ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2006J1リーグ第30節FC東京vs川崎フロンターレ@味スタ20061111

2020-04-19 11:41:36 | FC東京

予定通りのスケジュールなら、第9節湘南戦が終わってシーズン序盤の構図が見えてくる時期です。ACLのリーグ戦も半分を消化して、トーナメントへの行方が見えてくる頃。でも現実はStayHomeが続いています。再開の目途がまるで見えてこないなか、東京への想いがつのるばかり。新型コロナの情報ばかりがあふれるなか、皆様こころがお疲れではないですか?

今日は、ちょっとばかりヒストリカルな試合を振り返ります。オールドファンはいつでも記憶の抽斗から取り出せる伝説の大逆転劇、2006年第30節多摩川クラシコです。近年ファンになったかたですと2012年の最終戦仙台戦(もう近年でもないですね)、ネマニャンのマルセイユ式ルーレットよりも遥かに魂が躍動する試合です。ちなみに川崎は、3年後の11月3日にヤマザキナビスコカップを争う間柄であり、その後はご存じの通り、多摩川の覇権を競う永遠のライバルになります。

この年は、新任のアレッシャンドロ・ガーロさんが折り返しで解任され、倉又さんがシーズン後半戦の指揮をとることになりました。結果的にJ1残留を果たしましたし、印象的なゴレアーダも3試合あり、記憶のなかではわりと楽しかった覚えがあります。でも実際は前半戦をひきずって苦しんでいました。倉又さん就任後の総成績は7勝1分9敗勝率.412と、ガーロ政権(.353)を少し上回ります。就任直後に連勝しながらも、その後六連敗。残留へのターニングポイントとなったのは、0-2から最終盤に大逆転した第28節のホームガンバ戦です。それ以降の勝率は.571。

ガーロ政権との闘い方の相違の総括は控えます。顕著な差は得点力です。総得点31点は、ガーロ政権より7ポイント、平均得点でも0.35上回ります(1.82)。その分というか総失点も増えていて、平均で0.65増えました(2.24)。堅守優先のガーロさんに対し得点力アップを目指した倉又さんという構図のイメージが浮かびます。

さて試合は、ご存じの通りお祭り騒ぎになりました。結果を知っておきながら、アディショナルタイムの6分間は今みても心震わされます。ガッツポーズと雄叫び不可避。

東京は、倉又さんが就任以降、日替わりオーダーです。とくにCBが定まりません。この日は茂庭もジャーンも不在の急造布陣。さらに3年目の梶山がスターターに入りました。シフトは4-2-3-1とも4-1-4-1とも。GKは土肥。CBは伊野波とまっすー。SBは右に徳永左にフジ。CMは縦陣形で今野が後ろ梶山が前。WGは右にナオ左に戸田。トップ下は憂太。1トップはルーカスです。オプションは、しお、のりお、文丈、宮沢、信男、阿部、そしてこの秋に帰国した相太。

川崎のシフトは3-4-1-2。GKは吉原。川崎山脈は右から箕輪、寺田、宏樹。WBは右に森左にマルコン。CMは憲剛と谷口。トップ下はマギヌン。2トップはジュニと我那覇です。

試合は、互いにイーブンな攻防のなか、早々動きます。

7分。マギヌンの右FK。川崎は3+3の二列横陣です。東京はニアにストーン2枚置いたマンマーク。マギヌンは、後列ファア側から東京のマークをぬって中央に入る寺田に合わせます。このクロスはゴール側に寄り過ぎ、土肥が左手でクリア。これがバーに当たって戻りますけど、それも土肥がクリア。でも不運なことに、クリアボールは谷口の正面に飛びます。谷口は頭で合わせるだけ。東京0-1川崎。

マンマークのはずが全体的に甘く、ボールウォチャーになっていて中途半端なゾーンのような形に陥っていました。最後の谷口も梶山のマークミスです。でも、クロスがゴール近くに飛んでいたこともあり、アクシデントですね。

東京の攻撃は、今に至る伝統のサイドアタック基調です。タレントの相違で、左右アシンメトリーです。右はのちのレジェンドナオですから、ボールを持って比較的自由にアタックします。本来の縦の韋駄天スプリントとドリブルに加えて、ヒロミ体制下で身につけレジェンドの階段を駆け上がる要因となったカットインで仕掛けます。これに徳永が労を惜しまないタイミングの良いオーバーラップで加わり、攻撃に厚みを加えます。一方の戸田は本来は最前線のアタッカーですから、ルーカスの動きに連動してゴール前に顔を出すのが役割。Mr.東京フジは基本的にディフェンス基調で戸田と絡むことがほとんどないので、左はルーカスや憂太が基点として使うフリースペースになっています。このため、タイミングの良い右の仕掛けを狙い、試合を組み立てるというよりか、はやい展開を旨としています。ただ当時は最前線になんでもできる大黒柱のルーカスがいましたから、ルーカスを基軸に戸田、ナオ、憂太が絡む、手数をかけない高速ポゼッションをペナルティエリア内で仕掛ける中央突破もバリエーションに入っていました。

一方、川崎は、今のスタイルを予感すらできない闘いかたを基調としていました。川崎山脈による堅守をベースに、縦にはやい構成から、最前線の個人判断でフィニッシュに至る、カウンタースタイルです。オールドファンにとっては、おそらく川崎サポを含め、どちらかというと川崎のイメージはこの時代のスタイルがいまだに印象深いと思います。構成は基本的にすべて憲剛を経由します。憲剛の展開力によって、アタッキングサードで最前線がフリーで仕掛けられる状況を作ります。攻撃の構成における最終形態がアタッカーに委ねられていますから、場合によっては川崎山脈から直接最前線につけるルートも確保されています。

当時の川崎の主戦は、いうまでもなく川崎の伝説ジュニ。ペナルティエリアでジュニがボールを持ちさえすれば、守備網があろうが無かろうがなんとできなります。それに、同様に打開力とスプリントのタレントを持っているマギヌンを加えることで、アタックルートを分散することができるのが川崎の強み。

守備的なイメージが強い関塚川崎ですけど、振り返ってみると案外攻撃的です。特長はサイドにあります。森、マルコンとも非常に高く位置取ります。憲剛、ジュニ、マギヌンとボールを持てる選手が中央にいますし、そもそも山脈が後ろに控えていますから、安心して攻撃荷重にできていたのだろうと思います。この試合が、近年のクラシコではおよそ観られないオープンファイトになったのは、川崎の攻撃ポリシーに所以しているのだろうと思います。サイドを開けてでも攻撃に厚みを加えたい川崎と、サイドアタック基調の東京。噛み合わないわけがありません。ただ、WBの背後を狙われるのは予定調和の川崎は、箕輪と宏樹が左右に立ちふさがり、バランスを崩すまでは安定した闘いを見せていました。

激しいどつきあいとなったこの後の展開を予感させる同点ゴールは、時をおかず、ルーカスの徳永への縦パスを発端にした東京の逆襲により生まれました。

14分。憂太の右CKは寺田がクリア。これがふたたび憂太に渡ってリセットされます。川崎はマークの再確認の最中。憂太は、ゴール正面、森がついたためマッチアップのギャップができていた戸田を狙います。でもこれは吉原がクリア。高く上がったボールの落下点にはルーカスがいました。ルーカスはヘッドで叩き込みます。東京1-1川崎。

直後に突き放されます。

17分。マルコンのスローインから。マルコンはロングスローを、ラインの裏に走りこむ谷口に送ります。一気にアタッキングサードに入ります。この時ゴール前は伊野波、まっすー、フジが揃っているのに対し、川崎はジュニと我那覇の数的優位な3on2。我那覇が良い動きをみせます。一度ファア側に走ってフジの視界から消え、急転フジの前に出ます。これで数的優位は解消。谷口はゴールライン際でクロス。我那覇はフリーで、右足で合わせました。東京1-2川崎。

マルコンのロングスローと谷口のスプリントを考慮できなかった集中のミスです。遠まわしにみると、守備陣の個々の守備技術不足に加え、布陣が不安定だったため連携ができていなかったことが要因だろうと思います。

守備スタイルに関しては、東京、川崎ともセットを重視したリトリートスタイルです。川崎のポゼッション位置が低い場合に限り、東京はフォアチェックを見せます。現在の東京の代名詞であるアグレッシブなフォアチェックスタイルはフィッカデンティ政権で確立されたものですから、このあたりはノスタルジックですね。前述した通り、急造のCBコンビはジュニとマギヌンの対応に加え、二人をフリーにすべくスペースメイクとコンタクトを挑む我那覇の対応にも苦労します。この試合以降も布陣は不安定ですけど、伊野波とまっすーが並ぶことは二度と無かったことを考えると、結果として4失点は妥当なんだろうと思います。

誰しもが思うことでしょうけど、それにしても今野がいなかったら4失点では済まなかったでしょうし、大逆転も有り得なかったでしょう。今日の今野は、ただでさえ守備に不安要素があるなか、蛮勇気味の超攻撃的布陣で一枚アンカーを勤めていました。ジュニとマギヌンをして中央で基点になるシーンが少ないのはすべて今野のおかげです。最終的にヒーローになる今野ですけど、攻守に縦横無尽の活躍をみせたプレーに対する、サッカーの神様のご褒美なのでしょう。文句なくMOMです。

前半は攻撃がノッキングを起こすシーンが頻発します。起因は、実質2シャドウを担った憂太と梶山です。憂太は、残念ながら期間は短かったけど最も輝いていた時期です。今日も運動量が多く、スペースメイクも巧みで、良いポジションでフリーになることができていたのですけど、前線との連携が繋がりません。イメージの共有ができていなかった理由はもちろん川崎山脈が一番なのですけど、憂太のポジションが特質に対し低かったせいだと思います。憂太と梶山が被ることはなかったのでそこはケアできていたのだと思います。梶山に関しては、代名詞ぬめぬめプレーはまだ未満で、ダブルチームを仕掛けられるとボールロストを頻発します。

それでも、サイドアタックに中央の仕掛けをアクセントしたい東京と、安定した山脈からの高速カウンターで狙いたい川崎の双方とも、互いにやりたいサッカーができるようになってきました。前半の彼我をわけたのは、攻撃の基点である憂太+梶山と憲剛のポジショニングだろうと思います。

42分。川崎から自陣深くでトランジションした東京は、今野とナオのパス交換で川崎陣に入り込みます。ここで今野がマルコンにボールロスト。マルコンは対峙した梶山を振り切り、クロスカウンター。一気に東京陣に入ります。この時ジュニはまだ、センターサークル付近でハブになるためステイしていました。マルコンはまっすーの脇をぬけるマギヌンにスルー。アタッキングサードに入ります。東京が下がり基調で守備陣形を整えるその瞬間に、マギヌンがクロス。狙いは、中盤から長躯上がってきたジュニでした。ジュニは走り込みながら右足ダイレクトで合わせます。ゴラッソ。東京1-3川崎。

前半はリードされたまま終了ですけど、点差ほどのギャップは、守備面とゲームメーカー以外は感じませんでした。

後半開始早々、追加点を奪われます。

49分。吉原のロングクリアがラインを上げた東京守備陣の背後に落ちます。そこに入りこんだのはマギヌンでした。カウンター発動。マギヌンはドリブルでペナルティエリアに入り、右足トゥーシュート。ころころとゴールインします。東京1-4川崎。

川崎はこれで、アタッカートリデンテが全員ゴールしてノリノリになります。好事魔多し。実質のターニングポイントは数分後に迎えますけど、本質的には、チーム全体が浮足立つことになったこの4点目が岐路だったろうと思います。直後に、反撃ののろしが上がります。

51分。憂太の川崎陣深くの左FK。川崎がマークを確認している隙をつき、憂太はクイックリスタート。これに戸田が反応します。戸田はどフリーで左足インサイドで合わせました。東京2-4川崎。

川崎の先制点と試合を決めた気になった4点目の直後にいずれもゴールを返せたことは、後の展開に影響したと思います。本来は警戒心を持たなければならない状況下、川崎は攻撃姿勢を変えません。もしかすると前線と守備陣で意識ギャップが起こっていたのかもしれませんね。そうだとするとマネジメントの問題でもあります。

そして直後にアクシデント起きます。ジュニがシミュレーションで二枚目の警告を受け、退場。川崎は3-4-1-1で対応します。アタッカーがいなくなっただけで大勢には影響しないと思われましたけど、これで流れが一気に変わります。

倉又さんは試合の流れを見逃しません。ナオに代えてのりおを左WBに投入します。同時にシフトを3-4-1-2に変更します。フジがリベロでまっすー右伊野波が左。戸田がトップに入ります。

東京はサイドを重視します。戸田がサイドにはりつき徳永と絡みます。徳永の積極的な攻撃参加が目立つようになります。のりおには憂太が連携することで、のりおがアタッキングサードで自由を得られます。サイドの厚みが増し、活性化します。

倉又さんの仕掛けに対し、川崎は大混乱します。数的不利は必ずしも展開上の不利にはなりません。むしろ闘いかたがカウンターに整理され、連携が良くなる場合もあります。でも今日の川崎にはアジャストの余裕がありませんでした。カウンターに移行できず、守備に専念するようになります。WBが最終ラインに張り付き、実質前線は我那覇とマギヌンのみ。しかもカウンターを仕掛ける意思統一もできておらず、ボールを持てても持て余すだけになります。

川崎の両WBが下がることで中盤にスペースができ、憂太と梶山が高い位置で前を向いてボールを持てるようになります。ようやく今日の布陣のポイントであった2シャドウが活きるようになります。さらに川崎に攻撃意欲が無いため、伊野波も攻撃参加するようになります。東京の波状攻撃の準備が整いました。

そこで倉又さんが動きます。梶山に代えて宮沢を同じくCMに投入します。同時にまっすーと伊野波のポジションを入れ替えます。宮沢を起点にして左右の攻撃ルートを確保するとともに、今野を前に出し、左サイドの攻撃に絡ませる意図です。さらに右の厚みも左と等配分するために、攻撃参加できる伊野波を右に回したのだと思います。

ピッチ上のアジャストができずほぼハーフサイドマッチになってきたのを見た関塚さんが動きます。マギヌンに代えて佐原をリベロに投入します。寺田が一枚上がって谷口と並び、憲剛がトップ下に入ります。攻撃の基点を前に置くことで、安心と勇気をチームに呼び覚ます意図だろうと思います。

ここで倉又さんの勝負師の感性が発動します。直後に動きます。戸田に代わって相太が同じくトップに入ります。関塚さんがチームを安定させようとしたのを阻止する意図です。最前線のターゲットが二枚になったことで、ますます東京の攻撃が安定します。関塚さんの対策が霧散しました。

打ち手のない関塚さんが動きます。我那覇に代えてテセを同じくトップに投入します。前線をリフレッシュしてボールを持てる機会を増やす意図だと思います。でも、相変わらず中盤以降に攻撃意欲がないのでコンセンサスがとれません。

東京はさらに攻撃の威力を増します。伊野波と憂太がサイドに開いて基点になります。これにより、徳永とのりおをペナルティエリア内に進入させることに成功します。中央にルーカス、相太、徳永、のりおと揃い、ボールが収まればゴールできる状況を整えます。そしていよいよ、祭りが発動します。

83分。攻撃失敗後の川崎のカウンターを未然に防ぎ、今野、憂太、フジでボールをキープ。フジから、左サイドでフリーの今野にボールが渡ります。今野はルックアップ。この時ゴール前は、ニアのルーカスに佐原、ファアの相太にマルコンがついていますが、いずれも東京が先手をとってます。今野の狙いはルーカス。これは吉原がクリアしますけど、こぼれたボールはのりおの目の前に。のりおは相太にヘッドパス。近くにいた宏樹が気づきますが時すでに遅し。フリーの相太は首を振って流し込みました。東京3-4川崎。

直後にふたたび川崎にアクシデントです。マルコンがアンフェア行為により退場します。関塚さんは谷口に代えて井川を左WBに投入して対応します。シフトは憲剛が下がって3-4-1。

もはやしに体となった川崎に対し、東京の猛攻が襲い掛かります。そしてドラマチックなアディショナルタイムに入ります。

後半アディショナルタイム+1分。センターライン付近で今野のパスを受けたフジがルックアップ。前線にままよどうにかなりまっしゃろロングクロスを送ります。これを憲剛を背負った相太が合わせますけど、イーブンボールになります。拾った佐原がクリアを試みますけどミートせず、ゆるゆるとこぼれたボールにのりおがアタック。残念ながらシュートは右足でノリカルは発動しませんけど、スライスしたボールがファア側にどフリーでいた宮沢への絶妙なクロスになります。宮沢はヘッドで合わせるだけ。東京4-4川崎。

ついに追いつきました。東京は勢いのまま、川崎をねじ伏せようと遮二無二挑みます。そして祭りは大団円を迎えます。

後半アディショナルタイム+6分。再三のアーリークロスが跳ね返され続けた焦燥感のなか。こぼれ球を拾った徳永は、中央やや左寄りにいた今野にパス。ゴールまで約30m強。ルックアップした今野は、残り時間を考えて覚悟を決めます。ワントラップでボールをおさめ、コースを見定め、落ち着いたグラウンダーショットを放ちます。威力のあるシュートは憲剛と箕輪をすり抜け、ゴール右隅に決まりました。東京5-4川崎。

あの時の沸騰した味の素スタジアムを想い出すと今でも興奮しますし、感動の涙が出てきます。実質、これがラストプレーになりました。東京5-4川崎。

一般にサッカーの試合はそれほど点が入るわけではありません。ゴレアーダは年に一回あれば良い方。まして血沸き肉躍る試合を目撃する機会なんて、長く東京を観てきても数えるほどです。そのためぼくらは、客観的にみればストイックにも、勝利やゴール以外にも喜びをみいだし、スタジアムに足を運び続けています。でも確実に、ほんの限られた機会だけどドラマチックな試合を目撃した経験を糧に、サポを続けられるのだろうと思います。

たまたま手元にメディアがあったのでこの試合をチョイスしたのですけど、東京サポひとり一人のフェイバリットは区々だと思います。しばらく東京を観られない状況が続きますから、もし権利面等々をクリアできるのであれば、東京公式さんもしくはTOKYO MXさんあたりでヒストリカルマッチの配信をしていただけると、とても嬉しいです。できればその際、サポの人気投票などしたりなんかしちゃって。


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