ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2020J1リーグ第3節FC東京vs川崎フロンターレ@味スタ20190708

2020-07-10 14:54:00 | FC東京

今節は、待ちに待ったホーム初戦。東京が味スタに帰ってきました。ホーム初戦にして、いきなりクラシコです。

東京はターンオーバー。シフトは4-2-3-1。GKは彰洋。CBはモリゲとつよし。SBは右に帆高左に諒也。CMは洋次郎とアル。WGは右に慶悟左にレアンドロ。トップ下は柊斗。1トップはディエゴです。

川崎はベストメンバーです。シフトは4-1-4-1。GKはソンリョン。CBは彰悟とジェジエウ。SBは右に山根左に登里。アンカーは碧。IHは右に脇坂左に大島。WGは右にアキ左に竜也。1トップはレアンドロ・ダミアンです。

結果は、前半の4失点を覆さず、ほぼ終止川崎ペースでの完敗でした。東京0-4川崎。

東京はイーブンを狙って試合に入りますけど、川崎が巧妙に自陣でスローペースを作ったため、オーガナイズ権は川崎に渡ります。東京は柏戦同様オプションを行使してリトリートモードに入りますけど、これが選択の誤りになりました。リトリートしつつもカウンターを狙ってフォアチェックをかかさないのが信条の東京にして、中盤も緩いゾーンにしてしまうと一方的な川崎ペースになるのは必定。次第に川崎は、アタッキングサードでのスペースメイクのクオリティを上げていきます。

もっとも東京は本来、たとえリトリートしたとしても5+4のコンパクトなゾーンを作り、粘りに粘るディフェンスを見せるのが近年のクラシコの風景でした。その点、ゾーンを作りつつも、川崎の動きに翻弄された今日は、各DFが状況をリアルタイムで確認できていなかったと言えるでしょう。最大の敗因は、ゴール前の守備で後手を引いてしまったことです。

中盤では、IHの動きを捕まえきれませんでした。ボールが左にある場合は脇坂が、右の場合は大島がトップ下のポジションに入る動きをカバーできませんでした。脇坂と大島にペナルティエリア前を自由に使われたことも敗因です。

もうひとつの敗因は、伝家の宝刀カウンターを自ら封じてしまったことです。今年は前線のトリデンテのアイデアに依存することがオリジナルプランのようですので、どうしてもトリデンテがボールを持ったときに時間がかかります。加えてトリデンテのコンビネーションもまだ確立されていないようですので、攻撃の形がみえてきません。逆にいうと、川崎がディエゴとレアンドロ、途中からトリデンテを上手くゾーンで封じたとも言えます。今日に関しては、フルリトリートするのであれば、シンプルなロングカウンターが有効だったのではないかと思います。

川崎は巧妙に試合を進めました。前半の4点は想定外だったにしろ、東京の反撃を上手くコントロールしていたといっていいでしょう。とくに後半の前半分は、東京にボールを持たせることでカウンターの動機を消していました。さすがにフルリトリートで45分は耐えられないとみると、後半の残りは本来のポゼッションで時間を経過させます。注目すべきはここで、前線のメンバーを総入れ替えしたとしてもポゼッション自体のクオリティはそれほど下がらないことです。同じトレーニングをしているので当然といえば当然ですけど、今の東京からトリデンテを除く場合を考えると、チームの総合力を感じずにはいられません。

完敗のなかにもちょっとだけ光明を。あえていうとターンオーバーした東京とベストメンバーの川崎。タイトスケジュールを乗りこなすのはどちらか。選手について。紺野は純粋ドリブラーだと思っていたのですけど、キラーパサーの素養もありそうです。柏戦はドリブルを完封されてましたけど、今日は成を走らせたり、カットインしてゴール前を伺ったりできていました。なにしろパスがコントローラブルかつ速い。有効に使えるようになると良いと思います。それからレアンドロ。もっとドリブルやシュートに積極的で良いと思います。アクセントになるのは間違いないのですけど、現状はチャンスメークの意識が高いようですね。でもトリデンテが全員シューターであるほうが脅威だと思います。

次節は昨秋苦渋をなめたマリノス。まだリベンジの体制が整っているとはいえないけど、現状でのベストを期待したいです。


2020J1リーグ第2節柏レイソルvsFC東京@日立台20200704

2020-07-10 14:40:29 | FC東京

いよいよJリーグ再開です。ひと足はやく、先週J2、3が開幕しました。J1は今週再開。まだ無観客ですけど、NPBの中継で無観客ならではの楽しみかたを覚えたので、あまり違和感はありません。

個人的に療養中のため10日以降の有観客試合には当分の間いけませんので、中継視聴の間は、通常とは違うショートの感想です。

東京は拳人がお休みです。シフトは4-1-4-1。GKは彰洋。CBはモリゲとつよし。SBは成と諒也。アンカーは洋次郎。IHは右に慶悟左に柊斗。WGは右にディエゴ左にレアンドロ。1トップはアダイウトンです。

柏はクリスティアーノと三原が不在。シフトは4-1-4-1です。GKはスンギュ。CBは次郎と染谷。SBは右に峻希左に古賀。アンカーはヒシャルジソン。IHは右に大谷左に江坂。WGは右にサヴィオ左に瀬川。1トップはオルンガです。

つよしの値千金を守り切って、開幕連勝です。

試合は、柏が攻め東京が守る展開で終始します。これは、柏が最終ラインを含めたポゼッションを高い位置で展開するため、フォアチェックのクリッピングポイントが定まはらなかったためです。クリスティアーノ不在の柏は誰が最終局面をコントロールするのか注目でした。序盤は流動的にポジション変更をする大谷と江坂を東京が捕まえ切れず、フリーになることが多かった江坂がチャンスメークをしていました。柏が勝つとしたら、この時間帯に攻め切るべきでした。

やがて柏のフレキシブルネスに慣れた東京は、ようするに見切ります。柏は確かに流動的ですけど、基本的にサイドアタックのスタイルです。大谷と江坂、ときおりヒシャルジソンが攻撃参加しても、ゾーンにおけるマークの受け渡しさえ安定させられれば、中央の混乱はありません。必然的に柏は、サイドからオルンガを狙うしか攻撃の手がなくなります。それでも、さしもののオルンガ。フリーでボールが入ればゴールの可能性が非常に高い選手です。そのオルンガを完封したモリゲは、MOMに値すると思います。

守備に関しては、柏のサイドエリアのポゼッションとオルンガのアタックに終始対応できていました。やっぱりクリスティアーノ不在は、柏にとって痛手でしたね。東京は、守備の不安がなければ攻撃なのですけど、今日は守備を重視することにしたのか、柏の攻撃を受けるため、フルリトリートを選択します。つまり、柏を自陣に引きずり込み、攻めても攻めても止められる泥沼にはめ込みます。東京は泥試合を選択します。

ただ、泥試合での得点の可能性は東京にとっても低く、タイミングの良いロングカウンターかセットプレー。今年は昨年と異なり、前線のブラジル人トリデンテのコンビネーシはョンに依存する闘いかたをオリジナルとしていますから、ロングカウンターができる要員がいても作戦上まだ成立していません。ですから残された可能性はセットプレー。その意味で、62分のCKにおいて、ファアで染谷と大谷に競り勝ったモリゲと、クイックに反応したつよしは称賛に値します。

そのCKの直前にヒシャルジソンが警告二つで退場します。これも泥試合の効果。ヒシャルジソン退場後は東京がイニシアチブを握ります。高い位置で包囲網を敷き、サイドの優位性を活かしてチャンスを伺います。逆に柏はカウンターのチャンスを得るわけですけど、東京の帰陣がはやく、相変わらずオルンガをカウンターで活かせませんでした。

チーム洗練度の高い相手に対して、早々泥試合を選択したことは、一見攻められながらも、試合を優位に進めることに寄与したと思います。スタッフの指示なのか現場の判断なのかわからないけど、勝利至上という意味では良い選択でした。一方で、泥試合を選択せざるを得なかったことは、勝利の陰にかくれて大きな課題だと思います。清水戦の課題は、中断の時間を経ても対策が目に見えません。トリデンテを活かす闘いかたを確認できませんでした。

いちおう、アダイウトンが中央から左、レアンドロが左から中央に流れボールを受けることで諒也、柊斗と絡みながらチャンスメーすることで、エースディエゴをフリーをする意図はみえますけど、形としてはそれのみ。昨年機能したロングカウンターや、レアンドロ、柊斗の単独ドリブルなど、もっと多彩な攻撃パターンがあって良いと思います。タイトなスケジュールなので例年のようにシーズン中にリセットする時がありません。はやく形をみせてくれることを願います。

次節はホーム初戦。いきなりクラシコ。洗練度の高い相手が続きます。ドキドキです。


2008J1リーグ第6節東京ヴェルディvsFC東京@味スタ20080412

2020-05-06 11:36:49 | FC東京

GW前半は好天が続いて、初夏の風が気持ちよかったですね。

DAZNさんが過去の名勝負の配信をはじめてくださって、できれば東京の試合をもっと多くみたいなと、ちょっと欲。名勝負といっても当然勝ったほうの記憶でして、東京の勝ち試合限定でお願いします。

本日は、東京ダービー。もはや直近のダービーがいつだったか記憶にないほどですけど、J1ではこの試合が最新です。東京、ヴェルディともこの年を新体制で臨んでいます。東京はヒロシ、ヴェルディは哲二さん。結果は明暗がはっきり分かれました。ヒロシ東京はリーグ6位。翌年のヤマザキナビスコ杯制覇につながる礎を作りました。一方ヴェルディはリーグ17位でJ2降格。以来再浮上はいまだに叶えていません。近年サポになったかたにとっては、ダービーというとむしろクラシコを想起されるでしょう。

東京の注目はなんといってもフジ。改めてみると、巨漢フッキやディエゴを向こうに回しても対人強度でそん色ない奇跡の配置です。布陣はいちおう4-3-2-1としておきます。GKは塩田。CBはフジと佐原。SBは右に徳永左に長友。アンカーは浅利。IHは右に梶山左に今野。WGは右に赤嶺左に羽生。1トップはカボレです。

ヴェルディは元磐田と元東京に生え抜きとブラジリアンを加えた寄せ集め感がある布陣です。シフトはスクウェアの4-4-2。GKは土肥。CBは土屋と那須。SBは右に和田左に服部。CMは福西とカンペー。メイヤは右に井上左にディエゴ。2トップはフッキとレアンドロです。

改めて第一次ヒロシ政権の闘いかたのおさらいです。標ぼうするは、ムービングフットボール。懐かしいですね。ヒロシはいわゆるオシムチルドレンではないですけど、もともと志向していたサッカースタイルが、オシムさんのメソッドによってヒロシのなかで具体化したのではないかと思っています。シフトを「いちおう」と前置いたのはそのためで、前線は非常に流動的です。カボレを軸にIH、SBを含めた、人数をかけたスタイルは超攻撃的です。この試合はまだシーズン序盤ということもあり、純粋なヒロシイズムを観ることができることも見どころのひとつだと思います。

シフトにおける特長は3センターです。のちにガーロさん、フィッカデンティさん、そして2020健太が挑戦しますけど、ヒロシの3センターは攻撃重視です。その意味では2020健太のテーマに近いかもしれません。梶山は基本的に前に出ずっぱり。今野はいくぶんバランサーですけど、行動範囲の広さを前後に活かし、頻繁に攻撃参加します。

流動性には選手の特質に合わせたルールがあるようです。カボレは前述した通り前線の軸でポスト役。赤嶺はカボレのフォロワー。羽生はいうまでもなくこのメソッドの肝で、今野と違い行動範囲を左右に広げます。肝というのは局面での数的優位の作り方です。羽生は時として赤嶺と同サイドに身をおき、数的優位の担い手となります。中央をぬめぬめと広範囲に浮遊する梶山はボールとプレイヤーをムーブするヒロシイズムの象徴。こうして前線が縦と横にスペースメイクすることによってできたサイドの攻撃ルートを、前線とは異なる超高速の直線的なムーブで徳永と長友が利用します。あらためて整理すると、とてもワクワクする闘いかただと思います。

ムービングフットボールのカテゴリーは、原則として東京伝統のファストブレイクです。ボールを動かすと表現すると遅攻を想起しますけど、まったくそんなことはありません。というわけで守備の基本スタイルは、フォアチェックを基調とします。中盤でのトランジションを攻撃の起点とする思考です。3センターのもう一つの意図は、中盤のトランジションポイントを増やすことです。このため運動量の高い今野と梶山を配置していると言っていいでしょう。

中盤のラインが突破された場合の守備網は、原則対人の厳しいコンタクトを前提とします。当時も今も脅威に感じるのは、繰り返しになりますけどフジ。CBに入ったフジは、当時のモニの発言に裏付けされインターセプター、つまりコンタクト前で勝負する印象が強かったのですけど、改めてみると、対人防御能力も非常に高いですね。本来SBですから当然といえば当然ですけど。もちろん高さにアドバンテージはないのですけど、ことヴェルディに関しては基本的に足元にこだわるチームですので、余計フジの特質が活きたのでしょう。

整理すると、超流動的+超高速がヒロシ東京のスタンスであるのに対し、ヴェルディはポリシーレスと言っていいでしょう。ヴェルディのストロングは言うまでもなく最前線のブラジリアントリデンテです。フッキ、ディエゴ、レアンドロは、のちにセレソンのレギュラーとなるフッキを除けば、個で勝負できるタレントではありません。なのでヴェルディのトリデンテはストロングでありウィークポイントでもある、表裏一体の危ういものです。ですから、いかにトリデンテを気持ちよく連携させるかが鍵になります。

そのためには、トリデンテを可能な限りペナルティエリア内で連携させるお膳立ての質が、勝敗の分岐点になると思います。なので、まずイニシアチブを握ることが大前提。ヴェルディのそのための工夫は二つ。一つ目は中盤での優位性の確保です。若いカンペーの隣に経験豊富なさわやかヤクザを配置するのはそのため。そうしてボール確保に成功すると、縦のコンパクトネスを保ったまま最終ラインを押し上げ、包囲網を築くのは二つ目の工夫です。和田と服部をサイドに配置することで、トリデンテと絡む、もしくは中央のトリデンテにパスを供給できるようになります。

序盤は、ロングフィードの蹴り合いによる主導権争いの末、ベテランの多い老獪なヴェルディの技と気迫がホームダービーの雰囲気にマッチし、東京の中盤を圧倒します。くだんのヴェルディの基本プランが発動し、ペナルティエリア内でトリデンテが気持ちよくプレーします。なかでもやっぱりフッキ。集中力が高いだけでなく、トリデンテ間のボールによるコミュニケーションも円滑で、ディエゴとレアンドロに任せるところは任せられていました。ただし、フッキに対しフジが密着マークすることで自由を制限していたことは、後々の伏線になっていきます。

想像に難くないことだとは思いますけど、ノリノリの状態は結果が伴わない限り長続きはしません。きっかけは中盤のバランスです。中盤が二枚のヴェルディに対し東京は三枚。数的優位に加えて、日本代表今野、職人社員浅利、全盛期の梶山を擁しているわけですから、ボール確保のタレントでも総合的に東京が上回ります。このためヴェルディの重心が下がりはじめます。こうなると有するプランが極端に少ない、てか一つしかないヴェルディに術はありません。

ただ、こと攻撃に関しては、起点として頼むカボレが土屋と那須のマークに苦しみます。ここでは逆に1トップの数的不利が働いていました。ポストが収まらない限り超流動的超高速ムービングフットボールは機能しません。そして前半終了を目前に、セレソンが覚醒します。

43分。ディエゴの右FK。ディエゴが小さく出したボールを、フッキがゴール左隅に決めました。ヴェルディ1-0東京。

前半はビハインドのまま終了。

後半からヒロシが少しアジャストします。これが機能します。赤嶺をトップに上げてシフト4-3-1-2に変更します。明確なシフト変更というよりか、赤嶺のタスクを中央寄り固定にマイナーアジャストしたといった方がいいかもしれませんね。これでポスト役が分散します。加えて、カボレをポスト時に少し下がり気味にします。土屋と那須との距離を取ることで、ポストが安定するようになります。このため、ポストの拾い役であり攻撃ルートのかじ取り役である梶山と今野の位置が上がり、ショートパスのテンポが良くなります。さらに、カボレが前を向いて勝負できるシチュエーションもできはじめ、カボレ本来のタレントである超高速ドリブルアタックが観られるようになります。

ムービングフットボールの下地ができたところでヒロシが動きます。浅利に代えて洋平をトップ下に投入します。梶山がアンカー、羽生が左IHに回ります。そしてさっそく奏功します。

62分。塩田のスローインから。センターライン付近で、服部からディエゴへの縦パスを徳永が寄せてトランジションに成功します。徳永は前方からフォローにきた洋平に渡します。洋平はフリーでドリブル開始。カウンターの発動です。洋平は服部とカンペーをひきつけ、右ライン際に開いたカボレにパス。ルックアップしたカボレは、中央バイタルエリアでフリーの赤嶺に送ります。さらに赤嶺は上がってきた羽生に落とします。羽生はタイミングをはかって右足ダイレクトで合わせました。よどみなく流れるようなカウンターからのゴラッソ。ヴェルディ1-1東京。

イーブンになった直後に哲二さんが動きます。井上に代えて晃誠を同じく右メイヤに投入します。井上はほぼ存在感がなかったので、テイストを変える意図だと思います。

ヒロシも動きます。羽生に代えて浄を同じく左メイヤに投入します。羽生のコンディションを考慮した予定調和です。ヒロシと哲二さんの作戦変更の応酬をみても、作戦の幅を前提に、東京が完全にオーガナイズ権を握っていることがわかります。

ヒロシがさらにたたみ掛けます。赤嶺に代えて相太をトップに投入します。赤嶺のコンディションを考慮したのだと思いますけど、ポストの安定も意識したのだと思います。ところがこの作戦は逆効果になります。赤嶺の広範囲なムービングにより超流動的超高速サッカーを下支えしていましたけど、相太に代えることで高速性を失います。おそらくヴェルディの重心が下がってきていたので、高速カウンターからポゼッションへ状況が変わると読んだのでしょう。いずれにしろ、東京の攻撃の威力が落ち着きます。

東京の攻撃が落ち着いたため試合が拮抗するようになりますけど、依然ヴェルディの重心は低空のまま。このためトリデンテはペナルティエリアに入ることができません。お膳立てもないので、ブラジリアン個々の散発な攻撃が目立つようになります。たしかにフッキやディエゴのシュートは威力があるのですけど、ペナルティエリア外から威力を活かせるわけではありません。やがてフッキやレアンドロが苛立ちをみせるようになります。

そこで哲二さんが動きます。レアンドロに代えて平本を同じくトップに投入します。トリデンテのメンタルの影響を考慮したのだと思います。でも唯一絶対なストロングを失っては、もはやヴェルディは再燃の火を起こすことはできません。極限まで重心が下がったヴェルディに対し包囲網をかける東京は、ようやく相太投入の効果を得られる状況を作り出すことに成功します。そして最終盤、ドラマが発動します。

89分。徳永の自陣のスローインから始まったショートパスの連携が実を結びます。梶山を軸にしたタベーラで右から左に攻撃ルートが変わります。今度は相太を軸にしたタベーラで、長友がゴール前に入ります。これが伏線になります。ボールはペナルティエリア左の浄へ。浄は背後に入った梶山に戻します。ルックアップした梶山はクロス。狙いは中央の今野。今野は冷静に、服部と那須がマークについていたためシュートからパスに切り替えます。落としたところにいたのは長友でした。長友は土肥と交錯しながら胸トラップ。これを和田がクリアしようとしますけど、ボールはゴールへ。ヴェルディ1-2東京。

最後はフッキの退場のおまけつきで、このまま試合終了。ヴェルディ1-2東京。

方向性が明確でかつそれを実践できる編成を施したチームと、方向性をまったく垣間見られないチームの対戦は、その後の彼我の差を象徴する試合でした。アイロニーを込めて名勝負といっていいと思います。

その後ヒロシと東京は、いろいろあって袂をわかつわけですけど、今も共にリーグに華を添え続けています。今年もヒロシ広島との名勝負を期待したいと思います。


2006J1リーグ第30節FC東京vs川崎フロンターレ@味スタ20061111

2020-04-19 11:41:36 | FC東京

予定通りのスケジュールなら、第9節湘南戦が終わってシーズン序盤の構図が見えてくる時期です。ACLのリーグ戦も半分を消化して、トーナメントへの行方が見えてくる頃。でも現実はStayHomeが続いています。再開の目途がまるで見えてこないなか、東京への想いがつのるばかり。新型コロナの情報ばかりがあふれるなか、皆様こころがお疲れではないですか?

今日は、ちょっとばかりヒストリカルな試合を振り返ります。オールドファンはいつでも記憶の抽斗から取り出せる伝説の大逆転劇、2006年第30節多摩川クラシコです。近年ファンになったかたですと2012年の最終戦仙台戦(もう近年でもないですね)、ネマニャンのマルセイユ式ルーレットよりも遥かに魂が躍動する試合です。ちなみに川崎は、3年後の11月3日にヤマザキナビスコカップを争う間柄であり、その後はご存じの通り、多摩川の覇権を競う永遠のライバルになります。

この年は、新任のアレッシャンドロ・ガーロさんが折り返しで解任され、倉又さんがシーズン後半戦の指揮をとることになりました。結果的にJ1残留を果たしましたし、印象的なゴレアーダも3試合あり、記憶のなかではわりと楽しかった覚えがあります。でも実際は前半戦をひきずって苦しんでいました。倉又さん就任後の総成績は7勝1分9敗勝率.412と、ガーロ政権(.353)を少し上回ります。就任直後に連勝しながらも、その後六連敗。残留へのターニングポイントとなったのは、0-2から最終盤に大逆転した第28節のホームガンバ戦です。それ以降の勝率は.571。

ガーロ政権との闘い方の相違の総括は控えます。顕著な差は得点力です。総得点31点は、ガーロ政権より7ポイント、平均得点でも0.35上回ります(1.82)。その分というか総失点も増えていて、平均で0.65増えました(2.24)。堅守優先のガーロさんに対し得点力アップを目指した倉又さんという構図のイメージが浮かびます。

さて試合は、ご存じの通りお祭り騒ぎになりました。結果を知っておきながら、アディショナルタイムの6分間は今みても心震わされます。ガッツポーズと雄叫び不可避。

東京は、倉又さんが就任以降、日替わりオーダーです。とくにCBが定まりません。この日は茂庭もジャーンも不在の急造布陣。さらに3年目の梶山がスターターに入りました。シフトは4-2-3-1とも4-1-4-1とも。GKは土肥。CBは伊野波とまっすー。SBは右に徳永左にフジ。CMは縦陣形で今野が後ろ梶山が前。WGは右にナオ左に戸田。トップ下は憂太。1トップはルーカスです。オプションは、しお、のりお、文丈、宮沢、信男、阿部、そしてこの秋に帰国した相太。

川崎のシフトは3-4-1-2。GKは吉原。川崎山脈は右から箕輪、寺田、宏樹。WBは右に森左にマルコン。CMは憲剛と谷口。トップ下はマギヌン。2トップはジュニと我那覇です。

試合は、互いにイーブンな攻防のなか、早々動きます。

7分。マギヌンの右FK。川崎は3+3の二列横陣です。東京はニアにストーン2枚置いたマンマーク。マギヌンは、後列ファア側から東京のマークをぬって中央に入る寺田に合わせます。このクロスはゴール側に寄り過ぎ、土肥が左手でクリア。これがバーに当たって戻りますけど、それも土肥がクリア。でも不運なことに、クリアボールは谷口の正面に飛びます。谷口は頭で合わせるだけ。東京0-1川崎。

マンマークのはずが全体的に甘く、ボールウォチャーになっていて中途半端なゾーンのような形に陥っていました。最後の谷口も梶山のマークミスです。でも、クロスがゴール近くに飛んでいたこともあり、アクシデントですね。

東京の攻撃は、今に至る伝統のサイドアタック基調です。タレントの相違で、左右アシンメトリーです。右はのちのレジェンドナオですから、ボールを持って比較的自由にアタックします。本来の縦の韋駄天スプリントとドリブルに加えて、ヒロミ体制下で身につけレジェンドの階段を駆け上がる要因となったカットインで仕掛けます。これに徳永が労を惜しまないタイミングの良いオーバーラップで加わり、攻撃に厚みを加えます。一方の戸田は本来は最前線のアタッカーですから、ルーカスの動きに連動してゴール前に顔を出すのが役割。Mr.東京フジは基本的にディフェンス基調で戸田と絡むことがほとんどないので、左はルーカスや憂太が基点として使うフリースペースになっています。このため、タイミングの良い右の仕掛けを狙い、試合を組み立てるというよりか、はやい展開を旨としています。ただ当時は最前線になんでもできる大黒柱のルーカスがいましたから、ルーカスを基軸に戸田、ナオ、憂太が絡む、手数をかけない高速ポゼッションをペナルティエリア内で仕掛ける中央突破もバリエーションに入っていました。

一方、川崎は、今のスタイルを予感すらできない闘いかたを基調としていました。川崎山脈による堅守をベースに、縦にはやい構成から、最前線の個人判断でフィニッシュに至る、カウンタースタイルです。オールドファンにとっては、おそらく川崎サポを含め、どちらかというと川崎のイメージはこの時代のスタイルがいまだに印象深いと思います。構成は基本的にすべて憲剛を経由します。憲剛の展開力によって、アタッキングサードで最前線がフリーで仕掛けられる状況を作ります。攻撃の構成における最終形態がアタッカーに委ねられていますから、場合によっては川崎山脈から直接最前線につけるルートも確保されています。

当時の川崎の主戦は、いうまでもなく川崎の伝説ジュニ。ペナルティエリアでジュニがボールを持ちさえすれば、守備網があろうが無かろうがなんとできなります。それに、同様に打開力とスプリントのタレントを持っているマギヌンを加えることで、アタックルートを分散することができるのが川崎の強み。

守備的なイメージが強い関塚川崎ですけど、振り返ってみると案外攻撃的です。特長はサイドにあります。森、マルコンとも非常に高く位置取ります。憲剛、ジュニ、マギヌンとボールを持てる選手が中央にいますし、そもそも山脈が後ろに控えていますから、安心して攻撃荷重にできていたのだろうと思います。この試合が、近年のクラシコではおよそ観られないオープンファイトになったのは、川崎の攻撃ポリシーに所以しているのだろうと思います。サイドを開けてでも攻撃に厚みを加えたい川崎と、サイドアタック基調の東京。噛み合わないわけがありません。ただ、WBの背後を狙われるのは予定調和の川崎は、箕輪と宏樹が左右に立ちふさがり、バランスを崩すまでは安定した闘いを見せていました。

激しいどつきあいとなったこの後の展開を予感させる同点ゴールは、時をおかず、ルーカスの徳永への縦パスを発端にした東京の逆襲により生まれました。

14分。憂太の右CKは寺田がクリア。これがふたたび憂太に渡ってリセットされます。川崎はマークの再確認の最中。憂太は、ゴール正面、森がついたためマッチアップのギャップができていた戸田を狙います。でもこれは吉原がクリア。高く上がったボールの落下点にはルーカスがいました。ルーカスはヘッドで叩き込みます。東京1-1川崎。

直後に突き放されます。

17分。マルコンのスローインから。マルコンはロングスローを、ラインの裏に走りこむ谷口に送ります。一気にアタッキングサードに入ります。この時ゴール前は伊野波、まっすー、フジが揃っているのに対し、川崎はジュニと我那覇の数的優位な3on2。我那覇が良い動きをみせます。一度ファア側に走ってフジの視界から消え、急転フジの前に出ます。これで数的優位は解消。谷口はゴールライン際でクロス。我那覇はフリーで、右足で合わせました。東京1-2川崎。

マルコンのロングスローと谷口のスプリントを考慮できなかった集中のミスです。遠まわしにみると、守備陣の個々の守備技術不足に加え、布陣が不安定だったため連携ができていなかったことが要因だろうと思います。

守備スタイルに関しては、東京、川崎ともセットを重視したリトリートスタイルです。川崎のポゼッション位置が低い場合に限り、東京はフォアチェックを見せます。現在の東京の代名詞であるアグレッシブなフォアチェックスタイルはフィッカデンティ政権で確立されたものですから、このあたりはノスタルジックですね。前述した通り、急造のCBコンビはジュニとマギヌンの対応に加え、二人をフリーにすべくスペースメイクとコンタクトを挑む我那覇の対応にも苦労します。この試合以降も布陣は不安定ですけど、伊野波とまっすーが並ぶことは二度と無かったことを考えると、結果として4失点は妥当なんだろうと思います。

誰しもが思うことでしょうけど、それにしても今野がいなかったら4失点では済まなかったでしょうし、大逆転も有り得なかったでしょう。今日の今野は、ただでさえ守備に不安要素があるなか、蛮勇気味の超攻撃的布陣で一枚アンカーを勤めていました。ジュニとマギヌンをして中央で基点になるシーンが少ないのはすべて今野のおかげです。最終的にヒーローになる今野ですけど、攻守に縦横無尽の活躍をみせたプレーに対する、サッカーの神様のご褒美なのでしょう。文句なくMOMです。

前半は攻撃がノッキングを起こすシーンが頻発します。起因は、実質2シャドウを担った憂太と梶山です。憂太は、残念ながら期間は短かったけど最も輝いていた時期です。今日も運動量が多く、スペースメイクも巧みで、良いポジションでフリーになることができていたのですけど、前線との連携が繋がりません。イメージの共有ができていなかった理由はもちろん川崎山脈が一番なのですけど、憂太のポジションが特質に対し低かったせいだと思います。憂太と梶山が被ることはなかったのでそこはケアできていたのだと思います。梶山に関しては、代名詞ぬめぬめプレーはまだ未満で、ダブルチームを仕掛けられるとボールロストを頻発します。

それでも、サイドアタックに中央の仕掛けをアクセントしたい東京と、安定した山脈からの高速カウンターで狙いたい川崎の双方とも、互いにやりたいサッカーができるようになってきました。前半の彼我をわけたのは、攻撃の基点である憂太+梶山と憲剛のポジショニングだろうと思います。

42分。川崎から自陣深くでトランジションした東京は、今野とナオのパス交換で川崎陣に入り込みます。ここで今野がマルコンにボールロスト。マルコンは対峙した梶山を振り切り、クロスカウンター。一気に東京陣に入ります。この時ジュニはまだ、センターサークル付近でハブになるためステイしていました。マルコンはまっすーの脇をぬけるマギヌンにスルー。アタッキングサードに入ります。東京が下がり基調で守備陣形を整えるその瞬間に、マギヌンがクロス。狙いは、中盤から長躯上がってきたジュニでした。ジュニは走り込みながら右足ダイレクトで合わせます。ゴラッソ。東京1-3川崎。

前半はリードされたまま終了ですけど、点差ほどのギャップは、守備面とゲームメーカー以外は感じませんでした。

後半開始早々、追加点を奪われます。

49分。吉原のロングクリアがラインを上げた東京守備陣の背後に落ちます。そこに入りこんだのはマギヌンでした。カウンター発動。マギヌンはドリブルでペナルティエリアに入り、右足トゥーシュート。ころころとゴールインします。東京1-4川崎。

川崎はこれで、アタッカートリデンテが全員ゴールしてノリノリになります。好事魔多し。実質のターニングポイントは数分後に迎えますけど、本質的には、チーム全体が浮足立つことになったこの4点目が岐路だったろうと思います。直後に、反撃ののろしが上がります。

51分。憂太の川崎陣深くの左FK。川崎がマークを確認している隙をつき、憂太はクイックリスタート。これに戸田が反応します。戸田はどフリーで左足インサイドで合わせました。東京2-4川崎。

川崎の先制点と試合を決めた気になった4点目の直後にいずれもゴールを返せたことは、後の展開に影響したと思います。本来は警戒心を持たなければならない状況下、川崎は攻撃姿勢を変えません。もしかすると前線と守備陣で意識ギャップが起こっていたのかもしれませんね。そうだとするとマネジメントの問題でもあります。

そして直後にアクシデント起きます。ジュニがシミュレーションで二枚目の警告を受け、退場。川崎は3-4-1-1で対応します。アタッカーがいなくなっただけで大勢には影響しないと思われましたけど、これで流れが一気に変わります。

倉又さんは試合の流れを見逃しません。ナオに代えてのりおを左WBに投入します。同時にシフトを3-4-1-2に変更します。フジがリベロでまっすー右伊野波が左。戸田がトップに入ります。

東京はサイドを重視します。戸田がサイドにはりつき徳永と絡みます。徳永の積極的な攻撃参加が目立つようになります。のりおには憂太が連携することで、のりおがアタッキングサードで自由を得られます。サイドの厚みが増し、活性化します。

倉又さんの仕掛けに対し、川崎は大混乱します。数的不利は必ずしも展開上の不利にはなりません。むしろ闘いかたがカウンターに整理され、連携が良くなる場合もあります。でも今日の川崎にはアジャストの余裕がありませんでした。カウンターに移行できず、守備に専念するようになります。WBが最終ラインに張り付き、実質前線は我那覇とマギヌンのみ。しかもカウンターを仕掛ける意思統一もできておらず、ボールを持てても持て余すだけになります。

川崎の両WBが下がることで中盤にスペースができ、憂太と梶山が高い位置で前を向いてボールを持てるようになります。ようやく今日の布陣のポイントであった2シャドウが活きるようになります。さらに川崎に攻撃意欲が無いため、伊野波も攻撃参加するようになります。東京の波状攻撃の準備が整いました。

そこで倉又さんが動きます。梶山に代えて宮沢を同じくCMに投入します。同時にまっすーと伊野波のポジションを入れ替えます。宮沢を起点にして左右の攻撃ルートを確保するとともに、今野を前に出し、左サイドの攻撃に絡ませる意図です。さらに右の厚みも左と等配分するために、攻撃参加できる伊野波を右に回したのだと思います。

ピッチ上のアジャストができずほぼハーフサイドマッチになってきたのを見た関塚さんが動きます。マギヌンに代えて佐原をリベロに投入します。寺田が一枚上がって谷口と並び、憲剛がトップ下に入ります。攻撃の基点を前に置くことで、安心と勇気をチームに呼び覚ます意図だろうと思います。

ここで倉又さんの勝負師の感性が発動します。直後に動きます。戸田に代わって相太が同じくトップに入ります。関塚さんがチームを安定させようとしたのを阻止する意図です。最前線のターゲットが二枚になったことで、ますます東京の攻撃が安定します。関塚さんの対策が霧散しました。

打ち手のない関塚さんが動きます。我那覇に代えてテセを同じくトップに投入します。前線をリフレッシュしてボールを持てる機会を増やす意図だと思います。でも、相変わらず中盤以降に攻撃意欲がないのでコンセンサスがとれません。

東京はさらに攻撃の威力を増します。伊野波と憂太がサイドに開いて基点になります。これにより、徳永とのりおをペナルティエリア内に進入させることに成功します。中央にルーカス、相太、徳永、のりおと揃い、ボールが収まればゴールできる状況を整えます。そしていよいよ、祭りが発動します。

83分。攻撃失敗後の川崎のカウンターを未然に防ぎ、今野、憂太、フジでボールをキープ。フジから、左サイドでフリーの今野にボールが渡ります。今野はルックアップ。この時ゴール前は、ニアのルーカスに佐原、ファアの相太にマルコンがついていますが、いずれも東京が先手をとってます。今野の狙いはルーカス。これは吉原がクリアしますけど、こぼれたボールはのりおの目の前に。のりおは相太にヘッドパス。近くにいた宏樹が気づきますが時すでに遅し。フリーの相太は首を振って流し込みました。東京3-4川崎。

直後にふたたび川崎にアクシデントです。マルコンがアンフェア行為により退場します。関塚さんは谷口に代えて井川を左WBに投入して対応します。シフトは憲剛が下がって3-4-1。

もはやしに体となった川崎に対し、東京の猛攻が襲い掛かります。そしてドラマチックなアディショナルタイムに入ります。

後半アディショナルタイム+1分。センターライン付近で今野のパスを受けたフジがルックアップ。前線にままよどうにかなりまっしゃろロングクロスを送ります。これを憲剛を背負った相太が合わせますけど、イーブンボールになります。拾った佐原がクリアを試みますけどミートせず、ゆるゆるとこぼれたボールにのりおがアタック。残念ながらシュートは右足でノリカルは発動しませんけど、スライスしたボールがファア側にどフリーでいた宮沢への絶妙なクロスになります。宮沢はヘッドで合わせるだけ。東京4-4川崎。

ついに追いつきました。東京は勢いのまま、川崎をねじ伏せようと遮二無二挑みます。そして祭りは大団円を迎えます。

後半アディショナルタイム+6分。再三のアーリークロスが跳ね返され続けた焦燥感のなか。こぼれ球を拾った徳永は、中央やや左寄りにいた今野にパス。ゴールまで約30m強。ルックアップした今野は、残り時間を考えて覚悟を決めます。ワントラップでボールをおさめ、コースを見定め、落ち着いたグラウンダーショットを放ちます。威力のあるシュートは憲剛と箕輪をすり抜け、ゴール右隅に決まりました。東京5-4川崎。

あの時の沸騰した味の素スタジアムを想い出すと今でも興奮しますし、感動の涙が出てきます。実質、これがラストプレーになりました。東京5-4川崎。

一般にサッカーの試合はそれほど点が入るわけではありません。ゴレアーダは年に一回あれば良い方。まして血沸き肉躍る試合を目撃する機会なんて、長く東京を観てきても数えるほどです。そのためぼくらは、客観的にみればストイックにも、勝利やゴール以外にも喜びをみいだし、スタジアムに足を運び続けています。でも確実に、ほんの限られた機会だけどドラマチックな試合を目撃した経験を糧に、サポを続けられるのだろうと思います。

たまたま手元にメディアがあったのでこの試合をチョイスしたのですけど、東京サポひとり一人のフェイバリットは区々だと思います。しばらく東京を観られない状況が続きますから、もし権利面等々をクリアできるのであれば、東京公式さんもしくはTOKYO MXさんあたりでヒストリカルマッチの配信をしていただけると、とても嬉しいです。できればその際、サポの人気投票などしたりなんかしちゃって。


FC東京2019シーズンレビュー

2020-01-12 15:50:41 | FC東京

新年あけましておめでとうございます。今年もぽちごやブログをどうぞよろしくお願いします。

今年も新年を迎えるにあたり、昨シーズンを振り返ってみたいと思います。

個人的に、昨シーズンの感想を一語で表すと、「残念」。unfortunateやdisappointmentではなく、むしろ希望の想いを込めた、文字通りの念が残るシーズンでした。Jリーグ史上最多、6万4千人もの観客を集めた最終決戦に当事者として参加できて、誇らしい気持ちでいっぱいです。サポ人生ではじめて、一年通して期待と緊張感を持てたシーズンでしたから大満足ですし、東京には感謝の気持ちしかありません。

優勝争いとは別に、2019シーズンの東京は、ぼくらにかつてない価値を届けてくれました。それは東京独自のイデオロギーです。商業サッカーにはトレンドという波があり、その波長のゆらぎのなかで限られた自由が与えられているスポーツです。でもそれは、短期的なコンペティションを重視するあまりフレームワークに准ずるが故の、自発的な束縛に過ぎません。本来サッカーはもっと多様性を持っていて、各個人に独自のサッカー感があるはずです。そして、それを共有する集団のなかにイデオロギーが生まれます。東京はついにその域に達しました。

日本文化は調和の文化ですから、安定を好みます。安定を実現するフレームワークに依存する傾向が他国よりも強く、それはサッカーにおいても同様です。1993年にはじまったJリーグは、長きに渡った揺籃期を経て、2011年の柏の優勝により、フレームワークが覇権を取る時代に入ります。そこでフレームワークを生んだエポックメイカーは、ネルシーニョさん、ミシャさん、そして風間さん。柏時代のネルシーニョさんを除きエポックメイカー自身が成果を見ることはなく、タイトルを取ったのは彼らのロジックを継承したアレンジャーです。そうしてオリジナルのロジックはフレームワークとして汎用化されます。

でもフレームワークは、それを活用する人の本来のサッカー感を表現するものではありません。むしろそれを封印します。ようするに模倣。フレームワークのエネルギーは有限ですから、それが尽きると表舞台から降りざるを得なくなります。模倣者たちは新たなフレームワークを探せば良いのだけど、サポはそうはいきません。照る日も曇る日も、病めるときも富むときも、ただ従順に応援しますから。だからフレームワークに准じ過ぎるチームのサポは、風にたゆたう葦のようなものです。そんな風にずっと受け身だったサポに矜持を与えてくれるのが、イデオロギーです。サッカー界のトレンドがどんなに変わろうとも、おらが道を歩み続けられる幸せは、非常に強固な信心を生みます。教徒は強い。

ぼくらは、不思議なことにクラブが望み導いたわけでもないのに、そしてぼくら自身が欲したわけでもないのに、いつの間にかイデオロギーを持つことができました。FC東京のサッカースタイルは?と問われたら、ほぼ100%の東京サポが同じ答えをするでしょうし、それは個人のサッカー感と完全に一致するでしょう。それを証明するのが、アンチテーゼです。今シーズンは、東京のサッカースタイルを他サポから「面白くない」と否定され続けました。そのことが、ぼくらのなかのイデオロギーを確信に至らしめました。ぼくらは声を大にして宣言します。「東京が好きなだけじゃなく、東京のサッカーが好きです」と。

2019年シーズンの特長は、明確なイデオロギーを確立できたチームが覇権を争ったことです。それも、NとSのごとく対極のイデオロギーの対決でした。このことがシーズン終盤のドラマを演出しましたし、結果的にJリーグ史上最多観客の要因となったのではないかと思います。超守備的、ロングカウンター、中央突破に偏重した東京と、超攻撃的、ショートカウンター、サイドアタックに偏重したマリノス。ちなみに2019年シーズンで、最もサッカーのクオリティが高かったのは川崎と名古屋です。攻守とも能動的で、データ上はチャンピオン。でも現実は、あえて逆方向にエッジを効かせたチームが成果を上げました。東京とマリノスに共通項を見出すとすると、キーワードは個性的でリアリスティックな超高速カウンターです。もしかするとこれからは、独自のスタイルを貫く個性的なチームが増え、かつ上位に名を連ねる時代が来るのかもしれません。ぼくは、そこにこそ、Jリーグ100年構想の目的地の入り口が示されているんじゃないかと思っています。

では、2019年シーズンの流れを振り返ってみましょう。トータルの成績は、19勝7分8敗勝ち点64。2位。もちろん歴代最高成績です。開幕から12戦無敗。9勝3分という最高のかたちでシーズンインしました。建英、ヒョンスという主力の相次ぐ移籍を経験した夏場を6勝3敗で勝ち越すだけでなく、16得点(平均1.8)と攻撃力が花を開きます。そして、今シーズンを象徴するアウェイ八連戦を4勝2分2敗でしのぎ切り、首位でラスト三試合を迎えます。でもここから、積み重ねてきたものが一気に崩れ、0勝2分1敗。4点差勝利が条件の最終頂上決戦でマリノスに敗れ、2020年に念を残しました。

シーズンをサマライズすると大方の印象通りで、前半の大貯金を上手に使いながら、主力の移籍を補強とルーキーの活躍でどうにかこうにか凌いで、ホーム帰還後の捲土重来を期すラスト三試合で逃げ切るシナリオをほぼ達成しかけていました。チームスタイルとしては、ボールポゼッションはリーグ14位の45.6%。シュートアテンプト、チャンス構築率ともリーグ15位と、能動的に攻撃権を持たないという特長を今年も継続しています。その割に、シュート成功率が11.5%と5位。全体的に攻撃系のデータが華々しくない一方、少ないチャンスを一発で仕留め切れるリアリズムを実践できたからこその優勝争いだったと思います。例年はセットプレーの依存度が高い印象がありますけど、昨年は突出したフィニッシュパターンがなく、まんべんなく様々な形で得点できていました。攻撃の特長は、なんと言ってもロングカウンターです。頻度は札幌と並び、他の追随を許さない圧倒的なリーグ1位。ショートカウンターの頻度もリーグ5位ですので、典型的なカウンタースタイルだと言えます。

守備に関しては、リトリートする分攻撃される頻度は高く、被攻撃回数は11位。被シュートも平均12.4の7位。ところが平均被ゴール数は0.8とリーグ2位の好成績です。攻められるけど最終局面で相手をいなすスタイルは、彰洋の安定感を含め、東京守備陣の特長だと思います。失点パターンのなかで、PKがゼロだったこととスルーパスが1本だけだったことからも、最終局面のゾーンに対する組織的なプレーのクオリティの高さがうかがえます。しっかり守ってカウンターというスタイルのベースとなるのが、いわゆるファストブレイク。攻守の切り替えをはやめるためにはチームのコンパクトネスが重要なポイントとなります。東京は縦横の合計値でリーグ1位。守備ではリスクとなるスペースを極力狭め、攻撃ではカウンターに繋げる中継点を常にトランジションポイントの近くに置くことで、強力な堅守速攻スタイルを築き上げました。

シーズン前半17試合の平均勝ち点2.12に対し、折り返し後は1.65。失速の要因は、独走する首位チームに対する各チームのロングカウンター対策が的確になってきたことにあると思います。ただ東京は、シーズン当初から、ロングカウンターがワンパターンにならない工夫を施してきました。それが建英です。東京のなかでの建英の役割は、ラストマッチの印象が強いのでフィニッシャーだと思っていたのですけど、データ上はドリブラーアタッカーでした。モリゲや洋次郎が放つ局面打開のロングフィードや慶悟のスルーパスが東京のロングカウンターをシュートまで持っていくための基本的な要素ですが、そこに本来は異質のドリブルを加えることで、ロングカウンターのなかにもアクセントが生れます。ドリブルは主にディエゴと謙佑が担いますけど、ダブルエースが相手のターゲットになるのは昨年ですでに学習済。そこに建英が一枚加わることで、相手のマークを分散することができ、攻撃の成功率につながったと思っています。ポスト建英は、たま、晃太郎、サンホが相手や状態によって分業しましたけど、主力はたま。たまはドリブラーというよりもシャドウフィニッシャーのタスクを担うことになるのですが、建英が有効性を証明してくれたのは、もしかするとフィニッシャーの一つ前の仕事だったかもしれません。

もう一つの事件がヒョンスです。建英在籍時の平均得点1.5に対し、ポスト建英は1.25。たしかにゴール数は落ちたのですけど、建英移籍直後に最も得点数が多い時期が来ましたから、クラブは上手にアジャストできたと言えるかもしれません。一方、ヒョンス移籍後は、平均失点が0.3増えています。守備の要のセンターバックがナショナルチームクラスからルーキーに変わったのですから、失点増とは言えエクスキューズの範囲内だろうと思います。マリノスが、ほぼチアゴ・マルチンスのおかげで優勝したことを考えると、センターバックの守備エリアの広さと1on1の強度はチームの不可欠な要素になってくるような気がしますので、モリゲとつよしのコンビは、2019年の半年間の経験を活かしてほしいと思います。

一般的に、建英とヒョンスの移籍が目立ちますから、逃げ切れなかった要因をそこに持ってくることもできると思いますけど、データは、攻守とも十分にアジャストできたことを示しています。あえて影響を問うとすると、実質の建英移籍直後(代表遠征で不在の第15~17節を含む)に連敗したことと、ヒョンス移籍直後の第19節川崎戦でシーズン最多タイの3失点を喫したことかなと思います。当時を振り返ると、ラグビーワールドカップの影響で中断期間がほぼ無かったこともあり、そろそろシーズンの疲れが出てくる時期で主力の不在が影響したこともありますけど、やはり山場の試合での集中力の持って行きかたに課題がありました。それが最も顕著に表れてしまったのが、ラスト三試合です。

心配されたアウェイ八連戦の影響は、連戦中ではなく連戦明けに訪れます。ひさびさのホーム味スタ帰還に、現場は期すべき想いが強かったと思います。結果的に第32節湘南戦が、東京らしさを見失ったまま相手の術中にはまってしまったことは周知のとおり。湘南戦のモリゲと第33節浦和戦の田川の起死回生ゴールはホントに興奮しましたけど、この時点で非常に苦しい立場になったことは周知のとおり。一方のマリノスは、東京のシーズンサマリーのアシンメトリーを描くように、第24節~第33節までの10試合を9勝1分の無敗で過ごし、勢いを得ていました。東京同様にシーズン中にあまじゅんと三好を失い、さらにエジガル・ジュニオの離脱もあり、八月の三連敗で失速しかけます。これに対し、エリキとマテウスを緊急補強する荒療治を敢行するあたり、さすが海外資本だなと思わせますけど、二人がどハマりしたのはラックの要素もあるでしょう。とはいえ、止め難いエネルギーがマリノスに生まれていたのは事実。東京とマリノスは、好対照なコンディションで最終決戦に臨みます。

東京がラスト三試合を逃げ切れなかった理由は何か。マリノスとの比較では、J1の優勝の鍵である後半戦の上積みの質です。東京のアジャストは、たまもジェソも短期間でフィットしてくれましたから、必要最小限ななかでも的確だったと思います。あえていうと、それでもやはり攻撃系で上積みがないと優勝できないということでしょう。その意味ではジャエルの無慈悲をついに発動しなかったことは、最終戦のエリキとマテウスのいきいきとした姿を見ると余計に、残した念の大きさを感じます。

ラスト三試合のうち勝負を決したのは最終戦ですけど、実質のターニングポイントは第32~33節でした。仮にどちらか一つでも勝っていたら、勝ち点1差の頂上決戦は、大量得点が義務付けられた現実とはまた別のテイストの試合になったかもしれません。東京本来のイデオロギーを発揮でき、超守備的vs超攻撃的のイデオロギー対決を観ることができたと思います。第32~33節で、いずれも下位の湘南と浦和に対し、作戦でイニシアチブを握られたことを振り返ると、重要な試合に臨む準備段階におけるスカウティングとアプローチに課題が残ったと思います。

それでも、ぼくらが好み、信じるサッカースタイルでも優勝する可能性があるという確信をぼくらにもたらしてくれたという意味で、2019年シーズンはとても意義深いシーズンだったと思います。イデオロギーは、ぼくらが東京を観るときの共通基準になるとともに、相手のスタイルを理解する指標にもなります。そのことが、東京をもっと愛し、サッカーをもっと好きになるきっかけになるといいなと思います。

2019年シーズンの東京が残した念は、いわば新たなる希望です。まだ見ぬ戴冠がそう遠くない未来になるよう、2020年もまた、応援していきたいと思います。