ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2016J1リーグ2ndステージ第13節ガンバ大阪vsFC東京@吹スタ20160925

2016-09-26 23:19:49 | FC東京

季節の変わり目を迎えたこの頃、遅めの夏休み旅でございます。

まずは飛行機で福岡に飛びまして、ホークスvsファイターズのパリーグ頂上決戦二連戦。

続いて広島で、カープvsスワローズを観戦です。カープの優勝記念グッズをゲットしました。

東京は雨続きだったようですけど、旅の間、行った先はどこもほぼ晴れ。最後にやっとメインイベントです。大阪に参りました。

オープニングマッチのPanasonicカップ以来の市立吹田スタジアムです。やっぱり雰囲気はいいですね。本日のYou'll never walk alone♪。

アクセスは健常者はともかく、ご不自由なかた、お年寄り、子どもたちにはしんどいままですね。まず改善すべきでしょう。試合日は周回道を時間制限して、スタジアム前の南駐車場をシャトルバス発着専用にできないものかしら。

あえて受けるガンバを終始押し込み、二度リードするも、二度とも即座に追いつかれ、楽し悔しのドローです。

東京はまると草民が戻ってベストメンバー。布陣はいつもの4-2-3-1。GKは秋元。CBはモリゲとまる。SBは室屋と今日お誕生日の徳永。ボランチは梶山と草民。WGは右に広貴左に翔哉。トップ下は慶悟。1トップは遼一です。

ガンバはヤットが名古屋戦の負傷の影響で今日はオプションです。シフトは4-2-3-1。GKは東口。CBは丹波とキム・ジョンヤ。SBは米倉と藤春。ボランチは今日の井手口の相棒はひさびさスターターの今野です。WGは右に晃太郎左に秋。トップ下はアデミウソン。1トップはエース長沢です。

ガンバはリーグ三連勝中。7得点3失点。得点力が際立っているように見えます。ルヴァンカップでは難敵広島を計7ゴールで粉砕しましたから、やはり現在のガンバは攻撃に重点を置いているのかと思いました。興味深いのは、8月以降は完封がひとつしかないこと。堅守ガンバのイメージはもはや無いのかもしれません。

攻撃ガンバと言えばポゼッションスタイルです。また以前のような極端な遅めな攻めに転化しているのかなと思っていました。

でも実際に見た今のガンバは、調子が上がらなかった1stステージと闘いかたそのものはまったく変わってないと言っていいと思います。基本的にはリトリートスタイルからのカウンター志向です。

結論を言うと、1stステージとの違いは決定力しかないような気がします。もちろん決定力は結果論でしかないのでプロセスが改善されているのでしょう。どちらかと言うとプロセスを変えたというよりかは、宇佐美の移籍によってパトリック+宇佐美のオラオラカウンターから、よりガンバらしいテクニカルなテイストを加えたカウンターに移行したことが奏功しているのだと思います。

そして、なんと言っても8月以降リーグ7ゴールの長沢の躍進。パワフルなロングカウンターだけのパトリックは、それはそれで魅力的なのですけど、スターターで使うならテクニックがあってポストを納められる長沢を選択したいところだと思います。それに怪我する前のゴールハンターとしての輝きが戻ればテッパン。パトリックはセットアッパーとして使ったほうが相手にとっては驚異だと思います。

というわけで、結局健太ガンバのサッカーは変わらないので簡単に。ガンバはリトリート基調です。4+4の守備網を絞って非常にコンパクトな陣形を作ります。それはディフェンシブサードに入るととくに顕著です。ただし、このコンパクトな陣形は、その一般的な特長に比して健太ガンバ独特の奇妙なクセがあります。

攻撃は、ですから基本的にはカウンター志向です。カウンターのパターンは主に二つ。低い位置でトランジションしたボールをハーフウェイ付近中央にいるアデミウソンに預けて、アデミウソンショーを発動するパターン。

それから幾分高めにターンオーバーした場合は、素直に長沢に預けます。いずれの場合も、WGのサポートが特長です。WGの選択は試合ごとに変えているイメージがありますけど、どの選手が入ってもタスクそのものは変わりません。今日の晃太郎と秋にしろ、裕之や堂安が入っても同じ。ガンバのサイドはSBの専用プレーエリアになっていて、WGは内に絞り気味の位置でハブの役を担います。

というわけで、東京が攻めガンバが守る、もう少し味付けすると、東京がポゼッションで攻めガンバがカウンターを狙う展開になります。長らく、とくに万博でのアウェイガンバ戦を観てきたサポにとっては耳を疑う展開ですけど、健太さんがもたらした大改革とその成功を賛美する反面、ノスタルジックに考えることもないわけではありません。大阪人らしく保守的なガンバは長期政権志向があるクラブなので、しばらくはこのようなスタイルなのでしょうね。

ボールを持てる、見方を変えると持たされる東京は、一見すると堅そうなコンパクトな守備網の見た目に圧されたためか、まずサイドにボールを運びます。室屋と徳永を高く上げ、慶悟がサイドに流れます。サイドで基点を作り、広貴と翔哉がフリーランニングでスペースを奪い取ろうという作戦だと思います。ところがこれはガンバの思うツボ。サイドからの攻防に関しては、米倉と藤春の1on1の強さを裏付けに、丹波とジョンヤのサポートも安定感があります。アジリティの高い広貴と翔哉に対しても、もともとパワーだけでない丹波とジョンヤは十分に対応します。

ところが、東京が意図したかどうかはわかりませんけど、一本のゴールに至る攻撃ルートが今日の極上エンターテイメントをもたらします。

13分。丹羽の戻しを東口がロングフィードで前線へ。まるがクリアしたボールが梶山に渡ります。梶山は草民に落とします。草民はそのままドリブルを開始。中央突破を試みます。寄せてきた長沢を振り切り、今野もかわし、ガンバ陣に入ります。草民は井手口を引き付け、その背後に下がってきた広貴にパス。アタッキングサードに入ります。広貴はダイレクトで翔哉に渡そうとしますけど、これは晃太郎がカット。晃太郎はディフェンシブサードにもかかわらずコントロールしようとしますけど、すぐに遼一と翔哉に囲まれます。苦し紛れに井手口に渡そうとしたホスピタルパスを草民が狙っていました。インターセプトした草民は、2トラップして体勢を整えつつ東口を確認し、右足で右隅に叩き込みます。ガンバ0-1東京。

なんて言うか、リードされると初めてガンバのアタッカー陣の電気回路が繋がるのでしょうか。ようやくカウンターが決まります。

15分。東京陣の右サイドのスローイン。ここからガンバがプレスをかけます。ライン際のごちゃつきからアデミウソンが抜け出します。アタッキングサードに入ります。アデミウソンはカットイン。中央を上がってくる晃太郎のために時間を作って、まるを引き付け丁寧にパス。東京は全員アデミウソンに視線を持っていかれます。フリーの晃太郎はワントラップしてゴールを確認。そのまま右足を振り抜きました。汚名返上。ガンバ1-1東京。

ようやく電灯に火がついたガンバは波に乗ったまま立て続けます。

18分。東口のスローインから。長沢が自陣で受け、アデミウソンに落とします。フリーのアデミウソンはドリブルで左に展開。東京陣に入ります。東京は下がり加減ですけど、最終ラインは上がっていた徳永を除いて三枚、中盤も三枚残っています。アデミウソンは時間をかけない選択をします。この時アデミウソンのいる左サイドでは、アデミウソンにパスが渡った瞬間からライン際を長躯藤春が上がっていました。アデミウソンは藤春にスルー。ペナルティエリア内で、ボールを追って競争している室屋と藤春、飛び出した秋元のちょうど同じ到達点に届く、超絶妙なパスは、藤春が一瞬はやく触って折り返します。中央には上がっていた長沢に、まるとモリゲ。ゴールには当然秋元はいません。藤春のクロスもモリゲと長沢がちょうど競る辺りに届きます。これまた一瞬はやく触れたのは長沢でした。無人のゴールに長沢はダイレクトで蹴り込みました。ガンバ2-1東京。

ここで、東京は闘いかたを整理します。2点をロスした代償はあるにせよ、早期にガンバの攻守の抑え処を確認し、実行できたことは、意義深いと思います。

ガンバの攻撃はある程度アデミウソンに依存します。もちろんアデミウソン頼みということではありません。それは長沢のこれまでの活躍が現していますから。アデミウソンはガンバの攻撃のリズムメイカーです。アデミウソンを表に出すことで、相手の意識をアデミウソンに偏らせることができます。もちろんアデミウソンが守備側の壁を一枚越えると大チャンスになりますけど、アデミウソンが潰れてもセカンドアタックが可能です。

ですので東京はアデミウソンを消しにかかります。ある程度はゾーンで止められると考えていたのかもしれませんけど、アデミウソンの四つくらい目を持ってそうな、ボールを受ける前の状況察知能力からくる、幾パターンものワンタッチトラップで、梶山、草民、モリゲ、まるが次々とやられてしまったので、徹底マークをつけることにします。担ったのはもちろんファイター草民です。草民の密着マークで次第にアデミウソンがイライラするようになります。

続いては攻撃です。前述したガンバ守備網の謎です。コンパクトな陣形のわりにはバイタルエリアがとてもルーズです。ここ数年のガンバの特長がそのまま受け継がれています。今日は今野が入っているので改善されるかと思いましたけど、やはり変わりません。さすがにこれだけ続くともはや意図的としか思えません。中央に誘いこんでおいてもっと低い位置でトランジションするためなのか、サイドを堅めることとのトレードオフなのか。それとも攻撃への移行になにか関係があるのか。このあたりはガンバサポさんのご意見を伺いたいところです。

東京は、なので中央を狙います。きっかけは草民のゴールでしょう。序盤からあった感覚が先制ゴールで決定的になったのだと思います。広貴と慶悟を交互にバイタルエリアに入らせ、ポストを当てます。こうして東京の攻撃にリズムとバリエーションが生まれます。そして、同点ゴールが生まれます。

22分。ガンバ陣左サイドの徳永のスローインから。徳永は翔哉にパス。東京は守備網の前で、翔哉、梶山、草民がパスを交換してチャンスを伺います。一度広貴が下がってきたのを受け梶山がチャレンジを入れますけど、これははじかれてリターン。そのまま右の室屋に展開します。室屋は藤春を引き付けて梶山に戻します。梶山は前方の広貴にパス。今度はフリーの広貴に納まります。広貴は梶山に戻して、東京得意の縦のパス交換モードに入ります。これで、井手口の背後にスペースができます。ここを狙ったのは広貴と遼一と梶山です。梶山は遼一にチャレンジ。今野を背負いながら遼一はダイレクトで井手口の背後に入った広貴にパス。この縦のパス交換で、ようやくアタッカーが前を向けます。このワンチャンスを広貴が逃しません。広貴はダイレクトで左足を振り抜きました。ゴラッソ。ガンバ2-2東京。

今野はこの夏はあまり試合に出ていないので、コンディションを崩し気味なのでしょうか。それともガンバ復活の立役者たちがそろそろオッサンの域に入ってきたし、かつての育成ガンバの再来を思わせる才能豊かなタレントが続々と現れてきていることもあり、世代交代の意図もあるのか。

どちらかというと、井手口のほうに1on1の粘りを含めた強度不足を感じました。もっとも、ヤットと今野のオッサンコンビが並んでも中盤の強度が上がるわけではないです。ヤットと今野は前線に顔を出す役を交互に分担していた印象があります。井手口と今野の組み合わせはスクランブルです。なので素直に井手口が前で今野がスイープする関係でした。

さて、同点になって健太さんが最初の手を施します。秋と今野のポジション入れ替えます。やはり今野のコンディションが上がってないのでしょうか。それとも井手口の経験のためかな。いずれにしろ、秋がボランチに回っても中央の状況は改善されません。東京がボールを持たされた感があった入りから、自然に東京がオーガナイズする展開に変わります。

はやくも4ゴールも入って楽しいシーソーゲームになった前半はイーブンのまま終了。

後半頭から健太さんが動きます。今野に代えてヤットをボランチに投入します。秋はふたたび左WGに戻ります。

てっきり中央の守備強度を高めるかと思ったら、そうではありませんでした。漢健太が選んだのは、ガチンコのオープンファイトです。健太さんが選んだというよりかは、今のガンバのサッカーはアウトボックスのままどつき合いを挑むスタイルなのかもしれません。ゴールが両方に入るにつれ、本来のガンバのケンカ殺法がムクムクと起き上がるのでしょう。

これは、われわれファンにとっては願っても無いことです。ガンバが普段からオープンなガチバトルをやっていて、かつ結果を残しているのだとしたら、ガンバサポさんは日本一の幸せものでしょう。スタジアムの雰囲気も含め、誰が観ても単純に面白く、ワクワクできる試合を毎週観られるなんて。

東京は、ポゼッションを高めながら、結局結果を残したのはガンバ同様カウンターですから、ガンバのいてこませサッカーに乗せられるままに、てやんでぇサッカーに入っていきます。試合はすっかりオープンになります。が、篠田さんは冷静です。このままオープンファイトを受けて立っても良しリトリートしても良しな手を最初に打ちます。広貴に代えて拳人を同じく右WGに投入します。篠田さんにしてみれば、前節早々リトリートして痛い目を見ましたので、どちらかというとオープンななかでの個の強度を意識したのだと思います。

同時に健太さんが動きます。晃太郎に代えて淳吾を同じく右WGに投入します。健太さんも冷静です。アデミウソンが草民のマークで中央で機能しなくなったので、左サイドに基点を作る意図だと思います。高い位置に淳吾をはらせ、米倉を持ち上げるサイドアタックでしょう。

さらに健太さんが続きます。アデミウソンに代えて呉屋を同じくトップ下に投入します。これは単純にアデミウソンのコンディションを考慮したのだと思います。

同時に篠田さんが動きます。梶山に代えて羽生を右WGに投入します。拳人がボランチに回ります。オープンファイトになると梶山の縦にチャレンジする意識が活きる可能性が高まると思ったのですけど、コンディションでしょう。中盤の守備の可動範囲を高めるとともに、カウンターの際に羽生のポジショニングセンスが活きるということだと思います。

そして、この極上エンターテイメントのドラマチックなフィナーレを迎えます。篠田さんがさらに続きます。遼一に代えて相太を同じくトップに投入します。篠田さんは勝ちたかったのでしょう。せっかくいい試合をしていましたから。遼一のコンディションというよりかは、アウェイ横浜戦で魅せた炎のセットアッパー相太の魂のゴールを期待したのだと思います。そして、ぼくらのこころが震えるときが訪れます。

90分。ガンバのカウンターからヤットが送ったクロスを防いだ秋元のスローインから。秋元は素早くスローを翔哉に送ります。フリーの翔哉はドリブルでガンバ陣に入ります。この時点でガンバは最終ラインは揃っています。中盤はヤットが上がったので三枚。東京は前線に相太と羽生。二列目中央に拳人と慶悟。右に室屋がいます。翔哉から拳人、室屋と渡ってサイドが変わります。室屋はドリブルでアタッキングサードに入り、クロス。これは井手口にクリアされますけど、そのボールが中央に飛びます。落ちたところにいたのは草民だけ。難なく拾った草民はふたたび右に展開。室屋はライン際の慶悟に渡し、オーバー。慶悟はそれを使わず、前線から下がってきた羽生とタベーラ。中央に進出を狙います。この時点でガンバは、ゾーンを回復したうえ、呉屋も戻っていて完璧です。慶悟は中央の拳人に渡します。拳人は上がってきた徳永にパス。局面は左サイドに変わります。ここから徳永のバースディセレモニーのはじまりです。徳永はマッチアップの淳吾をチェンジオブペースでかわし、縦に出ます。この時ゴール前では、ジョンヤを背負っていた相太が一瞬ジョンヤから離れます。そのタイミングでサイドが変わったので、ジョンヤも丹羽もボールを見ています。これを感じた相太は、丹羽とジョンヤの間に飛び込みます。抜け出た徳永は、これを見て低空クロス。丹羽のつま先を越えたボールは相太の右足にピタリと合いました。ガンバ2-3東京。

さて、激闘のドラマッチな幕切れに涙腺を切る準備をしなきゃと思っていたら、忘れていました。ガンバはクリーンヒットを食らうと攻撃心が発動する変な資質があるのでした。

後半アディショナルタイム+1分。藤春のスローインから。井手口がサイドを変えます。淳吾と井手口のキープから右ライン際をカバーした丹羽に渡ります。丹羽はライン際に来た前方の米倉に出します。ふたたびアタッキングサードに入ります。米倉はさらに前方に来た井手口とのタベーラでペナルティエリアに進出。そのまま右足でシュート。これは秋元が防ぎます。クリアボールを秋とまるが競り合い、秋がキープ。再度折り返したボールが藤春に渡ります。フリーの藤春は流し込むだけ。ガンバ3-3東京。

互いに出せるパンチを撃ち尽くし、激闘はこのまま終了。ガンバ3-3東京。

ドローとは言え、楽しい試合でした。撃ち合いは楽しいです。負け試合や渋い試合のときの感想はこんな日もあるさで締めくくるのですけど、今日みたいな試合もこんな日もあるさですね。年間を通じてもそうそうないことだけど、たまにある喜びを忘れられないからサポーター稼業を続けているのかもしれません。

ひと足はやく、カープを見に広島に行ってしまったので、次節はお留守番です。広島は浦和、ガンバとはまた違った楽しさをもたらしてくれる相手ですから、またまた楽しみですね。


2016J3リーグ第22節FC東京U-23vsブラウブリッツ秋田@味スタ20160919

2016-09-20 19:09:24 | FC東京

平松のカミソリシュートのような台風16号が縦断しそうです。みなさまくれぐれもご注意ください。

夏休み三日目は外房から早朝に戻ってきて、今年初のJ3リーグ観戦です。

東京U-23の試合は、余裕がなくて今年は一度も観られないかなあと思っていましたら、シルバーウィークに味スタ開催があると知り、さらに相手が秋田ということもあって、のんびりとと姉ちゃんロケ地旅のつもりだったのですけど、迷っていました。

そしたら、ナオの復帰があるかもって情報を昨日見て、これはもう行くしかないだろうと思い、急遽予定を変えました。

ナオ、おかえりなさい。

途中からだけど出場機会もあり、シュート1本とクロス1本がありました。まだナオ独特の跳ぶような躍動感は戻ってないようだけど、ひとまず無事リスタートを終えられたようで安心しました。怪我した当初は絶望感も語っていたので、どん底から這い上がった粘り強さが、また味スタでのゴールの歓喜につながることを祈ります。そのときはサポもスタッフもみんなで祝福ですね。

U-23のJ3参戦は賛同はしててもなかなか縁がなかったのですけど、U-18世代の希望に溢れる場というだけでなく、大ベテランにとっても希望にあふれるリスタートに成り得るんだなって思いました。平川と建英という若いスターも加わったことだし、いろんな世代が混ざった東京U-23の魅力も機会があったら綴ってみたいと思います。

完成度の高い秋田のコレクティブなサッカーに苦しみつつ、宏太のスミイチで逃げ切りました。

東京U-23のシフトは4-2-3-1。GKは圍。CBは今日は本職ではない二人が務めて喜丈と諒也。SBは右にやっち左に小山。ボランチはヒデと真鷹。WGは右に宏太左に内田。トップ下は容平。1トップはインスです。

秋田のシフトは3-4-2-1。GKは松本。3CBは右から味スタにおかえりなさいの下田、新里、深井。ボランチは山田と日高。WBは右に浦島左に青島。2シャドウは右に久富左に呉大陸。1トップは田中です。

東京U-23は初見です。U-18をベースにしていますので、サッカースタイルも似ているのかもしれません。もっともU-18も春先にひと試合しか観ていない無精者ですので、同じ東京でありながら案外よくわかっていません(^^;。

今日観る限りですけど、とてもベーシックなオーソドックスなサッカーをしますね。U-18の選手にとってはプロを肌で感じられる場であり、トップチームの選手にとっては試合のなかでの技術的あるいは戦術的な個人のスキルアップの場であろうと思います。あるいは、ナオのような状況は特別だと思いますけど、リハビリを兼ねたコンディション調整の場としても活用できるでしょう。いずれにしても、本気で勝利を目指さないことには意味がありませんけど、本来の目的を逸脱してまで結果にこだわる必要もこれまた無いのだろうと思います。東京には核となるサッカースタイルがまだありません。もしそのようなトラディショナルなこだわりをチームとして持っているのであれば、DNAを体に沁み込ませる場としてもあるのでしょう。今年東京とおなじくU-23チームを持つガンバとセレッソはともに濃いDNAを持っていますので、どんなサッカーをしているのか、機会があったら観てみたいです。

東京U-23はけしてチームの完成度は高くはありません。ネガティブな意味ではありません。バラバラということではなく、勝つことから逆算したチーム作りをしてないと思います。どちらかというと、プレーでは選手の感性に任せている部分が大きいような気がします。基本的には、ショートパスをつなぐビルドアップスタイルです。ビルドアップのルートが決まっているわけではなく、自分より前にいるフリーな選手に渡すことが約束事と言えばそうなのでしょう。

それゆえ、チームからこうやって勝つんだというメッセージを感じません。それよりも、よりプレーの選択肢が多い、自由度の高いサッカーだと思います。それによって、プロレベルでのスピードとパワーのなかで、プレーの感性を高めていけるのかなと思います。そういう意味で、とてもベーシックです。言い換えると、作戦はピッチ上にいる選手たちで作っていくのですから、自分たちと相手の力量を踏まえてどうやってゴールに辿りつくか、状況観察と未来予想の能力も磨かれることでしょう。J1のトップレベルのチームに個人として求められることは、決められたプランのなかで寄り良いピースになるというよりかは、個人の感受性と表現力だと思います。より多くプレー機会が得られることは良い施策だろうなと思います。

もっとも、決まり事を明確にしないことは思考する基準がないということですから、もしかしたら必勝の場でプレーすることよりも難しいタスクなのかもしれませんけど。

秋田は対照的です。非常に完成度の高い、コレクティブなチームです。さすがに春先からJ3の上位に居続けるだけのことはあります。間瀬秋田のコンセプトは、スペースメイクとパスの連鎖です。どちらかというと能動的な考え方で、ボールを持つことで試合全体のリスクマネジメントをするということだと思います。ここ数年はJでも守備のやり方が高度になってきていて、システマティックな守備をベースにすることがトレンドになっていますので、一時流行った、選手もボールも動くスモールゾーンを拡大したようなサッカーはあまり見かけなくなりました。生き残りの秋田は、だからこそ個性になっています。とても良いことだと思います。J3はオリジナリティあふれるチームが多いような気がするのですけど、何か理由があるのでしょうか。

秋田モデルのような選手が連動するサッカーは、コンダクターが必要です。多くの場合、扇の要の位置にコンダクターを配します。秋田もまたしかり。山田は目立ったキャリアはないのですけど、キャプテンでもあり、存在感が抜群でした。視野がとてもひろく、左右にパスを散らしたかと思えば縦に攻撃的なメッセージパスもあります。一番印象に残ったのは、呉がダイアゴナルにゴール前に飛び出そうという動きを見て、ロブのパスを縦に放り込んだプレーです。かなり頭がクリアでないとできないプレーです。今が一番あぶらが乗る時期だと思いますので、もっと上のステージで見てみたいものです。

ここまでだと、ムービングサッカーのステレオタイプで、トレンドが過ぎた今、対処方法は既知だろうと思います。ここから秋田の個性です。興味深い点が二つあります。まず右サイドのイレギュラーな動きです。これがアクセントになっています。呉がサイドに流れた場合、青島が中に入ります。この時日高も前目に出てくるので、中央に逆三角形のようなかたちができます。中盤から前線にチャレンジパスを送る確度が上がりますし、中盤が前線に顔を出すことも可能です。さらにスピードとドリブルのある呉を少し離れたところから飛び込ませることで、マークし辛い状況を作ることができると思います。

それから、なんといっても個性の極みは秋田サポのチャントでしょう。スネアを中心とした16ビートの絶え間ない一定リズムは、ジャパニーズパンクをモチーフにしているように聞こえます。コールリーダーさんのドスの効いたハスキーボイスがビートに乗っかると、サポの密集度と跳ねの多さも相まって、さながらスタンドのその部分だけがライブハウスのような空間ができます。メロディーはチャントによって違えど基本的に変わらない16ビートのベースサウンドが試合中絶え間なく流れているので、秋田のプレーそのものに同じリズムを感じられるようになります。そう。秋田のサッカーはパンクです。

願わくば、さらにパンクたる個性を活かして、個人のプレーにもパンクテイストがあっていいと思います。現状ではディシプリンを優先しているけど、もっと異端なドリブラーやただ速いだけのスプリンターやすべてを削りまくるクラッシャーがいてもいいと思います。これまでパンクをテーマにしたチームは見たことがないので、楽しみです。個人的にはジャパニーズパンクは騒がしくて好きではないのですけど、同じように思う相手がいるとしたらそれは強みですし、真実サポがチームを試合でサポートすることになると思います。

パンクはともかく、秋田モデルのサッカーには共通する課題があります。それは、シュートアテンプトが少なくなること。スペースメイクを優先すると、どうしても縦への意識が知らずしらず後回しになることがあります。久富や呉のようなゴリゴリ系アタッカーをシャドウに配すことで縦の意識を忘れないように工夫しているのだと思いますけど、やはり実態はスタッツが表しています。客観的に見ても、ペナルティエリア内でシュートを優先せずパスコースを探すのはもったいないです。ポゼッションは大切ですけど、どのようなスタイルであってもシュートから逆算するアプローチは基本ですから、ここからの終盤戦に向けて積極性を高めて欲しいと思います。

前半は互いのスタイルを具現化しつつも、最終局面で頻度と精度にかけ、スコアレスのまま終了。

後半の開始も状況は変わりません。以降の作戦は、両チームとも選手の個性をほとんど知らないので概況で失礼します。まず秋田。57分に浦島に代わって比嘉が同じく右WBに投入します。63分に久富に代わって熊谷が同じく右シャドウに投入します。失点後の81分に呉に代わって川田が同じく左シャドウに投入します。いずれも同ポジションの変更ですので、基本的にはコンディションを考慮したものだと思います。秋田の完成度の高さを物語っていると思います。

つづいて東京U-23は、最終的に二枚代えに留まりました。59分に真鷹に代わって生地が同じくボランチに投入します。

そして66分。ついにその時が来ます。内田に代わってナオが右WGに入ります。宏太が左に回ります。その宏太が終了前に決めます。

87分。秋田陣の左ライン際でナオがキープ。走り込んだ小山にスルー。アタッキングサードに入ります。小山は中央に折り返して容平にパス。容平は中央に上がってくるナオに落としますけど、これはカットされ、右サイドにボールが転がります。これをやっちが拾ってクロス。ペナルティエリア内で容平がポストを受け、丁寧に後方の小山に落とします。小山はダイレクトでシュート。これは下田にクリアされますけど、右から走り込んでいた宏太の前に転がります。宏太はダイレクトで右足を合わせました。東京U-23 1-0秋田。

このまま試合終了。東京U-23 1-0秋田。

ナオと宏太は途中でポジションを入れ替えてました。ナオは動きの面でも、サイドにはるというよりかは頻繁にゴール前に顔を出していました。ウインガーのイメージが強いナオですけど、復帰の過程でモデルチェンジもはかっているのかもしれません。身体もひと回り大きくなっているような気がします。

秋田は、さすがに最終盤は足が止まったのか、もしくは東京がカウンタースタイルに移行したためか、イニシアチブを握れなくなっていました。それでも、ほとんどの時間で全員が走り回っていて、その運動量には目をみはります。秋田はサッカー処です。ブラウブリッツがトップカテゴリでプレーすれば、もっともっとサッカー熱も高まるでしょう。二年前に訪れたときは秋田駅の露出も少なかったのだけど、新スタジアムの話もあがっているようですから、ブラウブリッツが活躍すれば盛り上がりますね。北東北でJを観たことがないので、行ってみたいです。

ナオの元気な姿を目の当たりにできて嬉しかったです。また味スタでナオのゴールが観たいですね。


2016J1リーグ2ndステージ第12節FC東京vs浦和レッズ@味スタ20160917

2016-09-20 18:48:22 | FC東京

この嵐が過ぎれた秋がやってくる予感がします。

あのひとが味スタに帰ってきました。

おかえりなさい。加賀さん。

不覚にもまったく予想してなかったので、スコッドを見て狂喜乱舞です。

レッズサポの加賀さんファンの皆さんが作ってくださった横断幕です。加賀さんも埼スタでしっかり見ているようです。

加賀さんのアクリルフィギュアです。大の加賀さんファンのかたから譲っていただきました。

移籍後のレッズとの試合はこれで四戦目です。味スタでは二戦目で、ようやく加賀さんにおかえりなさいを言うことができました。試合前とハーフタイムのアップは加賀さんだけを観てたのですけど、加賀さんも気になるのか、東京側をチラチラ見てました。忠成ともなにか笑顔で話していて、スタッフや選手と挨拶したかったのかな。

試合終了直後に、篠田さんがミシャと挨拶を終えたの見た加賀さんが、走り寄っていました。篠田さんと挨拶してたら、選手とスタッフもいっぱい駆け寄ってきて、挨拶の輪が出来ていました。東京に所属した選手と対戦することはよくあるけど、こんなにいっぱいのひと達と挨拶するのを見たことがありません。東京のなかではムードメーカーだった加賀さんですから、今でも慕うひとが多いのでしょう。

今日のスコッド発表の時に加賀さんの名前が出ました。アウェイですからそっけないけど、ひさしぶりの味スタでの加賀さんコールにはやっぱり感動しました。それに、ホムセンで拍手が起こってましたから、嬉しかったです。

自分が今日の試合をどんな気持ちで迎えるのか、正直その場になってみないと分かりませんでした。一生東京と誓ってみたものの、試合で相手側に加賀さんの姿を観たときに、真っ直ぐに東京サポでいられるのか不安でした。でも、加賀さんのコールでなんか吹っ切れました。なんの混じりけもなく、純粋に東京に勝ってほしいと思うことができました。なによりもそれが嬉しかったです。

というわけで、今日は試合に集中します。本日のYou'll Never Walk Alone♪。

まもなくドロンパのお誕生日です。お誕生日の日はアウェイで広島なので、今日お誕生日会がありました。

互いに良さを消し合うがっぷり四つからイニシアチブを握ることができましたけど、蛮勇に過ぎて逆転負けを喫しました。

東京は草民がサスペンションで不在です。それ以外は前節と同じメンバー。シフトは今日も4-2-3-1。GKは秋元。CBはモリゲとカズ。SBは室屋と徳永。ボランチは今日は梶山と拳人。WGは右に広貴左に翔哉。トップ下は慶悟。1トップは遼一です。

浦和は槙野が怪我で不在。それ以外は前節結果を残したメンバーがそのまま揃います。GKは周作。3CBは右からモリ、那須、宇賀神。ボランチは勇樹と陽介。WBは右に駒井左にタカ。2シャドウは右にムトゥ左にトシ。1トップはズィライオです。

浦和は好調時とそうでない場合の相違が比較的わかり易いチームです。浦和の攻撃の方向は、基本的にサイドアタックです。アタッキングサードでWBにボールを持たせて、相手サイドディフェンダーとの1on1の状態を作ります。ここまでは好調時も不調時も同じです。
違うのは中央の三人の状態です。浦和がゴールできるかどうかの差異は、つまるところ中央三人のパフォーマンスにあると思います。中央の三人はとても繊細なコンビネーションでスペースメイクをし続けます。このことで対峙する相手とのギャップを作り上げます。三人のうちの誰かが一瞬優位な状況を作れさえすれば、そのままビッグチャンスにつながります。WBは、その状況を的確に捉え、あるいは作られると信じ、まずは対面する1on1を征し、よりゴールの確立が高くなる時間を作ります。

不調時は、三人のコンビネーションが噛み合わず、個別最適な状態になります。これでは対峙するDFに対して優位性を作れません。問題になるのは、三人の距離感だと思います。シーズン序盤は、慎三、忠成、ムトゥが固定されていた感がありますけど、三人とも調和を意識できる選手であることが理由の一つだと思います。もう一つは、コンビネーションを重視しますのでどうしても長い時間組んだ組み合わせのほうが試合でのストロングポイントに昇華し易いということだと思います。

WBを最前線に上げられる状態は、とりもなおさず浦和がオーガナイズしている状態です。ですから浦和は、オーガナイズ状態を能動的に作り出せるポゼッションスタイルにこだわります。ポゼッションを維持するためにはパス回しが大切になります。つまり、浦和の生命線は、ある意味でパス回しの安定にあると思います。

ポストよっちに苦しんできた東京ですけど、にわかに攻撃のかたちが出来ました。それは翔哉に由来します。ムリキの離脱によってポジションを得たかたちの翔哉ですけど、攻撃全体の構成を考える場合、東京に足りなかった最後のピースを翔哉が担ってくれています。それはミドルシューターです。長期間の怪我による離脱の期間からスターターに入るまでの間、翔哉は素晴らしい進化を遂げました。ペナルティエリア外からの右足のシュート精度は、J1で十分ストロングポイント足るまでクオリティを上げています。ここ数戦がそれを証明しています。

東京の基本的な攻撃の仕組みは、遼一を軸にして、慶悟と広貴が動いて作るスペースを有効活用しようというものです。したがって、以前と違ってスルーパスに抜け出すかたちが増えています。ここに足りなかったピースは、最終ラインの背後のスペースをより有効活用できるような二列目のタスクです。それが翔哉です。精度の高いミドルシューターが二列目に入ることで、相手最終ラインは、前後のケアに意識をさかなければなりません。これによって、スペースアタッカーとミドルシューター双方が補完関係を持てるようになります。

東京も浦和も、相手のベストパフォーマンスを描き、その予防を最優先します。東京は浦和のアタッカーの連携を断ち切るべく、中央のゾーンに堅城を築きます。ビルドアップでリズムを作る原動力となっているムトゥのポストは割合自由にさせます。ムトゥは中盤に下がってポストを受けることで、攻撃への即効性よりもポゼッションの維持とリズムを優先します。ただ、これは攻撃の序章でしかないので、東京はここに対し神経質にはなりません。それよりも、サイドに出てから、あるいは陽介が高い位置で前を向いたような状態から、中央を狙われることを警戒します。このため、高い位置で陣取るズィライオとトシには、なかなか有効なパスが通りません。こうなると、駒井とタカをコンペティティブな高さまで上げることができません。

後方に堅城を作るために、東京は執拗にフォアチェックをし続けます。この前線の献身的な守備は、結局シフトを変えるまで続きました。東京のフォアチェックの威力をはかるバロメーターは周作と陽介でしょう。あの周作をしてキックミスが何度かあったのは、繰り返し襲ってくるフォアチェックの影響が少なからずあった故だと思います。

浦和の攻撃のヘソである陽介のポジションも、浦和の好不調をはかるバロメーターの一つです。前線の中央にパスの出し処がなく、なおかつボールを持つとフォアチェッカーに狙われるので、陽介は次第に右後方に下がっていきます。もちろんチームの調子が上がらない状況で無理押ししない選択があったと思いますけど、そのような状況に追い込んだのは、東京の前線の献身性に拠るものだったと思います。

これらの守備の工夫によって、浦和はサイドに活路を見出さざるを得ない状況になります。序盤は、頻繁に左サイドから駒井へのサイドチェンジを見せていました。これは駒井を走らせてチームの重心を上げる意図だと思います。同様にタカを縦に走らせる長いボールが勇樹から出ていました。いずれにしろ、中央のサポートが無い状態でのサイドアタックは、かならずしも積極的に攻撃する意図はないと思います。この状態こそ、東京が望んだものだったでしょう。最終的にはサイドプレイヤー同士の1on1のガチバトルになるわけですけど、東京には絶対の自信がある室屋と徳永が控えているわけですから。

浦和の守備は、より直接的に対処します。東京のスペースメイクに対するゾーンは那須、宇賀神、タカ、勇樹、陽介に任せ、もうひとつの攻撃ポイントである翔哉をモリが徹底的にマークします。今日のモリは、キャリアの大きなステップアップの時期を迎えた若手を向こうに回し、大見得を切ります。本来は、オフほどの饒舌アピールを感じない、案外地味な仕事を真摯にやり続ける縁の下系の選手ですけど、今日ばかりは舞台上をところ狭しと走り回る、大役者の風情でした。それほど、今日の役割の重要性を感じていたということだと思います。翔哉はほとんどと言っていいほどシュートアテンプトがありませんでした。いわゆる翔哉ゾーンでボールを持ったとしても、モリの念が常に至近にあり、ゴールを向いたプレーができません。記憶している限りですけど、翔哉がフリーになれたのは中央から裏に抜け出した一回のみ。そのワンチャンスを決めていれば翔哉はヒーローで、モリの粘着質な努力は水泡に帰すわけです。翔哉がまず乗り越えるべき課題をモリが見せてくれたような気がします。

お互いに相手のストロングポイントを消すことを優先した序盤の入りは、意図通りに進みます。そして、この守り合いを征し、イニシアチブを握ったのは東京でした。最大の理由はやはりフォアチェックです。前線でボールが納まらず良いかたちでサイドアタックができなくなった浦和は、ゴリ押しではなくリズムを作ることを優先します。このため、前述したように陽介も最終ラインに下がって、周作を絡めたおなじみのパス回しで東京を揺さぶろうとします。でも先手を打つように東京がボールホルダーを追い立てます。浦和はじりじりと下がらざるを得なくなります。

逆にポゼッションを確保できると、変態梶山が発動します。梶山の復活は、パススピードが回復したことによると思います。不調時は、プレーイメージと実際に表現するパスがアンバランスで、梶山自身ももどかしかったと思います。今は、長めのパスでもスピードがあってかつ精度も高く、チャンスに直結できています。ポゼッションのために下がらざるを得なかった陽介と、ポゼッションにより高めの位置でタクトを振れるようになった梶山。両ゲームメイカーの明暗が、前半の内容を象徴していました。前半はスコアレスのまま終了。

後半頭からミシャが動きます。トシに代えて忠成を右シャドウに投入します。ムトゥが左に回ります。一次基点がムトゥに偏っていたことに加えて、カズと室屋のコンビに全消しされていた左サイドを再構築する意図だと思います。

ところが、ミシャの意に反し、後半開始早々試合が動きます。

48分。梶山の翔哉へのスルーで背後を取られた那須が、ペナルティエリア内に入った翔哉をつま先でひっかけます。このPKをモリゲがど真ん中にきっちり決めます。東京1-0浦和。

ただでさえ前半から緊張感あふれる高次元のサッカーが展開されていて、呼吸すらも忘れるほどの高揚感だったのですけど、ゴールにつながったのが判定によるPKで、しかも発端が梶山と陽介のイーブンボールのコンタクトでしたので、ここから益々スタンドがヒートアップします。これがJ1!。これこそがプロです。年間通じても、観ていて心がヒリヒリするような試合はそうそうありません。Jリーグはなによりも投資のための予算が大切ではありますけど、コンテンツの中身は買った売ったで即効するものではありません。今日のような極上の対戦をモデルにして、選手のクオリティの底上げを地道にやっていくべきではないかと思います。

先制した東京は、ますます中盤での支配が冴え渡ります。相変わらず献身的に続ける前線のフォアチェックを合図に、レッズの基点であるシャドウとWBへのチャレンジパスにことごとく粘着マークを配します。4+4の守備網に集中力と安定感が見えてきました。

にもかかわらず、ここからが問題の時間です。篠田さんが動きます。広貴に代えてまるを投入します。同時にシフトを5-4-1に変更します。守り切りモードへの切り替えは篠田東京史上最速。まるは左CB。メイヤは右に慶悟左に翔哉です。

忠成が入ってムトゥが本来の左に回り左右のバランスがよくなったので、浦和の基点が機能し始める心配はありました。それにしても、篠田東京の常套手段とはいえ5バックへの移行は、今日に限ってはリスクが高かったと思います。もとより、3トップのコンビネーションがミシャ浦和の攻撃サッカーの根源ですから、その可能性を最大限断つことは、あるいは守り切る近道かもしれません。でも、浦和の攻撃はそれだけではありません。それまで東京にWGがいることでリスクマネジメントを考慮していた駒井とタカが、目の前の堅い柵がなくなったことで一気に最前線まで上がります。

当然東京は予見していたことだと思います。駒井とタカに対しては、1on1の巧者である室屋と徳永が対応することで、もちろんサイドの一定の安定を保持しつつ、中央の堅守を崩さない作戦だと思います。ところが、これがリスクを呼び込みます。浦和の圧力を受け、東京が自陣に閉じ込められます。左サイドでは、翔哉が守備で存在感を見せられず、チームとしての守備の強度が下がります。頼みの室屋と徳永も、チームの重心が下がることで浦和の圧力を最も受けることになります。最終ラインに押し込められることになります。

これにより、モリと宇賀神が非常に積極的な位置を取れるようになります。実質2バックの超攻撃モードに移行です。こうなると浦和得意の包囲網ができます。浦和は、モリと宇賀神を起点にしたサイドアタックが機能をしはじめ、前線の連携が活性化します。

すかさずミシャが動きます。ムトゥに代えて慎三を同じく左シャドウに投入します。東京が自陣に引くことになったためポゼッションが高まり、シャドウの中盤での組み立ての役割が必要なくなります。そこでムトゥのコンディションを考慮して、前線をフレッシュにするとともに、ペナルティエリア内での慎三の繊細な動きが活きると踏んだのでしょう。

これに対し篠田さんが動きます。翔哉に代えて秀人をボランチに投入します。拳人が左メイヤに回ります。東京は重心を下げたためロングカウンターが攻撃の主武器となります。それでも翔哉のコンディションが良ければ自陣からでもドリブルでアタッキングサードまで運べると思いますけど、さすがに疲れがあったのでしょう。攻撃面でも存在感を失くしていきます。これで守り切り作戦が明確になりました。

この作戦は同時に、サイドの守備強度を上げる意図だと思います。モリは拳人、宇賀神は室屋がそれぞれケアします。でもこれもリスクになります。右サイドは室屋の背後にスペースができることになります。モリゲのカバーリングに期待したのかもしれませんけど、フレッシュな慎三が動き回るためモリゲは対応に追われます。さらに右サイドをフォローするボランチは、カバーエリアがかならずしも広くない梶山です。そして、危惧が現実になります。

77分。慶悟が倒れたことによるプレー中断からの再開から。低めの位置で持つ宇賀神を室屋が追い、最前線まで上がります。室屋の背後に広大なスペースができます。これをタカが見逃しません。宇賀神は室屋を引き付けて余裕をもってバックパス。これを受けた勇樹がルックアップ。左前方にタカが入るのを見て、ロングフィードを送ります。危険を察知した梶山がスペースをカバーします。タカは梶山と1on1でドリブルを開始。この時ゴール前は、ニアにズィライオ、中央に忠成、ファアに駒井。東京はニアからカズ、まる、徳永がそれぞれマークしています。タカは左に振ると見せたフェイントから右に出して、右足でロブクロスを送ります。これに反応したのは、まるの前を取った忠成でした。タカも忠成を狙ったというよりかは、何かが起こるのを期待して中央に出したのでしょう。まるは、タカがクロスを上げるタイミングで一瞬忠成を確認するために目を離します。このことで忠成が先んじて反応できました。忠成らしいダイビングヘッドで合わせます。東京1-1浦和。

偶然とは言え、交代で入った忠成が同じく交代で入ったまるから奪ったゴールです。確かにまるに小さなミスはあったのですけど、それよりもモリゲとカズが作り、死守していた堅城をわざわざ自ら再普請した影響なのかもしれません。この時点で東京の作戦は狂いを生じてましたけど、直後に、さらに目を疑う奇策が飛び出します。篠田さんが動きます。梶山に代えてインスを投入します。同時にシフトを5-1-2-2に変更します。アンカーは秀人。インスはトップに入ります。

バイタルエリアを攻撃の基点とする浦和に対し1ボランチは、奇策というよりも無謀でしょう。いくら秀人と言えど、左右シンメトリーに繰り返されるスペースメイクをカバーし切れるものではありません。シャドウに対し左右のバックスがマークすれば中央は陽介ですから、数字の上ではマッチアップが成立しそうですけど、実際のスペースの争いはもっとシームレスですから。案の定、心配した通りになります。

85分。東京のロングフィードをペナルティエリアでカットした浦和のカウンターから。東京が帰陣する間に自陣中央にいる陽介に渡ります。陽介はタッチしながら、カウンターの流れを活かす状況を作るため、前線を伺います。この時最前線では、タカがダイアゴナルに左から、これに追随するようにズィライオが中央から抜け出ます。陽介がボールを持ったことで一呼吸あったたため、東京の最終ラインは一瞬状況を確認するためにボールを見ます。この刹那に、タカとズィライオが仕掛けます。陽介はこの反応を見逃しません。狙いは、カズの裏をとったズィライオです。フリーで抜け出したズィライオはペナルティエリアに入ってボールを持ち、ゴール前を確認。タカがマークに来た慶悟を振り切って前に出ようとしています。ズィライオはタカにクロスを送ります。これは秋元がカットしますけど、そのボールが不運にも慶悟に当たってゴールに吸い込まれました。東京1-2浦和。

直後にミシャが動きます。陽介に代えてカピを同じくボランチに投入します。陽介のコンディションを考慮するとともに、今年パフォーマンスをぐんぐん向上させていて中盤を縦横無尽に動き回ることができるようになっているカピを入れることで、チーム全体をダイナミックに動かそうという意図だと思います。

もはや東京はコントロール不能になります。立て続けに失点します。

87分。徳永のトランジションに発した東京のカウンターを那須がカット。そのまま右サイドでのショートパス回しから、忠成が東京陣に入ります。インスのチャージでロストした忠成をカピがフォロー。そのままライン際の駒井に渡します。アタッキングサードに入ります。駒井は寄せてきたまるを引き付けタメを作ります。その間にまるの背後をカピが上がります。駒井はカピにスルー。追いついたカピは仕掛ける体勢になかったので駒井に戻します。駒井はペナルティエリアに入りながらルックアップ。この時ゴール前は、ニアに忠成、中央にズィライオ、ファアに慎三。それぞれまる、カズ、室屋が見ています。駒井にはモリゲが寄せます。この時ファアサイドでは、慎三が一瞬アウトステップして室屋の意識を呼び込み、次の瞬間ゴールに向かってダッシュします。これで室屋の反応が遅れます。この状況を駒井が見逃しません。右足でロブクロスをファアに送ります。これに室屋の前に出た慎三が合わせました。東京1-3浦和。

東京は反撃の糸口すら得られません。インス投入は、実質2バックになっていた浦和の後方に脅威を植え付ける意図だと思います。それによってロングカウンターの端緒としたかったのでしょう。ところが、2バック状態での広大なスペースの守りかたは、長年積み重ねてきた浦和は心得ています。それでもそれを打破するほどの威力は、残念ながら東京のアタッカーにはありませんでした。可能性はいろいろ語れるのだけど、スピードだけでなく個で勝負できるアタッカーが今日はオプションに居たので、優先すべき選択は違っていたかもしれませんね。

成す術もなく、このまま試合終了。東京1-3浦和。

今日は負けを認めます。ただ、完敗とは言いません。浦和にしても、なにか気持ち悪さがあると思います。浦和が自力で状況を変えたというよりかは、むしろ東京の蛮勇による自滅に近いですから。

さて、事態はこれだけでは終わりません。東京にとっては今日はテストマッチのようなもの。あくまでも決戦は来月のリーグカップ準決勝二連戦です。今日の収穫は、浦和に対してフォアチェックとゾーンディフェンスが機能したことと、イニシアチブを渡すと勢いを止められないということです。攻撃に関しては、翔哉が封じられてもスペースメイクは機能していたので、継続して良いと思います。上積みに関してはムリキの復帰が間に合うかわからないけど、攻撃面での選択肢は豊富です。一方の浦和は、槙野の復帰もさることながら、何よりもコンディションを崩していた慎三の復活が脅威です。それに今節で2ndステージ首位に立った浦和ですから、過密日程と毎年恒例の秋口からバイオリズムが下降する癖を考慮すると、二兎を追うリスクは大きいと思います。

いずれにしろ、東京も浦和も今日よりもパワーアップしますので、ノックアウトならではの激闘必至でしょう。180分間闘ったほうが勝つと思います。カップを奪い取れ掲げろ東京


2016J1リーグ2ndステージ第11節FC東京vs湘南ベルマーレ@味スタ20160910

2016-09-11 20:36:04 | FC東京

残暑がありますけど、朝晩がいくぶん涼しくなっていて、日増しに秋を感じます。

広島カープが25年ぶりのリーグ優勝を果たしました。

小学生まではカープのファンで、山本浩二さんのユニフォームを着ていました。今はファンではないけど、なんだか嬉しいです。カープファンの皆さま、ひさしぶりの戴冠おめでとうございます(^_^)/。

この秋は味スタ開催が多くて、リーグ戦で今日をいれて四試合、リーグカップが一試合、たぶん天皇杯もあって、最低六試合くらいホームで東京を観られます。楽しみです。

その味スタ秋祭りの初戦の相手は、湘南です。本日のYou'll Never Walk Alone♪。高山とモリゲのフェアプレー宣言

ぼくらはこんな楽しい試合を観たかったんだよー(*^▽^*)。一か月ぶりの複数点に完封を加えた完勝です。

東京は、ムリキのコンディションが戻ってないようで今日も不在です。カップ戦を踏まえて、好調な選手をチョイスしたようです。シフトは今日も4-2-3-1。GKは古巣との対戦に燃える秋元。CBはモリゲの今日の相棒はカズです。SBは室屋と徳永。ボランチは今日は梶山と草民。WGは右に広貴左に今日は翔哉。トップ下は慶悟。1トップは遼一です。

湘南は前節まで8連敗。2ndステージは1勝9敗の下から二番目。湘南のことですから、それでも粘り強く打開策をあの手この手練っているのでしょうけど、結果が出てないようです。布陣も日替わり。シフトは3-4-2-1。GKはタンドゥ・ベラピ。3CBは右から岡本、アンドレ・バイーア、坪井。ボランチは三竿と石川。WBは右に下田左に大介。2シャドウは右に高山左にアーリア。1トップは大槻です。

ムリキが不在ということは、とりもなおさず、ビルドアップの主軸を失うということです。攻撃の基本プランを変えない場合は、なのでムリキの役割を誰が担うかがアジャストのポイントになります。ルヴァンカップ福岡戦の2ndレグは翔哉を試み、成果が出ました。翔哉がリズムを作ってくれたことが勝利につながりました。今日も翔哉をビルドアップの軸に据えます。

ただ、ムリキと翔哉ではプレイヤーとしてのタイプが大きく異なるので、まんまムリキシフトと同じような分けにはいきません。ムリキはワンタッチを好む、周りを活かす生来のゲームメイカーなのに対し、翔哉は天性のドリブラーです。ですから、ムリキの場合はパス基調での崩しになりますけど、翔哉はドリブルで状況を作っていくことになります。当然、翔哉が止められた場合は攻撃がスタックすることは明白です。言わずもがな、過去にもそういう試合を何度も見てきました。それでも、翔哉にはすごい才能が潜んでいますから、チームにとっても翔哉にとってもチャレンジのしがいがあると思います。ある程度順位を気にする必要がない現在の状況だからこそ、未来のために良いチャレンジができるということなのかもしれません。

翔哉が持っている攻撃のタレントとしての最大の魅力は、なんと言ってもシュートです。アタッキングサードでの翔哉は、常にシュートを意識してプレーしているのがスタンドから観ていてもよくわかります。この傾向は以前からあったのだけど、怪我から復帰した翔哉は、威力が増していて別人のようなレベルアップをしているように感じます。まず、シュートに対する自信がついたんじゃないかと思います。翔哉と言えば、ペナルティエリアやや外の左サイドからのミドルですけど、この翔哉ゾーンからのシュート精度が、以前より格段に増しています。なんとなく、ですけど、シュートスピードが上がっていると思います。翔哉はけしてサイズに恵まれていませんけど、もしかすると右足の筋量は東京のアタッカーのなかでもトップクラスなんじゃないでしょうか。翔哉は、サイズの小ささを逆利用したアジリティの高いドリブルが代名詞ですけど、ホントの翔哉のストロングポイントは、右足のパワーのような気がします。右足の威力に安定的な自信を得たら、いかにそれを活かそうかを考えることができます。そうすると、シュートへのアプローチを組み立てることができます。翔哉のシュートパターンが確立されたら、今度は周囲がいかに翔哉を活かそうか考えるようになります。そんな、好循環がチームに生まれているんじゃないかと思います。そう思えるほど、翔哉のゴールパターンはここ数戦いつも一致しているし、しかも試合を重ねるごとに、なぜかシュートシーンでフリーになっているように感じます。このあたりのヒミツをぜひ専門家のかたに解いてもらいたいです。

さて、というわけで、客観的に見たら翔哉を止めることが相手にとっての最重要テーマになることは明白です。今日の湘南は、杜撰でした。

湘南はJ1のなかで特異なサッカースタイルを持っています。湘南サポはさておき、客観的には好みは分かれるスタイルだと思いますけど、なにしろ個性があることは素晴らしいことです。御世辞にも東京スタイルはこれと自信をもって言えない身としては、湘南のように自他ともに認知できる個性は羨ましくもあります。言うまでもなく湘南の個性は走ること。J1のなかで、誰よりも多く考えて多く走る個々の動きを極限までチームとして連鎖させることが、湘南がトップリーグでのサバイバルプランのはず、です。でも、もしかするとその個性へのロイヤリティが薄れてきているのかもしれません。もちろん、チーム内の事情はわかりませんし、湘南に限って選手に迷いがあるとは思えないのですけど、他ならぬ曺さんに、これから先の湘南スタイルの革新プランに迷いがあるんじゃないかと思います。

今日の湘南は、生命線の守備が非常にルーズでした。前線の三人が前から積極的追うのはいつもと変わらないのですけど、そのチェイスをかわされた先が、とてもチグハグでした。本来湘南の守備は、湘南らしい躍動感があるショートカウンターにつなげるため、高い位置でトランジションすることを前提としていると思います。そのためのフォアチェックなのですけど、肝心なのはその後です。中盤が前線が作った守備コースを活かすために、前線の動きに連動して動き続けなければ成立しないプランです。今日の湘南は、前線はフォアチェックをかけるのに、中盤以降はリトリートします。これでは、リスクを生むだけです。

前線のチェイスも、個人レベルではしっかりと追えてるのですけど、個人の動きにとどまっているので威力がありません。東京の最終ラインは、個人のチェイスくらいで動じるようなやわな選手たちではないので、あっさりとかわします。フォアチェックをかわすと、その後にぽっかりとスペースができます。なぜならば湘南がリトリートしているから。こうして、梶山と草民が、割合自由に試合をコントロールできる条件が整います。東京が計画して状況を作り出したというよりかは、なので湘南の自滅でしょう。

最近の湘南の試合を見ていないので分かりませんけど、もしかすると今日、篠田さんが梶山をスターターで使ったのには、湘南の守備がチグハグな点を考慮したんじゃないかと思います。梶山にフリーで前を向いてプレーをさせたら、相手チームもいや我々サポすらも、縄も鞭も蝋燭もなんでもありの、身も心も骨抜きにされる変態ワールドが待ち構えています。梶山はコンディションがかなり戻ってきているようです。梶山のバロメーターは、変態パスよりもパワーとプレーエリアの広さだと思います。今日は1on1のコンタクトで競り勝てるシーンがありました。湘南の中盤にパワープレイヤーがいないことを割り引かないといけないし、競り負けるシーンも少なからずあったので、100%の状態とまでは、まだいかないのだと思います。ただ、プレーエリアは相当戻ってきています。御世辞にも足がはやいほうとは言えませんけど、本来の梶山は中盤を広範囲に動き回ります。スプリントは多くはないけど、運動量というか、止まっている時間が少ないタイプです。それから、前に仕掛けるチャレンジの回数も重要なバロメーターです。梶山に攻撃意欲があると、中盤からどんどん前線に攻撃指令が下るのでエクスタシーを呼び起こします。

梶山と草民のコンビは、タイプが異なることでバランスが取れていておもしろいですね。ヌメヌメとした柔の梶山に対し、草民は剛。スペインから帰って、別人のようにコンタクトがたくましくなったのはすでに周知ですけど、最近は、なんとなくむしろコンタクトを好んでいるようにすら見えます。なので、草民があえて中盤の相手選手ホイホイの役を買って出ることで、梶山のスペースメイクの動きが活きているような気がします。でもやっぱり梶山の足は心配です。中盤の陣容はとても豪華ですから、相手によって使い分けをしてみても良いと思います。

東京に中盤の支配を許すことは、それでもまだクリティカルではありません。今日の湘南の作戦面の最大のミスは、バイタルエリアの処理です。つまり、翔哉対策。今日の湘南は、前線と守備陣の守りかたがチグハグと言いましたけど、その影響を一番濃く受けたのは、ボランチの脇のスペースだと思います。石川にしろ三竿にしろ、それほどエリアのカバーが巧みではないうえ、シャドウが前に出ているのでフォローがありません。WBは、室屋と徳永が高い位置を取るので、これまた中盤をフォローできません。なので、中盤が実質二枚になる状況が頻繁に起こります。これでは東京の攻撃プランの大前提であるバイタルエリアを防ぎきれるものではありません。

東京は、直前の福岡二連戦で苦労したバイタルエリアを、今日はあっさりと支配します。広貴も慶悟も遼一もバイタルエリアでのタスクを安定してこなします。なかでも有効に機能していたのは、やっぱり翔哉です。湘南はリトリートする割には最終ラインとボランチの間もルーズです。翔哉にそこを狙われます。最終ラインとボランチの間に翔哉が入ると、中盤からどんどんチャレンジの縦パスが入ります。翔哉のドリブルが炸裂。湘南は後手後手に回ります。

中央でボールを持って時間を作れるため、室屋と徳永も積極的に攻撃参加できます。そうすると、篠田東京本来のビルドアップスタイルである、サイドでの縦のパス交換も早々観られるようになります。東京がアタッキングサードに入る時間が長くなります。

それでも結果になかなか結びつかないなと思っていたら、前半の最後の最後にようやく先制ゴールが生まれました。魅せたのは、やっぱりあの男でした。

44分。三竿の自陣からのクリアをハーフウェイやや東京陣よりでモリゲが拾います。モリゲの前に梶山がいて高山と大槻に挟まれていたのですけど、大槻はぼんやりとモリゲを見て、高山も梶山をケアしていません。変態梶山がフリーになります。これをモリゲが見逃すはずがありません。モリゲは梶山にパス。最後方から攻撃スイッチが押されました。梶山は難なくターン。湘南陣に入ります。梶山の前で、翔哉が石川と三竿の間を狙ってスルスルっと上がっています。ここでも湘南の守備網は極めてルーズです。翔哉も難なくど真ん中のスペースを得ます。梶山は翔哉にスルー。ど真ん中を二本のごく普通なパスで突破して、アタッキングサードに入ります。さあ、今日も翔タイムのはじまります。翔哉はドリブルしながらゴールを確認、タイミングをはかります。このとき翔哉の前方を、慶悟が右から左にダイアゴナルに横切ります。これがエスプリの効いたアシストになります。バイーアが慶悟につられます。翔哉が慶悟をスクリーンに使って右に持ち出したため、岡本も翔哉をマークし切れません。ペナルティエリアやや外の翔哉ゾーンで、翔哉にシュートアテンプトが訪れました。右足で大きめにトラップしてコースを作り、そのまま右足を巻くように振り抜きました。ゴラッソ。東京1-0湘南。

東京が攻撃モードに入るとカメラを用意するのですけど、フレームで観る景色はとても興味深いです。翔哉は、他のアタッカーと違ってとてもリズミカルなんです。フレームでパスを追っていると、シュートタイミングがなんとなくわかります。翔哉は、その機を絶対に逃しません。こちらがシュート打てそうって思ったときに、ちゃんとシュートを打ってくれます。だから、気持ち良いんです。前半はリードのまま終了。

後半に入っても、湘南の闘いかたに大きな変化はありません。やっぱり守りかたがチグハグなままです。前半の記述で湘南の攻撃を見てこなかったので、ここで見てみます。湘南のストロングポイントは、高山と大槻のスピードです。湘南はこれを活かすため、攻撃時にはやや左肩下がりな変則シフトを敷きます。下がるのはアーリア。左の中盤には、三竿と大介という足元が巧みなプレイヤーが揃っています。そこにアーリアを絡めることで、チャンスメークする意図だと思います。アーリアが前を向けたら、長短自在なパスで状況を作ることができます。大介を単独で抜け出させることができたら、ドリブルで仕掛けることもできます。

ただ、今日の湘南は極論するとそれだけでした。左サイドで基点ができさえすれば、右で仕掛けることができます。高山のスピードに加えて、技術のある下田を高い位置に置いて二次基点として使うこともできます。その肝心の左サイドが有効に機能しません。アーリアにしろ大介にしろ、果敢にチャンスを作ろうとします。とくにアーリアは、中盤を広く動いてスペースメイクしてなんとか状況を打開しようとしますけど、アーリアしか動かないのでは東京の守備網を崩すことはできません。たとえば中盤でサイドを変えるパスはほとんど見られません。やはり、いまの湘南の課題は、攻守ともに中盤にあるような気がします。

後半開始して早々、曺さんが動きます。石川に代えてウェズレーを右シャドウに投入します。高山が右WB、下田がボランチにそれぞれ回ります。右サイドに独力オラオラ系ドリブラーの枚数を増やす意図です。そのために右サイドのコントローラーをボランチに入れ直したのだと思います。

さらに曺さんが動きます。坪井に代えて齊藤を左シャドウに投入します。アーリアがボランチ、三竿が左CBに回ります。これで中盤のゲームメイクが改善されます。湘南のポゼッションが上がって、東京を自陣に押し込めるようになります。湘南のサイドアタックが左右バランスよく攻められるようになります。湘南の攻撃が活性化してきます。

曺さんがさらに畳みかけます。大槻に代えてジネイを同じくトップに投入します。サイドアタックが機能しはじめたので、ターゲットマンを最前線に配置する意図だと思います。ジネイ、ウェズレー、齊藤の迫力ある高速アタックが見られはじめます。さらには、高さのあるジネイが加わることで、セットプレーの脅威も増します。曺さんがチェンジ・オブ・ペースで仕掛けられるのはここまででしょう。持ち駒を17分間に一気に使い切ることで、チームに颯爽とした活力を生み出したかったのだと思います。

今日の東京にとって、唯一危険な時間帯はまさにこの17分間でした。東京は中途半端に受けます。前半のように積極的な守備でイニシアチブを取り返しにいくのか、それともリトリートしてしっかり守るのか、はっきりしないまま、なんとなくやんわりと湘南のモードチェンジを受けてしまいました。結果的には事なきを得ましたけど、このようなセキュリティホールは、もっとシリアスな相手との対戦では大けがにつながりかねません。ピッチ上の選手たちでしっかりとコントロールできるようになってほしいと思います。

危機を察知した篠田さんの打ち手は素早かったです。翔哉に代えて拳人を投入します。同時にシフトを4-4-2に変更します。拳人は左メイヤに入ります。2トップは遼一と慶悟。東京が安定を取り戻します。今日の篠田さんの作戦は、とても理にかなっていました。すべてピタっとはまっていて、終盤の闘いかたも小気味良かったです。

この頃から、前半から走り回っていた広貴が消えはじめます。守備は変わらず献身的なのですけど、攻撃で走っているわりにはパスが出てこなくなり、存在感がなくなります。いつもの交代の時間帯だったので、ベンチでもインスが準備していました。広貴自身も業務終了と思ったのでしょう。ところが、インスがピッチサイドに姿を見せたとたん、急に広貴が仕事に戻ります。

75分。一度右を伺った東京は攻撃ルートが無いと見て作り直します。徳永、カズ、モリゲと渡って、局面は左に移ります。モリゲはルックアップ。この時、モリゲの前方の湘南陣で、慶悟が下田を連れて下がってきます。モリゲは慶悟に長く強めのパスを送ります。下田がついてきてるのを知った慶悟は前方にスペースがあることが分かっていたのでしょう。モリゲのパスを胸でダイレクトにフリック。そこに広貴がいました。フリーで受けた広貴はターン。そのままドリブルを開始し、中央に移動します。アタッキングサードに入ります。この時広貴の選択肢は、前方に遼一、右に室屋左に慶悟。湘南はラインが揃っていますけど、下がり加減でマークをしっかり確認できていません。カウンターが成立です。そのままドリブルで右に寄った広貴は、遼一がバイーアの後ろの位置を取ったのを見て、ターン。遼一にパスします。遼一は一度納めて時間を作り、バイーア、岡本、石川を引き付けます。パス&ムーブで遼一に寄ってきた広貴にタベーラ。広貴はダイレクトで左足を振り抜きます。これがライナーになって、ゴール右上隅に吸い込まれます。ゴラッソ。東京2-0湘南。

これで篠田さんが作戦を変えます。広貴は残業です。広貴は定時退社前の一発のつもりだったのでしょうけど、そうは問屋が卸しません。徳永に代えてまるを投入します。同時にシフトを5-4-1に変更します。おなじみ全消し体制です。まるは左CB。リベロはカズです。拳人が左WB、慶悟が左メイヤに回ります。

直後、広貴をやっぱりはやく上がらせたかったのか、遼一と拳人と梶山と慶悟が気を利かせます。

80分。湘南陣で高山が拳人から奪ったボールをアーリアに渡そうとします。そこに梶山が襲いかかります。梶山はアーリアから強奪に成功。この時、梶山のトランジション成功を信じて、左サイドを慶悟がスプリント。高山より反応がはやく、高山の裏に抜け出します。梶山は慶悟にスルー。アタッキングサードに入ります。抜け出した慶悟はルックアップしてゴール前中央にいた遼一にパス。このパスが少し流れて、三竿に狙われます。遼一も粘ってイーブンボールがこぼれます。そこに梶山がつめます。梶山は正面にバイーアがいたので、左にいた拳人に流します。拳人は高山がつめてきていたので、右足で大きくトラップし、そのままペナルティエリア内に走り込みます。これにバイーアが反応。岡本もボールを見ています。この時ファアでは、三竿よりはやく遼一が反応。ゴールに向かって動き出していました。ボールを追いかけながらこれを確認した拳人は、ダイレクトで左足を振ってファアにクロス。どフリーの遼一が頭で合わせました。東京3-0湘南。

それでも守備の安定のため、しばらく広貴の残業は続きます。ようやく篠田さんが動きます。広貴に代えてインスを同じく右メイヤに投入します。運動量があってフレッシュなインスを攻守に走らせ、前がかりになる湘南の後方に脅威を与えようという意図だと思います。

これが見事に機能します。インスが広範囲に走り回って、湘南の攻めの意欲を断ちます。このまま試合終了。東京3-0湘南。眠らない街♪。翔哉と広貴のシュワッチ

結果的に完封できました。得点も効果的に積み重ねられましたし、完璧な試合展開でした。篠田体制に変わってから、まず結果を残すためにリアリスティックなサッカーに徹しましたけど、その間に、着実に篠田東京のかたちを作りあげられてきたのだと思います。ヨネや拳人やムリキの離脱というアクシデントがありながら、少しずつ布陣もアジャストしてきました。知らずしらず、ぼくらのなかにも篠田スタイルが沁み込んできていると思います。

さあ、いよいよ浦和戦です。互いのチーム状況の如何を問わず、過去に激戦を重ねてきた因縁の相手です。とくに味スタではドラマチックな試合になることが多く、毎年楽しみです。ぼくらはとにかく、篠田東京の未来を量るのに絶好の相手と向き合います。絶対おもしろい試合になりますから、ぜひ、多くのお客さんに味スタに足を運んでもらいたいと思います。

準備は整った。チャンネルは決まったぜ。


2016JリーグYBCルヴァンカップ準々決勝第2戦浦和レッズvsヴィッセル神戸@埼スタ20160904 -いつかその日のために-

2016-09-05 22:14:10 | 加賀さん

今年もまた、ひと夏を越えて晩夏を迎えました。

おひさしぶりです。

甲府でお会いして以来、一か月ぶりの加賀さんです。

7月は甲府でしたので、埼スタでお会いするのは、5か月ぶり。

今年の夏の加賀さんは、近年にないくらい試合に名を連ねていました。昨年は6ヶ月間試合から遠ざかっていて、加賀さん本人のこころの内はわかりませんけど、外から見てて、レッズに来て一番苦しい時だった気がします。結局夏は一度もスコッド入りすることはありませんでした。

それどころか、怪我による離脱以外で、スコッド入りする可能性がほぼ皆無だった時期は、加賀さんのキャリアを通じても無かったことです。

そしてちょうど今頃、何があったかはわかりませんけど、吹っ切れた時期だったと記憶しています。9月にひさしぶりに大原でお話ししたときは、練習中も笑顔いっぱいですっかりレッズファミリーになじんでいました。

今年の夏は、7月23日以降、8試合で6回のスコッド入りです。航さんがオリンピックで、マッキーさんがワールドカップ予選で不在だったというスクランブルではあるのですけど、わたるん移籍以降は、DFが必要とされるシーンでの1stチョイスとして確実にポジションを得ているような気がします。

もちろん、プロサッカー選手である以上、試合の場、プレーで自己を表現できることが最も望ましいし、刹那的に見ればそれ以外に価値はありません。だから、レッズの一員として和やかな笑顔で過ごしているなかにも、個人としての悔しさが薄れているようなことはけしてないと思います。

いやむしろ、だからこそいっそう悔しいし、試合に出たいんじゃないかと思います。その意味では、とても充実した夏を過ごせたのかなと思います。

今日は、マッキーさんがワールドカップ予選に加え怪我をしてしまったことで離脱していて、準決勝第1戦に続いて公式戦2戦続けてのスコッド入りです。

第1戦で梅ちゃんが長期離脱を強いられることになった不幸な怪我のあとのスクランブルを加賀さんがしっかり封じていましたので、もしかするとスターターもあり得るかなと思って、ドキドキしながら埼スタに向かいました。

結局スターターではなかったのですけど、ひさしぶりにホーム埼スタにいる加賀さんを観ることができました。加賀さんはマルチロールなタイプではないので、右CBか右WB。もしくはミシャでは非常に稀ですけど2CBの右です。なのでモリさんのコンディションに問題がなければ右WBしかないのですけど、アウェイゴールルールによる大きなアドバンテージがありつつも、まだ安心できない状況でしたので、スターターは正直難しいなと思っていました。それに、今日の後は一週間空くので、レギュラーを休ませる理由もありませんから。

というわけで、ひたすら加賀さんを追うマッチデーとなりました。贅沢なことですけど、ほとんど試合は観ていません。申し訳ございません。結婚する前のウッチ―さんを追うファンの気持ちが少しだけわかりました(^^;。

試合前のアップのメニューは普段と一緒で、サブメンバーのグループワークの後は、バックスタンド側で軽めのダッシュを繰り返していました。その後は通常お散歩時間になってウロウロしてるのですけど、ここで異変が。なんと加賀さんがシュート練習をしていました。三本ほどミドルを蹴ってすべて外していましたけど、シュート練習をする加賀さんを東京時代も観た覚えがないので、ものすごい衝撃でした。もっとも東京時代は試合に出るとスターターが多かったので、CBにはシュート練習がメニューに無かっただけかもしれないけど。

秋商の1年生の時は快速FWでしたから、コントロールはともかくさすがにシュートにパンチ力があります。お散歩してて、慎三さんとただなりがはやめにシュート練習を終えたので、じゃあ俺もってノリで蹴ったんでしょうね。いつか、生で観たことがない加賀さんのゴールを観てみたいです。加賀さんファン一同で号泣必至。

ダッシュのアップをはじめる前、ちょっと目を離してる間に加賀さんがいなくなって、おや?と思っていたら、バックスタンド側の真ん中あたりでじーっと神戸の練習を観ていました。誰かを探している風だったので、もしかしたらマックスに会いたかったのかも。誰に会いたかったのか分からず仕舞だったのは、結局誰にも気づいてもらえず、さみしげにダッシュをはじめたからです。

通常、前半の30分くらいにサブメンバーのアップがゴール裏ではじまるのですけど、今日の前半はベンチ横で体操をした程度です。ちなみに後半もベンチ脇で軽めのアップだけでした。しかもコンディショニングトレーナーさんの指導もなく、各自が思いおもいにアップしてました。

ハーフタイムの鳥かごはメイン側でやってくれたので近くで観ることができました。加賀さんの動きに、なんとなくキレを感じました。コンディションの状態がとても良いのでしょう。動きの良さだけでなく、躍動感もありました。その点でも充実を感じました。試合に出たら、アウェイガンバ戦で魅せた安定感のある対人守備に加え、攻撃でもアクセントになりそうな気がしてなりません。

レッズの右CBは、モリさんをベストモデルとすると、個人で試合を作れる、現場レベルでの高度な作戦企画能力が求められます。これまでどちらかというとフィジカル面をプロとしてのストロングポイントとしてきた加賀さんですけど、吹スタの姿をTVで観てたら、良い意味ですごい違和感を覚えました。守備はもちろんのこと、右でボールを持ったときに何かをしようと考えている風情を感じました。ちょうどレッズに入って悩んだ期間を通過した直後のモリさんの姿がダブりました。今でこそ右サイドのコックスとして味わい深いプレーを見せるモリさんですけど、あの芸は一日にしてならず。雌伏の時のなかでも、加賀さんは日々成長をしているんだなと実感した試合でした。

もともとプレー中の立ち姿に落ち着きがあるタイプですけど、ガンバ戦は自信を感じました。レッズのなかでどうプレーしたら良いのかをしっかりと頭と体に沁み込ませることができているのでしょう。すっきりと立ってしっかり見ることができれば、攻撃面でのプレーの幅が広がるでしょう。攻撃の基点になる加賀さんなんてまさかと思っているけど、当たり前になる日が来るかもしれません。

後半のサブメンバーのアップでは、加賀さんが一番動いていました。たしかめるようにゆっくりダッシュを繰り返していました。ちなみに慎三さんと石原さんはストレッチだけでほとんど動いていなかったのですけど、そのまま試合に出て筋肉系は大丈夫なのか、ちょっと心配でした。

後半はサブメンバーがほとんどの時間、ベンチの外に出ていたので、レッズがゴールした時の様子を観ることができました。大騒ぎすることなく、ベンチメンバー全員わりと冷静でした(^^;。ゴレアーダということもあったのでしょう。

交代で戻ってきた選手を、サブメンバー全員笑顔で迎えます。

今日一番嬉しかったのは、加賀さんの意外な一面を観ることができたことです。慎三さんとただなりが交代を指名される直前、まだコーチから声がかかる前に、加賀さんがなにか声をかけていました。なんとなく口の動きの感じで、「出番じゃね?」的なことを言ってるような気がしました。実は、加賀さんには試合に流れを読むちからがあるのかしらとびっくりしました。レッズの交代はパターン化しているのですけど、ミシャが退場して堀さんがスクランブルで指揮を取っていたので普段と違っていました。それに慎三さんとただなりの出る順番まで当てていたのはすごいです。

もちろん自分の出番のためにしっかり準備するのが一番大事なのですけど、試合を読むちからがあるかどうかはともかく、期待がかかる仲間にさりげなく笑顔で声をかけることは、案外難しいことだと思います。加賀さんはとても話好きだし、ムードメーカーでもあるし、仲間からちょっと離れて観察するポジションも好きですから、つき過ぎず離れ過ぎずの絶妙なコミュニケーションレンジを取れる才能を持っているのかもしれません。

これは、もしかですけど、本当にもしもですけど、コーチに向いているのかもしれません。子ども好きの加賀さんですから、将来は育成スタッフが向いているのかと勝手に想像しているのですけど、ポイチさんのようなキャリアというか、育成部門でスタッフから監督の経験を積み、その先に。

結局、三人目に石原さんが呼ばれて、今日の加賀さんの出番はありませんでした。

ちょっとだけ試合について触れますね。レッズは周作とマッキーと航が代表で不在。梅ちゃんも長期離脱です。シフトはおなじみの3-4-2-1。GKは大谷。3CBは右からモリ、アニキ、ウガ。ボランチはキャプテンとカピ。WBは右に駒ちゃん左にタカ。2シャドウは右にトシ左にムトゥ。1トップはズィライオです。

神戸はペドロ・ジュニオールがサスペンションで不在。今日のシフトはレッズ対策なのか、スペシャルプランです。3-4-2-1。GKは徳重。3CBは右から岩波、伊野波、祥平。ボランチは藤田とニウトン。WBは右に峻希左に慶治朗。2シャドウは右に中坂左にマックス。1トップはレアンドロです。

今日は前半に趨勢がすべて凝縮されたハーフタイムマッチです。神戸が非常に良い入りかたをしました。レッズと神戸は、この一週間で3連戦です。さすがに三戦目ですから、互いに手の内は見えていたでしょう。ノエスタでの連戦は1勝1敗ずつで、スコアもレッズから見て1-2、2-1。三戦目は、決戦です。神戸はやはりレッズの攻撃を封じることに主眼を置いていた気がします。ポイントは前線の三人の処理です。神戸はレッズのアタッカーに対しマンマーク気味にDFを付けます。ズィライオには伊野波、トシには藤田、ムトゥにはニウトンがそれぞれ付きます。封じるべきはバイタルエリアの基点です。レッズのアタッカー三人がかわる変わるバイタルエリアに下りてくると、必ずマーカーが密着します。これでアタッカーに仕事をさせず、ゆえにレッズは基点を作れません。

そこでレッズは、サイドに基点を散らします。モリとウガを高めに位置取らせ、駒ちゃんとタカはなかに入ります。さらにボールサイドにカピが寄せます。こうして、サイドを基点にしてインサイドに攻撃ルートを作り、その上で前線を走らせるパターンに切り替えます。でも、ここまではネルシーニョさんの想定の範囲内だったようです。前線の三人を抑えれれると、レッズはWBのバイタルエリアでの仕事に活路を見出そうとします。そのためのサイド基点です。でも神戸は、駒ちゃんとタカに対し、対面のWBとサイドのCBがしっかりと付き、アタッキングサードでの自由を奪います。こうしてレッズはなかなかペナルティエリアに侵入できず、有効な攻撃を見せられなくなります。

変わって神戸の攻撃が威力を見せます。まず中盤での攻防で、ニウトンが存在感を見せます。神戸はフォアチェックからレッズにバックパスを選択させることで時間を作り、バックラインを高く保ったコンパクトな守備網を作ります。こうして中盤で支配力を発揮できる下地を作ります。網の中央にニウトンを置きます。レッズが中央を経由しようとすると、ことごとくニウトンがカットします。こうして高い位置でトランジションできるようになった神戸は、神戸らしくなく高速アタックを見せます。アタッカー三人が高い位置で基点を作って、WBを押し上げます。峻希と慶治朗が沸き上がるように攻撃参加します。サイドを征圧すると、中央にはレアンドロ、中坂、マックスに加えてニウトンも上がってきますので、人数をかけた迫力ある攻撃が展開します。非常に惜しむらくは、峻希がクロスバーに当てたシュートと、三度あったシュートチャンスで中坂がシュートを打てなかったことです。とくに中坂は、ペドロなら確実に仕留めていたレンジで、しかも十分にシュートを打てる時間があったなかでしたから、神戸にとっては悔やまれます。レッズは、完全に神戸の作戦にしてやられていましたから、フィニッシュまで決められていたら、今日の結果は違ったものになっていたかもしれません。

結果的にはゴレアーダになりましたけど、このように今日は薄氷の接戦でした。彼我を分けたのは約4分間の出来事です。39分の先制は、藤田のアタッキングサードでのロングスローのクリアから。こぼれ球をカピが拾ってルックアップ。前線のタカにメッセージを込めたロングフィードを送ります。まずこの視野とチャレンジが素晴らしかったです。タカが競り合いに粘ってフリック。がら空きのゴール前スペースに走り込んだのはトシだけでした。さらに43分。そのトシが峻希に倒されて得たPKをキャプテンがきっちり決めて2-0。

これで完全に神戸のゲームプランが崩れます。まず守るという前提が崩れて、前掛りにならざるを得ません。なので、作戦の最大の肝である、ズィライオ、トシ、ムトゥへのマークを外さざるを得ない状況になります。こうして、レッズにとっては美味しいカウンターのかたちを得られるようになります。後半は、前半とうってかわってオープンファイトになりますけど、勢いにのったトシがつくるレッズの流れに神戸は抗し切れませんでした。最後は、アニキがパンツにくっついた蝉をベンチに見せに来る余裕まで見せつけ、レッズがゴレアーダの快勝です。

出場機会がなかった日の試合後の挨拶は、ちょっとさみしげで厳しい表情を浮かべることが多い加賀さんでしたけど、今日はとても穏やかでした。笑顔はなかったけど、チームのルヴァンカップの次のステージへの進出にほっとした気持ちもあったのでしょう。もっとも加賀さんがルヴァンが何かを認識しているとは思えませんけど(^^;。

とは言え、やっぱり出場したいだろうし、ファンとしてもピッチに立つ姿を観たいです。そして。

ルヴァンカップ準決勝は、東京との対戦となりました。自分にとっては加賀さんダービーです。もちろんリーグ戦での対戦はあるけど、加賀さんがスコッドに入る可能性はあまり期待できないので、カップ戦こそチャンスです。しかも決勝進出を巡る決戦です。加賀さんにとっても、アミノバイタルを強奪するチャンスでもありますし、なによりかつての仲間としのぎ合う場が楽しくてしかたないと思います。ぜひ、絶対、スコッドに入ってほしいと思います。

口で言うのは簡単だけど、なかなかプレー機会がないなか、いつでも出場できる準備を整えることは、心身ともに難しいことだと思います。今日の姿を観て、その難しいタスクをしっかりとこなして、良いコンディションを作っている様子が伺えました。とても嬉しかったです。怪我で苦しんだ姿を長く見てきたので、元気な様子がなによりも嬉しいです。2016年の秋が充実した時間になりますように。そしてできれば、来るホーム味スタで加賀さんに再会できますように。