ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

プロミスド・ランド

2020-01-19 16:47:15 | 加賀さん

ひとにとって、縁は最上の幸福なのではないかと思います。加賀さんと山形との邂逅は、単なるプロサッカークラブの在籍を超えた深い縁になりました。

プロサッカー選手は言わば転勤族です。選手生活のすべてを同じクラブで過ごす選手はそう多くはありません。ぼくは、選手の日常の暮らしを意識することはほとんどないけど、ウインターシーズンともなると、家族がいる選手はとくに引越しが多くて大変だなと思います。一般的には、選手はあくまでもサッカーに関わるタレントのみを期待されて単年契約でクラブに所属しますから、日々の暮らし以上に地域に関わることはあまりないと思います。

加賀さんのモンテでのキャリアは、木山さんに連れ立って愛媛から移籍した児玉さん、阪野さん、瀬沼さん、茂木さんとともに、ミシャサッカーをルーツとする木山さんの志向をすぐに実践できるプラグインとしてスタートしました。それから、経験の少ない選手が多い若いチームのなかで数少ないJ1レギュラー経験者として、メンタリティーの拠り所としても期待されていたでしょう。言うまでもなく山形は地元秋田の隣県であり、ご家族も北日本出身ですから、北に帰る加賀さんという文脈もありました。でもそれは外野がえがくノスタルジアに過ぎません。加賀さんの感覚のなかでは、これまで同様、プロサッカー選手として必要とされたからというのが唯一の理由だと思います。

加賀さんが山形で過ごした2017〜2019年の木山プロジェクトは理想的な右肩上がりを描きます。もう一年続ければ目標に到達できたことは想像に難くないでしょう。一方、加賀さんにとっては、チームのそれとは反比例し、成績上は消化不良に終わった三年間になりました。

シーズンごとの成績を振り返ります。まず加入初年度の2017年シーズン。20試合出場1得点。5勝10分5敗。勝ち点獲得率は.417。平均得点1、平均失点0.95。開幕から続いたフル出場は肉離れのため第5節で止まり、復帰は第21節。その後連続出場は翌第22節から第40節まで続きます。ハイライトはもちろん、10年ぶりとなった第24節のミドルゴラッソショット。最終2節は再び肉離れのため欠場のままシーズン終了。欠場した22試合の平均失点は1.27で、やはり加賀さんの守備力が顕著な一年目でした。

つづいて2018年シーズンです。15試合出場0得点。8勝4分3敗。勝ち点獲得率は.622。平均得点1.27、平均失点0.67。開幕は出遅れますけど、第6節から第21節までほぼ連続フル出場。この後右膝前十字靭帯損傷でシーズン終了まで欠場。この年は前年より加賀さんの出場有無の差が大きく、欠場時の勝ち点獲得率は.346。平均失点はやはり1点近く増えますけど、平均得点でも出場時が上回ります。チームの方向性は定まりながらも、総合力では未成熟だったといえます。

最終年となった2019年シーズンの実績は13試合出場0得点。6勝3分4敗。勝ち点獲得率は.538。平均得点1.38、平均失点1。所属した三年はいずれも、出場試合の平均得点が失点を上回ります。右膝の影響は開幕後も続き、復帰は四月に入ってから。出場が期待されながらも、再び右膝の怪我で、内側側副靭帯損傷により第11節から欠場します。復帰は真夏の第27節。第31節柏戦で左手小指骨折がありながら出場を続け、以降断続的ではありながらも、加入後はじめて最終節まで出場を続けます。ただ、無理が重なり、プレーオフ二試合は欠場でした。ついに一定の完成をみた木山モンテは、すべてのKPIにおいて加賀さん欠場時が出場時を上回りました。ただ、少しはや過ぎたチームの絶頂は加賀さんの復帰がもたらしたものであり、秋以降の急降下は加賀さんが足に違和感を覚えはじめた時期に重なります。若いチームにとって、まだ加賀さんの経験が必要だったかもしれません。

点ではなく線で加賀さんを追うファンのひとりとしては、浦和時代に過剰に出場機会が少なかったとはいえ、繊細な脚がにわかに負荷に強くなるとは思えませんでした。怒られるかもしれないけど、正直いうとぼくは、今となってはフルシーズン出場する前提では考えてなく、脚と相談しながらできるだけ長く過ごしてほしいと思っています。だから半数も実働していないのは残念だけど、けして悲観する実績ではないと思ってます。とはいえ、売り出し中ならともかく、すでにベテランと呼ぶにふさわしい年齢。存在のインパクトのわりに試合で姿を見なかった印象があるのも確かです。

モンテでの加賀さんは、試合での貢献以上のインパクトを残してくれたと思っています。出場しなくても、チームが表現するサッカーに加賀さんがインプットしたディテールを感じることができます。加賀さんがイメージするサッカーを加賀さんがチームに落とし込み、方法は違えど出場した選手が表現する。そんなプレイングマネージャーの理想の姿がモンテでの加賀さんに宿っていたと思います。

これは、ただプロ年数が長い、経験が豊富、あるいはプレーが上手いだけでできることではありません。事実、現役時代に名をはせた人がマネージャーになるとサッパリという事例は数多あり過ぎるほどあります。コーチングに必要なスキルが何なのかわかりませんけど、少なくとも今の加賀さんがそれを身につけていることは、モンテでの三年間が証明しています。

もともと加賀さんは、磐田時代から若手の面倒見がよく、その意味でアニキ肌の性格イケメンです。もしかすると、加賀さんについていけば確実に美味いものにありつけるという、類稀な味覚センスもひと役かっているかもしれません。かつてそんな食事会の場で若手にコーチングをしてたのだと思うけど、東京時代と浦和時代は試合やトレーニングで積極的にコーチングする姿を見た記憶がありません。でも、確実に、コーチングの素養は東京と浦和で過ごした時間があったからだと思います。そして、怪我が多いこともまた、逆説的に加賀さんに価値をもたらしていると思います。日頃からケアやトレーニング方法を貪欲に学び、自ら実践してきたからこそ、嘘のない真実を伝えることができるのだと思います。

プレーに関しては、かつての爆発的なスピードを観ることはほとんどありませんでした。これはフィジカルの衰えを示すのではなく、攻守においてポジショニングとタイミングのバランスを身につけられたからだと思います。それに磐田時代を彷彿とさせる攻撃参加を頻繁に見せてくれたことは、ゴールやアシストを期待できてとてもワクワクしました。加賀さんの攻撃は中途半端に終わらず、クロスであったりパスであったり、かならず仕掛けてくれます。淡白に見えるけど、イメージングと決断力、それを具体化する技術力が年々向上していることが裏づけになっているのでしょう。

とはいえ、ぼくにとっては、プレイヤー加賀さんのキャリアアップはもちろん嬉しいのだけど、それよりもなによりも、年々かっこよさが増していくルックスを見続けられることこそ、ファン冥利だと思っています。近年は、ただかっこいいだけでなく、色気を漂わせるようになりました。それもみな、外見だけではない内面の成熟が染みだしているのでしょう。それゆえか、かつては知る人ぞ知るマニア受けの選手だったのに、いつの間にか一般にもかっこよさが認知されるようになりました。モンテの試合を観にいくたびに加賀さんユニのかたを見かける頻度が高くなり、なかでも男性に多く着られるようになったことは、男性も惚れるルックスに加えて、純粋にプレイヤー加賀さんが評価されるようになったことを表していて、他人ながらわがことのように嬉しいです。

加賀さんがモンテサポさんに受け入れられたのは、他ならぬ加賀さん自身が山形という地を愛したからだと思っています。かつてない情報発信量は、大好きな山形を知ってほしいという気持ちから出るものなのでしょう。なにが加賀さんと山形の相思相愛をつくったのか分からないけど、まさに縁。もしかするとやっぱり、北国の風土と独特の明るさが引力なのかもしれませんね。それになにより、山形は食が美味しいですから。

残念ながら、加賀さんと山形の縁の深さとはうらはらに、チームの方向性を大きく変える2020年シーズンのモンテに加賀さんの名前はありません。運命の地との関係が続くことを望もうとも、プロサッカー選手の本質には抗えません。ただ、そのことに憤りや悲哀を感じることは、ぼくにとって反面とても嬉しいことだと気がつきました。なぜって、それは、現役で活躍する姿をまだ観られるということだから。気づけば今年37歳。40歳代が珍しくない昨今のJリーグだけど、ずっと怪我に苦しみ続けてますから、これだけ長く続けられたことだけでも驚異的だと思います。

2020年。東京がオリンピックを迎える年に、加賀さんは新しいチャレンジをはじめます。故郷秋田に帰還です。おそらくこれがラストダンス。加賀さんが現役でいることが当たり前な時間はけして長くはありません。ブラウブリッツになにかをもたらすこともさることながら、ファンとしては、ひと試合でも多く元気に出場してほしいと思います。そして願わくばもう一度、フルシーズンを闘いきる姿を見られたらと思います。

そしていつの日か、加賀さんと山形が再会することを祈って。


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