ってきたムトゥは、松橋と距離を置いていたので松橋がケアできていません。宇賀神の狙いは、忠成の頭を越えてムトゥに渡すことでした。そして完璧なコントロールド・クロスがムトゥに届きます。どフリーのムトゥは頭でたたき込みます。甲府0-1浦和。

甲府の最終ラインが、肝心なところで5バックをコンパクトにできなかった、松橋のミスでもあるのですけど、それ以上に、浦和が作戦通りにやりたいサッカーを実行できた、コレクティブな意味での、至上のゴラッソです。ムトゥの基点、サイドチェンジ、多重攻撃。そして今日の仕掛け役である宇賀神の極上の技術。それらすべてが噛み合ったこのゴールは、甲府戦の歴史から難しい試合になる覚悟をしていた浦和に、大きな勇気を与えただろうと思います。

作戦ミスを挽回するために佐久間さんがアジャストします。左右のCBとWBのセットをそっくり入れ替えます。畑尾と松橋が右、橋爪と佑昌が左に回ります。浦和の攻撃のアシンメトリー構造が左右逆になったと見たのでしょう。ポストのケアとしては橋爪と佑昌のセットのほうが良いのかもしれません。

ところが、ここからが今日の浦和のAプランです。前述の通り、今日のシャドウはシンメトリーです。甲府のアジャストを見たためか、もしくは先制アタックのミッションをクリアできたためか、トシもムトゥ同様の動きでポストを担うようになります。これで、左右どちらからでも攻撃できるかたちが完成します。つづめて言うと、浦和の攻城戦秘策は、コンパクトでコレクティブな甲府の守りかたを逆手にとって、左右に揺さぶることで突破口を見つけるというものです。シャドウの役割をシンメトリー構造にすることで、ますますその威力が増してきます。

こうして、ポゼッション志向の浦和をしても、これほどのオーガナイズは滅多に見られないだろうというほど、完璧に試合の趨勢を掌の上で転がすことができる状況を作ることができました。そして、それをさらに裏付ける追加点が生まれます。

45分。甲府のGKからのアタックをいなし、勇樹が自陣でドゥドゥからターンオーバーしたところから。例によって浦和はヌルヌルとパスを回し、チャンスを伺います。甲府が自陣に下がって守備網を整えたのを見て、ボールを持った那須が甲府陣に入ります。那須は槙野にパス。槙野はさらに宇賀神につけます。宇賀神はキープ。まだミッドサードです。宇賀神は松橋を引き付けながら時間を作ります。狙ったのは、やはり畑尾。トシvs畑尾のアジリティ面のミスマッチをつきます。トシを走らせるイメージのスルーを畑尾の背後に送ります。これが成功してトシが抜けだし、ペナルティエリアに入ります。一気に攻撃モードに切り替わります。このときゴール前でも、宇賀神のスルーで局面がガラッと変わっています。涼平も橋爪も揃っていますけど、宇賀神のスルーに反応したのは忠成だけでした。ボールに追いついたトシがルックアップしたときは、ゴール前に忠成がどフリーです。忠成は、やや内側に入り加減のトシのクロスを、得意の左足ジャンピングダイレクトボレーで豪快に仕留めました。ゴラッソ。甲府0-2浦和。

また忠成がインパクトのフェーシングを自画自賛しそうな(^^;、忠成にしかできない美しいジャンピングボレーを観られて、至高の時間でした。攻撃権を持ってからゴールが決まるまで、実に16本のパスをつなげました。宇賀神の一瞬の判断で局面を一気に攻撃モードに変える、とても浦和らしい攻撃です。今日のMVPは、宇賀神で間違いないでしょう。プレーの質も精度も冴え渡っていました。

完璧な浦和のオーガナイズのまま、前半は浦和リードで終了。

後半頭から佐久間さんが動きます。二枚同時代えです。畑尾に代えて福田、黒木に代えて保坂を投入します。松橋が左CBに入ります。福田は左WBです。保坂はそのままボランチに入ります。

これで、涼平の両脇をアジリティの高いバックスで固めることができます。佐久間さんは、もしかするとズィライオの可能性を考えて畑尾をスタートから使ったのかもしれませんね。そうだとするとミシャは正攻法で裏をかいたことになるので、作戦面でもミシャが上回りました。

甲府のアジャストがあっても、浦和のオーガナイズは変わりません。というよりも前半以上に完全性が高まります。甲府が守備のアジリティを高めたことが裏目に出ます。甲府は浦和の2シャドウのポジショニングでボランチとCBのマークの受け渡しをするゾーンなのですけど、ムトゥとトシのポジショニングが絶妙で、左右変わるがわるのポジションの出し入れができるようになって、ますますバイタルエリアの優位性が増します。これは、前半に比べてトシがフィットするようになったためです。浦和はこれができるようになると、ムトゥの得点も上がるようになると思うので、より攻撃力が増すと思います。ムトゥの得点が昨年より減っているのは、ビルドアップ時のムトゥの重要性が増したからだと思うのですけど、ムトゥの負担が減ることで、また一段、浦和の攻撃のレベルが上がるような気がします。

やること成すことすべてネガティブに振れる今日の佐久間さんは、ちょっと信玄公をお詣りしたい心境だったかもしれません。ミシャの打ち手が基本プランも含めロジカルで、それにはまった佐久間さんの読み負けでもあるのですけど、運の無さもたぶんにありましたから。こうなったら守備のアジャストを捨て、攻撃一本にする腹くくりをしたのでしょう。ホームですし。河本に代えて晃太を同じく左シャドウに投入します。前線をフレッシュにするとともに、ドリブルでの状況打開に期待したのだと思います。

浦和が、次なるモードに入ります。すっかりオーガナイズして、アタッキングサードのスペースというスペースを完全に掌握できました。ここで三点目を遮二無二とりに行く選択もあったのですけど、浦和はリトリートします。状況が違えば攻めに行くかもしれないのですけど、なにしろ今日のこの蒸し暑さですから、省エネを考えてのリトリートだと思います。攻撃で思い通りにスペースメイクできてはいたのですけど、それは攻撃陣の絶え間ない運動量の成果でもあるので、甲府の攻撃力をはかったときに、総合的には二点を守りにいくほうが合理性が高いと踏んだのだと思います。浦和サポにとっても、たまにはビールでも飲みながらゆっくりのんびり安心して観戦できる機会になるわけですから、一石二鳥。高度な意味で、浦和のやりたい放題な試合になりました。

そんな浦和に少しアクシデントです。陽介が腰を気にするしぐさをします。それが要因かはわからないのですけど、ミシャが動きます。陽介に代えて、最近好調のカピが入ります。浦和のシャドウのスペースメイクを前提としたポゼッションは、陽介が黒子になることで成立しています。陽介の絶妙なポジショニングで、主役をはるシャドウとは違うもうひとつのパスルートを作るため、守る側は守備の選択肢を増やされているのだと思います。今日は攻撃参加も一回であまり目立たなかったけど、陽介が目立たないほうが浦和の攻撃は全体的に機能していると言えるのかもしれません。

以前のカピは、少し後ろ目に位置してパスをさばくイメージだったのですけど、今日見たカピはよりアグレッシブになっています。中央にどっかり座るスタイルは、陽介とはテイストが少し違う浦和の攻撃スタイルをかたち作る軸になってきている気がします。カピが入ると、カピにボールが集まるので目立ちます。試合をコントロールするモードに入ったときは、カピのスタイルは有効かもしれません。

ミシャが続けます。ムトゥに代えて石原を同じく右シャドウに投入します。ムトゥのコンディションを考慮したのだと思います。それに、石原のはやいフィットを期待していると思います。今日のプレーを見てトシがようやくフィットしてきたように感じました。やはり浦和のシャドウはフィットに時間がかかるのでしょう。出場機会と比例すると思うので、梅崎、駒井を含め、慎三がいない間にできるだけ長くプレー機会を作るべきだろうと思います。

そしてミシャが〆ます。忠成に代えてズィライオを同じくトップに投入します。これも忠成のコンディションを考慮したのでしょう。結果的に、一番フィジカルに難がありそうなトシに90分間働かせることになります。これもミシャの願いなのかもしれません。

カウンターに特化して攻撃プランを作っている甲府は、甲府のミラーのように5+4の守備網で堅く籠城する浦和を攻略する術を、おそらくまったく持ち合わせていないでしょう。たしかにロングフィードは甲府の十八番なのですけど、それはリトリートされた状況を打開するものではなくあくまでもカウンターですから。甲府は、浦和にボールを持たされて、持て余してしまったかのようにパスを回しては、中盤で取り込まれることが続きます。夏の夜のうだるような暑気のなか、甲府サポにスカッと爽やかを届けることはついにできませんでした。このまま試合終了。甲府0-2浦和。

加賀さんの加入以来、浦和の試合を多く観るようになりましたけど、これほど完璧な、作戦もプレーもなにもかも上手くいった試合は観たことがありません。今日の内容こそ、ミシャが目指している浦和サッカーのような気がします。もちろんサッカーは相手がある相対的なスポーツですから、甲府の特性も今日の結果を生んだ要素だろうと思います。なので、これからも今日のようなパーフェクトを見せられるとは思いません。でも、強くなってきているのは確か。例年夏から秋にかけて失速する浦和ですけど、今年はひと味違うかもしれませんね。

正直、出場は期待していなかったのですけど、前半の圧倒的なオーガナイズを見て、もしかしてゴレアーダになったら出してくれるかもって、ちょっとドキドキしてました。でも、陽介が下がって、繊細な試合運びが必要になったので、あきらめました。

残念だったけど、試合後の選手を労う加賀さんの表情を観て、安心しました。素直に勝利を喜び、仲間を誇る柔らかな笑顔に包まれていましたから。浦和に来て、とくに今年は、良い意味で大人になってきていると思います。ツンデレギラギラがトレードマークでしたけど、ファン対応を除き、柔らかさが増してきているのかもしれません。

とにもかくにも、自分がやりたいこと、やるべきことがきちんと整理されてて、しかも日々、しっかりと積み重ねられているからこそ、周囲に気をくばれる柔らかさが生まれているのでしょう。もちろん試合に出て欲しいけど、現実として今、この状況だからこそ得られるものはきっとあるはず。どうやら加賀さん自身がそれを見つけ、迷いなく日々を過ごせているんじゃないかって様子が伺えて、ただ会えた喜びだけじゃなく、前向きな気持ちにも触れられたような気がして嬉しかったです。

これからもひっそり応援します。


2016J1リーグ2ndステージ第5節川崎フロンターレvsFC東京@等々力20160723

2016-07-24 16:55:41 | FC東京

大丈夫。俺たちの東京は大丈夫だ。これからも俺たちは東京を支えるのみ。

突然の城福監督の解任に無念の想いがします。一度大きな挫折を経験したかたの再挑戦はJリーグでは前例がないだけに、失敗を糧にがんばるひとの目標になると思って期待していたのですけど。いずれにしろ、ぼくらは東京を見守り、応援するのみです。城福さんラストマッチとなった川崎戦を、希望を持って振り返ります。

 

今月の中旬から冷夏が東京にやってきています。梅雨明け前の最後の前線の粘りなのか、どんより雲が切れません。過ごし易いけど、夏はやっぱり暑くないとね。

今日は恒例の多摩川クラシコの2ndレグ。アウェイのクラシコはあまり良い想い出がないので、珍しく勝てる気がしません(^^;。なにより心配なのは、イベント大好き川崎にしてイベント要らずのクラシコのはずが、シン・ゴジラとタイアップしていたことです。しかも、試合前の演出にクラシコ感がほとんどなく、たとえば選手紹介のときも恒例のクラシコBGMがありませんでした。なにげにヒロシダービーでもあるのに、むしろゴジラにフィーチャーしていて、川崎がクラシコを見限った感があります。実際の数字は分からないけど、アウェイゴール裏が珍しく完売していないところを見ると、川崎というより東京サポに要因があるような気がします。

間近で長谷川博己さんを観られたお得感はありましたけど(((o(*゚▽゚*)o)))。本日のYou'll Never Walk Alone♪

川崎の雨あられのシュートに耐えましたけど、スミイチに沈みました。これでリーグ三連敗。クラシコ三連敗。等々力では2012年以来勝ちがありません。

東京は室屋がリオオリンピック代表で抜けます。それ以外はベストメンバー。シフトは4-4-2。GKは秋元。CBはモリゲとまる。SBは徳永と諒也。ボランチはヨネと拳人。メイヤは右に広貴左に慶悟。2トップはバーンズとムリキです。

川崎は俺たち小金井の星憲剛がはやくも戻ってきました。靭帯を痛めて4週間の離脱と聞いて心配していたのですけど、思ったよりもはやい復帰で嬉しかったです。なにしろ憲剛がいるといないとでは川崎はぜんぜん違いますから。川崎も大島がリオオリンピック代表で不在。シフトはここのところスタンダードになってきている4-2-3-1。GKはチョン・ソンリョン。CBは谷口と井川。SBは右にエウシーニョ左に車屋。ボランチは憲剛とエドゥアルド・ネット。WGは右に悠左に晃司。トップ下は大塚。1トップは大エース嘉人です。

攻撃に時間と人数をかける変わりに守備のかたちがついになかったポポさんに二年。ロジカルな守備を構築する変わりに攻撃のかたちがついにできなかったフィッカデンティさんに二年。振り子のように振られた四年を経て、安定感のある守備力の延長に攻撃を加えることを志向した2016年ヒロシ東京です。プロセスは真逆でも、志向そのものは、五年間の相違を経て、東京と川崎は交わり合います。

つまり、東京と川崎はアプローチこそ違えど、志向するものが似てきていると思います。こと攻撃に関して、フィッカデンティ体制では川崎の攻撃に対し完全に受けに回っていたのが、今年はイーブンにポゼッションすることを目指します。いちおう、目指してはいます。

結果的には、川崎の完成度の高さの前に東京は屈します。この違いは何か?。フィッカデンティさんのおかげで、ぼくらは守備のロジックを学ぶことができました。今度は、攻撃のロジックを学びたいという欲求が当然出てきます。フィッカデンティさんはついに教示してはくれませんでした。ヒロシも、抽象的で印象的なことばが先行して、就任以来7か月、依然として具体的なかたちを見せてくれていません。ヒロシのことばは分かり易いのだけど、具体性がないので誤解を生みます。けしてヒロシはことば使いが上手いほうではないと思うので、割り引いて見てあげる必要があると思います。

7か月という時間が長いか短いか。第一次体制のヒロシとは、編成もヒロシ自身が表現するサッカーも異なっていますし、安間さんをはじめとするサポートスタッフがいるといないとでは表現するサッカーのディテールが違ってくると思います。あくまでも第二次はリストアではなくリボーンと見たほうが良いと思います。もちろんヒロシが責任を持つのでしょうけど独裁ではなく、今は前例が無い、篠田さん、安間さんとの合議制と見たほうが良いでしょう。試合中に篠田さんが指示を出すシーンも多いですし。とすると、7ヶ月はやはり、まだ7か月と言ったほうが妥当だろうと思います。結果が伴わないのでサポーターが焦るのは必然だとは思いますけど、J1で十分に闘えるクオリティになるためには、まだまだ積み重ねるべきものがあるということだと思います。

2016年7月時点での東京と川崎のクオリティの差は、何に寄って生まれているのか。答えは誰が考えても同じだろうと思います。継続性と選手の質。結果だけを問うのであれば、八宏川崎は5年目にしてノータイトル。比較的安定した闘いをしているのですけど、5年間で三連敗は三度経験しています。昨年までは華麗な攻撃に重点を置き過ぎるあまり、守備の致命的なもろさも合わせ持ち、強さを感じさせない印象がありました。今年変質した川崎は、八宏さんのエキセントリックなロマンチシズムに依存することなく、それに加えて現場の選手自身とサポートスタッフがリアリスティックなサッカーを味付けする取り組みをしてきたのだと思います。編成も、八宏さんと選手が目指すサッカーを具現化できるよう、とくに守備面の強化を目指したと思います。それが見事にはまり、1stステージの躍進につながったと思います。

なんとなく仮説で感じているのは、守備の構築はプロレベルでは案外容易なんじゃないかということです。コレクティブな守備のやりかたは、ある程度は教本のようなものがあり、スタンダード化しているのだと思っています。ディシプリンやモチベーションさえあれば、ある程度守り抜くことは、選手のクオリティ差があってもそれなりに出来るのではないかと思います。川崎が、俺たち守ったら強いんじゃね?と取り組みはじめてすぐに結果が出たことで、自分のなかで確信になっています。優勝した頃の柏とガンバも然り。広島は真髄。見方を変えると、攻撃の構築は、より多くの時間がかかるということではないかと思います。東京は二年間それをサボってきましたし、それ以前もボール回しは巧みでもゴールハント力は無かったですから、今年ようやく取り組みはじめた初年度と言っていいでしょう。一方八宏川崎は、こと攻撃に関しては、柱はブレることなく5年目を迎えます。初年度と5年目の継続性の差は、今日の平場での闘いで目に見えて実感します。

もうひとつは選手のクオリティです。もちろん個々の選手は東京も川崎とまったく遜色無いばかりか、場合によっては東京のほうが高い質を持っています。ただ、東京には憲剛も嘉人もエウシーニョもいません。この三人がいることを前提とした攻撃プランを継続することで、川崎は現在のクオリティを持ち得たと思います。もし単純に今監督を入れ替えたとしても、八宏さんが東京で今の川崎と同じサッカーを築けるとは到底思えません。八宏さんのロマンチックなサッカーの実現に憲剛と嘉人とエウシーニョがジャストフィットだった偶然性によってチームプランのビジョンが決まり、編成が追随したというのが実際のところだろうと思います。その点では、川崎は奇跡のチームだろうと思います。

川崎の攻撃を見る前に、今年の川崎の進化要因である守備の特長を見ていきます。守備網の維持を優先する昨今のトレンドに対し、川崎の守りかたは個性的です。サイド基調の東京しかベンチマークの対象がないので川崎の基本的な守備プランを知りようがないのですけど、川崎はサイドに人数をかけた守備をしかけます。東京がサイドにボールを出すと、川崎はボールホルダーのケアだけでなく、周囲のパススペースに人数を配置します。なので、守備網を俯瞰すると、ボールサイドに偏ったかたちになります。ただし、東京が攻撃をリセットした場合であっても、守備陣形の変態から状態への移行がとてもスムーズではやく、サイド偏重な守りかたでもリスクはありません。この一点豪華主義的な守りかたと基本主義陣形への戻りという形状記憶力が、今年の川崎を支える要因なんだろうなと思います。

もう一つ今日の川崎の守備を安定させていたのは、圧倒的な制空権です。担っていたのはネットです。ネットはことごとく空中戦を征します。ただ高さがあるだけでなく、落下点への入りかたや体の使いかたが巧みなので、東京のアタッカーはネットより先に飛ぶことすらできません。さらにネットは、積極的にセカンドアタッカーの役の担って、攻撃参加します。春先に見たネットは川崎独特の変態な動きにはまらず不協和音の要因になっていましたけど、いつの間にか川崎に強さをもたらす最重要な選手になっている気がします。なので、川崎に心配された大島ロスの影響はとても小さいようです。もっとも、川崎サポさんがいつものネットじゃないって仰っていたので、今日は確変だったのかもしれません。

というところで、東京と川崎の攻撃の違いを見てみたいと思います。抽象的なところから入ると、川崎の攻撃は余裕があります。もっとも顕著なのは嘉人です。嘉人は意図的に消えることができます。嘉人のポジショニングパターンは大きく分けて二つ。前線にはるかバイタルエリアに下がるか。バイタルエリアに下がった嘉人は、もちろんパス回しのハブ役として位置しているのでしょうけど、あえてパスが来そうにない時に下がっていることもあります。これはつまり、隠れているのだと思います。言い換えると川崎は嘉人を消す余裕があるということです。嘉人が中盤で消えている分をフォローするのは大塚と晃司の役割です。とくに大塚が嘉人に変わって前線にはります。あるいは中盤を動き回って積極的にボールに触ります。つまり大塚と晃司が運動量とボールへの関与を高めることで二人に視線が集まり、その分嘉人をチームとして消しているのです。東京はこれができません。川崎が嘉人を消すのは、言い換えると嘉人に点を取らせたいからです。最終的なエースシューターを定めていることは、コレクティブな攻撃を構築するための大前提だろうと思います。もちろんいろんな選手がゴールできるほうが攻撃方法の幅を広げることができるのですけど、それはあくまでも主流があるなかでの話。

まず東京の攻撃の問題は、誰にゴールさせるのかが決まっていないことにあります。なので東京は、嘉人のように消えている選手がありません。おそらく現在の編成ではバーンズがチャンスメーカーでムリキがシューターと位置付けるのが自然だろうと思いますけど、ムリキもバーンズ同様積極的にビルドアップに絡みますから、東京は攻撃時に手持ちの駒を常にフル活用する状態になります。これでは守備側が東京の手の内をすべて見えているので、とても守り易いでしょう。もちろん、それでもバーンズとムリキは、相手が分かっていてもチャンスメークできるのですからその点では凄いのです。さらに東京は、広貴と慶悟がダイナミックにダイアゴナルな動きをすることで、相手の守備バランスを混乱させようとしています。それでもゴールに結びつかない以上、バーンズとムリキをもっと活かすかたちを模索する必要はあると思います。

もうひとつの川崎の特長は、状況判断のはやさです。川崎のアタッカーは迷うことなく次々と縦パスをはなってきます。これは、パスを狙いたいスペースに必ず味方の選手が入って来るから出来ることだと思います。これこそ継続性によって得た最大の成果だろうと思います。そしてヒロシが描く攻撃のイメージも、ヒロシのことばから推測すると八宏川崎の攻撃に近いのだろうと思います。ヒロシにこのイメージの構築に向けた実行力があるのかは分かりません。なにしろ第一次体制でも甲府でも見せていませんから。かと言って無理だというのも尚早だと思います。なにしろ東京には、八宏川崎をしてこの攻撃を実現せしめた憲剛と嘉人がいませんから。川崎のアタッカーは、全員が躊躇なくポンポンとリズムの良い縦パスを入れてくるのですけど、動きとリズムには基準があるのだろうと思います。観ていると、リズムを作っているのはやはり憲剛です。憲剛が縦にパスを入れると、観ているこちら側でも容易にシュートまでのアプローチが想像できるビッグチャンスに直結します。そういう状況は、おそらく意図的に作っているというよりかは、嘉人、大塚、悠、晃司が連動して動くことによって偶発的に生まれているのではないかと思います。意図的に作ってもやがてパターン化しますから、攻撃のやり方として普遍性がありません。つまり川崎の凄さは、偶発的に生まれ続けるチャンスを見逃さない状況判断を、チームとして瞬時に行っていることにあります。

もの凄く難しいことをやっているように思えますけど、たぶん現場はシンプルなのでしょう。シューターはようするに常にシュートだけを狙っていて、パサーは常にパスコースを狙っている。これが連鎖することで、攻撃の有効性が生まれているのでしょう。このような状況は、長年継続しないことにはけして生まれるものではありません。テイストは違いますけど、鹿島と浦和の攻撃特性にも同じことが言えます。何度も言いますけど、攻撃方法の構築に関しては、東京はまだ一年生なのですから、長い目で見てあげるべきです。もちろん、現体制でそれが実現できるのかを見定める必要はありますけど、それは基本的に受容する立場の無責任なサポーターがする仕事ではありません。サポーターの民意で監督やスタッフを変えてそれでも上手くいかなかった場合、我々はどう責任を取りますか?。

川崎の凄さはもうひとつあります。それは、川崎がひと度攻撃すると、常に多重攻撃になることです。よく攻撃をシュートで終えるといいますけど、川崎はその上を行きます。結果が見えるまでシュートを狙い続けます。大事なことはセカンドアタッカーの役割だと思います。多くのチームは、ファーストアタックでシュートに結びつける狙いに集中するあまり、その後の攻撃の流れを予測して選手を配置することはありません。もしかすると、これが出来るチームこそ得点力が高いチームなのかもしれません。鹿島や浦和にも同様のイメージがあります。ただ川崎がこれらの上位チームと違うのは、チームとして意図的にやっている感があることです。川崎がシュート状況に入るときは、かならずニア、中央、ファアに選手が分散配置されています。もちろんセカンドアタックのチャンスがどこにどういうかたちで起こるかは分かりませんから、すべての可能性に対し準備しておくことが川崎らしさなのでしょう。これを実現するためにはアタッカーだけでは足りません。ここにこそ、エウシーニョの存在が大きく影響していると思います。エウシーニョはクロスを上げることもできればドリブルで仕掛けることもできます。それだけでなくいつの間にか最前線でシュートに備えていたりします。川崎が攻撃モードに入ったときは、ただでさえどこから攻めてくるか予測がつかないし、多重攻撃なのでプレーが切れるまで安心できないのですけど、エウシーニョが攻撃に絡んでくると、さらに混沌とした状態になって、恐ろしいことこの上もありません。

以上のことから、川崎の攻撃のクオリティのほうが圧倒的に勝っていますから、川崎がシュートを雨のように降らせることになるのですけど、東京ももちろん川崎の攻撃力が分かっていますから準備を怠りません。データを見たわけではないのですけど、川崎の20本のシュートの大部分は、ペナルティエリアの外から打っていた印象があります。それだけシュート意識が高いということなのでしょう。悠や晃司や嘉人がバーに当てるシーンも数回ありましたから、東京の守備プランとして完璧かどうかはわかりませんけど、最善ではあったと思います。川崎と言えど結果的にペナルティエリア外からのゴールは無かったですから、やはり精度と威力が落ちるのだと思います。川崎に攻撃権を渡した際、4+4の守備網をコンパクトに保ち、ゴール前を固めます。これで左右中央どこから来られてもペナルティエリアに侵入することを防ぎます。川崎は判断のはやさを信条としますので、攻撃をスタックさせることなくシュートをどんどん打ってきます。川崎サポの気分になってみるとストレスは無いですけど、結果が伴わないのもまた事実。

攻撃に関しては、東京はまだ川崎のような高度なコレクティブネスを見せられませんから、あくまで現時点でのベターで臨みます。バーンズとムリキの個人に依存した攻撃です。今日もバーンズとムリキは守備側に囲まれてもものともせずボールを保持します。でもいつもと少し違うのは、バーンズにしろムリキにしろ、中央でのプレーが多かったことです。これはどちらかというと川崎の作戦にはまった感があります。川崎は前述の通りサイドを厚くした守りかたをします。必然的に東京の攻撃はサイドから中央に寄ります。このためバーンズもムリキも、普段はサイドに流れることが多いのですけど、中央寄り基調になったのでしょう。

それでもバーンズもムリキもボールを保持できます。川崎の守備陣をボールに寄せておいてサイドに展開する意図なのだと思います。今日はここが難点でした。せっかくバーンズとムリキが一次基点を作ることに成功し、サイドプレイヤーの位置を押し上げることができても、肝心のサイドで川崎の厚い守備網を突破することができません。サイドに出してはトランジションされるシーンが繰り返されます。

というわけで、予想通りに川崎に攻めれらる試合展開になりましたけど、東京の守備プランがはまったことと、完成とは言えないまでも東京にチャンスメークのかたちがそれなりにあるので、ここ数戦のクラシコとは違って四つに組んだガチの闘いに持ち込むことができました。川崎も、川崎基準で見るとけして調子が良いとは言えなかったと思います。いつのもようにリズム良く攻めていたしシュート打てていたけど、キレがないので一発で決まる感がありませんでした。それよりもシュートを打ち続ける攻撃意欲の持続性のほうに期待していくようになった気がします。

ここで東京にアクシデントが襲います。ヨネが右膝を痛めて退場します。嘉人のポストに寄せようとした時に右足で踏ん張り、全体重が右膝にかかってしまったようです。靭帯を痛めている古傷ですけど、不自然に曲がった感じはないので、大事で無いことを祈ります。代わって秀人が同じくボランチに入ります。

高いレベルでかみ合っていた展開だけに、突然秀人が入って守備網のリズムが狂わないか心配しました。でもさすがにそこは東京ですね。前半の残りが少なかったこともあって、守備バランスを保つことを優先します。秀人が入ってむしろ改善したことがあります。ネット対策です。ネットが攻撃参加する際に秀人がケアします。サイズで劣ることがありませんから、川崎の驚異をひとつ消すことができていました。前半はスコアレスのまま終了。

後半も両チームとも闘いかたに変化はありません。互いに高いレベルで作戦遂行しているということだと思います。良い組み合いが続いていたので、ヒロシ、八宏さんとも、なかなか動かなかったことに想いが現れていたと思います。

先に動いたのは八宏さんでした。大塚に代えてエドゥアルドをCBに投入します。谷口が一枚上がってボランチ、憲剛が一枚上がってトップ下に入ります。大塚は十分に機能していたのですけど、チームとしてペナルティエリアに入っていくことができていなかったので、守備網に囲まれた狭いスペースでもチャンスメークできる憲剛を、寄り高い位置で攻撃に絡ませようという意図だと思います。

ところがこれが裏目に出ます。直接的な因果関係は分かりませんけど、この交代を境に一気に東京に攻撃権が渡ります。もしかすると憲剛が中盤にいなくなってボールを持てなくなったとともに、ネットと谷口の守備のバランスが微妙に整わなかったのかもしれません。東京が、拘束具がはずれたようにアタッキングサードに入っていきます。この流れのなかで、秀人からのロングスルーでムリキが抜け出すスーパービッグチャンスが生まれます。結果的に川崎が今年守備力を大きく増したもう一つの主因であるソンリョンがムリキのシュート力に勝ることになりますけど、タラレバを言うのがサポの特権ですから、なによりも残念なシーンでした。八宏川崎の作戦面のミスをつく一点にもなりましたから、もしかすると決まっていたら結果は真逆になったかもしれません。

そこで八宏さんが再調整します。シフトを3-4-2-1に変更します。3CBは右から井川、エドゥアルド、谷口。憲剛がふたたびボランチに入ります。2シャドウは右に悠左に晃司。守備時に5+4のかたちになりましたので、中央とサイドの両方を抑える守備強化の意図もあるかなと思いましたけど、どちらかというと、中央のアタッカーの人数を増やすことと、エウシーニョと車屋の攻撃時の位置を高くする意図のほうが勝っていたと思います。

これが機能します。川崎はふたたび攻撃権を取り戻します。こういうアジャスト力も、五年間の積み重ねの成果のひとつなんでしょうね。軌道修正の目的に対し、方法がきっちりと用意されているのは、試合展開の様相を選ばない柔軟性につながっていると思います。そして、ついに川崎がゴールをこじ開けます。

81分。ペナルティエリア外のゴール正面の晃司のFK。これは壁に当たります。さらに跳ね返りをエドゥアルドがシュートしますけど、これも壁に当たります。こぼれたボールを憲剛が拾います。憲剛は左サイドでフリーになっている車屋に絶妙スルー。車屋は流れのままに余裕をもってルックアップ。すでにペナルティエリア内の攻防です。細かいですけど、こういう丁寧さが憲剛の真髄でしょう。この時ゴール前は、川崎が四枚単横陣で並びます。ニアから晃司、嘉人、悠、ネット。やや遅れてエウシーニョが入ります。対する東京は七枚。数的には7on5の優位です。ただし、実質は車屋に二人ケアに入っているので、5on5のイーブン。さらに大外ネットには誰もついていません。車屋の狙いはもしかしてそのネットだったかもしれません。でもクロスはややショートして、悠とモリゲのマッチアップに向かいます。モリゲは悠の前をとっていたのですけど、そこにエウシーニョが被ってきたので、飛ぶタイミングが一瞬ずれます。結果、悠のほうが高さが勝り、そこにちょうど車屋のクロスが合いました。悠はおそらく狙ってはなく、頭に当てたら入ったという感覚だと思います。川崎1-0東京。

直後に八宏さんが動きます。FKの時点で既に用意していたことですけど、晃司に代えて武岡を投入します。同時にシフトを4-4-2に変更します。武岡は右SBに入ります。谷口が左SBに回ります。エウシーニョと車屋がそれぞれ一枚上がってメイヤに入ります。2トップは嘉人と悠。結果的にリードした状況で武岡を入れたので、もともとの意図はわからないのですけど、もしゴールが決まっていなくてもシフトを変えたのではないかと思います。狙いはもちろん、エウシーニョと車屋の攻撃力をさらに活かすためだと思います。ところがリードしたので、イケイケになるというよりかは、エウシーニョと車屋をジャブのような役割で使うようになります。

同時にヒロシが動きます。やはりFKの時点で用意していました。慶悟に代えて草民を右メイヤに投入します。広貴が左に回ります。ヒロシのほうはよりシンプルな作戦で、フレッシュな草民に攻守の運動量を期待して、どんどん仕掛けさせようという意図だと思います。

おそらくヒロシのほうは、リードされた時点でさらに+αの打ち手が必要と感じたのだと思います。広貴に代えて相太をトップに投入します。バーンズが右メイヤ、草民が左メイヤにそれぞれ回ります。前線にターゲットマンを置いて、寄り高い位置で基点を作る意図だと思います。

東京がシンプルに縦に急ぐ攻撃に移行したため、最終盤は東京に攻撃権が渡ります。八宏さんが最初に動いた時間帯に続いてアタッキングサードに入ることができるようになります。でも、残念ながら時が足りませんでした。このまま試合終了。川崎1-0東京。

これがヒロシのラストマッチになってしまいました。リーグ戦三連敗。過去も、それこそ第一次ヒロシ体制や第二次ヒロミ体制、ガーロ体制など、しんどい時期がありましたけど、今回のはちょっと様相が違います。あの時のような、どうしようもなく後手後手になって迷走するといったことはまったくなく、やりたいサッカーは、少なくとも組み立てまではできていますし、それをブレることなく続けています。おそらく、結果が伴わない違和感はありながらも、チーム内に迷いは無いのだろうと思います。変に精神論を持ち出して、不協和音につながるような雰囲気になってほしくないです。やっていることがブレなければ、身の丈以上になることはないけど、少なくとも来年の躍進につながる底力を身につけることは必ずできると思いますから。

東京にとっては、今日は良いベンチマークになったと思います。鳥栖や福岡戦のようなエクスキューズはなく、柏のような変態な相手でも無かったので。それ以上に、東京が目指す未来の姿が今日の等々力にありました。批判は、チームをよどませることなく活性化するために大切なことです。むしろ好調時にこそ批判があって良いと思います。今は、とにかくチーム全体が同じイメージを持ち、目標を共有することが大切です。チームが一体化することを後押ししてこそのサポーターだと思います。人それぞれですからいろんな想いがあることはとても良いことだけど、サポーターは利己的な存在ではなくチームの一部であるべきだと思いますから、無配慮に想いを吐露するのではなく、チームにとって最善は何かを考えて行動すべきだと思います。勝てないチームを見たいお客さんはいないのはもちろんだけど、サポーターの雰囲気が良くないスタジアムに来たいって思うお客さんもいないですよね。

体制は変わるし、どんなかたちになるか、どんなサッカーになるかわからないけど、あくまでもポジティブに見守っていきます。毎年調子が上がる真夏のリベンジを期待しましょう。


ギラヴァンツ北九州新スタジアム 北九州スタジアム建築状況見学 20160716

2016-07-23 15:33:23 | サッカー

西日本は梅雨明けしました。関東はいつになるやら。

九州北部は祭り週間なのか、博多祇園山笠が終わった博多駅に、高千穂から神楽がやってました。

高千穂神楽は秘技なのかと思っていたのけど、そうでもないのですね。夜神楽は毎年秋から冬と時期が決まっているけど、観光神楽は年中見られるようです。

うずめちゃん。

今日は高千穂観光PRで、神々が山から下りてきてくれたようです。

もちろん天照大神もね。鈿女の舞戸取の舞

博多を離れ、夏休み九州旅の〆の地に参ります。少し東に戻りまして、九州の玄関北九州です。福岡から新幹線で10分強なのですけど来たことがなく、初小倉。

北九州に来た目的はナイトマッチの北九州vs山雅なのですけど、滅多にできないもうひとつの趣味、建設中のスタジアム巡りです。今回まいりますは、来春竣工の北九州スタジアムです。

完成予想図。

それでは北九州スタジアムにアプローチしてみましょう。全行程はこちらで分かると思います。図の左下が北九州スタジアムです。アプローチはとてもシンプル。

JR九州小倉駅の改札を出て右、新幹線口に向かいます。

ここを下ると右手にJR西日本の新幹線改札と合流します。

新幹線でお越しのかたはこちら。JR西日本の新幹線改札を出て右。

新幹線口です。

ここを右手に向かいます。

スタジアムのすぐそばまで屋根付きのコンコースを進みます。北九スタはバックスタンド以外は屋根が完全にスタンドを覆います。アクセスを含めこれほど全天候型のスタジアムは他に知りません。立地は偶然でしょうけど、素晴らしい環境です。

新幹線口の前には、松本零士先生の世界があります。メーテル~。

鉄郎。

キャプテンハーロック。先生は小倉のご出身なんですね。

ここを左折。

動く歩道があるので楽チン。西日本総合展示場に向かいます。

ここを右折してまっすぐ進み、アジア太平洋インポートマート(AIM)を外周する回廊に入ります。

左に見えるAIMの中に入ります。ギラヴァンツのホームゲーム開催時にAIMを通過できるかわかりませんけど、通過できるとバリアフリーなので便利です。

AIMのコンコースをまっすぐ北に向かいます。

AIMを出て、右手のエスカレーターを下ります。

エスカレーターを降りたら屋根がなくなります。アプローチで屋根が無いのはここだけ。

西日本総合展示場に沿ってこちらに向かいます。

西日本総合展示場に沿って左に折れると、目の前にスタジアムが見えます。ここまで徒歩で約10分。

AIMに入れない場合は、AIMの外壁に沿って反時計周りに4分の1周ほど歩きます。AIMの入り口前をまっすぐ。

こんな回廊を進みます。

ここの右手に階段があります。

ここを下ります。

地上に下りると、AIM内通過コースと合流です。目の前にスタジアムが見えます。南側からは北九州国際会議場があってスタジアムの全景は見られません。

それでは建設中の北九州スタジアムを巡ってみます。北九州スタジアムのエントランス、スタジアムプラザです。

メインスタンドの南側です。

南サイドスタンドです。

メインスタンドと南サイドスタンドに上がる階段。にぎわいプロムナードを反時計回りに回ってバックスタンドに行けると思いますけど、アウェイサポがバックスタンドに行く場合は、スタジアムの外周から直接バックスタンドに入るのでしょう。

メインスタンドと南サイドスタンドの間の円形の部分、にぎわいプロムナードです。

今バックスタンドには南側からしか近寄れないので、国際会議場の脇を通って小倉港に出ます。

小倉港です。

港から見た南サイドスタンド。

南サイドスタンドの内部が少し見えます。

南サイドスタンドとバックスタンドをつなぐ階段。南サイドスタンドとバックスタンドは分離されています。階段はサイズは小さいけど、市立吹田サッカースタジアムと同じ構造です。

バックスタンドです。バックスタンドだけ屋根がありません。

バックスタンドと海の距離はこんな感じ。サンフランシスコのAT&Tパークのライトスタンドみたいですね。

バックスタンドから見える北サイドスタンドの屋根。

スタジアムと国際会議場の間は、建設中の現在は狭いですけど、竣工すると通路ができるようです。

メインスタンドに戻ります。あらためまして、南側から見たメインスタンドです。

メインスタンド前の道路とスタジアムを挟んだ向かいの空き地も整備予定です。

メインスタンドの回廊の真ん中あたりに陸橋がつくようです。歩道側の橋脚。

スタジアム側の橋脚。

メインスタンド中央下層の入り口です。たぶんチームバスはここに横付けするのでしょう。

ピッチの工事の様子がちょっとだけ見えます。

北側から見たメインスタンド。

北サイドスタンドです。

北サイドスタンドの内部。

北サイドスタンドの向かいは、松山・小倉フェリーの乗り場です。愛媛FCサポはなんと、船で北九スタに行けるのですね。

港の向かい側は、たぶん新日鐵。

北サイドスタンドの全景です。南サイドスタンドは国際会議場があって全景が見られないので、サイドスタンドの全景はここから見られます。

今唯一スタンド内部が見られるのは北側から見た南サイドスタンドの上層です。

北サイドスタンドとバックスタンドは他のスタンドと直接つながっていない独立構造です。駅から一番遠いので、おそらく北サイドスタンドがアウェイ側になると思うのですけど、アウェイサポを隔離する出島ができます。出島というだけで血が騒ぐのは、自分が東京サポだからでしょうか(^^;。

駐車場はアナウンスがないのでわかりません。フェリー乗り場横の空き地が工事関係者の駐車場のようですけど、すれほどスペースは広くありません。国際会議場の南側に周辺施設用の大型の立体駐車場があって、もしかすると試合開催時にそこを使用できるようにするかもしれません。もっとも、公共交通機関でもアクセスはとてもいいので、車よりも電車、バスのほうが良いかもしれませんね。

北九州スタジアムの運用開始は来年3月のJリーグ開幕を予定しています。竣工は今年中か、年明けでしょうか。

駅からの近さ、小倉市街地内であること、アプローチにほぼ屋根があって、動く歩道もあること。スタジアムの快適性はできてみないとわかりませんけど、少なくともハード面に関しては、北九州スタジアムは完成するとJリーグ最高、日本最高のサッカースタジアムになると思います。ぜひソフト面の運用も、予算が限られるかもしれませんけど、いろいろ工夫してみてもらいたいと思います。

そしてなにより、ギラヴァンツががんばらないとね。ギラスクウェアは、新幹線口を出て駅に沿って東に行ったつきあたりの、あるあるシティのなかにあります。

また新しいJリーグの旅の楽しみが増えましたね。オープニングマッチが公式戦の開幕戦だったらちょっとキビしいですけど、プレシーズンで開催してくれるのなら、ぜひ来てみたいです。それでは次回は完成形を、おたのしみに!。


2016J1リーグ2ndステージ第4節FC東京vs柏レイソル@味スタ20160717

2016-07-18 21:42:17 | FC東京

晴天の福岡から、空路東京へ。

夏休みの締めくくりはだいたいいつも強行軍で、旅の地から一気に東京に帰ります。なんだか遠方からホームにやってくるような感覚です。例年は長距離ドライブでしたけど、今年は空路なので楽です。

夏休み最後のイベントは、またJ1リーグに戻って、今日は柏です。先週クリスティアーノが抜けた甲府と闘ったばかりで、今度はクリスティアーノが帰還した柏です。結局クリスティアーノと同時期に対戦するのですから、なんだか因果ですね。本日のYou'll Never Walk Alone♪

イニシアチブを取りにきた柏を完全封鎖して逆にオーガナイズできた東京でしたけど、ワンミスに泣きました。

東京はオリンピック代表壮行メンバーです。シフトは4-4-2。GKは秋元。CBはモリゲとまる。SBはオリンピック代表の室屋と徳永。ボランチはヨネと秀人。メイヤは右に今日は拳人左にオリンピック代表の翔哉。2トップはバーンズとムリキです。

柏は前節大谷が戻ってベストメンバーです。シフトは4-2-3-1。GKはオリンピック代表の航輔。CBは進之介と雄太。SBは右に湯澤左に輪湖。ボランチは大谷と栗澤。WGは右にIJ左にクリスティアーノ。トップ下は中川。1トップはディエゴ・オリヴェイラです。

朝日さんが「もう何が良くないのか分からない。困った」という主旨のことをツイートされてましたけど、まったく同意です。良いサッカーをしているのに、もはやついてないとしか思えないほど、結果だけが伴いません。大國魂神社にもう一回行って、お祓いをしたほうがいいんじゃないかな。

ひさびさに観た下平柏は進化しています。達磨柏への回帰からスタートした下平体制でしたけど、その真髄である変態ちっくな中盤の逆三角形のイメージは残しつつ、よりトレンドを取り入れたかたちにアジャストしてきています。下平さんがホントにやりたいサッカーに近づいているのかもしれません。

柏はキックオフからラッシュを仕掛けます。おそらくイニシアチブを握るための、いわゆるかましだろうと思います。柏の闘いかたを考えると、ボールを保持して攻撃権を持ち続けることで試合を優位に進めるという、横綱相撲的な志向ですので、先制するととても安定的に試合を進められるのだろうと思います。なので先制点の意味が、他のチームに比べると比重が高いと思います。今のトレンドは、リードするとリトリートして相手の攻撃を壊しつつ、試合を安定させることです。それに対し下平柏はとても個性的で、逆にポゼッションを高めて見た目にも主導権を持ち続けようとします。なので、序盤のラッシュは先制を狙った色気も多分に含んでいたと思います。柏の狙いはボール回しのパスミスです。とくにバックパス。中盤のボールホルダーにプレスをかけつつ、受け手を狙います。なまじなクオリティのチームだったら、たしかに一度くらいはミスをするかもしれません。そこのところは東京です。守備的な選手全員が、プレスに対してまったく動じず、秋元を含め、悠々とセーフティにボールを進めます。

ところがこれが柏のラッシュのホントの狙いです。東京が安定思考になって、ボールとともにリトリート傾向になること。そして柏は全体を押し上げます。その上で、東京のクリアボールを受け、ポゼッションをはじめます。柏モードのスタートはここからです。

柏のシフトはベースはおそらく4-4-2なのでしょう。守備モードのときは、IJが右クリスティアーノが左のメイヤに入り、4+4の綺麗な2ラインを敷きますので、これが基本シフトなのでしょう。でも攻撃に入ると、達磨柏の名残りがちょこっと顔を出します。CBが左右に開き加減になります。これでSBを中盤まで押し上げます。ボランチのどちらかがCBの間に入ります。ですので、攻撃時には3バックのようなかたちになります。マリノスと同じ考え方ですね。今日は栗澤が下がることのほうが多かったです。中川がトップ下の位置に下りてきます。大谷が栗澤と中川の中間に入ります。前線は3トップの並びになります。IJは右クリスティアーノは左のラインに張り付きます。オリヴェイラが真ん中に残ります。ちょうど大谷と中川を中に入れた大きな円を作ったようなかたちに見えます。

ボールの出し手は後ろの三人、進之介、栗澤(大谷)、雄太です。このかたちのメリットは、全方位的に攻撃ルートを作ることができることです。なので柏には決まった攻撃パターンのようなものが無いのだと思います。相手との力関係とその時の状況で、優位性を持てた局面がそのままチャンスになるのだと思います。ゆえに柏の攻撃はゆっくりとパスを回しながらも隙を伺い続けます。どこかしら、柔和な顔をして懐にあいくちを飲んでいる市井の渡世人のような風情があります。

当然のことながら、デメリットがあります。達磨体制から続くことです。柏自身が選択していることなので、問題点というよりかは覚悟だと思っていいでしょう。パスを回すこと、すなわちパスの出し手と受け手の距離感を大切にすることを優先しますので、アグレッシブな動き、たとえばラインの裏のスペースを狙って走り込むとか、ダイナミックなポジションチェンジとか、ダイアゴナルなランニングとか、そういった類のプレーがほとんどと言っていいほど見られません。このため柏の攻撃は、パスをひたすら回し続ける消極的なものに一見すると見えます。好みの問題ですけど、一般的に日本人はシンプルでダイナミックなカウンターサッカーを好む傾向にありますから、場合によっては90分間ひたすらパス回しを見させられることに対し、イライラする人もいるかもしれません。ところが柏サポはこの優雅なサッカーを受け入れているのですから、サッカーに対する多様性が、もしかするとJのなかで突出してあるのかもしれません。少し引いて考えてみると、この闘いかたは攻撃のバリエーションが豊富ですから、観戦しながら攻略法を考えられるおもしろさがあるので、思考的なサポには向いていると思います。今年は真逆なスタイルに取り組む方向性で入りましたけど、はやばや下平体制への変更を選択しました。もはや柏のDNAとして、このサッカーが染みついていると言って良いと思います。柏のこの変態な個性をこのまま続けて欲しいと願います。

東京は柏対策を仕込んで臨みます。ポイントは秀人です。柏のパス回しは広島に似ています。大谷が円の中央に入って、後方とパスを交換することでリズムを生み出します。つまり、大谷が柏の鼓動の心臓部に当たります。東京はまず、このリズムを崩すことを試みます。90分通じて、大谷にちょっかいを出します。それが秀人。通常東京は4+4の2ラインを維持しますけど、今日は柏に攻撃権が渡ると、秀人だけ大谷にプレスを仕掛けます。もちろんトランジションを図ったものではなく、リズムを壊すとともに、柏の攻撃ルートから中央を断ち、かつ左右どちらかに誘う効果を狙っていたのだと思います。

さらに今日秀人を起用した意味は、中川対策だと思います。柏がのらりくらいの変態ポゼッションスタイルですから、中盤でのハイプレスは却って柏に弄ばれるリスクがあります。なので、文字通りアンカーのようにどっしりと危険の芽を断てる秀人を真ん中に置いたほうがメリットが高いのでしょう。柏の中央の攻撃ルートは中川だと思います。サイズのことを言うと中川に怒られるかもしれませんけど、秀人と中川の中盤でのマッチアップはさすがにミスマッチ感が見た目にもあります。中川だけでなく、オリヴェイラが中盤に下がってパスを受けるシーンも時々ありますけど、秀人であればパワー負けする心配がありません。今日は秀人が中盤の守備に君臨します。

そのため柏は、中川を経由して、より高い位置で攻撃を仕掛けることができません。オリヴェイラにつけても、そこには代表CBが待ち構えていますので、ポストが安定しません。必然的に柏の攻撃はサイドに流れていくことになります。右は湯澤を基点にIJを奥に走らせるパターンです。左はよりマルチになっていて、輪湖から前のクリスティアーノか、直接クリスティアーノにつけて仕掛け、もしくは輪湖のオーバーラップを引き出してクロスもあります。なので、右の場合は、湯澤とIJに中川を含めたコンビネーションが整っていることが優位性の条件になります。左はクリスティアーノのコンディションにつきるでしょう。

左右で攻撃の特性が異なる柏ですけど、東京は十分にゾーンで対応します。左では、翔哉が湯澤の選択肢を断ち、徳永がIJの攻撃ルートを消します。右はクリスティアーノの関係で、左よりもマンマークの要素が高くなります。クリスティアーノに対しては、中盤では拳人、ディフェンシブサードでは室屋がしっかりケアし、結局クリスティアーノらしい独力の仕掛けは完封しました。柏の特長のひとつはサイドプレイヤーのクロスの精度ですけど、今日は有効なクロスがほとんど無かった印象です。結果的に柏はチャレンジングなプレーがまったくと言っていいほどありません。CKが1本に終わったスタッツが柏の内容の薄さ、チャレンジの無さを如実に表していると思います。

こうして東京は、柏をただパスを回させるだけの消極的なサッカーに封じ込めることに成功します。そして攻撃に転じます。今日は翔哉を使ったので、てっきり翔哉システムにしてくるのかなと思いましたけど、攻撃方法は基本的に変えません。今日の攻撃は、いくつか見せた攻撃パターンのうち、1stの終盤のかたちに近いものを選択します。東京の狙いはSBの背後のスペースです。そこにバーンズとムリキ、あるいは室屋と徳永を走りこませ、アタッキングサードに侵入する狙いです。なので、中盤のサイドで基点が必要になります。拳人と翔哉が担います。

拳人にしろ翔哉にしろ、もちろん基点のタスクを十分にこなせると思いますけど、個性はアタッカーですから、二人とも物足りなさはあったかもしれませんね。とくに翔哉は、独力で仕掛けることで能動的にアクシデントを作り出すスタイルですので、いっそうプレーして無い感があったかもしれません。結局翔哉が翔哉らしく仕掛けるシーンは一度も見られませんでした。翔哉は試合に出続けて技術とリズムを身につけるタイプのような気がするので、ただでさえ試合に出られない状況でチームを離れるのは、長い目で見たときにプロとしてちょっとリスクなんじゃないかなと心配です。もちろんブラジルで絶対的なプレーを見せたらむしろビッグチャンスになるのでしょうけど。

とはいえ、この東京の攻撃は機能します。もともと柏が攻撃権を持ち続けることを志向するのは、ようするに守備をしたくないわけで、つまるところ守備力がそれほど強くはないと推測することができます。SBは、左右どちらかはCBタイプを置くことが多く、今日の湯澤と増嶋もその考えに沿ったものだと思います。これは守備の強化を意識したものだろうと思いますけど、実態が伴いません。東京はおもしろいように柏の背後を取ることができていました。

なので東京はアタッキングサードに入ることは、いつになく容易です。サイドアタック基調といっても単純なクロスの放り込みではなく、ペナルティエリアに入って仕掛けます。今日もバーンズが独力でゴリゴリと行きます。そろそろバーンズ先生と呼びたくなりました。これでゴールを量産してくれたら東京初の大先生の称号を贈ることも考えるのですけど。さらに中盤からヨネと秀人も上がって、厚みをかけた攻撃を展開します。最終盤で息切れするまでは、攻撃の時に柏のクリアボールを拾い続け、多重攻撃を仕掛けることができていました。しっかりと攻撃をシュートで終えることも出来ていました。

というわけで東京は、ホントに素晴らしいサッカーを展開します。それでもゴールが決まらない。冒頭にも言いましたけど、何が悪いのかホントに分からなくなってきました。あえて言うと、ゴールに対峙しているのにパスを選択するシーンが何度かあります。これは東京の伝統芸でもあるので今にはじまったことではないのですけど、結果が伴わない状況のなか、目立って見えます。それから今日に関しては、柏がポゼッションスタイルなので、得点確度の高いカウンターのかたちに持ち込むことができなかったことも要因だと思います。なので、チャンスであっても完全にフリーになる選手がありませんでした。その点では、柏の意図のひとつに封じられたのかもしれません。前半はスコアレスのまま終了。

後半から、柏が少しアジャストします。全体的な闘いかたに変化はないのですけど、局面でのコンタクトが見えるようになります。なのでにわかに試合が激しくなったように感じました。とくにオリヴェイラがモリゲとまるに対して積極的にコンタクトするようになります。このこと事態にどんな効果を期待したのかわからないけど、さすがに前半の出来は、下平さんは温く感じたのかもしれません。

それから、IJとクリスティアーノをターゲットにした長めのボールが混ぜられるようになります。これは縦への推進力を作りだす意図だと思います。それとともに、東京に攻撃権が渡る時間が長くなってきていたので、もう一度柏のリズムを取り戻すことも狙っていたと思います。そして、そのアジャストがはまります。

58分。輪湖のスローインから。輪湖から受けた進之介は雄太に渡します。雄太はルックアップ。この時最前線では、ラインに張り付いていたオリヴェイラとクリスティアーノが、ポストを受けるかたちで下がる動きをします。東京はこれに合わせてラインを上げます。でもこれはフェイクです。オリヴェイラとクリスティアーノは反転、裏に抜けようとスタートを切ります。これを見た雄太はクリスティアーノにフィード。室屋はフェイクにつられてクリスティアーノにつけません。クリスティアーノはフリーで内にフリック。落下点にはオリヴェイラにモリゲとまる。フリックはまるがカットしてオリヴェイラには届かず、さらにモリゲが拾います。モリゲはおそらく徳永に渡そうとしたのだと思いますけど、これがショートします。この時徳永の背後からIJがペナルティエリアに上がっていました。ボールを見ていた徳永はIJに気付かず。IJはコロコロ転がるボールを拾って右足でたたき込みます。東京0-1柏。

つくづくサッカーはミスのスポーツですね。オリヴェイラの対応までは十分でした。イーブンボールを拾ったモリゲの体勢が不十分だったのでパスがショートするのですけど、モリゲらしくなく、ちょっと急ぎ過ぎたかもしれません。そこにいることが十分予測されるIJを意識していなかった徳永のミスでもあるのですけど、モリゲのパスが通常通りに来ていたら、逆に徳永はフリーで攻撃に転じられるわけですから。おそらく徳永はそう考えていたのでしょう。

ちょっとさすがに、今日もまたか感が否めませんね。内容では柏の意図を完全に封じていたので、柏にゴールの匂いはまったくしていませんでした。なので失点は想像もしていません。むしろ攻撃の作戦がはまっていたので、時間の問題かなと思っていました。その矢先の縦ポンからの失点で、脱力感がありました。ホントにお祓いに行ったほうがいいんじゃないかな。ヒロシが動きます。徳永に代えて広貴を右メイヤに投入します。拳人が右SBに下がります。前線にダイナミックな動きを加えたかったのだと思います。攻撃はパワー勝負を挑んでいましたので、攻撃ルートは比較的シンプルだったのですけど、それでは最終局面で崩しきれないので、ダイアゴナルな動きができる広貴でひっかき回そうということだと思います。

ゴールといえば、頼みの綱のひとつはセットプレーです。今日の柏は対策を施してきました。セットプレーに対し、珍しいフルゾーンで守ります。東京対策なのか普段から柏はこの考え方なのか分かりません。いずれにしろ、東京が得意とする二列縦陣のセットプレーに対し、ゴール前をひと垣で固める作戦は有効でした。東京はショートコーナーを多用して打開しようとしますけど、ひと垣を潜り抜けることはついにできませんでした。

直後に下平さんが動きます。湯澤に代えて増嶋を同じく右SBに投入します。ちょっと意図がわからなかったのですけど、もしかしたらアクシデントで、湯澤がどこか違和感があったのかもしれません。守備の強化も考えてのことだろうと思います。

この時間帯に一気にベンチワークが慌ただしくなります。ヒロシが動きます。翔哉に代えて相太をトップに投入します。バーンズが左メイヤに回ります。バーンズをフリーにするために、ひとつ下げる意図だと思います。それから、ターゲットマンを前線において、より高い位置で基点を作ることも含んでいると思います。

下平さんが動きます。輪湖に代えて山中を同じく左SBに投入します。これも意図がよくわかりませんけど、SBを両方とも代えたということは、今の柏の闘いかたはSBの負担が大きいのかもしれません。連戦ですからコンディションを考慮したのだろうと思います。

さらに下平さんが続けます。大谷に代えて祐介を同じくボランチに投入します。これは復帰したばかりの大谷のコンディションを考慮したのだと思います。

ヒロシも続きます。バーンズに代えて慶悟を同じく左メイヤに投入します。これもバーンズのコンディションを考慮したのでしょう。バーンズは今、東京の攻撃の最重要キーマンですので、できれば長くプレーしてほしいのですけど、連戦ですからそうもいかず。しかも日本のこの湿気ですから。

バーンズが下がったことで、ムリキにボールを集めて突破を試みます。柏が守備を意識したこともあって、最終盤は東京が攻撃権を持ちますけど、リトリートした相手を崩すほどのクオリティがありません。さらに、中盤のボールへのアプローチも遅れ勝ちになってきて、こぼれ球を拾えなくなります。なので多重攻撃ができず、柏に攻撃権を渡し時間を使われるようになります。

最後は柏のコントロール下に置かれ、むしろ時間を追うごとに得点の匂いが薄まっていきます。そしてこのまま試合終了。東京0-1柏。

基本的にポジティブであろうと思いますし、勝敗に対して鷹揚なほうなのですけど、さすがに似たような敗戦が続くとしんどいです。明確な問題点があっての敗戦であれば、課題が見えますからまだ楽というか、受け取りかたが容易なのですけど、今はサッカーそのものが悪いわけではないので、がんばっている選手とスタッフのことを想うと、いっそう切ないですし、辛いです。ただでさえACLのせいで編成過多というリスクがあるなか、チームに迷いが出なければいいのですけど。

見方を変えると、ほんのちょっとしたきっかけで流れが変わると思います。守備の不運やミスはつきものとして、総失点数も悪い数字ではないですから、やっぱりゴールですね。アテンプトが無いわけではないので、もうそのうち決まりはじめることを信じてシュートを打ち続けるしかないでしょう。今たしかに、誰にシュートを打たせるのかが決まってなく、シュートに持ち込む最終局面のパターンができていません。何かのきっかけで見つかるかもしれないので、とにかく信じてやり続けるのみだと思います。

リオオリンピックの日本代表は今日で遠征前最後の試合になりました。翔哉、室屋、航輔には力いっぱい頑張ってきてほしいと思います。いっぱい宝物を身につけて、大きくなって帰ってきてほしいと思います。

夏休みの最初と最後がどんよりな結果になってしまったけど、心配された雨にも合わず、楽しい九州旅でした。夏休みはあっという間だなあ。次はルヴァンで9月。行く夏を想って、今度は勝ってウキウキ帰りたいものです。


2016J2リーグ第23節ギラヴァンツ北九州vs松本山雅@本城20160716

2016-07-18 14:32:59 | サッカー

あいかわらずまとわりつくような湿気が九州北部にただよいます。案外嫌いではないのですけど。

夏休みの九州旅で最後に訪れたのは、北九州は小倉。

小倉は祭りのシーズン。祇園太鼓です。

街中にお囃子の音が響いていました。

小倉城の競演会場。

初めての小倉城です。

小倉城大手門付近の石垣は、良しが大きくてびっくりしました。

小倉城は虎。とらっちゃです。

祇園太鼓の熱気溢れる小倉を離れ、主目的は今シーズンがラストイヤーとなる本城陸上競技場です。

本日は北九州vs山雅。来てから気づいたのですけど、そういえば先月松本で観た組み合わせのリターンマッチを偶然観ることになりました。祇園太鼓♪中央線♪

暑さゆえか低調な山雅でしたけど、粘り強くリードを守り切る強さを見せました。

北九州は刀根が戻ってベストメンバーです。シフトは中盤スクエアの4-4-2。GKは阿部。CBは刀根と寺岡。SBは右にJリーグ100試合出場の星原左に石神。ボランチは宏希と新井。メイヤは右に小手川左に川島。2トップは一樹と池元です。

山雅は喜山が不在ですけどどうしたのかな?。喜山以外はベストメンバーです。シフトは3-4-2-1。GKはシュミット・ダニエル。3CBは右から後藤、飯田、安川。ボランチは岩間と宮阪。WBは右に飯尾左にあんじゃん。2シャドウは右に浩平左に石原。1トップは高崎です。

北九州はトレンドに沿ったオーソドックスなサッカーを展開します。守備は4+4の2ラインで作る守備網で、ゾーンで網目にかける守りかたです。ラインの位置は高めですので、中盤でトランジションしてショートカウンターにつなげる狙いでしょう。極端なフォアチェックはなく、ショートカウンター期待と言っても運動量に起因する慌ただしいサッカーではありません。むしろ気品すら感じます。

北九州の攻撃はサイド偏重です。小手川、川島とも独力突破型のウインガータイプではなく、ボールを保持して時間を作るチャンスメーカーです。ですので北九州のサイドアタックは、メイヤを一次基点にして、その奥をアタッカーに狙わせる作戦だと思います。

アタッキングサードのサイドを狙うパターンは二つ。ひとつはSBのオーバーラップです。北九州のサイドアタックは、左右に偏ることはなく、シンメトリーでバランスが取れています。守りかたもまた然りなのですけど、幸一さんのサッカーのキーワードはバランスなのかもしれませんね。もしかしたら地位や嗜好性に偏ることのない、普遍的なサッカーをすることで、これからサッカー文化を育てようという地域に、サッカーの基礎を宿らせようとしているのかもしれません。そう感じさせるほど、北九州のサッカーはクセがなく、綺麗です。

言い方を変えると、コクがないサッカーとも言えます。実際のところはチームの個性を生むほどの編成ではないからなのでしょう。個で勝負できないならコレクティブに行こう、というところなのかなと思います。それに、北九州の地位で個性に依存することは、メリットもありますけどデメリットのほうが大きいでしょう。例えば大分はヨーロッパやJ1でも活躍するタレントを多く輩出してきましたけど、彼らが大分を去るとチームが方向性を見失います。セレッソもまた然り。もちろんタレントがいる間がビジネス上のビッグチャンスではありますけど、今稼ぐことに忙しく、未来のために行動する余力は北九州にはないだろうと思います。

雨予報とは言え、本城の観客は3,125人です。相手が山雅なのでアウェイ席が比較的入っていたけど、相手によってはもっと厳しい状況でしょう。来年はJリーグ最高の環境が整った北九州スタジアムに移りますからハードは十分です。肝心のソフトを豊かにするためには、花火的な個性ではなく、しっかりとサッカー文化そのものを根付かせる必要があるのでしょう。幸一さんのサッカーとギラヴァンツスタッフさんの高いホスピタリティに接して、そんな風に感じました。

そんなオーソドックスな北九州に対して、山雅は2016仕様の山雅サッカーで臨みます。アルウィンで衝撃を受けた2016仕様は、四連勝中のリーグ2位という成果が示す通り、すっかりチームに根ざしているのだと思います。それだけでなく、十分コンペティティブなクオリティを持ちます。

山雅も中盤でトランジションすることを意図した守りかたを基調としますけど、北九州とは志向がまったく異なります。まず山雅はショートカウンターを基本プランとしていません。ビルドアップスタイルです。

後述しますけど、今日の山雅はおそらく絶不調でした。もしくは高湿の悪環境が続く連戦ですので、意図的に省エネにしたかもしれません。対する北九州はむしろ調子が良かったのでしょう。中盤の出足も最後まで衰えなかったので、コンディションは維持できていたと思います。そんなチーム状況のなか、結果的にギリギリ山雅が上回った主因は、宮阪と宏希の差だと思います。90分トータルではむしろ宏希のパフォーマンスのほうが良かったと思いますけど、22分までの宮阪は神がかっていました。

山雅の守りかたは、守備網を維持するゾーンディフェンスが幅を利かせている昨今の風潮に逆らって、三角形のスモールフィールドによるゾーンです。北九州がサイドアタックを志向するので、主戦場はサイドです。シャドウとボランチとWBで三角形を作り、ボールの受け手を囲います。山雅が巧妙なのは、ゾーンにボールを呼び込む追い込み漁を仕掛けることです。パスの出し手に細かなプレッシャーを仕掛け、パスコースを限定しつつ、一本だけ開けます。そうして後方の選手がインターセプトを狙います。宮阪と岩間は受け手の前にすっと入るタイミングがとても良く、面白いようにインターセプトを成功させます。

トランジションした山雅は攻撃を焦らず、宮阪にボールを集めます。山雅も基本的にはサイドアタックを志向しますけど、むしろ宮阪が選択したコースが攻撃ルートと言っていいと思います。ザ宮阪システム。山雅のサッカーが変質したのは、もちろん反町さん自身がチャレンジしたかったのでしょうけど、宮阪の加入が大きいと思います。山形での宮阪は、どちらかというと石さんのサッカーにはまり込んだプレーをしていましたので、プレースキッカーとしてはともかく、それほどコンダクターとして能力を見せていた記憶がありません。岩上の後継はむしろ浩平のほうで、宮阪はこれまでの山雅に無い、異質なプレイヤーです。反町さんが最初から今のサッカーをしようとして宮阪に期待したのか、宮阪が思ったよりも高いクオリティだったので今のサッカーになったのか、いずれ外様の身なので分かりませんけど、結果は宮阪もサッカーも大正解だったでしょう。

この役ができる選手は総じてサッカー感が似ています。基本は中央、無理ならサイド。それを成し得るには、状況察知の視野と攻撃ルートの未来予想図、体内リズム、そして足元の技術精度が全て備わってなくてはならず、なおかつプロレベルでの遂行力が無いと実効性がありません。ようするに宮阪は堅剛クラスに成り得る選手だということです。堅剛もJ2でプロのレベルを実感し、クオリティを身につけた経歴だと思います。宮阪の特長は、いわゆるゲームメーカーのなかでは突出してサイドチェンジのパス精度が高いことでしょう。ただ高精度なだけでなく、タイミングとコースがとても良いので、相手を左右に揺さぶるだけの威力を持ちます。そんなサイドチェンジから先制ゴールが生まれます。

10分。後藤から右ライン際にはっている宮阪へ。右足で持ち替えた宮阪はルックアップ。この時北九州は4+4の2ラインが綺麗に揃ってます。山雅は宮阪の前方ライン際に浩平。右寄りのバイタルエリアに高崎。中央に岩間。ラインの左側に石原が張り付いています。大外にあんじゅんがいて、北九州がラインをボールサイドに絞っているので、フリー。通常ですと選択肢がないので後ろに戻すのですけど、宮阪には未来予想図が描けていたのでしょう。宮阪は大外のあんじゅんにクロスオーバーのミラクルサイドチェンジを送ります。これで山雅は前に、北九州は下がって受けるかたちに一瞬で状況が変化します。トラップしたあんじゅんはルックアップ。ニアに石原、ファアに高崎が入ってきてます。あんじゅんの選択は高崎でした。高崎はマッチアップする刀根が下がり加減の難しい対応だったのをつき、先にジャンプします。フリーで翔んだ高崎が頭で合わせました。北九州0-1山雅。

この時の宮阪の視界と認識を再現できるものなら、ぜひ観てみたいものです。たしかにあんじゅんはどフリーだったのだけど、なまはんかなサイドチェンジでは、もとよりコンパクトさが信条の北九州の守備網は、すぐに右サイドに寄せて、簡単に対処したことでしょう。あんじゅんが選択肢を持ち、なおかつゴール前に緊迫感を生む、そんな威力あるサイドチェンジはなかなか観られるものではありません。あの宮阪のパス一本で、山雅サポのみならず、今日本城にいらしてた、北九州サポ以外のお客さんは十分満足できると思います。そして、山雅が一気に突き放します。

22分。あんじゅんのスローインから。あんじゅんは、前線で石原が左に流れるのに寺岡がついていて、刀根と寺岡の間にスペースができているのを見て、ロングスローをそこに送ります。寺岡の反応は石原より良く、かつボール寄りをとっていたのですけど、石原はスプリントの初動が速いのか、スルスルっと寺岡の背後から前に出ます。寺岡はバウンドに合わせようとしたのかもしれませんね。ボールを拾ったのは石原でした。石原は阿部の動きを見て、左足で流し込みました。北九州0-2山雅。

2点リードした山雅はBプランに移行します。てか、もともと今日のAプランはここからのサッカーだったかもしれません。なにしろ五連戦を経験した直後ですから、コンディションの問題は、これは双方に言えることですけど、少なからずあると思います。山雅は省エネモードに入ります。とくに、ここまで大絶賛した宮阪がどろんと消えます。攻撃面で、示唆に富んだ知的で高精度なチャンスメークプレーが、急にばったりと見られなくなります。宮阪のプレーもさることながら、宮阪のイメージを具現化するアタッカーにも、コンディション面で負担がかかっているのかもしれません。山雅はリトリートします。

山雅が下がったことで、つっかえ棒が外れたように、北九州に攻撃権が渡ります。ただ、いきなり攻撃権をもらえたので、北九州はスムーズに本来の攻撃モードに移ることができません。サイドで基点を作ったビルドアップというよりかは、散発なアタックを繰り返します。ところがその流れのなかで、一発のミラクルパスがチャンスを生みます。

40分。ボールを持って上がろうとする新井を高崎がプレス。新井はたまらず小手川にパス。フリーの小手川は中央に寄っていき、川島にパス。フリーの川島はルックアップ。ラインを越すイメージのフィードを送ります。これが絶妙でした。飯田がジャンプしますけどギリギリ触れず、ちょうどシュミットとラインの間に落ちます。そこに走り込んでいたのは池元でした。池元はシュミットの動きを見て、冷静に右足で流し込みました。北九州1-2山雅。

競技場内のDJのアナウンスでもありましたけど、前半のうちに1点返せたことは、後半に向けて期待を生み出すことができたと思います。山雅のリトリートもあって、一気に北九州が押し返す雰囲気ができました。前半は山雅リードで終了。

後半に入っても山雅の守備モードは変わりません。北九州はハーフタイムで攻撃の基本プランを再確認したのでしょう。本来の北九州の攻撃ができるようになります。まず中盤を支配するようになります。ちょうど22分までの山雅のように、中盤でトランジションできるようになります。山雅のホスピタルな、なにげないバイタルエリアへのパスを狙って、宏希と新井がインターセプトします。

中盤でトランジションできるようになったので、より高い位置で攻撃ができるようになります。必然、小手川と川島も高い位置で基点を作れるようになります。北九州は、星原と石神を含め、人数をかけた攻撃を見せます。残り45分間ありますので、一気に北九州が追い抜くこともあり得たと思います。

ここで山雅にアクシデントが起きます。高崎が負傷して退場します。代わって大貴が同じくトップに入ります。ただアクシデントといってもトップが入れ替わっただけですので、大勢には影響はありません。

ポゼッションが高まったことを受け、幸一さんが動きます。さらに攻撃に出ます。川島に代えて本山を同じく左メイヤに投入します。ボールを持てる本山を基点に全体を押し上げることと、本山自身のゴールを期待した作戦だと思います。

さらに幸一さんが続きます。池元に代えて塁を同じくトップに投入します。前線にアジリティではなく高さを持ってきて、明確なターゲットを作る意図だと思います。クロスを入れられることも想定して、空中戦での優位性を持ちたかったのだと思います。

さて反町さんが動きます。宮阪に代えてパウリーニョを同じくボランチに投入します。序盤神がかっていた宮阪ですけど、前半途中から音をたてるように消えました。宮阪の確変は長くは続かないのでしょう。むしろ確変を起こせるようなクオリティになってきたことのほうがすごいと思います。とは言え、連戦の疲れもあると思いますので、コンディションを考慮したのでしょう。さらに守備を強化する意図を含め、安定感を優先する作戦だと思います。

幸一さんがなお続きます。小手川に代えて井上を左メイヤに投入します。本山が右に回ります。比較的左右シンメトリーだったバランスを少しアジャストして、右でチャンスメークして左で仕掛けるかたちに徹する意図だと思います。

反町さんが動きます。安川に代えて那須川を同じく左CBに投入します。この意図はよくわからなかったですけど、本山対策かもしれません。もしくは安川のコンディションを考慮したのでしょう。

結局、山雅は耐え抜きます。闘いかたがお洒落に変わってきたとしても、山雅の真骨頂はやはり守備です。その山雅の守備のコアは、なんと言っても主峰飯田を中心としたアルプスのごとくどっしりとした5バックの安定感でしょう。山雅の、ちょっと懐かしさもあるスモールフィールドベースのゾーンは、リトリートモードの時に少しリスクがあるような気がします。スモールフィールドを作るには、持ち場を離れる必要があるのですけど、それはそのまま別のスペースを自ら作ることになります。つまり、例えば相手にボールホールド力がとても高い選手がいて、山雅のスモールフィールドゾーンを逆手にとる作戦をとられたら危険かもしれません。

とはいえ山雅の守りかたは長年積み重ねたものなので、リスクマネジメントはしっかりしていると思います。今日は極端に守備を意識したモードになったので十分にアジャストし切れていなかったのかもしれません。ディフェンシブサードに入る手前の守備がちょっとバタバタしたように見えました。今後の課題かもしれません。

後半はほぼ一方的に北九州に攻められましたけど、耐え抜きました。北九州1-2山雅。アルプス一万尺♪

五連勝。これこそが、強さを身に着けた山雅の底力の証明なのかもしれません。悪いなら悪いなりに、一番自信があって安定的なやり方を選択し、しっかりと遂行する。山雅はそんなコンペティティブなプレーをチームとしてできるようになっています。

さらに、取れるときにきっちり得点できるようになっているのも強さの秘訣でしょう。その意味では、チームも個人もチェンジ・オブ・ペースができていて、今日はそれが顕著な試合だったのかもしれませんね。札幌独走かと思いましたけど、頂上決戦を山雅が征してから、一気に三強対決の流れになってきました。最終的には安定感を見せたほうが戴冠するような気がします。セレッソは先日熊本で強さを観ることができたので、ぜひ札幌の現在地も観てみたい。次節はいよいよ、その札幌と山雅が頂上対決です。今年のJ2のベストマッチが表裏ともミッドウィークなのは残念ですけど、ぜひ多くのお客さんにドームに足をはこんでもらいたいと思います。楽しみです。

九州旅のイベントはこれにておしまいです。最終日は最後のイベント。東京に帰ってJ1です。