ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

FC東京2019シーズンレビュー

2020-01-12 15:50:41 | FC東京

新年あけましておめでとうございます。今年もぽちごやブログをどうぞよろしくお願いします。

今年も新年を迎えるにあたり、昨シーズンを振り返ってみたいと思います。

個人的に、昨シーズンの感想を一語で表すと、「残念」。unfortunateやdisappointmentではなく、むしろ希望の想いを込めた、文字通りの念が残るシーズンでした。Jリーグ史上最多、6万4千人もの観客を集めた最終決戦に当事者として参加できて、誇らしい気持ちでいっぱいです。サポ人生ではじめて、一年通して期待と緊張感を持てたシーズンでしたから大満足ですし、東京には感謝の気持ちしかありません。

優勝争いとは別に、2019シーズンの東京は、ぼくらにかつてない価値を届けてくれました。それは東京独自のイデオロギーです。商業サッカーにはトレンドという波があり、その波長のゆらぎのなかで限られた自由が与えられているスポーツです。でもそれは、短期的なコンペティションを重視するあまりフレームワークに准ずるが故の、自発的な束縛に過ぎません。本来サッカーはもっと多様性を持っていて、各個人に独自のサッカー感があるはずです。そして、それを共有する集団のなかにイデオロギーが生まれます。東京はついにその域に達しました。

日本文化は調和の文化ですから、安定を好みます。安定を実現するフレームワークに依存する傾向が他国よりも強く、それはサッカーにおいても同様です。1993年にはじまったJリーグは、長きに渡った揺籃期を経て、2011年の柏の優勝により、フレームワークが覇権を取る時代に入ります。そこでフレームワークを生んだエポックメイカーは、ネルシーニョさん、ミシャさん、そして風間さん。柏時代のネルシーニョさんを除きエポックメイカー自身が成果を見ることはなく、タイトルを取ったのは彼らのロジックを継承したアレンジャーです。そうしてオリジナルのロジックはフレームワークとして汎用化されます。

でもフレームワークは、それを活用する人の本来のサッカー感を表現するものではありません。むしろそれを封印します。ようするに模倣。フレームワークのエネルギーは有限ですから、それが尽きると表舞台から降りざるを得なくなります。模倣者たちは新たなフレームワークを探せば良いのだけど、サポはそうはいきません。照る日も曇る日も、病めるときも富むときも、ただ従順に応援しますから。だからフレームワークに准じ過ぎるチームのサポは、風にたゆたう葦のようなものです。そんな風にずっと受け身だったサポに矜持を与えてくれるのが、イデオロギーです。サッカー界のトレンドがどんなに変わろうとも、おらが道を歩み続けられる幸せは、非常に強固な信心を生みます。教徒は強い。

ぼくらは、不思議なことにクラブが望み導いたわけでもないのに、そしてぼくら自身が欲したわけでもないのに、いつの間にかイデオロギーを持つことができました。FC東京のサッカースタイルは?と問われたら、ほぼ100%の東京サポが同じ答えをするでしょうし、それは個人のサッカー感と完全に一致するでしょう。それを証明するのが、アンチテーゼです。今シーズンは、東京のサッカースタイルを他サポから「面白くない」と否定され続けました。そのことが、ぼくらのなかのイデオロギーを確信に至らしめました。ぼくらは声を大にして宣言します。「東京が好きなだけじゃなく、東京のサッカーが好きです」と。

2019年シーズンの特長は、明確なイデオロギーを確立できたチームが覇権を争ったことです。それも、NとSのごとく対極のイデオロギーの対決でした。このことがシーズン終盤のドラマを演出しましたし、結果的にJリーグ史上最多観客の要因となったのではないかと思います。超守備的、ロングカウンター、中央突破に偏重した東京と、超攻撃的、ショートカウンター、サイドアタックに偏重したマリノス。ちなみに2019年シーズンで、最もサッカーのクオリティが高かったのは川崎と名古屋です。攻守とも能動的で、データ上はチャンピオン。でも現実は、あえて逆方向にエッジを効かせたチームが成果を上げました。東京とマリノスに共通項を見出すとすると、キーワードは個性的でリアリスティックな超高速カウンターです。もしかするとこれからは、独自のスタイルを貫く個性的なチームが増え、かつ上位に名を連ねる時代が来るのかもしれません。ぼくは、そこにこそ、Jリーグ100年構想の目的地の入り口が示されているんじゃないかと思っています。

では、2019年シーズンの流れを振り返ってみましょう。トータルの成績は、19勝7分8敗勝ち点64。2位。もちろん歴代最高成績です。開幕から12戦無敗。9勝3分という最高のかたちでシーズンインしました。建英、ヒョンスという主力の相次ぐ移籍を経験した夏場を6勝3敗で勝ち越すだけでなく、16得点(平均1.8)と攻撃力が花を開きます。そして、今シーズンを象徴するアウェイ八連戦を4勝2分2敗でしのぎ切り、首位でラスト三試合を迎えます。でもここから、積み重ねてきたものが一気に崩れ、0勝2分1敗。4点差勝利が条件の最終頂上決戦でマリノスに敗れ、2020年に念を残しました。

シーズンをサマライズすると大方の印象通りで、前半の大貯金を上手に使いながら、主力の移籍を補強とルーキーの活躍でどうにかこうにか凌いで、ホーム帰還後の捲土重来を期すラスト三試合で逃げ切るシナリオをほぼ達成しかけていました。チームスタイルとしては、ボールポゼッションはリーグ14位の45.6%。シュートアテンプト、チャンス構築率ともリーグ15位と、能動的に攻撃権を持たないという特長を今年も継続しています。その割に、シュート成功率が11.5%と5位。全体的に攻撃系のデータが華々しくない一方、少ないチャンスを一発で仕留め切れるリアリズムを実践できたからこその優勝争いだったと思います。例年はセットプレーの依存度が高い印象がありますけど、昨年は突出したフィニッシュパターンがなく、まんべんなく様々な形で得点できていました。攻撃の特長は、なんと言ってもロングカウンターです。頻度は札幌と並び、他の追随を許さない圧倒的なリーグ1位。ショートカウンターの頻度もリーグ5位ですので、典型的なカウンタースタイルだと言えます。

守備に関しては、リトリートする分攻撃される頻度は高く、被攻撃回数は11位。被シュートも平均12.4の7位。ところが平均被ゴール数は0.8とリーグ2位の好成績です。攻められるけど最終局面で相手をいなすスタイルは、彰洋の安定感を含め、東京守備陣の特長だと思います。失点パターンのなかで、PKがゼロだったこととスルーパスが1本だけだったことからも、最終局面のゾーンに対する組織的なプレーのクオリティの高さがうかがえます。しっかり守ってカウンターというスタイルのベースとなるのが、いわゆるファストブレイク。攻守の切り替えをはやめるためにはチームのコンパクトネスが重要なポイントとなります。東京は縦横の合計値でリーグ1位。守備ではリスクとなるスペースを極力狭め、攻撃ではカウンターに繋げる中継点を常にトランジションポイントの近くに置くことで、強力な堅守速攻スタイルを築き上げました。

シーズン前半17試合の平均勝ち点2.12に対し、折り返し後は1.65。失速の要因は、独走する首位チームに対する各チームのロングカウンター対策が的確になってきたことにあると思います。ただ東京は、シーズン当初から、ロングカウンターがワンパターンにならない工夫を施してきました。それが建英です。東京のなかでの建英の役割は、ラストマッチの印象が強いのでフィニッシャーだと思っていたのですけど、データ上はドリブラーアタッカーでした。モリゲや洋次郎が放つ局面打開のロングフィードや慶悟のスルーパスが東京のロングカウンターをシュートまで持っていくための基本的な要素ですが、そこに本来は異質のドリブルを加えることで、ロングカウンターのなかにもアクセントが生れます。ドリブルは主にディエゴと謙佑が担いますけど、ダブルエースが相手のターゲットになるのは昨年ですでに学習済。そこに建英が一枚加わることで、相手のマークを分散することができ、攻撃の成功率につながったと思っています。ポスト建英は、たま、晃太郎、サンホが相手や状態によって分業しましたけど、主力はたま。たまはドリブラーというよりもシャドウフィニッシャーのタスクを担うことになるのですが、建英が有効性を証明してくれたのは、もしかするとフィニッシャーの一つ前の仕事だったかもしれません。

もう一つの事件がヒョンスです。建英在籍時の平均得点1.5に対し、ポスト建英は1.25。たしかにゴール数は落ちたのですけど、建英移籍直後に最も得点数が多い時期が来ましたから、クラブは上手にアジャストできたと言えるかもしれません。一方、ヒョンス移籍後は、平均失点が0.3増えています。守備の要のセンターバックがナショナルチームクラスからルーキーに変わったのですから、失点増とは言えエクスキューズの範囲内だろうと思います。マリノスが、ほぼチアゴ・マルチンスのおかげで優勝したことを考えると、センターバックの守備エリアの広さと1on1の強度はチームの不可欠な要素になってくるような気がしますので、モリゲとつよしのコンビは、2019年の半年間の経験を活かしてほしいと思います。

一般的に、建英とヒョンスの移籍が目立ちますから、逃げ切れなかった要因をそこに持ってくることもできると思いますけど、データは、攻守とも十分にアジャストできたことを示しています。あえて影響を問うとすると、実質の建英移籍直後(代表遠征で不在の第15~17節を含む)に連敗したことと、ヒョンス移籍直後の第19節川崎戦でシーズン最多タイの3失点を喫したことかなと思います。当時を振り返ると、ラグビーワールドカップの影響で中断期間がほぼ無かったこともあり、そろそろシーズンの疲れが出てくる時期で主力の不在が影響したこともありますけど、やはり山場の試合での集中力の持って行きかたに課題がありました。それが最も顕著に表れてしまったのが、ラスト三試合です。

心配されたアウェイ八連戦の影響は、連戦中ではなく連戦明けに訪れます。ひさびさのホーム味スタ帰還に、現場は期すべき想いが強かったと思います。結果的に第32節湘南戦が、東京らしさを見失ったまま相手の術中にはまってしまったことは周知のとおり。湘南戦のモリゲと第33節浦和戦の田川の起死回生ゴールはホントに興奮しましたけど、この時点で非常に苦しい立場になったことは周知のとおり。一方のマリノスは、東京のシーズンサマリーのアシンメトリーを描くように、第24節~第33節までの10試合を9勝1分の無敗で過ごし、勢いを得ていました。東京同様にシーズン中にあまじゅんと三好を失い、さらにエジガル・ジュニオの離脱もあり、八月の三連敗で失速しかけます。これに対し、エリキとマテウスを緊急補強する荒療治を敢行するあたり、さすが海外資本だなと思わせますけど、二人がどハマりしたのはラックの要素もあるでしょう。とはいえ、止め難いエネルギーがマリノスに生まれていたのは事実。東京とマリノスは、好対照なコンディションで最終決戦に臨みます。

東京がラスト三試合を逃げ切れなかった理由は何か。マリノスとの比較では、J1の優勝の鍵である後半戦の上積みの質です。東京のアジャストは、たまもジェソも短期間でフィットしてくれましたから、必要最小限ななかでも的確だったと思います。あえていうと、それでもやはり攻撃系で上積みがないと優勝できないということでしょう。その意味ではジャエルの無慈悲をついに発動しなかったことは、最終戦のエリキとマテウスのいきいきとした姿を見ると余計に、残した念の大きさを感じます。

ラスト三試合のうち勝負を決したのは最終戦ですけど、実質のターニングポイントは第32~33節でした。仮にどちらか一つでも勝っていたら、勝ち点1差の頂上決戦は、大量得点が義務付けられた現実とはまた別のテイストの試合になったかもしれません。東京本来のイデオロギーを発揮でき、超守備的vs超攻撃的のイデオロギー対決を観ることができたと思います。第32~33節で、いずれも下位の湘南と浦和に対し、作戦でイニシアチブを握られたことを振り返ると、重要な試合に臨む準備段階におけるスカウティングとアプローチに課題が残ったと思います。

それでも、ぼくらが好み、信じるサッカースタイルでも優勝する可能性があるという確信をぼくらにもたらしてくれたという意味で、2019年シーズンはとても意義深いシーズンだったと思います。イデオロギーは、ぼくらが東京を観るときの共通基準になるとともに、相手のスタイルを理解する指標にもなります。そのことが、東京をもっと愛し、サッカーをもっと好きになるきっかけになるといいなと思います。

2019年シーズンの東京が残した念は、いわば新たなる希望です。まだ見ぬ戴冠がそう遠くない未来になるよう、2020年もまた、応援していきたいと思います。


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