ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2008J1リーグ第6節東京ヴェルディvsFC東京@味スタ20080412

2020-05-06 11:36:49 | FC東京

GW前半は好天が続いて、初夏の風が気持ちよかったですね。

DAZNさんが過去の名勝負の配信をはじめてくださって、できれば東京の試合をもっと多くみたいなと、ちょっと欲。名勝負といっても当然勝ったほうの記憶でして、東京の勝ち試合限定でお願いします。

本日は、東京ダービー。もはや直近のダービーがいつだったか記憶にないほどですけど、J1ではこの試合が最新です。東京、ヴェルディともこの年を新体制で臨んでいます。東京はヒロシ、ヴェルディは哲二さん。結果は明暗がはっきり分かれました。ヒロシ東京はリーグ6位。翌年のヤマザキナビスコ杯制覇につながる礎を作りました。一方ヴェルディはリーグ17位でJ2降格。以来再浮上はいまだに叶えていません。近年サポになったかたにとっては、ダービーというとむしろクラシコを想起されるでしょう。

東京の注目はなんといってもフジ。改めてみると、巨漢フッキやディエゴを向こうに回しても対人強度でそん色ない奇跡の配置です。布陣はいちおう4-3-2-1としておきます。GKは塩田。CBはフジと佐原。SBは右に徳永左に長友。アンカーは浅利。IHは右に梶山左に今野。WGは右に赤嶺左に羽生。1トップはカボレです。

ヴェルディは元磐田と元東京に生え抜きとブラジリアンを加えた寄せ集め感がある布陣です。シフトはスクウェアの4-4-2。GKは土肥。CBは土屋と那須。SBは右に和田左に服部。CMは福西とカンペー。メイヤは右に井上左にディエゴ。2トップはフッキとレアンドロです。

改めて第一次ヒロシ政権の闘いかたのおさらいです。標ぼうするは、ムービングフットボール。懐かしいですね。ヒロシはいわゆるオシムチルドレンではないですけど、もともと志向していたサッカースタイルが、オシムさんのメソッドによってヒロシのなかで具体化したのではないかと思っています。シフトを「いちおう」と前置いたのはそのためで、前線は非常に流動的です。カボレを軸にIH、SBを含めた、人数をかけたスタイルは超攻撃的です。この試合はまだシーズン序盤ということもあり、純粋なヒロシイズムを観ることができることも見どころのひとつだと思います。

シフトにおける特長は3センターです。のちにガーロさん、フィッカデンティさん、そして2020健太が挑戦しますけど、ヒロシの3センターは攻撃重視です。その意味では2020健太のテーマに近いかもしれません。梶山は基本的に前に出ずっぱり。今野はいくぶんバランサーですけど、行動範囲の広さを前後に活かし、頻繁に攻撃参加します。

流動性には選手の特質に合わせたルールがあるようです。カボレは前述した通り前線の軸でポスト役。赤嶺はカボレのフォロワー。羽生はいうまでもなくこのメソッドの肝で、今野と違い行動範囲を左右に広げます。肝というのは局面での数的優位の作り方です。羽生は時として赤嶺と同サイドに身をおき、数的優位の担い手となります。中央をぬめぬめと広範囲に浮遊する梶山はボールとプレイヤーをムーブするヒロシイズムの象徴。こうして前線が縦と横にスペースメイクすることによってできたサイドの攻撃ルートを、前線とは異なる超高速の直線的なムーブで徳永と長友が利用します。あらためて整理すると、とてもワクワクする闘いかただと思います。

ムービングフットボールのカテゴリーは、原則として東京伝統のファストブレイクです。ボールを動かすと表現すると遅攻を想起しますけど、まったくそんなことはありません。というわけで守備の基本スタイルは、フォアチェックを基調とします。中盤でのトランジションを攻撃の起点とする思考です。3センターのもう一つの意図は、中盤のトランジションポイントを増やすことです。このため運動量の高い今野と梶山を配置していると言っていいでしょう。

中盤のラインが突破された場合の守備網は、原則対人の厳しいコンタクトを前提とします。当時も今も脅威に感じるのは、繰り返しになりますけどフジ。CBに入ったフジは、当時のモニの発言に裏付けされインターセプター、つまりコンタクト前で勝負する印象が強かったのですけど、改めてみると、対人防御能力も非常に高いですね。本来SBですから当然といえば当然ですけど。もちろん高さにアドバンテージはないのですけど、ことヴェルディに関しては基本的に足元にこだわるチームですので、余計フジの特質が活きたのでしょう。

整理すると、超流動的+超高速がヒロシ東京のスタンスであるのに対し、ヴェルディはポリシーレスと言っていいでしょう。ヴェルディのストロングは言うまでもなく最前線のブラジリアントリデンテです。フッキ、ディエゴ、レアンドロは、のちにセレソンのレギュラーとなるフッキを除けば、個で勝負できるタレントではありません。なのでヴェルディのトリデンテはストロングでありウィークポイントでもある、表裏一体の危ういものです。ですから、いかにトリデンテを気持ちよく連携させるかが鍵になります。

そのためには、トリデンテを可能な限りペナルティエリア内で連携させるお膳立ての質が、勝敗の分岐点になると思います。なので、まずイニシアチブを握ることが大前提。ヴェルディのそのための工夫は二つ。一つ目は中盤での優位性の確保です。若いカンペーの隣に経験豊富なさわやかヤクザを配置するのはそのため。そうしてボール確保に成功すると、縦のコンパクトネスを保ったまま最終ラインを押し上げ、包囲網を築くのは二つ目の工夫です。和田と服部をサイドに配置することで、トリデンテと絡む、もしくは中央のトリデンテにパスを供給できるようになります。

序盤は、ロングフィードの蹴り合いによる主導権争いの末、ベテランの多い老獪なヴェルディの技と気迫がホームダービーの雰囲気にマッチし、東京の中盤を圧倒します。くだんのヴェルディの基本プランが発動し、ペナルティエリア内でトリデンテが気持ちよくプレーします。なかでもやっぱりフッキ。集中力が高いだけでなく、トリデンテ間のボールによるコミュニケーションも円滑で、ディエゴとレアンドロに任せるところは任せられていました。ただし、フッキに対しフジが密着マークすることで自由を制限していたことは、後々の伏線になっていきます。

想像に難くないことだとは思いますけど、ノリノリの状態は結果が伴わない限り長続きはしません。きっかけは中盤のバランスです。中盤が二枚のヴェルディに対し東京は三枚。数的優位に加えて、日本代表今野、職人社員浅利、全盛期の梶山を擁しているわけですから、ボール確保のタレントでも総合的に東京が上回ります。このためヴェルディの重心が下がりはじめます。こうなると有するプランが極端に少ない、てか一つしかないヴェルディに術はありません。

ただ、こと攻撃に関しては、起点として頼むカボレが土屋と那須のマークに苦しみます。ここでは逆に1トップの数的不利が働いていました。ポストが収まらない限り超流動的超高速ムービングフットボールは機能しません。そして前半終了を目前に、セレソンが覚醒します。

43分。ディエゴの右FK。ディエゴが小さく出したボールを、フッキがゴール左隅に決めました。ヴェルディ1-0東京。

前半はビハインドのまま終了。

後半からヒロシが少しアジャストします。これが機能します。赤嶺をトップに上げてシフト4-3-1-2に変更します。明確なシフト変更というよりか、赤嶺のタスクを中央寄り固定にマイナーアジャストしたといった方がいいかもしれませんね。これでポスト役が分散します。加えて、カボレをポスト時に少し下がり気味にします。土屋と那須との距離を取ることで、ポストが安定するようになります。このため、ポストの拾い役であり攻撃ルートのかじ取り役である梶山と今野の位置が上がり、ショートパスのテンポが良くなります。さらに、カボレが前を向いて勝負できるシチュエーションもできはじめ、カボレ本来のタレントである超高速ドリブルアタックが観られるようになります。

ムービングフットボールの下地ができたところでヒロシが動きます。浅利に代えて洋平をトップ下に投入します。梶山がアンカー、羽生が左IHに回ります。そしてさっそく奏功します。

62分。塩田のスローインから。センターライン付近で、服部からディエゴへの縦パスを徳永が寄せてトランジションに成功します。徳永は前方からフォローにきた洋平に渡します。洋平はフリーでドリブル開始。カウンターの発動です。洋平は服部とカンペーをひきつけ、右ライン際に開いたカボレにパス。ルックアップしたカボレは、中央バイタルエリアでフリーの赤嶺に送ります。さらに赤嶺は上がってきた羽生に落とします。羽生はタイミングをはかって右足ダイレクトで合わせました。よどみなく流れるようなカウンターからのゴラッソ。ヴェルディ1-1東京。

イーブンになった直後に哲二さんが動きます。井上に代えて晃誠を同じく右メイヤに投入します。井上はほぼ存在感がなかったので、テイストを変える意図だと思います。

ヒロシも動きます。羽生に代えて浄を同じく左メイヤに投入します。羽生のコンディションを考慮した予定調和です。ヒロシと哲二さんの作戦変更の応酬をみても、作戦の幅を前提に、東京が完全にオーガナイズ権を握っていることがわかります。

ヒロシがさらにたたみ掛けます。赤嶺に代えて相太をトップに投入します。赤嶺のコンディションを考慮したのだと思いますけど、ポストの安定も意識したのだと思います。ところがこの作戦は逆効果になります。赤嶺の広範囲なムービングにより超流動的超高速サッカーを下支えしていましたけど、相太に代えることで高速性を失います。おそらくヴェルディの重心が下がってきていたので、高速カウンターからポゼッションへ状況が変わると読んだのでしょう。いずれにしろ、東京の攻撃の威力が落ち着きます。

東京の攻撃が落ち着いたため試合が拮抗するようになりますけど、依然ヴェルディの重心は低空のまま。このためトリデンテはペナルティエリアに入ることができません。お膳立てもないので、ブラジリアン個々の散発な攻撃が目立つようになります。たしかにフッキやディエゴのシュートは威力があるのですけど、ペナルティエリア外から威力を活かせるわけではありません。やがてフッキやレアンドロが苛立ちをみせるようになります。

そこで哲二さんが動きます。レアンドロに代えて平本を同じくトップに投入します。トリデンテのメンタルの影響を考慮したのだと思います。でも唯一絶対なストロングを失っては、もはやヴェルディは再燃の火を起こすことはできません。極限まで重心が下がったヴェルディに対し包囲網をかける東京は、ようやく相太投入の効果を得られる状況を作り出すことに成功します。そして最終盤、ドラマが発動します。

89分。徳永の自陣のスローインから始まったショートパスの連携が実を結びます。梶山を軸にしたタベーラで右から左に攻撃ルートが変わります。今度は相太を軸にしたタベーラで、長友がゴール前に入ります。これが伏線になります。ボールはペナルティエリア左の浄へ。浄は背後に入った梶山に戻します。ルックアップした梶山はクロス。狙いは中央の今野。今野は冷静に、服部と那須がマークについていたためシュートからパスに切り替えます。落としたところにいたのは長友でした。長友は土肥と交錯しながら胸トラップ。これを和田がクリアしようとしますけど、ボールはゴールへ。ヴェルディ1-2東京。

最後はフッキの退場のおまけつきで、このまま試合終了。ヴェルディ1-2東京。

方向性が明確でかつそれを実践できる編成を施したチームと、方向性をまったく垣間見られないチームの対戦は、その後の彼我の差を象徴する試合でした。アイロニーを込めて名勝負といっていいと思います。

その後ヒロシと東京は、いろいろあって袂をわかつわけですけど、今も共にリーグに華を添え続けています。今年もヒロシ広島との名勝負を期待したいと思います。


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