秋のべっぴんさんロケ地の旅、最終日は近江の疎開地を中心にめぐります。

滋賀ロケ地は車が便利です。でもとても狭い道を走ることが多いですので、コンパクトな車のほうが良いです。

まずやってまいりましたのは、犬上郡豊郷町の旧豊郷小学校です。

すみれちゃんと良子ちゃんと君枝ちゃんが通う女学校。

良子ちゃんと君枝ちゃんにあげる四つ葉のクローバーの刺繍をしたモンペを持って、嬉しそうにすみれちゃんが歩いてた校舎。

校舎の構造です。ロケした場所は二階と三階です。

中央の玄関を入ってすぐ右手に中央の階段がありますので、そこを上がります。

手すりにうさぎとかめのオブジェがあって可愛いです。

二階に上がってすぐ左手です。

「すみれちゃん」「おはよう、良子ちゃん」「おはよう」「おはよう」「おはよう、君ちゃん」。

「あっ。出来たよ。2人の分」「わっ、かわいい!」「クローバーやね。明日からもんぺはくのも楽しみやわ」。

「おそろい」「フフフフッ!」「すみれちゃん、ありがとう」。

続いては、手芸倶楽部の部室です。中央の階段を三階まで上がります。三階は部屋が二つあります。こちら側です。

「手芸好きのこの子たちは、3人で、手芸倶楽部を結成しています」。

「すみれちゃん、この絵、どう?」「うわ~すてき! これ、いろんな色の糸で刺繍したら、かわいいやろな」「そやけど、点数制になってから、思うように、買い物でけへんしな」「日米開戦したこのころ、さまざまな物が統制下にあり、手芸用品も新しいものが、手に入りにくくなっていました」「あるもんでせなね」「そやね」「うん」。

「信じられへん! 英語の授業がなくなるなんて…」「悦子様は、貿易のお仕事に就くのが夢でしたのにね…」「はあ~」。

「野球も、「ストライク」を「よし」、「アウト」を「それまで」って…」「何なの? それ! あきれるわ!」。

「あのね、この布と糸、家から持ってきたんやけど…」「うわっ、ええなぁ。どの色で、この花刺繍したらええやろ?」「お静かになさって! よろしいわね。手芸倶楽部の皆様方は」「何…?」「どういう事ですか?」「授業で、英語がなくなっても、チクチクお裁縫がご趣味のあなたたちには関係ないでしょっていう意味よ」「はしたない…」。

「何?」「お国が、決めた事でしょ? 勝つまでの辛抱やない。人に当たるなんて、はしたない…です」「君ちゃん…」「ふん!」「悦子様!」「君ちゃん…君ちゃん」。

女学生が行進してた校舎。

「大丈夫?」「うん」。

「あ~もう嫌になるわ! どうしてこんな事しないといけないのかしら! はあ~」。

「お国のために、戦ってらっしゃる兵隊さんのためなのよ」「あなたに言われる筋合いはないわ!」「ほんまはしたない…」「ふん!」。

「あっという間やろうね、卒業まで」「どうしたの?」「私…」「何?」。

「縁談が来てるの」「縁談?」「15も上の、おじさんなの」「15…」「それで、どんな人やの?」「優しい人よ。優しい人やけど…でも15よ。私の年で、何で15も上の人と、結婚しないといけないんよ…」「断れないの?」。

「そうよね」。

続いては、東近江市五個荘金堂町にまいました。目指すは近江商人屋敷です。近江商人屋敷の前に駐車場がありますけど、なにしろこのような道ですから、4、5台ほどのスペースですし、五個荘観光センターに駐車したほうが安心だと思います。歩いて10分もかからないです。歩いたほうが五個荘の街並みを堪能できます。

近江商人屋敷では二箇所でロケされています。まずは外村繁邸から。

邸内で近江商人屋敷共通券を求めます。アテンドのスタッフさんがいらっしゃったので、ロケのことをお伺いしてみましたら、これがとっても面白いのです。

「こんにちは。あの、こちらでべっぴんさんのロケがあったのですよね」
「はい。そちらの座敷です」。

「そうですか」
「あと、ここは外村繁邸というのですけど、お隣の外村宇兵衛邸でも撮影されましたよ」
「お!。そうなんですか」
「はい。お母さん役の菅野美穂さんが機織り工場で働く場面を覚えてますか?」
「はい」
「あれは外村宇兵衛邸です。反物の出荷を見送る場面もです」
「そうなんですか!」
「あの場面で使った機織り機は、この近くの機織り工房で実際に使ってるのもを持ち込んでました(愛知川の近江上布ではないかと思います)」
「ほほう」
「働いてる職人さんも、本物の機織り職人さんなんですよ」
「なんと!」
「撮影の日は、エキストラの職人さんが朝から衣装を着て待ってたのですけど、菅野さんが到着されたのが16時くらいで、結局まる1日かかってましたね。みんな暑い暑いって言ってました」
「いつ頃撮影されたのですか?」
「5月30日頃だったと思います」
「あ、じゃあクランクイン直後なんですね」
「ええ。そうです」
「菅野さん綺麗でしたか?」
「めっちゃ可愛かったです」
「ですよねー」。

「ここの座敷で玉音放送の場面を撮ったのですけど、後ろのほうにウチの館長が映ってるんです」
「なんと!」
「後ろの部屋に使用人が座ってるんですけど、一番右が館長ですw」
「エキストラさんは徹底して現地調達だったんですねw。えっと五個荘ロケは、芳根京子ちゃんと蓮佛美沙子さんと生瀬勝久さんと菅野美穂さんと中村玉緒さんと本田博太郎さんと曾我廼家文童さんと宮田圭子さんと三倉茉奈さんと山村紅葉さんがいらしたんですよね。坂東家ほぼフルメンバーで豪華ですねー」
「はい」
「高良健吾さんを見られなくて残念ですね」
「はい。近江八幡でもロケしたのですけど、高良さんはそちらに来てたそうですよ」
「ですよね。キャストの皆さんは、撮影してない時はどんな様子だったんですか?」
「撮影した座敷の隣が中村玉緒さんの控え室だったんです。もう、普段からあのまんまw。『(真似で)ちょっとお手洗いはどこやろか』」
「似てるww。本田博太郎さんは?」
「やっぱりあのまんまw。『(やっぱり真似で)はいごめんなさいよ』」
「それはこわいw(それにしてもものまねがお上手ですw)」
「役者さんは、現場に入る時にもう役になってるんでしょうね」
「なるほど」
「五個荘が選ばれたのは、中村玉緒さんか生瀬勝久さんかどっちか忘れたのですけど、何か地縁がおありだとかで、それが理由なんですって」。

「へー。クランクイン直後ということは、まだ芳根京子ちゃんはご存知なかったですよね」
「はい。ヒロインが発表された時も誰?って感じでしたね」
「それが今や」
「ねー。私、サインもらっちゃいました」
「それは宝物になりましたね。芳根さんの?」
「芳根さんと蓮佛さん。実は知り合いがデビーした頃から芳根さんの大ファンで、五個荘に来たよって言ったら会いたかったって大騒ぎでした。申し訳ないけど関係者以外は立ち会えないし、言えませんしね」
「それはそうです。芳根さんと蓮佛さん、可愛かったですか?」
「天使みたいでした」。

「やっぱり。さっき機織り機は持ち込みだったって伺いましたけど、疎開した時、隣の部屋に機織り機が映ってるんです。あれも同じもの?」
「よく見てますね。あれは違います。あれも持ち込みなんですけど、NHKさんのものです。でもべっぴんさんの撮影は、だいたいここにあるものを使ってましたよ」
「そうなんですか」
「最初はNHKが持ち込むって聞いてたんですけど、ここのものを見て使うってなったんですかねー。以前、毎日放送のドラマのロケが同じ部屋であったのですけど、毎日は道具を全部持ち込んでました」
「局なのか作品なのか、いろいろ違うんですねー」
「この戸は開かないのですけど、NHKのスタッフさんが無理矢理開けて壊したんですw」
「あらま」
「でもちゃんと直してくれて綺麗になりました」。

「いっぱいお話を聞かせいただいてありがとうございます。楽しかったです」
「こちらこそ、ありがとうございました」。
現地の関係者でも撮影に立ち会うことはなかなかないですから、お話を聞ける機会は滅多にないことなのでとても貴重な時間でした。ロケハンの様子とかもっとお伺いしたかったのですけど、お客さんが来たのでお邪魔になってはと思って遠慮しました。

「お前の持ってるお得意先を本家に譲ってもらお、思うとるんや」。

「わしが自分の力で広げてきたのに、それを兄ちゃんに譲れっちゅう事ですか!?」。

「わしのためやない。傾いている坂東の家のためや」。

「五十八!」「お母ちゃん」「堪忍な。堪忍」「大丈夫や。達者でな。病気せんとってや」。

いったん、外村繁邸を出て、お隣の外村宇兵衛邸に向かいます。

玄関正面のこの奥の土間です。

「ご苦労さまです。ご苦労さまです」。はなさんが職人たちを指揮していた機織工場。

「これで、よろしいでっか?」「あっ、ここにお願いします」。はなさんが反物を運ぶ荷車を見送っていた工場の玄関。

ふたたび外村繁邸に戻ります。「よう遠いとこから来たなぁ」。

「大勢で、すんません。娘ら、孫、喜代さんを、どうかよろしくお願いします」。

「ここはお父さんの実家やからな。他人のうちやないんやから。ゆっくり過ごし」。

「ゆりさん、すみれさん。初めましてやなぁ。私はお父さんのお兄さん、長太郎の妻、節子です。息子の肇は、お国のため、出征しとります。こちらは嫁の、静子。孫の慶一や」。

「よろしくお願いします」。

「困った時に、頼れる場所があって、よかったな」。

「朕は帝国政府をして、米英支蘇四国に対し、其の共同宣言を受諾する旨通告せしめたり。抑々帝国臣民の康寧を図り…」。

「日本は、終戦の日を迎える事となりました」。

「紀夫君も、姉のゆりの夫、潔君も、音信不通となり、生死さえも分かりません」。

「昭和20年、8月15日、日本は、終戦を迎えました。ですが、本当に大変なのは、ここからなのでした」。

「肇…肇! よう帰ってきた…!無事でよかった!」「肇さん!」「よかった、よかった…」「お帰りなさい」「ただいま」。

続いては、湖岸道路を南から北に向かいまして、米原市の天野川河口にかかる世継橋の北側の橋のたもとを湖側に入ります。

岬の突端の印象的な二本の木があるここの右手です。

「9月には、アメリカ軍が和歌山に上陸。大阪に進駐しました」。疎開先の琵琶湖の風景。

今回のロケ地めぐりの旅、最後に訪れますは、ゆりさんが復員した潔さんに再会した田んぼでございます。近江八幡駅から西の湖園地を目指します。西の湖園地を右手に見て、こちらの焼田橋を南から北に渡ります。交通量も多くなく駐車も可能なスペースも少しあります。

近江八幡市円山町です。渡ってすぐの、ここを左に入ります。車は入れないのでご注意を。また、こちらは公共施設ではありませんので、くれぐれもご迷惑にならないようにしましょう。

疎開先の近江の田園風景。

「アハハハハ!」。慣れないお百姓仕事で転んでしまったゆりさんを笑って見てた子どもたちが座っていたあぜ道。

「まだほんのちょっとしかやっとらんのに…」。

「すいません。ありがとう」。ゆりさんが喜代さんに助け起こされた田んぼ。

静子さんが立ってた田んぼ。

「お姉ちゃん…お姉ちゃん、ちょっと待って! お姉ちゃん…! 今出てって、どうするの?」。

「おいちゃん、待って~」。

「何や?」「ちょうだい!」「ああ、あるある。なんぼでもあるで! ほれほれ、ケンカすな! はい」。

「潔さん? 潔さん! 潔さん! 潔さん!」。

「ゆり!」「ただいま」。「どれだけ心配した思てんの!」「堪忍な」。

「ようやく、潔君が帰ってきました」。

琵琶湖畔や田園風景のなかをドライブしていると、そこかしこにまるで絵画のような美しい光景に出逢うことができます。毎年後期の朝ドラロケ地めぐりで滋賀に来るようになって、その魅力がわかるようになってきました。来年もまた、戻ってきたいと思います。
